Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2017/03/27
Update

映画『ジョゼと虎と魚たち』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【池脇千鶴の代表作】

  • Writer :
  • アキバ

若かりし頃の妻夫木聡と池脇千鶴主演のピュアで切ないラブストーリー。

今でも多くの人に愛される名作『ジョゼと虎と魚たち』を紹介します。


(C)2003『ジョゼと虎と魚たち』フィルムパートナーズ

スポンサーリンク

映画『ジョゼと虎と魚たち』の作品情報

公開
2003年(日本映画)

監督
犬童一心

キャスト
妻夫木聡、池脇千鶴、新屋英子、上野樹里、新井浩文、江口徳子

作品概要
1984年6月号に発表された田辺聖子の短編小説を『眉山ーびざんー』『黄泉がえり』で有名な犬童一心監督により映画化されました。

第77回キネマ旬報 日本映画ベストテン第4位。

犬童一心監督は第54回芸術選奨映画部門において、芸術選奨新人賞を受賞。

音楽はロックバンドくるりが担当。

映画『ジョゼと虎と魚たち』のあらすじとネタバレ


(C)2003『ジョゼと虎と魚たち』フィルムパートナーズ

乳母車に乗った少女

雀荘でバイトする大学生の恒夫(妻夫木聡)は、乳母車を押す奇妙なお婆さんの話を聞きます。

明け方、マスターの犬の散歩をしているとその坂の上から走ってくる乳母車に遭遇します。

近寄り中を覗くと、そこには包丁を持った少女が居ました。

その足の不自由な少女の名前はジョゼ(池脇千鶴)。外に出たがるジョゼの為、お婆さん(新谷英子)は人に見られない朝方に散歩をしているのだと言います。

その後、ジョゼの家へ行き、朝ご飯を作ってもらいます。

ジョゼは生まれつき足が悪く、ほとんど外には出ません。世間体を気にするお婆さんの性格もあり、家に閉じこもるような状態でこれまでの人生を過ごしてきたのです。

恒夫をそんなジョゼに魅力を感じた事と作ってもらったご飯があまりにも美味しかった事から、ジョゼとお婆さんで2人暮らしをするこの家に、度々訪れるようになりました。

ジョゼの部屋にはお婆さんが拾って来た色んなジャンルの本が高く積まれていて、ジョゼはいつも本を読んで居ました。

中でも、フランソワーズ・サガンの著書が大好きで、自分の名前「ジョゼ」もその登場人物から取ってきたものでした。

自分で買いに行けない、探せない身であるジョゼはフランソワーズ・サガンの「一年ののち」という本の続編がいつか路上に捨てられるのを待ちわびているのだと言います。

それを聞いた恒夫は、古本屋でその続編を見つけジョゼに渡すのでした。

ジョゼを気にかけながらも、恒夫は大学で同級生の香苗(上野樹里)に好意を持ち、セックスフレンドとしてノリコ(江口徳子)とも関係を持って居ました。

いわゆる恒夫はごく普通の大学生であり、健常者。普通にバイトをし、普通に恋愛をします。

誰にでも優しい恒夫は友人も多く、ジョゼの世界にもズカズカと無神経に入り込んでいきます。

ジョゼを昼間に外へ連れ出そうと、恒夫は乳母車にスケボーを付けて、お婆さんには内緒で街へ繰り出します。

世間と遮断していたジョゼに取って外の世界は広く輝いて見えました。

河川敷で、雲を見つめながらこう呟きます。

「あの雲、持って帰られへんやろかあ」

虎と魚たち


(C)2003『ジョゼと虎と魚たち』フィルムパートナーズ

ジョゼの家に市の支援でバリアフリー工事の業者が訪れていました。

家を改装している中、ジョゼは押入れの中で本を読んでいるのでした。

そんな時、福祉に興味があった香苗が見学に来たと、突然現れます。

押入れの中で2人の会話を聞くジョゼ。

その日の夜、たこ焼きを持って再び訪れた恒夫にジョゼは泣きながら「帰れ」と叫び、本を投げつけます。

もう2度と来ないように、とお婆さんからも釘を刺されるのでした。

