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Entry 2025/12/12
Update

湊かなえの『未来』映画原作ネタバレあらすじ感想と評価解説。イヤミスではないラストと登場人物にかすかな希望が残る社会派ミステリー

  • Writer :
  • 星野しげみ

湊かなえの小説『未来』が映画化決定!

『告白』『母性』『白ゆき姫殺人事件』など、数多くの著作が映像化されている湊かなえ。

ネグレクト、ヤングケアラー、性暴力など、社会の片隅にある切実な現実を物語として描き上げた小説『未来』もまた映像化されることになりました。

映画『未来』は2026年5月8日(金)TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開


(C)2026 映画「未来」製作委員会 (C)湊かなえ/双葉社

主演に黒島結菜を招き、『ラーゲリより愛を込めて』(2022)『護られなかった者たちへ』(2021)の瀬々敬久監督がとりまとめます。

待ち遠しい映画公開に先駆けて、小説『未来』をネタバレありでご紹介します。

小説『未来』の主な登場人物

【佐伯章子】
父親が病死し、心の病を抱える母親と暮らす少女

【須山亜里沙】
章子のクラスメイト、暴力的な父と弟の3人家族

【後藤実里】
章子のクラスメイ、いじめの首謀者

【篠宮真唯子】
小学四年生の時の章子の担任

【樋口良太】
章子の父親。病死する

【佐伯文乃】
心の病と過去の秘密を持つ女性。章子の母

小説『未来』のあらすじとネタバレ


湊かなえ『未来』(双葉社刊)

東京ドリームランドと東京ドリームマウンテンは、ドリームワールドが運営する人気テーマパークです。

ある日、東京ドリームランドを目指し、中学三年生の佐伯章子と須山亜里沙が夜行バスに乗り込みました。亜里沙が眠ると、章子は一通の封書を取り出します。

それは彼女が10歳の時に届いた、20年後の自分からの手紙でした。

未来の章子の手紙では、父親を亡くして悲しむ10歳の自分を励ましています。章子の母親の名前が『文乃』だから、2人の名前を合わせると『文章』になるから文章で自分の気持ちを綴るようにとも書いてありました。

ドリームマウンテン三〇周年記念の栞も同封されていて、どう考えてもそれは未来の自分から送られてきたものとしか思えませんでした。

未来の自分を信じる章子は、手紙が届いてから今に至るまで、未来の自分に向けて日記のように手紙を書き続けています。

ドリームランドへ向かって走るバスの中で、章子はこれまでのことを思い出していました。

佐伯章子

章子は10歳の時に父親の良太をがんで亡くしました。それ以来、生きる気力を失い心の病を抱える母親の文乃と暮らしています。

四年生の時の担任の篠宮真唯子先生の退職に伴い、五年生では林優斗という大学を卒業したばかりの若い男の先生が担任になりました。

林先生は、章子の家庭のことを知り、文乃に病院を紹介してくれました。章子の努力もあり、母の文乃は少しずつ元気を取り戻し、章子は明るい未来が待っているような気がしていました。

ところが、同じクラスの後藤実里が、林先生と文乃が一緒に車に乗っているところを目撃し、付き合っているのかとクラスメイトがいる前で聞かれました。

この時、文乃は林から紹介された町外れの病院に通院するために林の車に乗っていたのですが、実里はどうも納得していない様子でした。

林と文乃のことで、校長やPTAの人たちから聞き取り調査されることになり、章子は実里と一緒に盗み聞きします。林が文乃のことをとても愛していると言いますが、対して文乃はそんな気持ちはないと拒絶します。

怒った林は文乃に対するストーカーとなり、三学期が始まる頃には体調不良を理由に休職となりました。

六年生になると、章子の前に絶縁状態となっていた良太の母親が現れ、彼の死を知らせなかった文乃を非難します。それから良太と瓜二つの章子に一緒に暮らさないかと言いました。

文乃は章子の将来を考え、祖母の家に行った方がいいかもしれないと言いますが、章子にそのつもりはありません。そこでこの話を断るつもりで、良太の実家に一人で行きました。

