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『リスボン特急』ネタバレ結末あらすじと評価解説。巨匠監督メルヴィルおすすめのフィルム・ノワールは必見!

  • Writer :
  • 秋國まゆ

フランスのフィルム・ノワールの巨匠ジャン=ピエール・メルヴィルの最後の監督作!

ジャン=ピエール・メルヴィルが脚本・監督を務めた、1972年製作のフランス・イタリア合作のフィルム・ノワール映画『リスボン特急』。


(C) 1972 STUDIOCANAL – Oceania Produzioni Internazionali Cinematografiche S.R.L. – Euro International

かつて固い友情と絆で結ばれていた2人の戦友が、パリの街を支配するギャングのボスと、その街を守るパリ警視庁の署長として激突する物語とは、具体的にどんな物語なのでしょうか。

1960年代から1970年代にかけて「世紀の二枚目」として人気を博し、数多くの芸術映画や娯楽映画に出演したフランスの映画俳優アラン・ドロン主演の映画『リスボン特急』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。

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映画『リスボン特急』の作品情報


(C) 1972 STUDIOCANAL – Oceania Produzioni Internazionali Cinematografiche S.R.L. – Euro International

【公開】
1972年(フランス・イタリア合作映画)

【脚本・監督】
ジャン=ピエール・メルヴィル

【キャスト】
アラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴ、リチャード・クレンナ、リカルド・クッチョーラ、マイケル・コンラッド、ポール・クローシェ、シモーヌ・ヴァレール、アンドレ・プース、ジャン・ドザイー

【作品概要】
サムライ』(1967)や『影の軍隊』(1970)などを手掛けたジャン=ピエール・メルヴィルが脚本・監督を務めた、フランス・イタリア合作のフィルム・ノワール作品です。

影の軍隊』(1970)のアラン・ドロンが主演を務め、「ランボー」シリーズのリチャード・クレンナと共演しています。

映画『リスボン特急』のあらすじとネタバレ


(C) 1972 STUDIOCANAL – Oceania Produzioni Internazionali Cinematografiche S.R.L. – Euro International

パリのナイトクラブの経営者でありながら、パリの街を支配するギャングのボスという裏の顔を持つ男シモンは、手下のルイス・コスタとマルク・アルブイス、ポール・ウェベールと共に、フランスの都市サン・ジャン・ド・モンにある小さな銀行を襲撃。

しかし大金を袋に詰め込んでいた際、銀行員は彼らの隙を突いて札束を床の赤いボタンに投げつけ、警報装置を作動させます。

けたたましくなる警報音に実行犯の3人が気をとられていると、その銀行員はピストルを取り出し、近くにいたマルクを銃撃。

すぐさま自動小銃で反撃したマルクでしたが、左胸を撃たれ重傷を負ってしてしまいます。

大金の強奪に成功した4人は、ダッジの車に乗って逃走。大金が入った袋を空き地に埋め、再び車をパリへと走らせました。

その道中、シモンはルイたちに、「負傷したマルクを病院に担ぎ込んだ後、隠した大金を取り戻しに来よう」と言いました。

一方、パリ警視庁の署長エドワール・コールマンは相棒の刑事と共に、夜のパリの街をパトロールしていました。

パトロール中、コールマンは情報屋のギャビーと会い、ある組織がフランスの南西の街アンダイエの税関職員1人とグルになって、パリからポルトガルの首都リスボン行きの特急列車を使って麻薬を運び出すという情報を入手します。

一方シモンたちは、自分たちが起こした銀行強盗事件が早くも新聞で報じられ、夕刊のトップを飾ったことを知りました。

もし警察が怪我人であるマルクの存在に気づいたら、パリ市内の全ての病院と診療所に警察の捜査の手が及ぶのも時間の問題です。

看護師に変装したシモンたちは、マルクを病院から連れ出そうとします。しかしマルクの容態は予想以上に悪く、弾丸が貫通して左の肺から大量に出血したため、肺塞栓症(肺の血管に血の塊が詰まり、突如呼吸困難や胸痛、時には心肺停止をきたす危険な病気)になってしまったのです。

半昏睡状態となったマルクは終日点滴を行う必要があり、病院から連れ出すことは出来ません。

やむを得ず、シモンたちは口封じのためにマルクを殺すことに。シモンの情婦カティは看護婦に変装して病院に忍び込み、マルクに注射を打ち絶命させます。

以下、『リスボン特急』ネタバレ・結末の記載がございます。『リスボン特急』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C) 1972 STUDIOCANAL – Oceania Produzioni Internazionali Cinematografiche S.R.L. – Euro International