数ヶ月が経ち、ジョゼの家を改装した時に知り合った業者の人(板尾創路)の会社に訪れ、就職活動を行なっていました。

そこで恒夫はジョゼのお婆さんが亡くなった事を知ります。

ジョゼは足が不自由な女の子。一見頼もしく見えますが、1人で生きていくには難しい事を知っていた恒夫は、居ても立っても居られなくなり、ジョゼの家へ駆けつけます。

ジョゼの家は数ヶ月前とは少し変わっていました。

乱雑に置かれていた雑貨は少なくなり、家具の配置が変わり、照明の紐が長く伸びていて、お婆さんが居た時よりも暗く、それでも必死に暮らすジョゼの姿がありました。

ゴミ出す事もままならないジョゼは、変態と呼ばれる近所のおじさんに胸を触らせる事を条件に世話をしてもらっていたりもしていました。

それを非難する恒夫に対して、ジョゼは泣き叫びます。

ジョゼの本心を察した恒夫はキスをし、身体を重ねるのでした。

2人は付き合い始め、一緒に暮らすことになります。

ジョゼの夢の一つに「好きになった男と世界で1番怖いものを見る」というものがあり、恒夫と動物園に行ったりと、2人は幸せな時間を過ごしていました。

しかし、その幸せはそう長くは続きませんでした。

それからまた幾月か経った日。法事を兼ねた恒夫の実家へ向かう小旅行に2人は出掛けます。

ジョゼのもう一つの夢であった「魚が見たい」という夢を叶えるため、水族館を目指しますが、向かった水族館はなんと休館日。

ジョゼはショックを受け散々駄々をこねます。

それに苛立つ恒夫。そして、車椅子を利用せず、いつまでも恒夫に依存しようとするジョゼにも恒夫のストレスは増していく一方でした。

「障害者」であるジョゼと自分の違いからついに目を逸らせなくなった恒夫は、結局家族と顔を合わせることに戸惑い、法事を断ります。

「兄ちゃん、怯んだ?」と言う弟に、恒夫は何も言い返せないのでした。

2人は行き先を変えて海へ向かいます。

初めて海を見る興奮気味のジョゼをおんぶして楽しむ2人。

その夜、車で帰っている途中「お魚の館」というラブホテルを見つけ、ジョゼはそこに行きたいと言います。

真珠貝のベットの上でこう話します。

「いつかあんたが居なくなったら、独りぼっちの貝殻のように転がり続けるだろう。」

「寂しいじゃん」と言う恒夫。

「でも、まあ、それもまた良しや。」とジョゼは微笑むのでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ジョゼと虎と魚たち』ネタバレ・結末の記載がございます。『ジョゼと虎と魚たち』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スポンサーリンク

荷物をまとめた恒夫は、ジョゼの家を後にします。

2人の別れはあっさりしたものでした。

香苗のと並んで歩き出し、楽しく会話をするのですが、恒夫は泣き崩れてしまいます。

「僕がジョゼに会う事は、もう2度とないと思う」

ジョゼは電動車椅子を使いこなし、いつも通り料理を作り、1人でもたくましく生きているのでした。

スポンサーリンク

映画『ジョゼと虎と魚たち』の感想と評価



(C)2003『ジョゼと虎と魚たち』フィルムパートナーズ

切ないです。とても切なく美しく、そして優しいです。

ごく普通の若者が抱く心の葛藤を上手く描かれていて、障害者と関係を持った事のないような鑑賞者にとっても、恒夫に対して容易に同情する事ができます。

本作の後半で訪れる、小旅行からの2人の別れには、胸を打たれます。

何より「ジョゼと離れ、香苗の元へ戻る」という決断をした恒夫を強く非難することは出来ないのが切ないです。

そのリアルさは本作のすごい所です。

恒夫の責任感の感じ取れない今を楽しむ若者の姿と障害者に対する好奇心と正義感。「障害者のくせに彼氏を取るなと」罵倒する香苗にも現実的で、美しいだけではないリアルさを感じる作品でした。