章子が父の故郷で自分の知らない父親に触れられて良かったと思う一方、祖母は文乃が自分の父親と兄が家で寝ているうちに放火した人殺しだと打ち明けます。

そして、文乃の兄と親友だった良太は、後に文乃と再会し、駆け落ち同然で結婚したのだと言いました。

文乃が人殺しだと知って愕然とする章子。章子がこの町に戻ると文乃が住む町でも人殺しとして見られてしまいます。章子は、もう祖母と会わないと宣言して祖母の家を後にしました。

やがて、文乃がホテルで働き始め、同じホテルで働く副料理長の早坂誠司と親しくなります。

籍を入れたわけではありませんが、章子が中学校に入学と同時に今のマンションは引っ越し、早坂の購入したかつてイタリアンレストランだった一戸建てに2人も移り住みます。

早坂はそこでフランス料理店をオープンし、フランスの名店『ガルニエ』で覚えた料理を披露。文乃が父親以外の人と一緒になるのが寂しいと思いつつも、章子は未来の自分へ嬉しい報告をしました。

ところが、章子は中学二年生になると、クラス替えで実里と再び同じクラスになり、それがもとで不登校になりました。

早坂のレストランに、お客として訪れた実里とその両親は、レストランでいさかいをおこし、後日、章子はそこに住んでいることを実里に知られてしまったのです。そこから実里による壮絶ないじめが始まりました。

章子の使用済みのナプキンが教卓の上に置かれていたり、章子の生理用ポーチがなくなって、教室に使用済みナプキンの匂いが充満して、男子生徒が嘔吐したり……。

実里は章子が犯人だと言い、章子の口臭や体臭がひどいと言いがかりをつけられました。たまらず章子は教室を飛び出しました。その後学校側の不誠実な態度にがっかりして、章子は自分が臭いのだと思い込み、以降不登校になったのです。

この頃、早坂のレストランの経営は悪化をたどり、文乃は早坂の友人で小学校の同級生だった須山亜里沙の父親から紹介してもらった訪問介護の仕事をしていました。

お店と自分の仕事がうまくいかなくなった早坂は章子に暴力をふるうようになりますが、ある日レストランが火事になり、それを機に文乃と章子は早坂と別れ、アパートに移り住みます。

その後、火事の原因は、文乃へのストーカー行為を行う林の放火ということで片付きました。

一方、不登校を続ける章子は、ある日郵便ポストに小学校のクラスメイトの亜里沙からの手紙が入っているのに気が付きました。亜里沙の指定したコンビニに行くと、彼女は待っていて、智恵理という先輩の家に章子を連れて行きます。

智恵理は不在でしたが、亜里沙は不登校になった事情を章子から聞き、口臭も体臭も気にならないと断言します。

さらに翌日、勇気を持って登校した章子を実里は懲りずに貶めようとしますが、そこに同じく不登校をしていた亜里沙が現れ、実里や他のクラスメイトを糾弾しました。

章子と亜里沙は、翌日から保健室登校を開始。亜里沙からは智恵理を紹介され、章子は智恵理の家にあるパソコンで、父親の遺品であるフロッピーディスクの中身を見ました。

そこには良太の書いた小説が保存されており、章子に充てられた衝撃的なメッセージも残されていました。

それからしばらくして、智恵理が自宅を放火し、両親に重傷を負わせます。悲劇は続き、今度は亜里沙が大切に思っていた弟の健斗が自殺。章子は亜里沙を慰め、一緒にドリームランドに行こうと約束します。

亜里沙は健斗を自殺に追いやった犯人が、父親の須山であることを突き止めました。彼は介護ヘルパーの派遣をする裏で売春の斡旋をしていて、早坂とも繋がっていました。

売春の客の一人は、美少年好きという変態でした。そこで早坂は健斗を差し出すよう須山に言い、彼はお金に負けて早坂の要求をのみます。また文乃もそういうことをさせられているようでした。

亜里沙は父親を殺害することを決意。章子も同じく、文乃を守るために早坂を殺害することを決意します。2人はタバコから毒を作り、それでターゲットを殺害することにしました。

また智恵理の起こした事件から、自分の家に火をつける精神状態であれば、ある法律が適用されることがわかっていましたので、毒を飲ませた後、家に火をつけることにしました。

