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映画『ファースト・コンタクト』あらすじネタバレと感想。モキュメンタリーで描く壮大な未知との遭遇|未体験ゾーンの映画たち2019見破録9

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第9回

ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」では、貴重な58本の映画が続々上映されています。

第9回では、イギリスのSF映画『ファースト・コンタクト』紹介します。

繰り返し取り上げられるSFのテーマである、人類と地球外生命体との遭遇。それをファウンド・フッテージ手法を取り入れたモキュメンタリー映画。

科学者による調査、コンタクトへの試行錯誤。予期せぬ事態に動揺する人類。そして“ファースト・コンタクト”の果てに、果たしてどの様な未来が待っていたのか。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

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映画『ファースト・コンタクト』の作品情報


(C)HaZ VFX Ltd, 2017

【公開】
2019年(イギリス映画)

【原題】
The Beyond

【監督】
ハズラフ・ドゥルール

【キャスト】
ジェーン・ペリー、デビッド・ベイリー、ノエリーン・コミスキー、トム・クリスチャン

【作品概要】
地球外生命体と人類とのファーストコンタクトのために、禁断の領域に足を踏み入れた運命をモキュメンタリーで描くSFアクション。

突如地球の衛星軌道上に現れた謎の現象ヴォイド。国際的宇宙関連組織「スペースエージェンシー」による調査で、ヴォイドから生命の存在を示唆する電波の発信が判明します。

徐々に事態が深刻化する中、人工の合成ボディに人間の脳を移植する技術「ヒューマン2.0」を使い、地球外生命体とのファーストコンタクトが計画されました。

数々の映像作品やビデオゲームのVFXを手がけてきたハズラフ・ドゥルールが、自身の短編映画を基に製作した長編初監督作品。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。

