連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第77回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第77回は、ジョン・キーズ監督が演出を務めた、映画『サバイバー2024』です。
“人類の未来は、1人の男に託された”。謎の疫病により人類のほとんどが死滅した世界で、人類存亡の鍵を握る少女を巡った戦いに巻き込まれてしまった元FBIのエージェントの姿とは、具体的にどんな姿だったか。そしてその男は、世紀末の救世主となれるのでしょうか。
全世界で大人気のヒーローアクション映画「アベンジャーズ」シリーズを手掛けたスタッフと、ジョン・キーズ監督が放つ2021年製作のアメリカのSFサバイバル・アクション映画『サバイバー2024』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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映画『サバイバー2024』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【脚本】
マシュー・ロジャーズ
【監督・製作】
ジョン・キーズ
【キャスト】
ジョナサン・リス=マイヤーズ、ジョン・マルコヴィッチ、ルビー・モディーン、ジェナ・リー・グリーン、ジュリアン・サンズ、トム・ペシンカ、チャーリー・サラ、ジョン・オルシーニ、ダデウス・ストリート、オビ・アビリ、サイモン・フィリップス
【作品概要】
『レッド・ブレイク』(2021)のジョン・キーズが製作・監督を務めた、アメリカのSFサバイバルアクション作品。また『ミッション:インポッシブル3』(2006)のジョナサン・リス=マイヤーズが主演を務め、『RED/レッド』(2010)のジョン・マルコヴィッチが本作の悪役として共演しています。
映画『サバイバー2024』のあらすじとネタバレ
2024年、「新型コロナウイルス感染症(以後、ウイルスと表記)」という謎の疫病によって、人類のほとんどが死滅した世界。
元FBIのエージェントだったベン・グラントは、愛する者も生きる希望も失い、家族との思い出の場所であるアメリカ・ペンシルベニア州の田舎町にある牧場で、1人ひっそりと暮らしていました。
そんなベンが暮らすペンシルベニア州には、ある噂が広まっていました。1人の感染者によってウイルスが蔓延し、約2万人もの死者が出たという痛ましい事件が起きた避難キャンプ「バスティアン・キャンプ」で唯一、ウイルスを克服し死の淵から蘇った男がいるという噂です。
その男の名はアーロン・ラムジー。借金の取り立てをしていた組織に属していた彼は、バスティアン・キャンプで働く職員を何人か殺害し、自分を神と崇める信奉者5人を連れて、どこかへ立ち去ったと言います。
その信奉者の名は、マーリーとマシュー・ラミレス、オーウェン・ハンリーとジョン・ラーソン、ダニーです。そしてアーロンは、「今度は俺が人の生死を決める」と言い、街を牛耳る悪党となりました。
その噂を報じるニュース番組を聞き流していたベンの前に、謎の少女が現れます。彼女の名はサラ・ホッジス。ベンが昔助けたガイという男の妹で、生まれつきウイルスに免疫がある唯一の人間でした。
ベンは倒れ込むように牧場にやってきたサラに戸惑いつつ、とりあえず隣接する家の2階の部屋で休ませることにします。するとそこへ、サラを狙うアーロンとその一団が襲来。車から続々と降りてきた彼らは、銃を構えて警戒態勢をとったベンに、物資を譲って欲しいと言ってきました。
そしてリーダーのアーロンは、ギャンブル好きなベンの亡き父ヒースと面識がある男でした。なんせアーロンがいた組織に、ヒースは多額の借金をしていたからです。
頑なに銃を下ろそうとしないベンに、アーロンはある取引を持ちかけました。「お前がその銃を下ろさない限り、車の中で待機しているマーリーは銃を下ろすことは出来ない。こんな世の中だから、俺たちも自分の身を守る必要がある」。
「マシューが言っていたように、俺たちは感染していないし、ただ物資を譲って欲しいだけで戦いをしに来たわけじゃない」。
「それと俺の“もの”がこの牧場に紛れ込んでいるらしい。俺の目線より下の背丈がある黒髪の若い娘がな」。これに対し、ベンが「そんな娘は見ていない。それに今どき他人を家に入れるものか」と拒絶します。
「そうか、なら彼女がこの土地の敷地内のどこかに隠れていないか捜させてくれ。彼女は人類存続のために必要なんだ」「捜しても見つからなければ大人しく帰るよ。それならこの場にいる者は誰も傷つかない」そこでベンが「逃げ回っているその娘もか?」と尋ねますが、アーロンは何も答えません。
それを見てベンは、「ならこれ以上何も話すことはない。30秒以内にこの場から立ち去れ」と、威嚇射撃をして警告しました。
これに対し、アーロンたちは大人しく車に戻ってこの場から立ち去る。かと思いきや、車内でベンの警告に従ってこのまま大人しく引き下がるか、それとも「大量の武器を蓄えている」と言っていたベンと戦い、無理矢理にでも娘を見つけ出し捕まえるか話し合っていました。
一方ベンは、一旦家へ戻り、サラの様子を見に行ってこの状況をどうするべきか考えていました。その時ふと、ヒースとこの家で交わした会話がベンの脳裏によぎりました。
心臓発作で死んでしまった母との約束を守るため、父がいる実家へ戻ってきたベン。ですが彼は、大事な母にいつも心配をかけさせていたどころか、母が死んだときでさえギャンブルしに行っていたほど、ギャンブル依存症である父を恨んでいました。
