終末を救うはずだった最強の戦士が、平和な日本で恋の戦いに挑む!
「1999年に世界が滅亡する」という、かつてのノストラダムスの大予言を受け、終末が訪れた日本を平和に導く為に戦う…はずだった「終末の戦士」勝平。
平和になってしまった日本で、勝平が戦うことになるのは、己の恋心だったというラブコメディ『KAPPEI カッペイ』。
「『北斗の拳』の主人公、ケンシロウが恋に落ちたらどうなるか?」という発想から生まれた、漫画を原作にした本作は、平和な日本で己の生き方と恋に悩む「終末の戦士」達を、伊藤英明、山本耕史、小澤征悦という演技派俳優が、全力で熱演しており、かなり熱い作品になっています。
『北斗の拳』×ラブコメという、一風変わった本作の魅力をご紹介します。
映画『KAPPEI カッペイ』の作品情報
【公開】
2022年公開(日本映画)
【原作】
若杉公徳
【監督】
平野隆
【脚本】
徳永友一
【キャスト】
伊藤英明、上白石萌歌、西畑大吾、大貫勇輔、古田新太、森永悠希、浅川梨奈、倉悠貴、橋本じゅん、関口メンディー、鈴木福、かなで、岡崎体育、山本耕史、小澤征悦、アントニー、大トニー
【作品概要】『
『デトロイト・メタル・シティ』で知られる若杉公徳の漫画『KAPPEI』を原作に、平和な日本で迷走する「終末の戦士」達の恋と戦いを描いたラブコメディ。
主人公の勝平を「海猿」シリーズはじめ、『悪の教典』(2012)など数々の話題作に出演している伊藤英明が演じる他、山本耕史、小澤征悦という演技派に加え、プロダンサーの大貫勇輔が「終末の戦士」を奇抜な衣装と濃すぎるキャラクターで熱演しています。
勝平が恋をするヒロインのハルを上白石萌歌、「終末の戦士」達に巻き込まれる好青年啓太を、アイドルグループ「なにわ男子」の西畑大吾が演じる他、古田新太や橋本じゅん等のベテラン俳優がコミカルな演技を見せています。
監督は、これまで『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』(2021)、『七つの会議』(2019)など、数々の話題作をプロデュースしてきた平野隆。
脚本は『翔んで埼玉』の徳永友一。
映画『KAPPEI カッペイ』のあらすじとネタバレ
「1999年に世界が滅亡する」という、ノストラダムスの大予言を受け、終末の日本を平和に導く為、人知れず師匠の下で修業に励んでいた「終末の戦士」たち。
勝平も幼少の頃より師匠の指導を受け「無戒殺風拳」を体得しましたが、2022年になっても終末が訪れる様子が一切無い為、突如師匠から「解散」を告げられます。
幼少の頃より洞窟で厳しい修行を受けて来た勝平は、全く外の世界を知らない為、師匠が用意した短すぎる短パンと、ジージャン姿で渋谷を歩き回ります。
己の次の生き方を模索していた勝平は、街でチンピラに絡まれていた大学生、啓太を助けます。
啓太を助けたことで、花見に誘われた勝平。
ビール2杯を飲んだところで、己の次の使命を探す為に、花見の席を去ろうとした際、啓太と同じ大学に通う山瀬ハルに出会います。
ハルに一目ぼれした勝平は、何故か住み着いた啓太の部屋で、悶々とするようになります。
これまで、女性を見たことも無く、師匠に「恋愛禁止」を言い渡されていた勝平は、自身の感情に戸惑いますが、とりあえず「啓太を守る」ことを次の生きる道にし、ハルに再び会う為に啓太の大学へ通います。
大学の食堂でハルに再開した勝平は、己の中に芽生えた、ハルへの恋心との戦いを決意しますが、ハルには思いを寄せる先輩がいました。
師匠から「先輩というだけで3割増しに見える『先輩マジック』が存在する」と聞かされていた勝平は、先輩に対抗心を燃やすようになります。
一方、勝平と同じ「無戒殺風拳」の修行を受けた「終末の戦士」守が、勝平の前に現れます。