映画『ファースト・コンタクト』のあらすじとネタバレ


(C)HaZ VFX Ltd, 2017

取材に対し国際的宇宙関連組織「スペースエージェンシー」所長ジリアン(ジェーン・ペリー)はこう語る「私たちは、間違っていた」。

その1年前、広報用の取材に応じていたジリアンに、宇宙での異常事態が伝えられます。

国際宇宙ステーション付近に謎の現象が発生、宇宙空間で作業中のマルセル飛行士は、光に包まれ行方不明となる。

そして衛星軌道上には、後に“ヴォイド”と名付けられる未知の存在が現れます。

ジリアンは友人でもある科学者ジェシカ(ノエリーン・コミスキー)や、ミッションリーダーのアレックスと共に調査にあたります。

この現象は1990年にも発生していたが、その際はすぐに消失し正体は謎でした。

“ヴォイド”からは1420メガヘルツの電波が発信されおり、それをヤコブ博士(デビッド・ベイリー)は生命の存在を示唆するものと解説します。

「スペースエージェンシー」より、無人機が発射され“ヴォイド”の調査行われるが、その内部に入った無人機は消失。

残された映像から“ヴォイド”内部はトンネル状になっており、ワームホールの様な存在ではとの仮説がたてられました。

だとするとその先に、何者が存在するのか。無人機の調査には限界があり、前回の様に“ヴォイド”が消失すればその機会は失われます。

更なる調査が望まれ、宇宙飛行士を“ヴォイド”内部に送り込む事が検討され始めました。

しかしワームホール内部は危険で、人間に耐えられるものではなく、実行可能なのは無人機かロボットの使用しかありません。

一方で正体不明の存在は、世界に混乱を巻き起こします。必要な情報が集まるまで報道規制が決められました。

ところが世界各地にの上空に、黒い雲のような球体が現れ始めます。

球体の発生は、“ヴォイド”から目に見えない波が放出された時期と重なっていました。

球体の発生した地域は軍によって隔離され、新たな事態の発生に早急な真相の解明が求められます。

そして“ヴォイド”の調査に、「ヒューマン2.0」を使用が検討されます。

「ヒューマン2.0」とは国防機関が秘密裏に開発した技術で、人間型のロボットのボディに人間の脳を接続し、動かす技術です。

しかし「ヒューマン2.0」に脳を移植した人間は、二度と元の体に戻れません。

本来は倫理的に許される行為ではないが、ジリアンはこの技術の利用を決定、アレックスは志願者の選考を開始します。

アレックスは「ヒューマン2.0」の要員には、豊富な知識と精神的な安定性、そして知的存在とのコンタクトに相応しい資質を持つ人間を求めます。

多くの希望者との面談の結果、アレックスは下肢の不自由な志願者カール(トム・クリスチャン)を選美ます。彼の前向きな姿勢に期待を寄せました。

準備を経てカールの脳は「ヒューマン2.0」に移植されたが適合に失敗、カールは死亡。

この件は関係者に衝撃を与えたが、これを教訓に脳と機械との接続を助ける技術が開発され、次回はより適合性の高い人物の選定が決定されます。

一方“ヴォイド”内部には宇宙飛行士型だけでなく、武装した兵士型の「ヒューマン2.0」の派遣も決定します。

ジリアンたち科学者は、未知の知的存在とのファースト・コンタクトを、武装して行うのが相応しいのか懸念を表明しました。

そして宇宙飛行士型「ヒューマン2.0」の候補者に、ジェシカの名があがります。

彼女は脳の移植への優れた適合性を持ち、しかもプロジェクトを把握している人物。

アレックスは彼女の精神面の安定に懸念するが、調査の実施が急がれる今は、彼女こそ最適でした。

ジリアンは意を決してジェシカに事情を話します。そしてジェシカは人類の未来の為、「ヒューマン2.0」となりファースト・コンタクトに臨むことを決意します。

ジェシカは「ヒューマン2.0」への脳の移植手術の前に、彼女は親しかった人々にそれとなく別れを告げます。

手術を前に「ヒューマン2.0」、そして任務への理解を深めていくジェシカ。

しかし彼女が“ヴォイド”から無事戻る保証はなく、生きて戻れたとしても元の人生はありません。

ジリアンはその運命に涙するが、地球に出現した黒い球体は数を増し、社会不安は増大しています。

こうしてジェシカの脳は「ヒューマン2.0」に移植され無事融合に成功、機械のボディに徐々に適合していきます。

ついに“ヴォイド”内部に向かう宇宙船が打ち上げられる日がきました。

宇宙飛行士型「ヒューマン2.0」となったジェシカに、コンタクトする相手に渡す、地球と人類の全てを記録したハードディスクが委ねられます。

そして宇宙船にはもう一体、腕に武器を内蔵した兵士型「ヒューマン2.0」も乗り込み、ついに打ち上げの日を迎えます。

トンネル状の“ヴォイド”に入った宇宙船は、光に包まれ凄まじい圧力にさらされました。

回転しながら進む宇宙船はシグナルを喪失し、確認がとれませんでした。

宇宙船がいつ帰ってくるかは誰にも判らず、ジェシカとは二度と会えないかもしれません。

ジリアンはジェシカの事故死を発表します。

ところがその後まもなく、“ヴォイド”から宇宙船が現れ地球に帰還しました。

中にはジェシカの宇宙飛行士型「ヒューマン2.0」が一体あるのみ。兵士型の姿はありません。

ジェシカの「ヒューマン2.0」は停止状態。しかし脳にダメージはなく、そこに数年分の情報が存在する事が判明します。

“ヴォイド”内部は、外の世界とは時間の流れが異なったのです。

「スペースエージェンシー」はジェシカの脳内の情報を部分的に映像化、再生する事に成功します。

本来ならジェシカのケアを優先すべきですが、社会不安の増大がそれを許しません。

一部の軍隊が黒い球体を攻撃、それに対し球体は不気味にうごめき始めます。

すると突然、何かがスイッチになったかの様にジェシカが目覚めました。

こうして彼女が記録した映像と、その証言から“ヴォイド”内部での出来事が明らかにされてゆきます。


(C)HaZ VFX Ltd, 2017

以下、『ファースト・コンタクト』ネタバレ・結末の記載がございます。『ファースト・コンタクト』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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“ヴォイド”に入った宇宙船。突然、船内から兵士型「ヒューマン2.0」の姿が消えます。

