Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

コメディ映画

Entry 2019/08/07
Update

映画『帰ってきたムッソリーニ』感想と評価レビュー。ヒトラーに続き現代に統師(ドゥーチェ)が帰ってきた!

  • Writer :
  • 20231113

『帰ってきたムッソリーニ』は2019年9月20日(金)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!

2012年にドイツで風刺小説として発表されるや話題沸騰、2015年映画化されるや大ヒット、日本でも翌2016年公開され、大きな注目を集めた風刺コメディ『帰ってきたヒトラー』

その続編?姉妹編?と言うべき作品が、イタリアで製作されました。無論帰ってくるのは”あのお方”です。

1945年に亡くなったイタリアの独裁者、ムッソリーニが70余年の時を越え、現代のローマに甦ります。最初は好奇の目で、笑って彼を見ていた人々ですが、徐々に彼の演説に魅了されていきます。

そんなムッソリーニを利用して、一ヤマ当てようと企む人物も現れます。そんな連中の思惑をよそに、ムッソリーニが現代で企てる野望とは…。

混迷するイタリア・ヨーロッパ諸国の政治状況を背景にした、風刺たっぷりのコメディ映画『帰ってきたムッソリーニ』が登場、日本でも公開されます。

笑っているあなたも、いつの間にか”奴”に征服されている?

映画『帰ってきたムッソリーニ』


© 2017 INDIANA PRODUCTION S.P.A., 3 MARYS ENTERTAINMENT S.R.L.

【日本公開】
2019年9月20日(金)(イタリア映画)

【原題】
Sono tornato

【監督・脚本】
ルカ・ミニエーロ

【出演】
マッシモ・ポポリツィオ、フランク・マターノ、ステファニア・ロッカ

【作品概要】
現代に復活したファシスト党統師、ムッソリーニ。彼に遭遇した人々の反応や、その言動を通して現代社会を風刺する、政治コメディ映画。監督はイタリアのコメディ映画の巨匠、そしてヒットメーカーとして名高いルカ・ミニエーロ。

2010年の『Benvenuti al Sud(南イタリアへようこそ)』、2012年の『Benvenuti al Nord(北イタリアへようこそ)』を手がけ、南北イタリアに住む人々へのステレオタイプなイメージを笑いに変え、共にイタリア国内で一番のヒット作となった両作を手がけました。

ムッソリーニを演じるのは、俳優・声優・舞台演出家として活躍するマッシモ・ポポリツィオ。頭をスキンヘッドにして、不朽の悪名を誇る歴史上をカリスマを堂々と演じています。

売れない映像作家に扮するのはフランク・マターノ。早くからユーチューブに目を付け活躍、今や作家・パフォーマーとして”イタリア・デジタル界のリーダー”と称される人物。その彼がSNS時代の人々を代表する役柄で、甦ったムッソリーニと行動を共にします。東京・大阪で開催された「イタリア映画祭2019」上映作品。

映画『帰ってきたムッソリーニ』のあらすじ


© 2017 INDIANA PRODUCTION S.P.A., 3 MARYS ENTERTAINMENT S.R.L.

あのイタリアの独裁者ムッソリーニ(マッシモ・ポポリツィオ)が、現代のローマに復活します。驚愕すべき出来事に彼は困惑しますが、徐々に現代がどの様な世界であるか理解していきます。

一方偶然復活したムッソリーニを撮影した、売れない映像作家・カナレッティ(フランク・マターノ)。彼は一発逆転をかけて、ムッソリーニを利用したドキュメンタリー映画の製作を思い立ちます。

カナレッティは甦ったムッソリーニと共に、イタリア全土を巡る撮影旅行を行います。多くの人々が握手を求め、屈託なくスマホを向ける姿に、戸惑いながらも撮影に応じるムッソリーニ。

またムッソリーニが市民の中に飛び込み、政治への不満について質問を投げかけると、人々の移民問題に対する不満や、政治に対する不信といった、生の声があふれ出します。

この様子が動画サイトに投稿されると、瞬く間に再生回数は伸び大きく拡散されていきます。この人気にテレビ局の編集局長カティア(ステファニア・ロッカ)は、彼の出演するテレビ番組『ムッソリーニ・ショー』を製作・放送します。

ムッソリーニのカリスマ的な言動が人気を呼び、番組は大成功し高視聴率を叩き出すと、テレビ局の関係者は大喜び。ついにカナレッティも成功を掴み取ります。

番組で得た国民からの人気に、手応えを感じたかつての統師(ドゥーチェ)。ムッソリーニは再びイタリアを征服し、自らの手で支配しようと野望を抱きます。

はたしてムッソリーニは、現代で権力を握る事ができるのか。彼が権力を握ると、果たしてどんな世界がやって来るのか…。

映画『帰ってきたムッソリーニ』の感想と評価


© 2017 INDIANA PRODUCTION S.P.A., 3 MARYS ENTERTAINMENT S.R.L.