翌日。病院で身元不明の死体が見つかり、コールマンたちは被害者の身元を割り出すべく、鑑識に司法解剖を頼みました。

その日の夜。コールマンはギャビーから、「2日後、パリ・オーステルリッツ駅から23時59分発、リスボン行きの特急列車に運び屋のマチューが乗車する」、「途中のボルドー・サン・ジャン駅で奴に麻薬が手渡される」という新たな情報を入手しました。

それから2日後。ギャビーの密告どおり、23時59分発、ボルドー・サン・ジャン駅経由、リスボン行きの特急列車に、マチューは麻薬が入った鞄を持って乗車しました。

翌朝5時43分、マチューを乗せた特急列車はボルドー・サン・ジャン駅に到着。駅のホームで待っていた麻薬組織のボスのモランとその仲間は、特急列車が駅に停車しているわずか数分の間に、マチューに麻薬が入った鞄を手渡しました。

駅のホームで張り込んでいたコールマンとそのチームは、2つの鞄に入った麻薬がボルドーに着いたことを確認。アンダイエでマチューを逮捕しようとします。

一方シモンたちは、かねてから計画している大西洋沿岸のビル建設事業に必要な大金を得るため、ある作戦を練っていました。

今まではマチューに麻薬を運ばせて資金を得ていたのですが、シモンたちが思っている以上に銀行強盗事件が大きく取り上げられてしまい、買い手の警戒心を強めてしまったのです。

そのため今回は、シモンたちがボルドーから国境までの間、麻薬の運搬を受け持つことに決めました。

しかも作戦決行当日は、途中駅のラモット・モルソンクス間で新しい電気設備を設置する工事期間中。

通常ならば65キロの直線を特急列車は時速150キロで走りますが、工事のため30キロの間、最高でも時速60キロまでしか走れません。

安全のためにカーブの後5キロと、モルソンクス駅に着くまでの5キロ以外だと考えても、シモンたちが麻薬を奪うには20分も余裕があります。

麻薬が手元に戻ったら、シモンたちに盗ませた連中が、再び彼らから麻薬を買い取るしかありません。

しかもこのことを咎める者はおらず、目障りな警察に付き纏われる心配もなくなります。シモンたちにとって得なことしかない作戦でした。

シモンたちはベンツの車に乗り、早速ボルドーへ。そこからヘリコプターに乗り換え、マチューが乗車する特急列車を追跡します。

ルイスとポールをヘリで待機させ、シモンはロープを伝って特急列車の屋根の上に降り、就寝前のマチューを襲撃。鞄ごと麻薬を奪い、ヘリで逃亡しました。

一方、パリ警視庁に戻ったコールマンは、ギャビーを呼び出して「俺たち警察をおちょくっているのか」と叱責しました。

というのも、コールマンたちがアンダイエで逮捕したマチューは、特急列車に乗車する際に持っていた鞄も、ボルドーで受け取ったはずの鞄も持っていなかったのです。

嘘の情報を漏らしたと疑われてしまったギャビーは、必死に弁明するも聞く耳を持って貰えず、街路で客引きしていたとしてしょっぴかれてしまいました。

ギャビーをつまみ出した後、コールマンの元に、鑑識から身元不明の死体の解剖結果が届きます。

身元不明の死体はマルク。彼と彼の友人であるルイスは銀行強盗の一味ではないかと、コールマンの相棒は言いました。

コールマンは相棒にルイスの居場所を突き止めるよう命じました。さらにコールマンは、銀行強盗の一味がこのことを知って高飛びすることを防ぐべく、彼の身元を報道陣に暴露しないよう鑑識にお願いします。

ですが、時すでに遅し。マルクの顔写真付きで、「病院で不可解な死を遂げた男は、銀行強盗の一味か」と新聞に大きく取り上げられてしまったのです。

その新聞を読んだルイスは、周囲を警戒しながら近くのレストランに立ち寄りました。しかしそこにいた客の大半が、コールマンたち警察官でした。

大勢の警官に取り押さえられ逮捕されたルイスは、コールマンに共犯者2人の名前を言えと尋問されます。

最初は頑なに銀行強盗もマルク殺害の関与も否定していたルイスでしたが、長時間に及ぶ軟禁・尋問に耐えきれなかったのでしょう。

ルイスから共犯者の名前を聞き出したコールマンは、ナイトクラブを訪れ、主犯格であるシモンに対峙します。

たびたびこのナイトクラブで会っていたコールマンとシモンは、実はかつて固い友情で結ばれた戦友同士でした。

コールマンはルイスたち3人の名前を言い、彼らを知っているかと尋ねました。シモンは3人とも知らないと答えました。

コールマンがナイトクラブを出た直後、シモンはポールに電話をかけました。妻と外出していたポールが慌てて電話に出ると、「ルイスが俺たちのことを警察に喋った」と聞かされます。

