Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2018/11/25
Update

映画『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』ネタバレ感想。大泉洋の代表作となった屈指のハマリ役

  • Writer :
  • 村松健太郎

幼い頃に難病の筋ジストロフィーを患い、20歳まで生きられるかどうかといわれながらも、40年以上の人生を歩んだ実在の人物・鹿野靖明。

彼の半生をつづったノンフィクション『こんな夜更けにバナナかよ筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』を虚実を混ぜ合わせながら映画化。

映画『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』のキャストは⁈口から生まれたような、天性の人たらしという主人公にはこれがまさにハマり役という大泉洋。実年齢より10歳若い役どころも難なくこなします。

共演であり、フィクションの原作と映画というフィクションのブリッジ役に、若手演技派の三浦春馬と高畑充希。

映画『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』の作品情報


(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

【公開】
2018年(日本映画)

【原作】
渡辺一史「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」 (文春文庫)

【脚本】
橋本祐志

【監督】
前田哲

【キャスト】
大泉洋、高畑充希、三浦春馬、萩原聖人、渡辺真起子、宇野祥平、韓英恵、竜雷太、綾戸智恵、佐藤浩市、原田美枝子

【作品概要】
筋ジストロフィーにかかりながらも自らの夢や欲に素直に生き、皆に愛され続けた実在の人物・鹿野靖明さんと、彼を支えながらともに生きたボランティアの人々や家族の姿を描いた人間ドラマ。

大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞を史上初めてダブル受賞した原作「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」を映画化。

演出は『ブタがいた教室』の前田哲監督が務め、主人公の鹿野靖明役を演じたのは大泉洋。医学生の田中役を三浦春馬、彼の恋人の美咲役を高畑充希が演じます。

映画『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』のキャラクターとキャスト


(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

鹿野靖明(大泉洋)
34歳、筋ジストロフィーを患い動かせるのはわずかに首と手だけ。
しかし天性の魅力と独特の価値観でボランティアに囲まれて自立生活を進める。

安堂美咲(高畑充希)
自称教育学生、実際にはフリーター。恋人の田中を追いかける縁で鹿野と知り合う。

田中久(三浦春馬)
地元の病院の一人息子の医大生。鹿野の存在に自分の将来へ向けての気持ちを揺さぶられる。

高村大助(萩原聖人) 

前木貴子(渡辺真起子)

塚田心平(宇野祥平)
鹿野のボランティアであり、友人。

映画『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』のあらすじとネタバレ


(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

安堂美咲は恋人の医大生・田中久がボランティア活動のため、デートも碌にできないことにいら立っていました。

そこで田中のボランティアの場に乗り込みます。

そこにいたのは大勢のボランティアに囲まれて、あれこれと世話をしてもらっている鹿野靖明の姿がありました。

筋ジストロフィーを患い、首と手しか動かせない鹿野でしたが、“人に物事を頼む勇気”を武器にボランティアに囲まれて自由に生きていました。

その流れで、夜のボランティアを田中とすることになった美咲に、鹿野は、突然「バナナが食べたい」と言い出します。

あまりのわがままぶり怒り心頭の美咲ですが、鹿野はその姿にすっかり魅了されてしまいます。

美咲は田中との関係を切り出せないまま、ボランティアをすることになりました。

鹿野の当面の目標は、英語検定2級の取得。それに触発されて実は教育学生ではなかった美咲も改めて大学受験を目指します。

二人の距離が近づく一方で、鹿野の病状は悪くなっていきます。

医師からは人工呼吸器をつけることを薦められますが、それは声帯を失い、鹿野から言葉を奪うことを意味していました。

田中は父親に頭を下げて、呼吸補助の特別な加療を鹿野に受けさせます。

しかし、それは焼け石に水で、英検受験日に鹿野は倒れてしまい、結局は人工呼吸器をつけることになりました。

言葉を失った鹿野の姿を見て田中は、自分の医師として将来に疑問を抱いてしまいます。

以下、『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』ネタバレ・結末の記載がございます。『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
人工呼吸器をつけながら言葉を発することができる方法を知った美咲は、鹿野にこれを持ち掛けます。

