Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ドキュメンタリー映画

映画『ワイン・コーリング』ネタバレ感想と評価考察。自然派おすすめの生産者と、そのライフスタイルとは

  • Writer :
  • もりのちこ

ワインも人生もナチュラルに!
自然派ワインの使命者たち。


近年、日本でも注目されている「自然派ワイン」。有機栽培で育てたブドウで、添加物を極力使わずに作られるワインは、環境にも体にも優しいワインです。

南フランスのルーション地方で、そんな自然派ワインを作る生産者たちのライフスタイルを追ったドキュメンタリー映画『ワイン・コーリング』を紹介します。

自然派ワインの製造は、農薬や化学肥料に頼らず畑の管理をするため、手間も時間もかかります。添加物を使用せず土地由来の天然酵母で醸造するワインは、つねに発酵のトラブルがつきものです。

「自然派ワインは、何もしないから楽だって!?」。「とんでもない!」。この映画を観たらそう思うはずです。

映画『ワイン・コーリング』の作品情報


(C)PINTXOS2018
【日本公開】
2019年(日本)

【監督】
ブリュノ・ソバール

【キャスト】
ジャン・フランソワ・ニック、ローランス・マニャ・クリエフ、オリビエ・クロ、シルバン・レスポー、ステファン・モラン、ジャン・セバスチャン・ジョアン、ミカエル・ジョルジェ、ルイック・ルール

【作品概要】
南フランスのルーション地方で、自然派ワインを作る人々のライフスタイルを追ったドキュメンタリー映画『ワイン・コーリング』。

フランス自然派ワインのパイオニアともいわれるジャン・フランソワ・ニックの元に集まった、同じく自然派ワイン造りに取り組む者たちの絆の物語でもあります。

ワインの愛好家でもあるブリュノ・ソバール監督が、生産者たちの信頼を得るため1年をかけて密着し、撮影に8カ月を要したという、混じりけなしの自然派映画です。

映画『ワイン・コーリング』のあらすじとネタバレ


(C)PINTXOS2018
南フランス・ルーション地方。バニュルスの急斜面に広がるブドウ畑では、早朝からブドウ摘みが行われています。

この地には、フランス自然派ワインのパイオニア的存在、ジャン・フランソワ・ニックのブドウ畑が広がっています。

2002年、南ローヌの「カーヴ・エステザルグ」で醸造長をしていたジャン・フランソワ・ニックがこの地に「フラール・ルージュ」を立ち上げてから、ルーション地方の歴史が変わりました。

「ワインはまるで魔法さ。数カ月で酒になるんだから」。ここまでの道は決して順調なものではありませんでした。

ブドウ品種グルナッシュは12年間ダメでした。農薬や化学肥料を使用せず土壌を保つということは日々の管理に手間暇がかかります。

広大な土地と樹齢何年にもなるブドウの木を1本1本接木しながら、何十年もかけ整えてきました。

傾斜で車両が通らない所は馬が活躍します。1房1房手摘みをしたブドウを馬が運びます。子供たちもお手伝い。馬の扱いも手慣れたものです。

この地には、ジャン・フランソワ・ニックを慕いやって来た、自然派ワインの作り手が集まっています。ジャン・フランソワ学校ともいわれるほど、彼の技術を学びにくる者が絶えません。

彼らはそれぞれのブドウ畑を持ち、常に情報交換をし、必要な器具を貸し合い、収穫を手伝い合い、畑の管理を共に行います。

「みんなでやれば早いよ」と、ジャン・フランソワ・ニックは嬉しそうです。

早朝から皆で汗を流し働き、家族とともに食事をし、夜は仲間たちと楽しくワインを飲む。彼らはひとつのチームです。

ワイン製造には膨大なエネルギーと集中力を要します。収穫したブドウは、添加物を使用せず土地由来の天然酵母で醸造するため、つねに発酵のトラブルがつきものです。

タンニン、二酸化炭素量、温度など計量を重ね、細かくチェックしていきます。少しの違いは大きな失敗に繋がってしまいます。

「自然派ワインの造り手は怠惰だと言う人がいる」。「逆よ、怠けている時間なんてないわ」。家族は一丸となり、ワイン造りに人生を懸けています。

以下、『ワイン・コーリング』ネタバレ・結末の記載がございます。『ワイン・コーリング』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)PINTXOS2018
ルーション地方の自然派ワインのファンは多くいます。「自然派ワインは人生と自由よ」。「ワインが生きている。発見と感動があるの」。「造り手を知ればよりワインが分かるわ」。

