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Entry 2018/09/10
Update

映画『黙ってピアノを弾いてくれ』あらすじと感想。チリー・ゴンザレスの魅力とは

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

映画『黙ってピアノを弾いてくれ』は、9月29日(土)より渋谷・シネクイントほか全国順次公開

挑発的な行動と強烈すぎる個性、そして唯一無二の音楽性で知られるピアニストで作曲家のチリー・ゴンザレス。

狂気とも呼ばれる行動とは裏腹に、奏でられるピアノの音色の繊細な美しさは、人々を魅了してやまない。

天才音楽家チリー・ゴンザレスの独創性とユーモアが圧巻!そして彼にしかない人間味に満ち溢れた、知られざる生き様を刮目する音楽ドキュメンタリー。

映画『黙ってピアノを弾いてくれ』の作品情報


© RAPID EYE MOVIES / GENTLE THREAT

【公開】
2018年(ドイツ、フランス、イギリス合映画)

【原題】
SHUT UP AND PLAY THE PIANO

【監督】
フィリップ・ジェディック

【キャスト】
チリー・ゴンザレス、ジャーヴィス・コッカー、ピーチズ、トーマ・バンガルテル(ダフト・パンク)

【作品概要】
カナダ出身のピアニストで作曲家のゴンザことチリー・ゴンザレス。稀代のエンターテイナーである音楽とパフォーマスの魅力に迫るドキュメンタリ-映画。

ヨーロッパのメディアでジャーナリストやエディターとして活躍しているフィリップ・ジェディックの監督デビュー作。

映画『黙ってピアノを弾いてくれ』のあらすじ


© RAPID EYE MOVIES / GENTLE THREAT

クラシックとジャズで培ったピアノのテクニックとラッパースタイルで、アンダーグラウンドシーンから頭角を現すと時代の寵児となった天才音楽家のチリー・ゴンザレス。

生まれ故郷のカナダからドイツ・ベルリンに渡った一人の青年ゴンゾ(チリー・ゴンザレス)

さまざまな音楽実験や表現方法を試行錯誤するなかで、いかにして唯一無二のエンターテイナーとしてシーンに多大な影響を及ぼすアーティストになっていくのか…。


© RAPID EYE MOVIES / GENTLE THREAT

情熱的なゴンゾの暗中模索なパフォーマンス映像アーカイブを用い、新たに撮影されたインタビューやコンサートシーンにまったく異なる時間の架空の素材を織り交ぜることで、ゴンゾという人物像を探索していく…。

映画『黙ってピアノを弾いてくれ』の感想と評価


© RAPID EYE MOVIES / GENTLE THREAT

本作の演出を務めたフィリップ・ジェディック監督は、2014年にゴンゾこと、チリー・ゴンザレスと初めて出会いました。

ゴンゾのアーティストとしての自覚にすっかり魅了されたフィリップ監督は、ドキュメンタリー映画を取らせて欲しいと交渉すると、「ああ、撮れよ」とゴンゾは即答。

それから数週間後にゴンゾは、ビデオテープの詰まった2つの箱の前に立っていたそうです。

フィリップ監督を悩ませたは、ゴンゾのような膨大なアウトプットのあるエンターテイナーなミュージシャンを、どのような形でまとめたドキュメンタリー映画にするかという問題でした。

しかもゴンゾからは、1つだけ撮影の条件が出されます。それは、プライベートなことは無しというものでした。

流石のフィリップ監督もドキュメンタリストとしては悪夢のような難問にぶつかります。

それに関してフィリップ・ジェディック監督は、次のようにインタビューで語っています。

「多岐にわたる彼(ゴンゾ)のステージ上での人格を、何時間もぶっ通しで見つめることで、私は繰り返されるテーマを認識し、彼の本当の人間性との関連性を見つけることができたのです」

このようにダンボールに詰まった膨大なゴンゾの資料をくまなく観察した結果、フィリップ監督はゴンゾの全てはステージのジョークにあることを見つけ出します

本作を観た観客は、まるでフィリップ監督の“ゴンゾの持つ人間性の気づき”に追従するかのごとく、映画を目撃する構造になっています。

映画の冒頭からゴンゾという刺激的で強烈なキャラクターに、観客はきっと困惑するでしょう。

ドキュメントされた映像と膨大な情報を通して、ゴンゾのアナーキーぶりに振り回されるのです。

しかし、繰り返されるゴンゾのユーモアやバカバカしさを用いたシチュエーションの中に、ゴンゾの天才ゆえの恍惚の中にある“不安”な様子を観客も見抜くはずです。

そのことへの応答をゴンゾは、現実と繋がっているフィクションで探りながら、膨らませたフィクションを現実の高みという音楽に持っていけるのが、ゴンゾそのものの存在なのかも知れません。

資料映像:ゴンゾの2016年2月5日ライブ映像

例えば、ゴンゾが天才的なアーティストであるのは間違いありませんが、それ以上にエンターテイナーであることに驚かされます。

それはゴンゾ自身の内面のみでは音楽が完結しないという証そのものです。

ステージでゴンゾと一緒にライブを行なうパフォーマーやミュージシャンはもとより、ウィーン放送交響楽団やその会場にいる観客と、ゴンゾは常に他者と混じり合いたいという意識にあふれかえっています。

他人の中に棲むゴンゾという虚像(ひとつのフィクション)”を具体化させながら、本人自身を巧みに真実からその上のまだ見たことがない“もう1人のゴンゾという理想”(フィクションの可能性)求道者なのです。

映画の冒頭ではアナーキーにしか見えなかったゴンゾの行動は、実は人間味あふれる姿そのものだと気が付いたとき、スクリーンに魅せられながら、観客のあなたはゴンゾを愛しすぎて涙を流すに違いありません。

ゴンゾはAI(人工知能)などの計算された稚拙な創造性とは真逆の何か、人間性の根幹にある可能性をまるで演奏しているのでしょうか。

ゴンゾの指が弾く音色、汗をかいたラップに打つけた言葉のなかに、人間の真価を見出す虚実混入のドキュメンタリー映画です。

資料音源:AppleのCMで使用された楽曲

まとめ


© RAPID EYE MOVIES / GENTLE THREAT

本作『黙ってピアノを弾いてくれ』は、ピアニストで作曲家チリー・ゴンザレスの生き様や音楽の魅力を追ったドキュメンタリー映画です。

ダフト・パンク、ジャービス・コッカーらとの共演、ウィーン放送交響楽団とのステージでのパフォーマンスの模様などを盛り込み、天才ゴンゾという唯一無二の魅力に迫っていきます。

強烈なキャラクターでありながら、クラシックからヒップホップまで、さまざまな垣根を越える幅広い音楽性は、きっと誰をも魅了することでしょう。

映画『黙ってピアノを弾いてくれ』は、渋谷・シネクイントほかで9月29日から全国順次公開

資料映像:ニューアルバム「Solo Piano Ⅲ」予告

また、ニューアルバム「Solo Piano Ⅲ」(BEAT RECORDS)が、9月7日に発売されています。

どちらも音楽好きにはオススメな快作ですよ!

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