『帰ってきたヒトラー』の姉妹編が誕生

2015年にドイツで製作、公開され話題となった政治コメディ映画『帰ってきたヒトラー』。翌2016年にはヨーロッパ各国で公開され、イタリアの映画会社が早速リメイク権の獲得に動きます

こうして誕生した、主人公をムッソリーニに置き換えたイタリア版が『帰ってきたムッソリーニ』、『~ヒトラー』の正式なリメイク作品である本作は、様々な点でオリジナル作品を踏襲した作りになっています

ムッソリーニに扮した俳優が堂々と街を闊歩し、出会った人々の反応を捉えるドキュメンタリー形式で撮った場面も健在、かつての独裁者に対する現代の人々の、リアルな反応を見る事ができます

オリジナルをご存知の方には同じテイストの作品として、そしてお国柄に根差したものか、その中で描き出される両者の違いを見比べる事で、楽しめる作品となっています。

虚の存在が実になるストーリー

『~ヒトラー』と同じく、現代に復活したもののそっくりさんの芸人と思われ、その言動がお笑いの対象として、徐々に人気者になってゆくムッソリーニ。

しかしかつての独裁者は、再度権力を手に入れようと画策します。そこに『~ヒトラー』と異なる展開、新たな視点が描かれていますので、是非ご覧になって確認して下さい

芸人が演じる虚像の独裁者と信じられた人物が、果たして本物の権力者に変貌できるのか、という脚本を監督と共に書いたのは『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』の脚本家、ニコラ・グアリャノーネ

参考映像:『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2017年日本公開)

ある日突然超能力を得た、街の孤独なさえないチンピラ。授かった力を生かす術を知らなかった男が、孤独な娘の信じる虚構のヒーロー、「鋼鉄ジーグ」に身を重ねる事で、真のヒーローへと覚醒してゆく姿が、“胸熱”と評判になった作品です

虚のヒーローが真のヒーローとなる様を、巧みに描いたニコラ・グアリャノーネ。その彼が今回、虚の存在と思われ軽んじられていた独裁者が、実の権力を持つ存在に変貌しようとする姿を、現代社会を風刺しながら描きます

オリジナル版をリメイクする制約の中で、彼がどの様な独自性と、新たなメッセージを作品に加えたのか注目してご覧下さい。

まとめ


© 2017 INDIANA PRODUCTION S.P.A., 3 MARYS ENTERTAINMENT S.R.L.

『帰ってきたヒトラー』が映画化された後、『帰ってきたムッソリーニ』が完成するまでの間に、世界には大きな動きがありました。

それはアメリカでのトランプ大統領の誕生であり、それに力を得た排他的な主張をする勢力が、ヨーロッパそして世界各地で、力を増し無視できない存在になっている事実です

『~ムッソリーニ』は『~ヒトラー』のストーリーを踏襲しながらも、トランプ誕生後の世界の、社会情勢を強く意識した作品になっています

この映画はイタリアのみならず、日本を含む他の国々の人々にとっても、現代社会が背負う大問題について、改めて問う展開になっています

また『~ムッソリーニ』はそのストーリーだけでなく、セリフに出て来る言葉や、映像の背後に映し出された物に、様々なメッセージが込められているので、そこにも注目してご覧下さい

この映画でムッソリーニを利用して、一山当てようとする人物を演じているのが、イタリアの“大人気ユーチューバー”の先駆けと言うべき、映像パフォーマーでもあるフランク・マターノ。

かつてマスメディアの力を利用して、絶対権力を手にした独裁者の元祖である、ムッソリーニと向き合うに相応しい、現代の人物をキャスティングしているとご理解下さい。

映画でムッソリーニを演じた俳優マッシモ・ポポリツィオは、俳優として舞台演出家として活躍している実力者。そしてイタリアでは映画「ハリー・ポッター」シリーズの、ヴォルデモート卿を吹き替えた声優としても有名です。

希代の独裁者を演じた人物は、世界的人気のファンタジー映画では、悪の権化として君臨していた…。そう思ってご覧になると、実に面白いですよ。

『帰ってきたムッソリーニ』は2019年9月20日(金)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!

関連記事

コメディ映画

徳永えり映画『疑惑とダンス』あらすじネタバレと感想。二宮健監督のタランティーノ張りな密室劇の台詞の応酬やクレジットを見逃すな!

「お前こいつとヤッたの?」この言葉がきっかけで巻き起こる大論争! 50分間の短い会話劇のなかで、様々な人間ドラマと爆笑の瞬間が生まれるアドリブを活かした映画『疑惑とダンス』。 ワンシチュエーションと限 …

コメディ映画

映画『銀魂』感想と結末ネタバレ!続編はある?ラストの銀時考察も

大人気TVドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズや映画『HK 変態仮面』を手掛けた福田雄一監督による大人気コミックスの実写化『銀魂』をご紹介します。 以下、あらすじや結末が含まれる記事となりますので、まずは『 …

コメディ映画

【ネタバレ】ゆとりですがなにか続編2023|映画あらすじ感想と結末の評価解説。“インターナショナル”で岡田将生×松坂桃李×柳楽優弥が演じる“ゆとり世代”たちの7年後

時代は常にアップデート!?世代は「ゆとり」から「Z」へ…… 2016年に放送された連続テレビドラマ『ゆとりですがなにか』が、7年の時を経て映画化となりました。 なにかと「これだからゆとり世代は」と括ら …

コメディ映画

映画『マスク』ネタバレ結末あらすじと評価解説。ジム・キャリーの顔芸満載で魅せる爆笑コメディ!

謎の怪人マスクが大活躍する抱腹絶倒コメディ マイケル・ファーロンとマーク・ヴァーヘイデンによる同名カルトコミックを、チャールズ・ラッセル監督が実写映画化したファンタスティックなアクションコメディ。 古 …

コメディ映画

Netflix映画『コネチカットにさよならを』ネタバレあらすじと感想考察。ベン・メンデルゾーンが悪役から誤算続きの中年男をユニークに演じる

50代半ばで仕事と妻を捨て、理想の人生をおくるはずだった誤算とは? Netflix映画『コネチカットにさよならを』は、早期退職し仕事や、離婚後の妻や子供とのしがらみから逃れ、悠悠自適な生活をおくるはず …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学