エリート街道から外された大木勇造の、人生最大の戦いが始まる!
コロナ禍の日本を舞台に、エリート街道から転げ落ちた大木勇造が、変わり者揃いの会社に再就職したことで、とんでもない騒動に巻き込まれるコメディ『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』。
本作は2022年に池袋HUMAXシネマズで封切り後、2023年11月3日(金)よりDVDセル&レンタル開始。さらに11月20日(月)より横浜シネマノヴェチェントでの上映も決定されました。
変わり者だらけの「ギャラクシー商会」に振り回される大木勇造の姿を、ミュージカルあり・怪獣との大格闘ありな盛りだくさんの内容で描くエンターテインメント作品である『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』。
石井良和監督の「日本特撮の怪獣着ぐるみ文化を後世に伝えたい」という情熱が込められた、本作の魅力をご紹介します。
CONTENTS
映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』の作品情報
【公開】
2022年公開(日本映画)
【監督・脚本・製作・特技監督】
石井良和
【キャスト】
藤田健彦、町田政則、藤崎卓也、斉木テツ、草場愛、前田ばっこー、豊田崇史、行永浩信、中條孝紀、石井花奈、杉山裕右、野村宏伸
【作品概要】
会社を突然リストラされ、恋人も失った大木勇造が、突如出現した怪獣との戦いに巻き込まれるコメディ。
2015年の大河ドラマ『花燃ゆ』の松平容保役をはじめ、数々のドラマや映画などの映像作品に出演している藤田健彦が主人公・大木勇造を演じる他、「特撮界のレジェンド」こと町田政則、野村宏伸など個性派俳優が出演しています。
監督・脚本・特技監督の石井良和は、「トラック野郎」シリーズの鈴木則文監督の愛弟子であり、特撮テレビドラマ『ウルトラマンギンガ』の他、映画『ゴジラ FINAL WARS』(2004)『日本沈没』(2006)など数多くの特撮監督に携わった後に、『アタック・オブ・ザ・ジャイアントティーチャー』(2019)などの監督作を発表しています。
映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』のあらすじ
仕事も恋も順調な、自称エリートサラリーマンの大木勇造。
しかし、勤めていた会社がコロナ禍の影響で業績が悪化したため、突然リストラされてしまいます。これまで、面倒な仕事は全て後輩に押し付けてきた大木は、全然仕事をしていないことが上司にバレていたのです。
落ち込む大木ですが、一念発起し再就職活動を始めた結果、「ギャラクシー商会」という謎の会社に採用されます。
「ギャラクシー商会」はリサイクル事業を主に行う会社……に当初は見えましたが、実際は廃品回収という名の粗大ごみ泥棒を行っていました。
また、金儲けのことしか考えていない社長を筆頭に、ギャンブル中毒の営業部担当、ブルース・リーを信奉するフィットネス事業部担当、謎の着ぐるみを着続け顔を見せない男など、怪しげな社員しかいません。
さらに「ギャラクシー商会」の会長は、宇宙生物の研究をしており、会長の宇宙生物捕獲作戦に大木も付き合わされる始末。理解のできない仕事の数々に困惑する大木ですが、それでも恋人のためにがんばります。
ところが、恋人とのデートの途中に、大木が失業し密かに再就職していたことが発覚してしまい、裏切られたと感じた恋人に別れを告げられます。
自暴自棄に陥った大木は、恋人の跡をつけるように。そこへ突如、怪獣ヴァイラスキングが出現します……。
映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』感想と評価
変人集団から学ぶ「しぶとい」強さ
全てを失った元エリート会社員・大木勇造が挑む、人生を懸けた戦いを描いた『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』。
本作は、コロナ禍の日本を舞台にしており、現実社会同様に「安定」という言葉が崩れ落ちた、不安定な日本で物語が展開されます。
一見すれば順風満帆だった大木すらも、突然全てを失う、現代社会の恐ろしさ……とは言え、大木はまともに仕事していなかったため、リストラされたのは自業自得ではありますが。
仕事を失った大木が再就職したのは、「ギャラクシー商会」という会社。「廃品回収」とは名ばかりの粗大ごみ泥棒を行うとんでもない会社ですが、ここで働く社員も、ギャンブル中毒者やブルース・リーマニア、着ぐるみに身を包み筆談でしか話さない男など、変わり者ぞろいです。
ただ、不安定なコロナ禍において、どんなことをしても生き抜こうとするギャラクシー商会の姿は何とも言えない強さを感じ、今の時代に必要なのは、この「転んでもただでは起きない」精神なしぶとさではないかとすら感じます。
そして、このギャラクシー商会の個性的な社員たちに振り回される大木の姿は、本人には気の毒ですが非常に面白いです。
大怪獣に立ち向かうオジサン&変人集団
ただ本作は、とある事件がキッカケで誕生した「合体怪獣ヴァイラスキング」の出現により、急展開を見せます。
このヴァイラスキングのデザインが非常にカッコ良く、『帰ってきたウルトラマン』(1971〜1972)のブラックキングや、『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ ウルトラマンガイア 超時空大決戦』(1999)に登場したキングオブモンスに通じるカッコ良さを感じました。
本作が「ウルトラマン」シリーズのような特撮ヒーロー作品であれば、ヴァイラスキングと戦うヒーローや、地球防衛隊のような組織が登場するのでしょうが、あくまでも舞台は、コロナ禍により人々の生活に不安が満ちた平凡な日本。
ヒーローも防衛隊もいない中、大木とギャラクシー商会の面々は突如出現したヴァイラスキングと戦うことになります。
「人生下り坂な大木と変人集団なギャラクシー商会が、巨大怪獣にどう挑むのか?」が、クライマックスの見どころです。
『シン・ゴジラ』(2016)では「原発のメルトダウン」を連想させる存在として、ゴジラが描かれています。
また『ガメラ2 レギオン襲来』(1996)では、レギオンは地球の生態系を破壊しかねない、突然飛来した脅威として描かれており「その脅威に、現在の自衛隊の戦力で如何に挑むか?」という現実社会に即したリアリティの描写が主軸になっています。
「突如発生する災害の象徴」としての側面があり、何の前触れも無く現れる恐ろしさを持つ怪獣。同様に、ヴァイラスキングをコロナのような「突然出現した脅威」と考えると、例え勝てる可能性が低くても、できる限りのことをして、その脅威に立ち向かう強さが必要なのです。
『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』はコメディ映画でありながら、不安定な現代社会で生き抜くための強さを問いかける、痛快な作品でもあるのです。
まとめ
『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』は、「怪獣ヴァイラスキング対変人集団ギャラクシー商会」のクライマックスが非常に見応えがある他、何気ない場面も面白いです。
例えば、大木勇造がワインを飲みながらリストラ宣告を受けたり、借金の取り立てに来た外国人が片言で脅しをかけていたり、件の「アベノマスク」が妙に小さかったり、そういった細かい笑いも注目です。
『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』は、個性的な登場人物と、とんでもない展開を、ミュージカルあり、くねくねダンスありで描いた、エンターテインメントに振り切った楽しい作品です。
コロナ禍の影響で、暗い空気が長らく漂い続ける2022年現在の日本だからこそ、本作のような明るく楽しい作品が必要なのだと感じられました。
映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』は2023年11月3日(金)よりDVDセル&レンタル開始!さらに11月20日(月)より横浜シネマノヴェチェントで上映!