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Entry 2019/06/14
Update

映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』あらすじネタバレと感想。LOVESPREADが担当した楽曲がエモい感情を掻き立てる

  • Writer :
  • もりのちこ

生きてるのに死んでる。それは感情のないゾンビみたい。

偶然、同じ火葬場で出会った両親を亡くした子供たち。彼らの共通点は泣けないこと。

彼らは感情を失くしたゾンビなのだろうか?

自分の心を取り戻すため4人の子供たちは、冒険へと出ます。RPGゲームのように、ミッションをクリアし成長していく主人公たち。

しかし、リアルRPGにはコンティニュー機能がありません。まったなしの人生は、どう選択していけばいいのでしょうか?自分たちの生きている理由とは?

ゲームの世界を飛び出したリアルRPGゲーム映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』を紹介します。

映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』の作品情報


(C)2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS

【日本公開】
2019年6月14日(日本)

【脚本・監督】
長久允

【キャスト】
二宮慶多、水野哲志、奥村門土、中島セナ、佐々木蔵之介、工藤夕貴、池松壮亮、初音映莉子、村上淳、西田尚美、佐野史郎、菊地凛子、永瀬正敏、康本雅子、夏木ゆたか、利重剛、五月女ケイ子、山中崇、佐藤緋美、水澤紳吾、黒田大輔、忍成修吾、長塚圭史、池谷のぶえ、戌井昭人、赤堀雅秋、清塚信也、山田真歩、湯川ひな、松浦祐也、渋川清彦、かっぴー、いとうせいこう、CHAI、菊地成孔、森田哲矢、吉木りさ、柳憂怜、三浦誠己

【リトルゾンビーズ音楽】
LOVE SPREAD

【作品概要】
映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』の監督は、短編映画『そうして私たちはプールに金魚を、』にてサンダンス映画祭ショートフィルム部門、日本人初となるグランプリを受賞した、長久允監督。この作品が、長編映画デビュー作となりました。

バンド「ウィーアーリトルゾンビーズ」のメンバーには、個性豊かで大人顔負けの表現力をもつ4人の子供たちが集結。

『そして父になる』の二宮慶多、『クソ野郎と美しき世界』の中島セナ、『泣き虫しょったんの奇跡』の水野哲志、似顔絵師として、海外でも個展を開くほどのアーティスト奥村門土。等身大の彼らの演技が光ります。

映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』のあらすじとネタバレ


(C)2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS
火葬場の煙突から煙が上っています。ママが粉になった。パパも。

「泣いてる?」少女の問いに「泣いてないですけど」、と答える少年。少年の名は、ヒカリ。少女はイクコといいました。

その日、火葬場で出会ったのは、偶然にも両親を亡くした4人の子供たち。ヒカリ、イクコ、そしてタケムラとイシ。

彼らの共通点は、両親を共に亡くしたこと、年齢13歳、そして両親を亡くしても泣けなかったという事。

ヒカリガ ナケナカッタ リユウ。

家でひとり留守番をするヒカリ。テレビには、バスツアーの事故のニュースが流れていました。ゲームに夢中のヒカリの元へ電話がかかってきます。「マジかよ」。そのバスツアーには両親が参加していました。

死体安置所に両親の遺体を確認しにやってくるヒカリ。ママの顔とパパの手の冷たさに驚きます。しかし、ヒカリは元々両親の手の温かさを知りませんでした。

あっという間の葬儀に退屈な念仏、話しかけてくる大人はいない。花で埋め尽くされた棺を火葬場へ運び、これで最期です。「はい、泣きませんでしたー」。

それぞれの両親が焼かれて骨だけとなり、小さな器に収まりました。4人はイクコが持っていたインスタントカメラで記念撮影です。火葬場の従業員が声をかけます。「そんなゾンビみたいな顔しないで」。

4ニンハ ナカマニ ナッタ。一緒に行動をすることにした4人は、まずヒカリの家へ向かいます。

ファミコン、スーファミ、懐かしのゲーム機から最新ゲーム機まで揃った豪華な家でくつろぐ4人。しかし、その安息の地にも、叔母という敵がやってきます。

叔母から逃げるように、イシの家に向かいます。イシの家は丸焦げでした。

イシの両親は、中華料理居酒屋を営んでいました。イシが帰ってくると、「タコの知能は3歳児」と、謎のカラオケを歌うおじちゃんが絡んできます。そんな中、母親はイシのためにチンジャオロースを作ってくれます。

ある日、イシは父親に聞きます。「なんで空手やるの?」。父はタバコを吸いながら答えます。「行きたくなかったら止めたらいい。自分で決めることが出来る人が強いんだ。父さんは何も自分で決めてこなかったから弱いんだなあ」。