章子は早坂の飲むウィスキーのボトルに毒を仕込むと、亜里沙と一緒に行くドリームランドの準備をします。早坂が帰ってくるのを押し入れで待ち、また会おうと未来の自分に向けて最後の手紙を綴りました。

須山亜里沙

亜里沙は、小学校低学年で母親を亡くし、父親である須山から暴力をふるわれていました。

林が担任になって亜里沙がDVを受けていることに気が付きそうになると、ストレスの捌け口は弟の健斗に変更されました。亜里沙と健斗はそれでも誰にも相談せず、支え合って生きていました。

亜里沙は不登校をしていますが、知り合いの二歳年上の智恵理から色々なことを教えてもらい、一度は諦めていた高校進学を目指すことにします。そして、このころ、亜里沙にも未来の自分から手紙が来ていたのです。

亜里沙は小学校の頃、林先生に気にかけてもらった章子のことが嫌いでした。ですが、須山と早坂の始めた会社に文乃が雇われていることから嫌な予感を覚えます。

章子も暴力をふるわれているのではと心配になって久しぶりに中学に登校し、そこで章子が不登校になっていることを知りました。亜里沙は智恵理たちから教えてもらったことを、章子にも教えてあげたいと彼女を呼び出したのです。

ある日、亜里沙は公園で智恵理を見かけますが、彼女はまるで中年男性のような態度と声で亜里沙にケンカをふっかけ、亜里沙はなんとかその場を逃げ出しました。

後日、智恵理の友人に会ってこのことを話すと、彼女は智恵理が二重人格であることを教えてくれました。亜里沙が会ったのは竜崎さんと呼ばれるもう一つの男性人格で、智恵理が自宅を放火したのはこの翌日でした。

それ以降、須山が暴力をふるわなくなったことで平和が訪れ、亜里沙は健斗に未来からの手紙に同封されていたドリームマウンテン三〇周年記念の栞を見せます。

亜里沙は健斗に笑ってほしいと、ドリームランドに連れて行くことを決めたのですが、翌日、健斗が飛び降り自殺をしました。遺書には亜里沙をドリームランドに連れていけなかったことへの謝罪の言葉が書かれていました。

未来からの手紙には、20年後も亜里沙と健斗は仲良くしていると書かれていたため、亜里沙はこの手紙は偽物だと思いました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『未来』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『未来』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

篠宮真唯子

小学校四年生の章子たちの担任は、篠宮真唯子先生でした。

真唯子が一歳の時には父親が浮気をしていて、母親は彼女を連れて実家に戻り、祖母と3人で暮らしていましたが、母親も真唯子が3歳の時に家を出てしまい、祖母と二人暮らしに。祖母の働きで生計を立て、真唯子はそんな祖母を楽させたいと公務員を目指すようになります。

祖母は彼女の学費にと内緒で貯金をしていて、そのお金を元手に彼女は東京の大学に進学しました。別の大学に通う同学年の原田と出会い、映画が趣味の彼に真唯子は次第に惹かれていきます。

祖母が亡くなり、遺品を整理していると、そこに現れたのは真唯子を捨てていった母親でした。彼女の狙いは祖母が真唯子に残したお金でした。

行政書士を名乗る男性も同席していて、法律などよく分からない真唯子はなす術もなくお金を奪われ、大学の学費をどうするかが問題となってしまいます。

学費をどうしようか考えていると、真唯子は見知らぬ女性に声を掛けられ、カラオケのイメージ映像に出演しないかと誘われました。実はそれはアダルトな映像で、それが原因で原田と気まずくなりました。

その後、真唯子の母親がいい加減な行政書士を連れて祖母からもらえるはずだったお金を回収して歩いていること、実は祖母は遺言書を書いていて、あのお金は真唯子のものであることがわかりました。

先生になる前にしてしまった映像作品が現在まで残っており、生徒の実里の父親が発見したことで、真唯子は退職を考えました。

退職日が決まると、章子のことが気がかりでしたので、章子に内緒で入院中の彼女の父親・良太に会いに行きます。

良太は自分の死後、章子に未来からの手紙を書いてほしいと頼みました。真唯子は良太からの話と自分の知っている章子のエピソードを交え、幸せな未来が待っているような内容の手紙を書きます。

