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Entry 2019/07/22
Update

映画『ホット・サマー・ナイツ』ネタバレ感想と評価レビュー。ほぼ無名のティモシー・シャラメを主演に起用

  • Writer :
  • 奈香じゅん

『君の名前で僕を呼んで』『ビューティフル・ボーイ』で一躍人気となったティモシー・シャラメ主演。

『ホット・サマー・ナイツ』は、今注目を集めるティモシー・シャラメが主演を務めたドラマ作品です。

マサチューセッツ州のケープ・コッドへ夏を過ごしに来たティーンエイジャー・ダニエルと地元の不良・ハンターを中心に物語は進み、1991年アメリカの小さな町で起きる破滅をサスペンスタッチで描いた青春映画です。

当時まだ殆ど知られていなかった初々しいシャラメとイギリス人俳優アレックス・ロウが光ります

映画『ホット・サマー・ナイツ』の作品情報

【公開】
2018年(アメリカ映画)

【原題】
Hot Summer Nights

【監督】
イライジャ・バイナム

【キャスト】
ティモシー・シャラメ、アレックス・ロウ、マイカ・モンロー、マイア・ミッチェル、トーマス・ジェーン、ウィリアム・フィクナー

【作品概要】
本作はイライジャ・バイナムの初監督作品であり、脚本も執筆しています。ハリウッドで長く製作されなかった脚本ですが、関係者の間で話題に上り、遂に映画化に漕ぎ着けました。

映画『ホット・サマー・ナイツ』のあらすじとネタバレ


(C)2017 IMPERATIVE DISTRIBUTION, LLC. All rights reserved.

1991年6月。高校を卒業したダニエル・ミドルトンは、父親の死が乗り越えられず何もする気が起きません。心配した母親は、ダニエルを夏の間叔母の所へ預けることにします。

観光客で賑わうケープ・コッドへ来たダニエルは、ホームパーティーへ行きますが、地元の人間ではない為今一つ周りに馴染めません。

そんな中、パーティーでハンター・ストロベリーと出会います。町では有名な不良で観光客相手にマリファナを売っていました。

ある日、ダニエルが店番をしていると、ハンターが入店してきて袋に入ったマリファナを隠して欲しいと頼みます。

直ぐ後から警官が入って来たのを見たダニエルは、レジにマリファナを隠します。

ハンターはお礼にダニエルをパーティーへ連れて行きマリファナを吸わせます。喘息持ちでありながら好奇心に駆られたダニエルはマリファナを初体験。床に倒れてしまいます。

ダニエルとハンターは、それ以降一緒に行動するようになります。ドライブインシアターで『ターミネーター 2』を1人で観ていたダニエルの車に、ボーイフレンドと喧嘩したマッケイラが乗り込んできます。

家に送って欲しいと頼まれ、ダニエルは従います。マッケイラは地元の同世代に人気のある影のある女の子でした。

到着するとダニエルの自己紹介に応えず、マッケイラは名前を言わずに車を下りて行きます。

翌日、ダニエルは、ハンターに前夜出会った女の子に夢中だと話します。送った場所やマッケイラの特徴から、ハンターは自分の妹だと告げ、絶対に手を出すなと警告します。

ダニエルは了解します。そして、ハンターと一緒にマリファナビジネスに加わりたいと言い出します。警察に目を付けられていない余所者の自分の方が売りやすいと説得され、ハンターは受け入れます。