シモンはポールにすぐに逃げるよう言いましたが、コールマンたち警察がポールの自宅に駆けつけたため、ポールに逃げる時間はありませんでした。

追い詰められたポールは、コールマンたちに逮捕されるより先に拳銃自殺しました。残るはシモンただ一人。

翌朝。シモンはカティに電話をかけ、自分がいるエトワール広場前のホテルまで車で迎えに来るよう頼みます。

身支度を終え、麻薬が入った鞄を持ってホテルを出たシモン。カティが運転する車に近づこうとした瞬間、背後からコールマンの声が聞こえました。

コールマンはシモンに制止するよう求めましたが、シモンはコールマンに向かって歩きながら手を懐に入れます。

その瞬間、銃を取り出すのではないかと警戒したコールマンは銃を発砲。コールマンの相棒に身柄を拘束されたシモンは、コールマンに「武器は持っていない」と言い息を引き取りました。

シモンは最初から自殺するつもりだったのです。現場に駆けつけた部下たちにスーツケースを押収させ、コールマンは相棒と共に次の事件現場へと向かいました。

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映画『リスボン特急』の感想と評価


(C) 1972 STUDIOCANAL – Oceania Produzioni Internazionali Cinematografiche S.R.L. – Euro International

パリの街を守るパリ警視庁の署長コールマンと、ギャングのボスであるシモン。

敵対関係にある2人ですが、作中ではシモンのナイトクラブで一緒にスコッチを飲み語り合うほど、固い友情で結ばれた戦友同士でした。

コールマンは身元不明の死体がマルクであると分かり、わずかに動揺しています。そこから察するに、コールマンはシモンだけでなく、マルクたちとも知り合いだったのではないのでしょうか。

だとしたら、友人知人である彼らが銀行強盗事件を起こした犯人であり、マルク殺害事件および麻薬密売にも関与していたなんて、これ以上ないほど残酷な真実を知ったコールマンの辛さは計り知れません。

そして物語のラスト、シモンが自殺するためにコールマンに銃を発砲させた場面。銃を取り出して逮捕されまいとあがくものかと誰もが思っていただけに、このシモンの決死の芝居に、登場人物も観ている人も見事騙されたことでしょう。

現実としては敵同士となってしまったけれど、シモンもコールマンと争うつもりはなかったのです。

最後までコールマンはシモンたちに対する怒りで激昂することも、涙を見せることもありません。

ですがそれは、内なる感情を表に出すまいと堪えているだけ。心配してコールマンを気遣う彼の相棒と、必死に涙を堪えながら前を見据えるコールマンの姿は、観ているこちらが泣けてくるほど辛く悲しいです。

まとめ


(C) 1972 STUDIOCANAL – Oceania Produzioni Internazionali Cinematografiche S.R.L. – Euro International

固い友情で結ばれていたはずの2人の男が、小さな町の銀行強盗事件を境に敵対してしまう、フランス・イタリア合作のフィルム・ノワール作品でした。

言葉には出さずとも、コールマンの表情を見るだけで彼の複雑な心情を表現したアラン・ドロンの演技力はとても素晴らしいです。

ですが最後の最後で、友と戦うよりも自ら命を落とす選択をして、登場人物も観客も欺いてみせたシモン役を演じたリチャード・クレンナも素晴らしい演技を魅せてくれます。

また、アラン・ドロンとリチャード・クレンナが演じるコールマンとシモンは、本作のヒロインであるカティを取り合うライバル同士でもありました。

カティの気持ちがどちらに傾いたのかは定かではありません。ですが結果的に、カティは撃たれたシモンに駆け寄り悲しむことも、コールマンと最後に言葉を交わすこともしませんでした。

そんな男たちの熱き友情とやりきれない悲しみを描いた本作を手掛けたのは、フランスのフィルム・ノワールの巨匠ジャン=ピエール・メルヴィルです。

数多くのフィルム・ノワール映画を手掛けたジャン=ピエール・メルヴィルですが、本作が公開された翌年の1973年8月2日、心臓発作により55歳の若さで亡くなってしまいました

ジャン=ピエール・メルヴィルの最後の監督作品であり遺作でもある、シリアスなフィルム・ノワール映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。

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