そこに登場するのは、ドリームマウンテン三〇周年記念の栞! それは、以前交際していた原田が、大学卒業後に、ドリームランドなどを運営するドリームワールドに就職し、そこで間違えて作った試作品だったのです。

それは、本来であれば「ドリームランド三〇周年記念の栞」になるはずでしたが、誤って「ドリームマウンテン三〇周年記念」としてしまったのです。

本来であればドリームマウンテンが三〇周年を迎えるのは20年後ですから、真唯子はこれを利用して未来の手紙に信憑性を持たせられないかと考えたのです。

真唯子は亜里沙のことも気になっていたため、この栞を2つもらい、亜里沙に対しても未来からの手紙を書くことにしました。

その後、真唯子が教師に、原田がドリームワールドに就職しました。真唯子は原田とドリームランドに行きます。

特別なチケットで入場し、お城のバルコニーで花火を見る2人。原田は重大な告白をするつもりでしたが、真唯子のつぶやきを耳にして、告白を延期します。

「ああ、子どもたちみんなに見せてあげたいな」。それは花火のことではありません。真唯子が見せてあげたいのは、現在の先にある未来でした。

樋口良太

のちに章子の父親となる樋口良太は、子供の頃は醜いと思われる自分の容姿に悩んでいました。ですが、曾祖父と瓜二つであり、彼の顔は加齢と共に人並みになっていたことが分かったことで少し安心します。

また知性も曾祖父のものを受け継いただようで、良太は小学校に入る前から難しい本を読むことができましたが、容姿のせいで良太は小学校の同級生に相手をされません。そこで刺激を求め、物語を書くことにしました。

良太は神倉学園高等学校という男子校に通い、そこで美しい容姿の森本誠一郎と出会います。誠一郎はやがて良太に興味を持ち、奇妙な友人関係が始まりました。

勉強が得意でない誠一郎は、良太のノートを見せてもらううちにあっという間に成績を上げ、それ以降も良太に勉強を教えてもらうようになります。

夏休みに入ると、良太は誠一郎の家に招かれました。隣の部屋に裸の女性が待っているから行ってこいと言われ、良太はいけないと思いつつも欲求を抑えきれず、部屋に行きました。

そこにいたのは裸の人形のように美しい少女で、良太は気が付けば彼女を押し倒していました。我に返ると自分のしたことに耐えられず、彼女を残して逃げ出しました。

後に誠一郎は、女性は自分の妹で真珠といい、他の人に対しても売っていると、打ち明けました。良太は真珠を救いたいと思い、他の人に売らせないよう多めの金額を誠一郎に払って何度も真珠に会いに行きます。

前のようなことはせず、ただ会話をしたり、一緒にマドレーヌを作ったりしているうちに、次第に真珠に人間らしい感情が戻り、誠一郎も喜んでいるようでした。

ですが、良太が森本家に泊まることになった日、真珠が実の父親に犯されていたのを知ります。誠一郎は最初からこの事実を見せるために良太を家に泊めたのです。

良太は誠一郎に連れられて森本家を出ると、誠一郎は自分の家のことを話し始めます。父親が真珠にはじめて手を出したのは、彼女が小学校五年生の時だったそうです。

父親は県会議員で周囲からの信頼も厚く、誰からも疑われません。家族でドリームランドに行くことになって、一度は真珠も以前のように戻りますが、行った先のホテルで母親は自殺しました。

誠一郎は真実を誰かに打ち明けて父親のもとから卒業するという覚悟はなく、父親と同じ悪魔になることで自分を守りました。落ちるところまで落ちたところで、良太と出会ったのでした。

良太は本来真珠が持っている人間としての魅力、知性を引き出します。そんな様子を見て、誠一郎はついに父親を殺害することを決意します。

計画は、誠一郎が母親の命日に父親を毒殺し、その遺体を家に置き、その夜、良太が家に火を放つというものでした。その間は、誠一郎と真珠はドリームランドに行って留守にしているのです。

当然、良太は躊躇しますが、真珠を解放するために協力することに。そして決行日、良太が森本家に火を放つと、ドリームランドにいるはずの真珠が現れ、良太が火をつけたのを目撃されました。