その日、イシが空手の稽古から帰ると家は燃えていました。ガス爆発です。母が自分のために作ろうとしたチンジャオロースが原因だと、イシはその日から何を食べても味がしません。

丸焦げの家から見つけ出したのは、母が使っていた中華鍋でした。無味の人生。夕日と火事。「なんで、父と母なんですかね。もっと死んでもいい人いるのに、なんで家なんですかね?」。

タケムラの家にはベンツのエンブレムが付けられたチャリがありました。父親が作ってくれたものです。

マイチャリで家に帰ると、母親の顔にアザが出来ていました。「またかよ」。タケムラは父の元へ向かいます。

父は借金の取り立て電話に対応していました。殴り合う親子。タケムラは容赦なくボコボコにされます。「お金ってなんであると思う?幸せになるためにあるものだと思ってたなあ」。

ある朝、両親は首つり自殺をしていました。「死んだら楽になるとか。大人はいつもズルい」。

イクコは、左手の薬指がなくても魅力的な少女でした。素敵な両親、親からの愛情、幸せを絵に書いたような家族でした。

「パパ、学校に呼ばれたよ。イクコが学校でイジメをしてるんじゃないかって。正直、娘がイジメられていないんだと思って嬉しかった」。「大きくなったらパパと結婚しよう」。それは歪んだ愛情でした。「パパ、左の薬指がないからイクコは結婚出来ないよ」。

ママに一度だけ言われたことがあります。「あなたがいなければ良かったのに」。

ピアノの先生は、ロリコンストーカーでした。「何でも君の言う事を聞くよ」。イクコの願いは何だったのでしょう。

その後、イクコの両親は変質者に殺されたと報じられます。

ヒカリ、イシ、タケムラ、イクコの4人は、逃げ込むようにゴミ捨て場にたどり着きます。そこにはホームレスの先輩たちが住んでいました。

以下、『ウィーアーリトルゾンビーズ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ウィーアーリトルゾンビーズ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS
お金もなく、夢も希望もなく、歩くことも出来ない4人の子供ゾンビたち。

「ゾンビだし、何やってもいいよね。バンドやるぞ」。

ゴミアツメロ。クルマのミラーを割れ。電気をパクれ。ヒカリ、ウタウタエ。イクコの出すミッションをクリアしていく男の子たち。

こうして「リトルゾンビーズ」のバンドが結成されました。ボーカルのヒカリ。ベースのタケムラ。ドラムのイシ。ピアノのイクコ。

ゴミ捨て場からバンドの演奏をネット配信させた「リトルゾンビーズ」。その演奏は、ゲーム音を主体にした、エクスペリメンタルビットポップ。ウィーアーリトルゾンビーズと繰り返されるサビは中毒性のあるものでした。

屋上での演奏、感極まったヒカリは、ゴミ捨て場にダイブします。感情あるじゃん。「バンドは僕らの感情を取り戻すための冒険なんだ」。

「最高にエモい」。興奮するのはその場に居合わせた、バンドマネージャーの望月悟。

「エモいってダサイ」。子供たちに散々言われても望月は、リトルゾンビーズを売り出していきます。たちまち音楽業界で話題になるリトルゾンビーズ。

学校でのイジメ、机に書かれた「SHINE」の文字。ヒカリは、いじめられっ子からロックスターへとジョブチェンジしました。

リトルゾンビーズ初のライブツアーが決定しました。ツアータイトルは「殺したのは誰だ?」。ラストステージはヒカリの両親が行く予定だったバスツアーの最終目的地となりました。

しかし、人気者になると周りが放っておかないのが世の常です。大人たちは私利私欲に走り、ネットでは頼んでもいない犯人探しが始まります。

ライブで発狂するファン、大人からのインタビュー、ヒカリたちは芽生えた感情さえも、押さえられてしまいます。

PTAからの苦情、イクコの両親殺害の犯人逮捕、ヒカリの両親を乗せたバスの運転手が特定。そして、世間に叩かれたことで、バスの運転手が自殺。

残されたビデオには、ヒカリに向かって何度も謝るバスの運転手の姿が写っていました。「本当にすまない。でも僕は君のラスボスじゃない。本当に君が戦わないといけないのは・・・」。そこでビデオは消えていました。本当のラスボスって?やるせない気持ちが残ります。