そんなある日、ヒースはベンに、「家族との思い出の場所であるこの土地を、人の手に渡すわけにはいかない。俺たちがこの土地を守っていくために、ここの警備を強化してくれないか」と頼みました。
しかしベンは、「そんなのただの思い過ごしだよ。それにこんだけの広大な土地だ、警備を強化するのに何ヶ月もかかっちまう」と言って断ります。
「…世も末だな、息子が父親の言うことを聞けないなんて。父親への尊敬の念はないのか?」、「尊敬?賭け事をやめられない父親を?母さんは毎晩心配してろくに眠れなかったんだぞ」「それ以上言うな」。
「…もういい。“尊敬しろ”って言う父さんの無神経さは尊敬に値するね。…仕事が残ってる」その後、ヒースはせっかく来てくれたベンを喜ばせようと、最近めっきり姿を見かけないせいで鹿を狩れないからと言い、感染者がいる繁華街へ出て鹿肉を買いに行こうとします。
もちろん、ベンは猛反対。ヒースがデタラメを言って、ギャンブルしに行くつもりだと疑っているからです。
「俺は息子だぞ、父さんの監視役でも金づるでもない。そんな調子じゃ、俺たちに最後に遺されたこの土地はいつか人の手に渡っちまう」、「この土地を守り続けてきた爺さんたちの苦労も水の泡だ。俺も家族との思い出の場所がなくなっちまう」。
「…お前はそんなに家族のことが大切なのか」「なら俺も言わせてもらう。お前はお前の祖父母が亡くなる時、そばにいなかっただろう。俺はここで両親が逝くのを見送ったんだ」。
「抜けられない仕事があったんだから仕方ないだろ!それに父さんだって、母さんが心臓発作で死んだ時、ギャンブルしに行ってそばにいなかったじゃないか」。
「…今までそんな父さんのことを心配してきたけど、もう限界だ。これ以上関わると死んだ母さんの二の舞になる」、「だからそんなに街に行きたければ好きにすればいい!」。
結局、最期まで息子と和解できないまま、しびれを切らした借金取りに殺され、命を落としたヒース。最後の肉親を失ったベンは、和解しようとした父を最後まで拒んだことを後悔しながら、彼の言ったとおりにこの土地の警備を強化していきました。
そうしてウイルスに関するニュースを聞きながら過ごしていくにつれて、ベンは生きる気力を失い、警備を強化したこの土地に籠り、1人でひっそりと暮らしていくようになっていったのです。そのことを思い出したベンは、亡き父が遺したこの土地を守るため、アーロンたちと戦う覚悟を決めました。
映画『サバイバー2024』の感想と評価
愛する者を全て失い、生きる気力も失くした元FBIのエージェントであるベン、「生まれつき免疫を持っている少女」としてアーロンとその一団に追われている無症状の感染者サラ。
2人に共通している点は、家族への後悔と、家族を失った深い悲しみと心に深い傷があるところです。
ベンは亡き父ハンスのことは、作中ではサラには話していません。ですが、ベンが1人牧場に籠もってひっそりと暮らしていることは、サラは兄のガイから話を聞いていたので、何となく察しがついていたのでしょう。
言葉で伝えなくても、互いに通じるものがある2人だからこそ分かり合えるものがあり、アーロンたちとの戦いを生き抜き、これから2人で支えって生きていこうと思えるのだと考察できます。
対してアーロンは、物語の終盤でベンに話していたように、ウイルスに感染した時は「あ、俺はウイルスに殺されるのだ」と恐怖を抱いていました。
そして奇跡的にウイルスを克服し、死の淵から蘇ることができた理由は、「“サラを使って世界を再生させる”と、神が使命を与えたから」だと、アーロンは盲目的に信じてしまったのでしょう。
神を信じ、世界を救う救世主になるという使命感に駆られたアーロンは、もう無敵なラスボス感満載です。
ただ作中では、アーロンの右腕的存在であるマーリー以外、ベンとの戦いでアーロンを信奉する気持ちに揺らぎが生じます。
オーウェンたちは仲間のダニーが死んだというのに、怒ることも悲しむこともなく、さらに捨て駒かのように特攻を命じるアーロンに恐怖を抱いたからです。
そういったベンとサラ、アーロンとその一団それぞれの関係性を注視して見ると、より一層物語の世界観に没入することができます。
まとめ
謎の疫病によって人類のほとんどが死滅した世界、2024年。突如現れた、人類存亡の鍵を握る少女を守ることになった1人の男に人類の未来が託された、アメリカのSFサバイバルアクション作品でした。
本作の見どころは、ベンたち両陣営のそれぞれの関係性を描いたシリアス場面と、ベンvsアーロンとその一団による長い戦いです。
また作中では、ベンが亡き父と交わした会話を思い出す場面が随所に描かれています。妻が死ぬ時でさえ、ギャンブルをしに行ってしまうほどギャンブル依存症で、借金取りに追われる生活ばかりで家族に辛い思いをさせてしまったヒース。
それでもせっかく家に戻ってきてくれたからと、ヒースは失ってしまった親子の絆を取り戻そうとしていました。それは、ベンも同じでした。
結局、喧嘩別れをしてしまったグラント親子。それを観ているだけでも、「いつか自分が死ぬ時まで、愛する人を大事にしよう」という気持ちが沸いてきて、より一層観ている人の家族愛、家族と同じくらい大事な人への愛情が深まることでしょう。
人類の未来を託された1人の男が、人類存亡の鍵を握る少女を巡って悪党たちと激闘を繰り広げていく、リアリティあふれるSFサバイバルアクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。