自ら扉を開けて出ていないのに、兵士型「ヒューマン2.0」の姿は船外に現れ、内臓した武器が爆発、その姿を消してしまいます。

ジェシカの「ヒューマン2.0」は他の惑星に到着、その地に立っていました。どうやって着陸、船外に出たのかは不明です。何者かにジェシカは、この地に招かれたのです。

波立つ海辺、黒い大地、小さい花々、この惑星を観察するジェシカの前に、やがて何者かが現れます。

それは立ち上る黒い煙のような存在。コミュニケーションをとることはできません。

突然、ジェシカは白い光に包まれます。彼女の前に、“ヴォイド”出現時に行方不明となったマルセル飛行士が姿を現しました。

マルセルは「怖がることはない。心配ない、時が来た」と伝えます。そしてジェシカの頭の中に情報が流れ込みます。

以上のジェシカの証言は彼女の想像、あるいは幻視と疑われましたが、事態は突如急変します。

宇宙で異変が生じ、無数の流星が地球に向かって降り注ぎ、地球に破滅の危機が訪れます。

すると地球に存在した無数の球体は巻き上がり、地球を保護するバリアを形成して流星から守りました。この光景を全ての人類が目撃します。

これはジェシカがファーストコンタクトした相手の意志、彼らは人類を救うに足る存在、と判断した結果なのでしょうか。

科学者たちはジェシカに持たせた、地球と人類を記録したハードディスクが役に立ったと推測します。

人類は見知らぬ物に出会った時、拒絶し攻撃的な反応を見せますが、それは間違いでコミュニケーションを取るべきだと、科学者は悟ります。

しかし軍関係者は、なおも懐疑的な姿勢を崩しません。

その後、アリゾナの砂漠に現れたマルセル飛行士が発見されますが、彼は何も覚えていませんでした。

宇宙の激変はまだ続きます。太陽系内に次々星が生まれ、地球の傍には良く似た環境の惑星“アース2”が誕生します。

これは“ヴォイド”にいた知的生命体からの、将来が行き詰った人類へのプレゼントでしょうか。

“アース2”の開発に活気づく人類。しかしこれも、過去の愚行の繰り返しになるかもしれません。

どこかの地で、“ヴォイド”でコンタクトした知的生命体と並び立つ「ヒューマン2.0」たちの姿。

果たして人類は歴史から学び、今後も救済に値する存在たりえるでしょうか。

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映画『ファースト・コンタクト』の感想と評価


(C)HaZ VFX Ltd, 2017

SFの定番「コンタクト」の魅力

人類と知的生命体との接触は、幾度となく映画に描かれてきました。

SF映画ジャンルを超えた名作『2001年宇宙の旅』以降、コンタクトの相手は姿や思考、また能力も人間と大きく異なる様々な形で登場します。

近年ではドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』はまだ記憶に新しい作品です。

こういった過去作の歴史を踏まえ製作された『ファースト・コンタクト』は、最近のSFトレンドの設定と新たな映像表現を取り入れた作品になっています。

未知の世界の入口となるワームホール的な存在“ヴォイド”。人類と異なる時間の流れの中に生きる、全く異なる姿の知的生命体。

接触不可能な相手に、サイボーグ化した姿「ヒューマン2.0」となってコンタクトを試みる人類。

この「ヒューマン2.0」の精緻な設定と説得力ある描写が、本作の魅力となっています。

監督の短編映画から生まれた

参考映像:『Project Kronos』(2013)

VFXの世界で活躍しているハズラフ・ドゥルール監督は、様々な短編映画を製作してきました。

2013年製作の短編映画『Project Kronos』で描かれた世界を、スケールアップして長編映画とした作品が『ファースト・コンタクト』です。

モキュメンタリー手法で宇宙開発を描き、その舞台として国際的宇宙関連組織「スペースエージェンシー」が登場します。

最近では意欲のある映画製作者は、まず短編を製作して公開、出資者を募って長編映画の製作、というビジネスモデルが世界中で定着しています。

短編映画や見本となる予告、デモとなる短いフッテージが、ネットを通じて世界に配信できる時代は、映画を制作する環境に新たな潮流を産みました。

人類に気前よく優しい知的生命体⁈


(C)HaZ VFX Ltd, 2017

本作の練られたSF的設定は、脚本も自ら手掛けた監督のこだわりです。

ファースト・コンタクトが引き起こす社会的不安、また未知なる物を敵とみなす風潮への批判、がテーマ読み取るポイントになっています。

接触を試みた知的生命体は人類を救うだけでなく、よほど気に入ったのか、これでもか大判振る舞いで、短期間にこのような規模で太陽系を大改造していいのか?と少し心配になってしまいます。

宇宙創造は神様の御業という意見も根強いなか、地球の近くで知的な生命体があっさり天地創造する!

どこかシニカルに様々な宇宙の知的生命体を描いた、スラップスティックSF『銀河ヒッチハイクガイド』を産んだ、イギリスらしい作風の映画です。

まとめ


(C)HaZ VFX Ltd, 2017

ずいぶんとスケールの大きな(ずいぶん風呂敷を広げたなぁ)という、SF映画『ファースト・コンタクト』。

モキュメンタリー手法は、映画をリアルに見せるだけでなく、難解なSF的設定を判りやすく説明するにもうってつけです。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…


(C)2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS20, ZENTROPA BERLIN, ZENTROPA HAMBURG

次回の第10回は「特捜部Q」シリーズ最新作『特捜部Q カルテ番号64』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

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