誠一郎は用事を思い出したといって真珠を一人で先に行かせようとしましたが、彼女は一人でバスに乗るのが怖くて戻ってきたのだと言います。真珠は良太に逃げるよう言い、最後にひどい言葉でなじって、彼を逃がします。

翌日のニュースには父親と誠一郎の死が報道され、真珠が性的虐待を理由に放火し逮捕されたとなっていました。

後ほど誠一郎から良太宛に届いた手紙には、自分も睡眠薬を飲み、一緒に死ぬと決めていて、良太に反対されないよう嘘をついていたと、書かれていました。

誠一郎は2人の死は良太のせいではないことを伝え、その上で真珠を一生守ってくれとお願いしました。最後には、たった一人の親友であることが書かれていました。

手紙を読み終え、ようやく良太は真珠が自分をかばったことに気が付きます。真珠は誠一郎の計画を知らず、ただ良太が自分を解放するために火をつけたのだと思い込んでいました。そこで心を鬼にして良太をなじり、彼を逃がしたのです。

それから5年後、2人は再会。今度こそ真珠を守ると良太は決意し、彼女は新しい名前になって2人は結ばれます。

章子と亜里沙

東京ドリームランドへ向かう夜行バスの中。亜里沙は眠り、章子はバスに乗るまでのことを思い返していました。

その夜、早坂と文乃が家に帰ると、章子は嘘をついて文乃に買い物に行ってもらいました。早坂は毒入りのウィスキーを飲んで苦しみ始めます。

章子はそのタイミングで家に火をつけますが、そこに文乃が帰ってきて、章子に早く行かないとドリームランド行きのバスに間に合わないと優しく告げたのです。

そして、容姿や性格が似ているだけでなく、自分を助けようとしてくれること、何も相談してくれないところも良太にそっくりだと言います。章子は良太の残した物語を読んでいたので、2人に何があったのか知っていました。

母親の本当の名前を口にしようとしますが、文乃は2人で「文章」になるこの名前が本当の名前だと言って、章子を送り出しました。

章子は母親の優しさにふれ、母を一人にしておけないと思います。章子はドリームランドに行った後、自首することにしました。それが文乃の望まないことだとしても、今度は文乃のことを守りたいと思うから……。

バスは、やがてドリームランドに到着しました。そこで章子と亜理紗ははじめて、お互いに同じドリームマウンテンの三〇周年記念の栞を持っていること、未来からの手紙が届いていたことを知ります。

そして、亜里沙は家に火をつけられなかったことを告白。彼女は父親が死んでおらず、戻ってから地獄が待っていることを恐れていました。

章子には文乃がいるけれど、亜里沙には守ってくれる人がいません。このままドリームランドに入場しても、心の底から楽しめるのか。今日の思い出が生きる希望となるのだろうかと、章子の胸に様々な思いが浮かびました。

ドリームランドに入場前、章子は「ドリームランドに訪れるのは今日じゃない」と亜里沙に言います。そして、誰か助けを呼ぼうと提案。

2人は手を繋いで顔を合わせると、同時に大きく息を吸いました。いつか、笑顔でこの夢の国のゲートをくぐることのできる未来のために、叫ぼうと決心したのです。

小説『未来』の感想と評価

小学四年生の章子は、大好きな父が病気で亡くなってからふさぎ込む母を励ましながら毎日を過ごしていました。

章子のクラスメイトの亜里沙は、章子と反対に母親を幼いころに亡くし、暴力的な父親と幼い弟と一緒に暮らしています。

家庭的に恵まれない2人の少女を気にかけていたのは、担任であった篠宮真唯子先生でした。

物語は、絶望的な暮らしをする章子に未来の自分からの手紙が届いて、生きる希望をもらうところから始まります。実はこの手紙は、章子の父親に頼まれて、篠宮先生が書いたものでした。

