映画『ガラスの城の約束』は2019年6月14日(金)より、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA他にて全国順次ロードショー!
『ガラスの城の約束』は、元ニューヨーク・マガジンのコラムニストであるジャネット・ウォールズの同名回顧録を基に『ライフ・オブ・パイ』のギル・ネッターがプロデュースした映画です。
自分の両親を恥ずかしく思い、過去を隠し続けたウォールズ氏が明かす物語は、多くの人が共感した家族の物語。
実力派俳優ウッディ・ハレルソンが父・レックス・ウォールズ、そして『キャプテン・マーベル』で最強ヒロインを演じたブリー・ラーソンが主人公ジャネットを演じます。
映画『ガラスの城の約束』の作品情報
【公開】
2019年6月14日(アメリカ映画)
【原題】
The Glass Castle
【原作】
ジャネット・ウォールズ
【監督】
デスティン・ダニエル・クレットン
【脚本】
デスティン・ダニエル・クレットン、アンドリュー・ランハム
【キャスト】
ブリー・ラーソン、ウッディ・ハレルソン、ナオミ・ワッツ、サラ・スヌーク、ジョッシュ・カラス、ブリジッド・ランディ=ペイン、エラ・アンダーソン
【作品概要】
本作の監督を務めるのは、『ショート・ターム』で大きな注目を浴びたデスティン・ダニエル・クレットンで脚本も執筆しています。製作者ギル・ネッターから原作を受け取ったクレットンは、読み終えたのちに即監督を志願しました。
原作『ガラスの城の約束』は、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに261週間ランクインし、アレックス賞を受賞。
映画『ガラスの城の約束』のあらすじとネタバレ
1989年、マンハッタン。ジャネット・ウォールズは、ニューヨーク・マガジンのエンタメ専門コラムニスト。
恋人がクライアントを招いた夕食会に同席したジャネットは、自分の仕事をネタに場を盛り上げます。
帰路に着いたジャネットは、乗車したタクシーから母・ローズがゴミ箱を漁り、父・レックスが運転手に難癖をつける場面に遭遇し、思わず身を屈めました。
ジャネット、8才。ローズが油絵を描くのに夢中なため、ジャネットは自分で昼食を用意して大火傷を負い、病院で手当てを受けます。
事情を尋ねた医師と社会福祉士は、ジャネットの家族が住所不定だと分かります。そこへウォールズ家がジャネットを見舞いにやって来ます。
ジャネットは、病院の食事は食べ放題とにっこり。姉ローリーと弟ブライアンは悔しそうにします。
きちんと子供の面倒を見るべきだと忠告する医師に対し、レックスは高い医療費を請求して贅沢な暮らしをしていると凄みます。そして、レックスはブライアンに一芝居させて医療関係者の気を引き、ジャネットを病室から連れ出して医療費を踏み倒します。
ウォールズ家はボロボロのバンに荷物を積み、新たに落ち着く先を求めて町を出ました。レックスは、相応しい場所を見つけたらガラスの城を建てるとジャネットに約束します。
医者から学校へ行くよう言われたジャネットに、学びは生きる中にあるとレックスは持論を展開。
その晩、家族は砂漠で野宿しました。
1989年。ジャネットは久し振りにローズとお昼を共にします。自分達を見て他人の振りをしたジャネットに対し、ローズはライフスタイルが違うという理由で親を恥じるべきではないと文句を言います。
ジャネットは、ホームレスであることは、選択的ライフスタイルでは無いと言い返します。
ローリーから両親が廃墟ビルに住んでいると聞いたジャネットは、金銭的な援助を申し出ます。
ローズが自分達は大丈夫だと言いながらジャネットの小龍包に箸を伸ばしますが、ジャネットは素早く自分の食べ物を守ります。
ジャネット、8才。末妹・モーリーンが誕生した後、レックスが借金取りに追われ、家族はまた引っ越しとなりました。
ジャネット、11才。ユタ州へ移って来た夏、家族全員お風呂代わりに公共プールを利用することに。
ローズは、レックスが失職する度に引っ越しを続け子供達が辛い思いをしているので、レックスの親を頼り金銭援助を頼もうと提案します。しかし、レックスは顔を歪めて鋭い視線をローズに投げ、今のままで良いとお酒を呷ります。
金槌のジャネットがプールサイドから離れないのを見たレックスは、娘を背中に負ぶってプールの中央まで歩くと、突然水の中にジャネットを放り込みます。沈んで溺れるジャネットを引き揚げては又水に放り込み、周囲は騒然とし監視員が警告します。
もがきながらプールサイドを掴んだジャネットは、ショックで走り出します。
泣いて怒るジャネットに、レックスは、必ず自分が守ると娘を見つめ、怖くて脇にしがみつているような生き方はせず、沈むのが嫌なら泳ぐしかないと教えます。
様子を見に来た責任者に、レックスは、朝方黒人を泳がせ、後は白人にプールを解放するのは、公民権法違反だと食って掛かります。
腹を立てた責任者がレックスを酔っ払いと呼び、レックスが掴み掛かり騒ぎになります。
堪忍袋の緒が切れたローズとレックスは口論になり、レックスは仕方なく家族を連れてウェスト・ヴァージニアの実家へ向かいます。
寂れた山奥にあるレックスの実家に到着。高圧的な祖母・イルマに子供達は馴染めません。翌日、水も電気も通っていない崩れそうな古い家にウォールズ家は移り住みました。
ガラスの城を建てると息巻くレックスに、子供達は皆喜び基礎作りの為穴掘りを始めます。
幼いモーリーンがお腹を空かせますが冷蔵庫にはバターしか入っておらず、ジャネットは、砂糖とバターを混ぜて妹に食べさせます。