警官のカルフーンに一時停止を求められたダニエルは、カルフーンに名指しされ、ハンターと一緒に行動する内に顔が知られたことに気がつきます。

すっかり味を占めていたダニエルは、ハンターを口説き大口のサプライヤーからより多くのマリファナを手に入れることにします。

しかし、ダニエルは警戒され拳銃で脅されてしまいます。そこへハンターが駆けつけ、相手を暴行。返り血を浴びた2人は一先ず引き返します。

ケープ・コッドに組織の交渉役・ディグスが現れ2人を無理矢理ファミレスに連れてきます。

ディグスはサプライヤーを大怪我させたことを知り、逆に見込んで勧誘に来たのです。支払期日の厳守を条件に、大量のマリファナを流すと持ち掛けます。

おとり捜査の警察ではないかと疑うダニエルの頬をディグスはいきなり平手打ちし、警察ならこんな真似は出来ないと何食わぬ顔です。

2ポンドを2日で売るには時間が短すぎるとハンターは言いますが、ダニエルは5ポンド売ると身を乗り出します。

お手上げのハンターに対し、ダニエルは麻薬中毒で幅広いコネを持つ従兄を頼り、5ポンド全てさばくことに成功。

質が良く人気になったマリファナを更に大量に売って行き、唸るほどお金を儲けます。ダニエルは赤いスポーツカーを購入し、ハンター達とお酒に酔いマリファナを吸って日々を過ごします。

以下、『ホット・サマー・ナイツ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ホット・サマー・ナイツ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2017 IMPERATIVE DISTRIBUTION, LLC. All rights reserved.

7月。花火大会が行われたある晩、ダニエルは遊園地でマッケイラに遭遇します。ボーイフレンドや友人が居る前で、ダニエルはマッケイラにキスをして殴り倒されます。

相手がマッケイラだった為町の噂になり、ハンターは妹に突然キスをして来た男を見つけ出すと意気込みますが、ダニエルは黙っていました。

マッケイラもダニエルに惹かれるようになり、2人は付き合い出します。一方ハンターは、カルフーンの娘・エイミーと一緒に過ごすようになりました。

ダニエルとハンターはランチを共にします。ハンターは、ダニエルとエイミーだけが自分をありのまま受け入れてくれた言い、嘘だけは嫌だと話します。ダニエルはマッケイラのことを話せず、顔を背けました。

マッケイラと映画を観に行ったダニエル。彼女は初めて心の内を明かします。

病に伏せた母親が嫌がるのを知っていてハンターはマリファナを売り続けました。母親の死後、兄を許せないマッケイラは、ハンターを遠ざけ口を聞かなくなりました。

兄が稼ぐお金は絶対に使わなかったと目に涙を浮かべます。地元で有名なハンターを知っているのか訊かれたダニエルは、知らないとマッケイラにも嘘をつきます。

ダニエルはマッケイラに対する真剣な気持ちを告白しようとしますが、マッケイラは、浮かれた夏が終わるまで何も言わずにいて欲しいと頼みました。

8月。ゲームセンターで時間を過ごしていたダニエルとマッケイラはハンターに遭遇します。目を丸くしたハンターは、2人が知り合いなのか尋ねます。

マッケイラは知らないと即答。ダニエルは、一度家まで送ったと誤魔化します。1人その場を出て行ったマッケイラを、ダニエルは頃合いを見て追い掛けます。

ハンターをパーティーで1度見かけたとダニエルは再びマッケイラに嘘をつきます。

エイミーは家に帰るのが遅くなり、カルフーンにハンターとの関係を知られてしまいます。

カルフーンはハンターを連れ出し、落ちぶれたハンターの父親の姿を見せます。ハンターは、泥酔した父親が女性客とバーの外でいちゃつく姿を見つめ、目から涙がこぼれます

カルフーンは、人生は選択しながら歩むものだとハンターを諭します。

帰宅したハンターは、マッケイラに母親を傷つけたことを謝罪します。

マッケイラは、母親が唯一ハンターに望んだことは麻薬の売人を止めることだったと言い放ちます。ハンターは足を洗うと約束しました。

ダニエルはコカインを売ろうとハンターに持ち掛けます。大金が転がり込むと誘いますが、ハンターは拒絶。

ディッグス達組織に必ずバレるとハンターは断言し、トラブルになっても自分の助けを求めるなとダニエルに釘を刺します。

ハンターが人を殺したことがあると噂に聞いていたダニエルは、引き合いに出して弱腰だと小馬鹿にした態度を見せます。ハンターは鋭い視線でダニエルを睨み返しました。

妹からダニエルと付き合っていることを聞かされたハンターは、ダニエルを呼び出します。そこへマッケイラがやって来て、2人が居る所を目撃。激怒したマッケイラは、呼び止めるダニエルを無視して車で走り去ります。