「人々はワインに感動を求めるようになってきた」と語るのは、ワインの輸入会社サンフォニーの社長であり、自然派ワインを日本に広める竹下正樹です。

彼は、ジャン・フランソワ・ニックの元を訪ね、交流を深めています。自然派ワインは日本食によく合うのだそうです。

フランスでは有名な土地のワインが人気だった時代もあります。効率よくワインを製造するため、畑には化学肥料が使われ、醸造所では好みの味にするため培養酵母を使用し発酵をコントロールします。

ブドウの出来が悪い年でも、加糖や酸の補充でみな同じ味に仕上げることが出来ました。

このようにして完成した大量のワインは、低予算で安心安全なものにはなりますが、ワインの個性が失われ、どこで生産されても同じものになってしまいます。

「重要なのは国の認証ではなく、自分の名前で勝負することだ」。自然派ワインの造り手はそう言います。

その土地の持つ力、テロワールや生産者の人となりが感じられる個性豊かなワイン。家族や仲間との団らんに寄り添うワイン。環境にも体にもいいワインを造り続けたい。

彼らの精神が、そのライフスタイルが、パワフルな味わいの自然派ワインを造りだしていました。

ワイン生産者が、一生で造れるワインの種類には限りがあります。1年に1回、ワイン製造歴40年としても人生で造れるワインの種類は40個です。

失敗を繰り返し、自分の納得いく味のワインを造れる回数は本当に少ないものです。それでも自然派ワインにこだわり造り続ける生産者たち。

ジャン・フランソワ・ニックは言います。「そのうち大企業も自然派ワインを造る日が来るだろう。それでも私たちはこの地で闘い続けるだろう」と。

南フランス・ルーション地方には、自然の苦難を仲間たちと乗り越え、シンプルにナチュラルに、弱さと孤独を皆で分け合い、大いにワイン造りと人生を楽しんでいる人々がいました。

自然派ワインはそんな生産者たちの自由と平等、博愛が詰まった最高の味をこれからも生み出してくれることでしょう。

映画『ワイン・コーリング』の感想と評価


(C)PINTXOS2018
環境にも体にもいいとされ、二日酔いになりにくいと言われる「自然派ワイン」。近年は、日本でも「オーガニックワイン」と共に注目されています。