映画『KAPPEI カッペイ』感想と評価
平和な日本を舞台に、戦うことを使命に生きてきた「終末の戦士」達の、迷走を描いたラブコメディ『KAPPEI カッペイ』。
もともとの原作漫画は『北斗の拳』から着想を得て、主人公の勝平も「不器用なケンシロウ」というイメージです。
まぁ、ケンシロウも幼少の頃から「北斗神拳」の修行ばかりしていたので、世紀末が来なければ、平和な世界で勝平みたいになっていたかもしれません。
その主人公である勝平を伊藤英明が演じる、これだけで本作は、最高のコメディとして成功しています。
男性用の香水のCMでも、実写版のケンシロウを演じた実績のある伊藤英明は、原作の勝平よりもケンシロウっぽいです。
鋭い目つきと、眉間にしわを寄せた険しい顔つきで、最強の「終末の戦士」を演じており、この勝平が、大学生の恋バナに首を突っ込んだり、温泉へ傷心旅行に出かけたりするのですが、「見慣れた日常に存在する最強戦士」という違和感…というか浮きっぷり、それだけで面白いです。
また他の「終末の戦士」を、山本耕史や小澤征悦という実力のある俳優が演じており、完成披露試写会で「思ったのと違ったが、途中で降板できなかった」と言っていますが、完全にノリノリで演じているのが、観てて分かります。
特に「終末の戦士」守役の大貫勇輔は、世界的に高い評価を得ているダンサーなのですが、上半身裸に、サスペンダーと皮パン姿という、異様なキャラクターを熱演しています。
物語の主軸は、勝平が抱くハルへの片思いが成就するか?という部分なのですが、女性を知らない勝平が抱く恋の悩みは、中学生レベルです。
ですが、それでも、少しづつ精神的に成長していく勝平を、僅かな表情の変化で観客に伝える伊藤英明の演技力、流石です。
また、勝平が思いを寄せるハルを演じる上白石萌歌が、優しくて純粋で、守ってあげたくなるような「中学生男子が抱く理想の女子」を好演しており、尋常じゃないヒロイン力を発揮させています。
いい歳した最強の戦士と、女子大生の恋愛コメディという、ハッキリ言えばばかばかしい内容なのですが、そこに全力で挑んだ実力派の俳優と、一流のスタッフの力が集結し、文句なしのエンターテイメント作品が誕生したという印象です。
また、原作にもかなり忠実で、クライマックスでは、車に下敷きになった状態で告白する勝平を、実写で完全再現しているのですが、ここは本当に笑いが止まらなかったです。
ただ、ラストは原作と違うようですが、個人的には映画版の方が、いろいろ振り切っていて好きですね。
作中でも「日本って平和だよな」という台詞がありますが、社会派作品とか、感動作ばかりでなく『KAPPEI』のように、特に重いテーマも無く、完全にノリと勢いで振り切った作品が制作されるということが、本当に素晴らしいと実感しました。
まとめ
完全にエンターテイメント作品として振り切った『KAPPEI カッペイ』。
ただ、コメディ映画は観客を笑わせることを前提に制作されていますが、人を笑わすのって難しいですよね。
日本のコメディ作品だと、いわゆるボケとツッコミの関係性で笑わせようとする作品が多い印象ですが、『KAPPEI カッペイ』が凄いのは、「もし日常風景に最強の戦士がいたら?」という、笑いどころが一切ブレていない点です。
過剰な演出で、無駄に笑いを誘うことが無いブレなさは、作品全体が絶妙なバランスで成り立っており、かなり緻密に練られた映画であることが分かります。
同じ若杉公徳原作で、2008年に映画化もされ話題になった『デトロイト・メタル・シティ』が好きな人なら、楽しめる作品ですし、ラブコメとして、間違いなく他の作品に無い個性を放っていますので、難しいことは抜きにして、とにかく楽しい映画が観たい方にもお勧めです!