終わりのはじまりはいつも雨。

リトルゾンビーズ、解散宣言のラストステージ。客席にはひとりもいませんでした。

戻ってきたゴミ捨て場。楽器を燃やす4人。燃え上がる炎の前で踊るイクコは綺麗でした。「生きる目的がなくなっちゃった」「もともとゾンビにはそんなのないよ」。

ザ・クールエンド。ヒカリは親戚の家へ行くことになります。電車の見送りにきたイクコ、イシ、タケムラ。

ヒカリは最後に皆で行きたい場所がありました。ライブツアーの最終地。両親がバスツアーで行くはずだった野イチゴ狩りの草原です。

ヒカリの願いを叶えるため、4人はホームを走りぬけ、別の電車へと向かいます。立ちはだかる大人たち。その姿はゾンビそのものでした。

電車を降り、雨の中を歩き、途中で車を奪い、目的地を目指します。奪った車をタケムラが運転します。

その時です。ぶつかる車。4人を乗せた車が、水の中に沈んでいきます。ヒカリにはこれまでの人生が走馬灯のように映ります。

画面に出るコンティニューの文字。コンティニューしますか?イエスorノー?「ゴミみたいな人生だよ」。選んだ答えはノーでした。GAME OVER。

声が聞こえます。「絶望とかダッサ」。「空気よめ」。「もう一回、選択画面だして」。

ゴミみたいな人生の中に、リトルゾンビーズのメンバーの顔が見えます。今度の選択はイエス。

突然、生命の誕生シーンへと突入です。産まれてくる赤ちゃん。

ボウケンノハジマリデス。ナマエハナニニシマスカ?

「世界は明るくてまぶしくて、輝いているの。この子の名前はヒカリよ」。喜ぶ両親の声が聞こえます。

ヒカリが目覚めるとそこはバスの事故現場でした。タケムラの「寄ろうか?」の質問に「いいよ。ただの花だけだし」。と答えるヒカリ。車は目的地の野イチゴ狩りの草原に着きました。

その草原は富士山の見える絶景ポイントでした。なぜ、両親はここに来ようとしたのか。それぞれ草原の中を歩きだすメンバーたち。

ゾンビにも感情はあるのかも。ゾンビがゆっくり歩くのは、そっちの方が面白いから。映画的じゃない平凡な人生を歩く。それもいいね。これにて映画は終わりです?!

聞こえてくる念仏。そこには葬式の日のヒカリがいました。

映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』の感想と評価


(C)2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS
良い大人になるために、これをしなさい、これはやっちゃだめ。皆と違うことをすると、世の中からはみ出した人になるよ。立派な人になりなさい。

根拠のない良い大人になるためのルール。そのルールに従い、真面目に生きてきたファミコン世代の人も多いことでしょう。人生はRPGゲームのようだ。

やってくる敵が弱い時はどうにかなったものの、うっかり強い敵に出会ったときに自分の弱さに気付きます。

レベルをあげて再挑戦する人もいるでしょう。もう止めた、となる人もいます。仲間を集め共に戦うこともできます。攻略本で楽にレベルをあげてもいい。

ゲームとリアルの違いは、ゲームならコンティニューしてもいいししなくてもいい。リアルな世界では、死んでしまったらコンティニューできません。

映画の中の子供たちは次第にそのことに気付いていきます。死に対して感情がなかった子供たちが、生きる選択をします。

特別なことがなくても生きてること事態が、奇跡でスゴイということ。

何事にも理由を求める人生はやめよう。死ぬ時がくるまで生きよう。それぞれの道をありのままの姿で面白く生きればいい。それが、リアルRPGゲームのルールでした。

私利私欲しか考えていない大人。自分が一番な親。嫌々に仕事をしている大人。命を大事にしない人。そんな大人たちの方がゾンビなのではないでしょうか。

また、映画『ウィーアーリトルゾンビーズ』は、ファミコンのような映像に、ドット文字、RPG、バーチャル世界、流行の言葉が飛ぶかう独特のセリフが印象的です。

それは、新旧のゲームを織り交ぜたような世界観で、昭和世代から平成世代まで楽しめます。

そして、「リトルゾンビーズ」のメンバーを演じた、二宮慶多、中島セナ、水野哲志、奥村門土。この4人が奏でる不調和音が妙に心地よい。

乱雑で攻撃的な言葉が、この4人を通して語られた時、それは和らいで愛しい言葉に変わります。リトルゾンビーズの音楽を担当した「LOVE SPREAD」の繰り返される曲のサビのように、頭から離れません

まとめ


(C)2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS
長久允監督の長編映画デビュー作、超音楽冒険RPGムービー『ウィーアーリトルゾンビーズ』を紹介しました。

本作は、サンダンス映画祭にて日本人初となる審査員特別賞オリジナリティ賞を受賞。さらにベルリン国際映画祭では、ジェネレーション14plus部門でオープニング作品に選ばれ、準グランプリにあたるスペシャル・メンション賞を受賞。まさに世界を圧巻しています。

人生はRPGゲーム?!ゲームとリアルの違いを子供たちが教えてくれます。

生きる目的は何ですか?生きてるのに死んでる大人ゾンビのみなさん、目を覚まし人間に戻りましょう。

子供たちにダサイと言われても言わせて欲しい。『ウィーアーリトルゾンビーズ』は、エモい映画です。

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