「オーガニックワイン」は、有機という意味で土壌の肥料には天然由来の物質だけを使用。農薬や化学肥料を使用しない栽培法でブドウを育てます。

醸造法にも細かい規定があり、オーガニック認定制度で認定されたワインだけ「オーガニックワイン」と呼ばれます。

「自然派ワイン」も、極力、農薬や化学肥料を使用せず、自然の力を生かし、除草から収穫まで手作業で行う栽培法でブドウを育てます。

「自然派ワイン」と「オーガニックワイン」の違いは、主に醸造法にあります。「自然派ワイン」は、その土地の天然酵母の働きで自然発酵を促します。

二酸化硫黄や工業生産の酵母を認めている「ビオロジックワイン」とも違います。明確な規則もない分、ブドウの力のみで造り出されるのが「自然派ワイン」です。

「自然派ワイン」は、その土地で出来るブドウ本来の美味しさと、造り手の人となりが現れるような個性的でパワフルなワインと言えるのではないでしょうか。

彼らは言います。「大切なのは金儲けじゃない。どんなに手間がかかろうと、体にいいワインを作りたいだけだ」と。

自然と向き合うことは苦難の連続です。しかし、それを物ともせず道を切り開いていく彼らのワイン造りはまさにロックです。

劇中音楽に使用されるロック音楽が、彼らのライフスタイルにぴったりはまり、縦ノリのリズムがワイン造りの映像を加速させます。

また映画に登場する自然派ワインの生産者たちは皆、俳優のようにかっこいいのです。人生に疲れ切って、やる気のなさそうな人は誰一人いません。

子供たちや動物まで生き生きと暮らしているように見えます。家族と仲間を大切にし、困ったときは助け合い、夜には美味しいワインで乾杯。

本当に豊かな人生とは何か。仕方なく働き、忙しさに追われ、自分をおろそかにし、気付いたら時間だけが過ぎて行く人生でいいのか。

自分が夢中になれるものは何か。人生をかけやり通したいこと。大切な仲間はいるか。家族を大切に出来ているのか。そして、自分の幸せとは。

フランス自然派ワインのパイオニア的存在、ジャン・フランソワ・ニックは映画の最後に言っています。「自分たちの小宇宙で居心地よく暮らしているのさ。誰にも邪魔されずにね」と。

その小宇宙に共感する者たちが集まり、いつしか大宇宙になり、「自然派ワイン」はさらに世界中で注目されていくことでしょう。

まとめ


(C)PINTXOS2018
2019年11月から全国の映画館で「映画館でワイン・フェスを楽しもう」という取り組みが実施され、今作『ワイン・コーリング』と、世界無形文化遺産にも登録されたジョージアのクヴェヴリ製法を紹介する映画『ジョージア、ワインが生まれたところ』の2作が同時公開となりました。

2作品を通して、「自然派ワイン」の持つ魅力や生産者のパワーに触れ、すっかり「自然派ワイン」の虜になってしまいました。

体と環境に優しい未来を創るために、今まさに「自然派ワイン」製造に取り組んでいる生産者たち。

その思いを知ることで、ワインの選び方が変わり、人生の豊かさが少し増した気がします。

関連記事

ドキュメンタリー映画

『ディス・マジック・モーメント』あらすじ感想と評価解説。22の映画館/ミニシアターをリム・カーワイ監督がめぐるドキュメンタリー⁉︎

映画『ディス・マジック・モーメント』 が2023年11月25日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開 『あなたの微笑み』(2022)のリム・カーワイ監督による自身初のドキュメンタリー映 …

ドキュメンタリー映画

映画『フジコ・ヘミングの時間』あらすじネタバレと感想。ラストの結末も

世界を魅了する美しい音色は、いかにして生み出されるのか? パリ、ニューヨーク、ブエノスアイレス、LA、ベルリン、東京、京都と、世界が熱狂したワールドツアーでの演奏、フジコの素顔と知られざるヒストリーを …

ドキュメンタリー映画

映画『イングリッド・バーグマン 〜愛に生きる女優〜』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

2016年に生誕100周年を迎えた名女優イングリッド・バーグマン。 1915年8月29日にスウェーデンに生まれ、 1982年8月29日にロンドンで惜しまれつつこの世を去りました。 ヨーロッパとアメリカ …

ドキュメンタリー映画

『おクジラさま ふたつの正義の物語』感想レビューとあらすじ!

真実はひとつではない。正義の反対は悪ではなく別の正義。 2016年9月9日(土)より東京・渋谷ユーロスペースから公開の『おクジラさま ふたつの正義の物語』。 今作はドキュメンタリー映画をあまり観ないあ …

ドキュメンタリー映画

映画『新宿タイガー』あらすじと感想レビュー。ドキュメンタリーでお面を被った71歳の新聞配達屋さんに迫る

みなさんは、“新宿タイガー”をご存知でしょうか。 いつでも虎のお面を付けた風変わりなスタイルで新宿の街中いたるところに出没します。 街頭で聞き込みをすると目撃情報は多数。それも映画館付近でよくみること …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学