物語はそれぞれの視点から成り立つ章で描かれ、篠宮先生の章で初めて未来からの手紙の正体が明かされます。

未来からの手紙などありえないと思いながらも、それが当時の章子の心に希望の灯をともして、生き地獄から救ってくれていたのは事実です。

未来からの手紙は、章子の家庭の事情を知って何とかしてあげたいけれども、どうにもできないというじれったい思いを抱えた篠宮先生の優しさに溢れたものでした。

手紙が届いてからも、精神的に病んでいる母、章子に暴力を振るうようになる母の恋人、学校でのいじめなど、日常生活に潜むささいな悪魔が章子に襲い掛かります。

亜里沙にも同じようなことがおこり、2人の少女はやがて親を殺すしかないと思うようになりました。

少女たちの心をここまで捻じ曲げたものは、自分のことしか考えられず、彼女たちの心の叫びを無視する大人たちの理不尽な仕打ちだったのではないでしょうか

少女たちは、助けを求める場所も方法も分からず、ただ自分の周囲を見て独自で判断して、負の連鎖を招いてしまいました。

肉親の殺害計画を実行し、希望のある未来を求めて心のユートピアであるドリームランドへ向かおうとする2人。

ですが、入場する前に、このようなことをした後で心の底から楽しめるのか、今日の思い出が生きる希望となるのかと、思えてきます。そして彼女たちは勇気ある決断をするのです。

つらい現実を嫌い、そこから逃げ出すのは簡単なことかもしれませんが、章子は後に残される母のことを考え、ただ逃げるだけでは幸せにはなれないと思いなおします。

現実逃避は明るい未来に繋がらない! 章子の決断は、生きる希望に満ちた未来への切符だったと思えます

そして、章子の半生の悪夢のような出来事は、現実社会に起こり、いまだに解決されない問題が多いことに胸が痛みました

映画『未来』の見どころ

小説では、章子と亜里沙、担任の篠宮真唯子と章子の父親樋口良太の4人からみた一連のストーリーが綴られています。映像化にあたり、社会問題を温かい目で深く描いてきた瀬々敬久監督は、篠宮真唯子先生を中心にストーリーを組み立てました。

自身も恵まれない少女時代を過ごした篠宮真唯子先生は、教え子の章子と亜里沙の家庭事情を知り、良太の依頼もあって未来からの手紙を書き、少女たちに希望を持たせます。

中心人物を‟未来からの手紙の筆者”である先生にすることで、小説よりも人間関係がわかりやすくなり、物語の経緯もわかりやすくなることでしょう。

瀬々敬久監督は、「『未来』は、未来に裏切られ続けた少女たちが、どうやって救われるのかを描いた映画です。湊かなえさんの精神を引き継いでこそできたと思っています。」と語りました

映画では、壮絶ないじめをはじめ、児童虐待や近親相姦など、観るのがつらい出来事も用意されるでしょうが、それらをはねのけて、希望に満ちた未来を手繰り寄せようとする少女たちが描かれるのに違いありません

物語のキーマンとなるのは佐伯良太と佐伯文乃の夫婦です。良太役の松坂桃李と文乃役の北川景子が、秘密を抱えた夫婦を演じるのも楽しみです。

映画『未来』の作品情報


(C)2026 映画「未来」製作委員会 (C)湊かなえ/双葉社

【日本公開】
2026年(日本映画)

【原作】
湊かなえ『未来』(双葉社)

【監督】
瀬々敬久

【脚本】
加藤良太

【キャスト】
黒島結菜、山﨑七海、坂東龍汰、細田佳央太、近藤華、松坂桃李、北川景子

まとめ

ネグレクト、ヤングケアラー、性暴力などの社会にはびこる問題を取り上げた、湊かなえの小説『未来』をご紹介しました。

幸せとは言えない家庭環境で育った章子と亜里沙。そんな2人を退職してからも気にかける篠宮真唯子先生もまた、恵まれない少女時代を過ごしていました。ですが、未来の自分自身から届いた手紙によって、少女たちは未来に希望を持ちます。

親を殺したくなるほどの家庭環境に置かれた彼女たちの未来にどんな幸せが待っていると言うのでしょうか。

切なくもありながら希望も持てるラストが用意された小説を、観客の感情を揺さぶる手腕にたけた瀬々敬久監督が映画にしました

映画『未来』は、2026年5月8日(金)TOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開です

篠宮真唯子先生を主人公にして、2人の少女たちの運命を描く映画『未来』。ラストは小説と違うのでしょうか。また、希望に満ちた20年後が待っているようにと願わずにいられません。




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