ローリーは、3日間何も食べていないと父に訴えます。母は、パンを焼こうとバターを取っておいたのにと口を尖らせます。ガスは止められていると突っ込むジャネットに対し、奇跡が起きてまたガスが使えるようになるかもしれないと話すローズ。
レックスはローズのへそくりを掴み、食料を買って1時間で戻ると出かけます。しかし、真夜中に戻ってきたレックスは、酔っぱらっていました。
ジャネットは、お酒を辞めて欲しいと懇願します。父を誰よりも強い信じ、食べ物が欲しいと訴える娘の言葉に、レックスはじっと耳を傾けます。
翌日からレックスは禁酒を始め、壮絶な禁断症状を克服。禁酒に成功し久し振りに会う父を子供達は抱きしめました。
その年の冬、レックスは職に就き、ウォールズ家は食卓を囲み暖かいクリスマスを祝います。
雪の上に父と一緒に寝転がり夜空を見上げるジャネット。レックスは、クリスマスプレゼントに好きな星を選べと言います。
金星を選んだジャネットに、レックスは、距離が地球に近いので明るく見えるが、実は金星は星ではなく惑星で、地球と環境が似ているものの温度は260度高いと教えました。
そんな中、ローズの母親が亡くなり、両親だけでテキサスへ帰省することになり、子供達はレックスの実家に預けられます。
イルマが苦手な姉弟ですが両親が帰るまで大人しく過ごしていたある日、イルマがブライアンに性的虐待をしている現場をジャネットが目撃します。
一番年上のローリーが駆けつけると、都合の悪くなったイルマは突然ローリーを平手打ちします。ローリーは負けずにイルマの顎を拳で殴りつけ、ジャネットも飛び掛かりました。
戻ったレックスは事情を聞き、子供達を叱りつけます。その晩、レックスは再びお酒を飲み始め、翌日の仕事を無断欠勤してしまいます。
激しい夫婦喧嘩になりますが、2人は直ぐ仲直り。それを見たジャネットは、母に父と別れるべきだと言います。
ローズは、自分の絵を唯一認めてくれた夫を愛していました。
愛想を尽かしたジャネットは、学校へ通ってお金を貯め、時期が来たら皆家を出ようと姉弟に呼び掛けます。自分達の生存のために、力を合わせてやろうと言うジャネットに姉弟は協力を誓い合います。
時は流れ、ジャネットは、地元の小さな新聞社で記事を書いてお金を貯めていました。
ニューヨークの大学へ進学が決まったローリーが、いよいよ出発の日を迎えます。
映画『ガラスの城の約束』の感想と評価
レックスは母親に性的虐待を受け、ローズは自分の大好きな描画に才能が無いと親から馬鹿にされたことにも触れる本作は、親も子供だった時があることを思い出させます。
お互い心に空いた穴を埋め会える相手であるレックスとローズは、共依存の絆を築いた夫婦だったのでしょう。
しかし、幼い子供がその様な大人の事情など知る由もなく、自分達の面倒をきちんと見て貰えなければ、傷つき怒りを抱えて成長するのは誰もが理解できることです。
一方で、俺達は他と違い燃える炎を持つ家族だ、お前を必ず守る、お前を自慢に思っている、お前を愛している…と常々親に言われて育つ子供は、高い自尊心と強さを持つ大人になると原作者のジャネット・ウォールズ氏も認識しています。
『ガラスの城の約束』は、大人になったジャネットの“気づき”を描いた作品です。
一般的に見れば社会通念上逸脱した行為を取るレックスとローズは非常識であっても、普通の親が手を抜きがちな大切な仕事を全うしています。
ウォールズ家の子供達は、1人の人間としてリスペクトされて育ち、確かに愛されたことを知っていたのです。
11才のジャネットを好演したエラ・アンダーソンとレックスを演じたウッディ・ハレルソンが交流する場面は本作の骨子であり、一番の見所です。
原作者のジャネット・ウォールズ氏は、撮影現場を訪れた際、ハレルソンを見て父・レックスのしぐさや話し方があまりに似ているため思わず息を飲んだと話します。
そして、アンダーソンから役作りのため質問をされたそうです。「プールの水に放り込まれた時、お父さんを信頼していましたか?」と。
これを聞いたウォールズ氏は、自伝に辛い実体験を明かしつつも、父を信頼していたことを自分は綴っていたのだと気づき、インタビューで明かしました。
本作は、マウイ島出身監督のデスティン・ダニエル・クレットンにとって、スタジオ出資による映画製作デビューとなりました。
ウォールズ氏と全過程を話し合い、真実を描こうとクレットンは撮影を進めました。
自身も大家族に生まれ小さな家で成長しており、本を読んで自分の経験を思い出したとクレットンは語ります。
ウォールズ家が暮らす今にも朽ちそうな家の中に置かれた色とりどりの空き瓶を日光に照らして映し、逆にジャネットが住むマンハッタンの高級マンションの無機質さを対比させたクレットン。
極貧生活を美化することなく、社会的地位を築いた後も過去に囚われたジャネットの心情を、寒暖の差を上手く使い描写しています。
まとめ
『ガラスの城の約束』は、社会常識を嫌ったレックスに苦労して成長したジャネットが怒りを越えた先に、父から愛情を浴びて育ったことを思い出す物語です。
クレジットロールで流れるレックスが引いたガラスの城の図面を見れば、果たさなかった約束より、夢に本気で取り組み続ける姿を見せたことも幼い子供には学びだったと分かります。
クリスマスの夜空から選んだ自分の星は、いつまでも家族と談笑できるお金で買えない父からのプレゼント。人間が持つ多面性を丁寧に描写した本作は、自分の家族を振り返り、まんざら悪くない人生だと気づける優しい映画です。