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映画『重力の光 : 祈りの記録篇』あらすじ感想と解説評価。ドキュメンタリーで見る教会にたどり着いた“苦しみに生かされた”人々の魂

  • Writer :
  • 谷川裕美子

困難を抱いてキリスト受難劇を演じる人々の輝く姿

アートと映像の領域を横断してさまざまなヴィデオ作品を⼿掛けてきた⽯原海監督の最新作『重⼒の光 : 祈りの記録篇』が2022年9月3日(⼟)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開となります。

NPO法⼈抱樸(ほうぼく)の奥⽥知志が牧師を務める北九州市の東⼋幡キリスト教会に集う、さまざまなバックグラウンドを持つ⼈々が演じるキリストの受難劇と彼らの⼈⽣を織り交ぜたドキュメンタリー作品です。

困難を抱えた人々がすべてを受けとめてくれる奥田牧師と教会に出会い、表情を輝かせていくさまに胸打たれる作品です。

映画『重力の光 : 祈りの記録篇』の作品情報


(C)2022 Gravity and Radiance

【公開】
2022年(日本映画)

【監督】
石原海

【出演】
菊川清志、西原宣幸、村上かんな、下別府為治、奥田伴子、川内雅代、藤田信子、石橋福音、奥田知志

【作品概要】
ロッテルダム国際映画祭招待作品『ガーデンアパート』(2019)や英BBCテレビ放映作品『狂気の管理⼈』(2019)など、アートと映像の領域を横断してさまざまなヴィデオ作品を⼿がける⽯原海が監督を務めたドキュメンタリー映画。

北九州に移住後、東⼋幡キリスト教会に通うようになった⽯原が、そこに集う⼈々と共に作品を作り出しました。

30分のインスタレーション版は「第15回 shiseido art egg」に選出、その後72分のドキュメンタリー映画として再編集された本作は「第14回恵⽐寿映像祭」にて公開され、⾼い評価を受けました。

映画『重力の光 : 祈りの記録篇』のあらすじ


(C)2022 Gravity and Radiance

困窮者⽀援を⾏うNPO法⼈抱樸(ほうぼく)の奥⽥知志が牧師を務める福岡県北九州の東⼋幡キリスト教会には、困難とともに生きている人たちが集まっています。

彼らはキリストが十字架にかけられる姿を描く受難劇の練習に励んでいました。

祭壇に花を生ける老齢の女性は、フィリピンのミンダナオのダバオで生まれた戦争経験者でした。

生きることに苦しんでいたと話す男性は、その気持ちを教会で受け止めてくれることが興味深く、一般社会もそうなってほしいと語ります。

別の男性はフィリピン人と結婚して子供が授かりましたが、その子が6歳の時に妻子に逃げられたと話します。その後彼は自暴自棄になって借金をして夜逃げし、死のうとしたものの死にきれず教会にたどり着きました。

キリスト役を演じる男性は、義務教育も受けないまま極道の世界に入り、服役後50歳で足を洗ったものの世間からつまはじきにされていたところを、奥田牧師と出会ったと語ります。

そして、ホームレスのために昼夜走り回ってくれている牧師を守ろうと思うようになったのだと。

奥田牧師は東⼋幡キリスト教会に赴任後も、以前から行っていたホームレス支援活動にもいそしんでいました。

自分の事しか考えられなかったという若い女性は、親や周りの大人から死ねとか殺すぞと言われ続けて育ち、居場所がない中でこの教会に流れ着いたと話します。

助けてと言えず苦しんでいた男性は、今は心通じ合う教会の仲間たちと楽しく食事をしています。

若い頃から病気で入退院を繰り返してきた女性や、これまでの苦しみは困っている人に寄り添うためにあったと話しホームレスに支援物資を届け優しい声をかけてまわる女性。

さまざまな苦しみを経験した人々は、この教会で互いに寄り添い合い、明るい表情で日々の生活を送り、劇の練習に取り組んでいます。

奥田牧師は、ダメなことをやってしまうのが人間であり、それらを受け入れる場所がひとつくらいあってもいいのではないかと語ります。

映画『重力の光 : 祈りの記録篇』の感想と評価


(C)2022 Gravity and Radiance

「生かされた命」のすべてを受け入れる場所

東⼋幡キリスト教会に集う人々と奥田牧師を撮りたいという石原監督の強い思いが伝わってくるドキュメンタリー『重力の光 : 祈りの記録篇』。

さまざまな困難を抱えて教会に流れ着いた人々。彼らが淡々と語るこれまでの経験はどれも壮絶なものばかりで、胸がしめつけられます。

しかし、仲間同士で楽しく食事をしたり、劇の練習をしたり、その合間に写真を撮り合って笑い合う彼らの表情は明るく輝いています。この地が彼らの真のくつろぎの場所であり、互いに支え合っていることがはっきりと感じられます。

彼らを迎え入れたこの教会の奥田牧師は、ダメなことをやるのが人間であり、この世の人はみな罪人なのだと語ります。だからこそイエス・キリストは人間たちの罪を代わりに背負って十字架にかけられたのだと。

牧師はさらに言います。こうあるべきという空気が蔓延する社会で、人に迷惑かけてはいけないと誰もが思いながら生きていますが、ここでは迷惑は前提なのだ、と。

責任取ってくださいと言われたらお手上げの人が、それでもなお生きており、本来ないものがなお成立しているのが「生かされている」ということだと言うのです。

奥田牧師は、宗教によって人々を救おうとするのではなく、自身の持つ宗教心に導かれて困窮する人々を救ってきました。

ホームレス支援に尽力する彼の姿に真実の愛をみたからこそ、ここに集う人たちはクリスチャンとなりました。これはすべて結果的なことです。彼らは、信じられる人である牧師が信じるものを、自分も信じてみようと思ったに違いありません。

すべて受け入れるという奥田牧師の強い意志。彼の思いに救われた人々の輝き。

生きることの苦しみや辛さと共に、あるがままに生きていいというメッセージが心にあたたかく刺さるドキュメンタリーです。

まとめ

生きづらさを抱える人たち、あるいは周囲に傷つけられ続けて生きてきた人たち、病気に苦しめられて生きてきた人たち。その誰もに輝く命があり、生きる権利を持っています。

しかし、残念ながら人間は決して平等な存在ではありません。彼らの苦しみを本当の意味で理解することは難しいことです。

その一方で、奥田牧師に救われて明るい世界に生きるようになった人々の幸せもまた、簡単に推し量れるものではないように感じます。暗闇にいたからこそ気づける一筋の光。その光の喜びは、どんな幸せをもしのぐほど大きいに違いありません。

もし、人生につまづいたり、絶望したり、生きる意味を見失ったときも、こうしてすべてを受け入れてくれる場所がこの世に存在するという事実が、私たち一人一人の心を慰めあたためてくれます。

⽯原海監督の最新作『重⼒の光 : 祈りの記録篇』は2022年9月3日(⼟)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開です。


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