大型台風の上陸間近とメディアが報道。ダニエルはお金を持ってコカインを買いに遠出します。

サプライヤーはダニエルがディグスの下で働いていることを知っており、逃げた方が良いと忠告しダニエルから持参したお金を取り上げます。

赤ん坊の粉ミルクをコカインだと信じ込ませてダニエルに鼻から吸引させてからかうサプライヤーは、最初から子供のダニエルを相手にしていませんでした。

ダニエルはハンターに泣きつき、マッケイラのことで嘘をついたことを謝ります。ハンターはダニエルに拳銃を向け、出て行けと追い出しました。

暴風雨の中、ダニエルは運転してマッケイラの下へ急ぎます。同じ頃、ダニエルの行動を知ったディグスがハンターを訪ねて来ます。

ダニエルの居場所は知らないと言い切るハンターに、ディグスは銃を向けます。微動だにせず静かな目で見つめるハンターを、ディグスは射殺します。

幼い自分と兄が写った古い写真を見つけたマッケイラは兄を探しに行き、息絶えたハンターを見つけます。

ダニエルは、マッケイラの部屋で兄妹の写真を涙ながらに見つめました。

ハンターの遺体は翌日発見され、埋葬にはエイミーと父親のカルフーンを含む4人だけが参列。マッケイラは長距離バスで町を出ます。

その後、町にはダニエルの噂が流れますが、彼は姿を消したまま二度と町に現れませんでした。

映画『ホット・サマー・ナイツ』の感想と評価


(C)2017 IMPERATIVE DISTRIBUTION, LLC. All rights reserved.

映画冒頭から中盤はひと夏の青春物語という様相で、羽目を外したいティーンエイジャーがお酒を飲みマリファナを吸いパーティーで楽しむ姿を描き予定調和で物語は展開して行きます。

嘘と駆け引きで始まった恋は長続きしないもの。内気なダニエルが避暑地で出会う不良青年の妹に失恋…そう想像させます。

しかし、事態は一変。『理由なき反抗』を彷彿とさせる繊細で傷つきやすい地元の不良ハンターが内気で世間知らずのティーンエイジャー・ダニエルに翻弄されて行くのです。

自己中心的で世間知らずなダニエルがあぶく銭に味を占めて暴走。組織に対するけじめの為ハンターが自己犠牲を払い、兄を信じ始めた妹にとって残酷な結末を迎えます。

ハンターの正義は誰にも知られることはなく、やるせなさがエンディングを包みます

ハンター・ストロベリーを演じたアレックス・ロウの瑞々しさは、主人公のダニエル・ミドルトンに扮したティモシー・シャラメを圧倒するほど際立ち、危うさと脆さを巧みに混ぜ合わせながら刹那的な雰囲気漂う青年を演じています。

また、カルフーンにトーマス・ジェーン、そしてコカインの売人にウィリアム・フィクナーと小さな役に実力派俳優が出演。イライジャ・バイナムの脚本がそれだけ魅力的だったことを示しています。

ティモシー・シャラメはインタビューで、本作の脚本がブラックリスト(製作の予定が無いものの製作会社の間で高評価を得た脚本)に載っていたことを明かしています。

『アメリカン・ハッスル』(2014)や『ファミリー・ツリー』(2012)もブラックリストから映画化された作品です。

MVや短編映画も撮った経験がないバイナムが書いた脚本を彼に監督を任せ、ほぼ無名に近いシャラメを主演に起用した製作会社のリスクある選択は功を奏し、『ホット・サマー・ナイツ』は若年層の観客から大きな支持を集めました。

まとめ


(C)2017 IMPERATIVE DISTRIBUTION, LLC. All rights reserved.

海辺の町へやって来た内向的なティーンエイジャー・ダニエルは、町の問題児ハンターと出会いマリファナの売人になりたいと自ら志願します。

気だるそうで成熟した雰囲気のマッケイラに恋心を抱きますが、彼女はハンターが唯一大切にしていた妹。

ハンターは、ダニエルの嘘も不義理も許し、彼の危険な遊びさえ、自分の命で清算します。誰かにありのままを受け入れて欲しかっただけの孤独な青年は、夏の終わりを告げる台風と共に散って行きます

『ホット・サマー・ナイツ』は、出会ったが為に人生の歯車が狂ってしまうダニエルとハンターのひと夏を描いた切ない物語です。

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