そして、鹿野は自力で発声法を見につけるのでした。

医療の感覚を越える鹿野の姿を目の当たりに見た田中は、自分の無力さを感じます、医大からの退学を考えます。

声を取り戻した鹿野ですが、人工呼吸器をつけた人間には定期的な痰の吸引が欠かせません。

これは医療行為であり、基本的には医療関係者だけができることで、例外は家族だけでした。

それを聞いた鹿野は「俺のボラは家族だ」と押し切ってしまいます。

強引な鹿野に押し切られた病院側は、ボランティアたちに痰の吸引の手ほどきをし、ついに鹿野は退院を果たします。

退院した鹿野はボランティアたちとともに旅行に出かけます。旅を満喫する鹿野とボラたち。その時、突然鹿野が倒れてしまいます。

旅に同行していなかった美咲と、医大を辞めること決めかけていた田中も鹿野が倒れた一報を聞いて旅先に駆け付けます。

しかし、これは二人を引き合わせる鹿野の悪だくみでした。引き合わされた二人は改めて距離を近づけます。

鹿野の美咲への思いはかないませんでしたが、二人の友人として鹿野は、田中と美咲とともに朝日を眺めるのでした。

鹿野は42歳でこの世を去りました。

彼に関わったボランティアの延べ人数は500人を超え、彼が死んだ後も時おり会い、思い出話に話に花を咲かせています。

映画『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』の感想と評価


(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

屈指のはまり役、大泉洋!!

人たらしで、無理を頼まれても何となく許してしまう

これは主演を務めた大泉洋のことではなく、モデルとなった鹿野靖明さんの人物評です。

マックスで10キロの減量をして、わざと視力を落とすコンタクトつけたうえで眼鏡姿になった大泉洋の姿を見て、鹿野さんの友人でありボランティアでもあった人物は思わず『鹿野がいる!』と語ったそうです。

今まで、ありそうでなかったこの役処に挑戦した大泉洋は、クランクアップで鹿野と別れることがつらいと語ったほどです。

大泉洋にとって、今後の代表作といってもいい映画になったと言っていいでしょう。


(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

まとめ


(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会

本作『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の主人公鹿野靖明は34歳。

筋ジストロフィーを患い、車いす生活を過ごしています。

鹿野はワガママ!オシャベリ!!自由スギ!!! それでも、真っ直ぐに生き、誰もがどこか憎めない愛される存在でした。

そんな鹿野に、北海道の医学生である田中は、ボランティアとして出会います。

ある日、新人ボランティアの美咲に恋心を抱いた鹿野は、ラブレターの代筆を田中に依頼すると…。

笑いあり涙ありの感動実話『こんな 夜更けにバナナかよ 愛しき実話』は、12月28日(金)全国ロードショー

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『月と雷』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【初音映莉子×高良健吾の代表作】

直木賞作家・角田光代の小説『月と雷』が映画化され、監督を『海を感じる時』の安藤尋監督が務めたヒューマンドラマとして公開されました。 主演には初音映莉子、高良健吾を向かえ、田舎町で起こる「普通ではない」 …

ヒューマンドラマ映画

ある人質 生還までの398日|ネタバレ結末とラスト解説。 実話で描くISに囚われた写真家を救出する家族たちの思い

人質となった写真家と彼を救うために奔走した家族の実話を元に描く奇跡の生還劇 シリアで人質となり、奇跡的に生還したデンマーク人写真家ダニエル・リューの実話を元に描いたヒューマンドラマ。 映画『ある人質 …

ヒューマンドラマ映画

映画『幸福なラザロ』あらすじネタバレと感想。ロルヴァケル監督が描く現代の“聖人像”

アリーチェ・ロルヴァケル監督の『幸福なラザロ』は 2019年4月19日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開 前作『夏をゆく人々』(2015)ではトスカーナ地方で養蜂場を営む一家のひと …

ヒューマンドラマ映画

映画『トールキン 旅のはじまり』ネタバレ感想とレビュー解説。指輪物語などを生んだ原作者の知られざる青年期

映画『トールキン 旅のはじまり』は2019年8月30日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー公開中! 不朽の傑作ファンタジー小説にして、現在もあらゆる創作物に影響を与え続ける『ホビットの …

ヒューマンドラマ映画

映画『アニエスによるヴァルダ』感想あらすじと考察評価。特集上映の過去作紹介も【アニエス・ヴァルダを知るための3本の映画】

特集上映『アニエス・ヴァルダをもっと知るための3本の映画』は2019年12月21日(土)から公開。 2019年3月29日、“ヌーヴェル・ヴァーグの祖母”と称された映画製作者がこの世を去りました。 アニ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学