そして誰よりも自由に生きるジョゼの人間性にとても心惹かれます。

いつも寝癖頭で、洗練されていないファッション。ねっとりと関西弁を喋るジョゼは足が上手く動かない「壊れ物」として家に閉じこもって生きてきました。

そんなジョゼが抱く願望や欲望は誰より大きく、誰より自由でした。

「帰れ!帰れと言われて帰る奴は帰れ!」

恒夫に対して本心ではなく、素直になれず、泣いてしまうジョゼの心情に辛く切なくも共感してしまいます。

作中にも登場したサガンの物語が2人の恋愛ともなんとなく通じている所もまた作品の奥行きを作り出しています。

裕福な親の資産で自由気ままに生きる小説のジョゼ。

両足が不自由で一人でろくに外に出ることも出来ない映画のジョゼ。

一見対照的な2人のキャラクターではありますが、自由で満たされた生活を送りながらもどこかでそれがはかないものだと小説のジョゼは感じています。

それは映画のジョゼが恒男との別れを予感しているところにも通じています。

まとめ


(C)2003『ジョゼと虎と魚たち』フィルムパートナーズ

足の不自由なジョゼとごく普通な大学生の切ない難しいテーマを持ったラブストーリーとなっている本作。

綺麗事ではないそのリアルなストーリーが今でも多くのファンから愛される理由で、この物語を支えるフード演出、小道具、衣装、そしてエンディングのくるり「ハイウエイ」と見所がぎっしり詰まった素晴らしい作品です。

ただの障害者映画でない、本格的な純愛ラブストーリー。本作はこれからも多くの人から愛されるでしょう。


関連記事

ヒューマンドラマ映画

『ドライブ・マイ・カー』ネタバレあらすじ感想と結末考察。ラスト韓国へ行きつく濱口竜介監督が込めた‟物語”の意味

日本映画初のカンヌ国際映画祭脚本賞受賞『ドライブ・マイ・カー』! 映画『ドライブ・マイ・カー』は、2021年・第74回カンヌ国際映画祭で日本映画としては初となる脚本賞を受賞したのを始め、国際映画批評家 …

ヒューマンドラマ映画

草刈正雄映画『体操しようよ』あらすじネタバレと感想。永遠の二枚目スターが見せた第二の人生の楽しみ方

新しい朝が来た。 今日もそこそこ元気に楽しくやりましょう! 国民的スター草刈正雄が、定年退職を迎えた冴えないお父さんを演じます。 シングルファザーで家のことは娘に任せ、仕事ばかりしてきたお父さんが、定 …

ヒューマンドラマ映画

映画『バイス』ネタバレ感想と評価。実話ゆえに国のリーダーを選ぶ真価を問う秀作

バイス=悪徳という意味!? まさかの実話。史上最強で凶悪の副大統領。 主演クリスチャン・ベール、監督アダム・マッケイ、製作ブラッド・ピット、『マネー・ショート華麗なる大逆転』チームが再集結です。 大統 …

ヒューマンドラマ映画

映画『椿の庭』ネタバレ感想とラスト結末の考察。原作のないストーリーを写真集のような美しい景色と女性たちの生き様で活写

命あるものはやがて朽ちる。だからこそ、儚くも美しい。 数多くの広告写真を手掛け、その卓越した美学で人々を魅了し、国内外で高い評価を得ている写真家・上田義彦の映画初監督作品『椿の庭』。 海を望む高台にあ …

ヒューマンドラマ映画

『ブルーアワーにぶっ飛ばす』ネタバレ感想と評価。誰にでも通じる繊細な感情を鮮やかに表現

明日へぶっ飛ばす! おばあちゃんを見舞うため、砂田は大嫌いな故郷へいやいや帰ることになるのだが・・・! 夏帆とシム・ウンギョンという日韓を代表する女優が共演した箱田優子初監督作『ブルーアワーにぶっ飛ば …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
映画『哀愁しんでれら』2021年2月5日(金)より全国公開
映画『写真の女』
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学