連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第40回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第40回は、セス・ラーニー監督が演出を務めた、映画『2067』です。
セス・ラーニーが脚本・監督を務めた、2020年製作のオーストラリアのSFアドベンチャー映画『2067』。
2067年。酸素が急激に減少し、謎のウイルスが蔓延したせいで荒廃した地球で、ウイルスに感染し冒された最愛の妻を救うため、未来へ旅に出た男の姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
人工酸素を供給することで世界を支配した会社が、407年後の未来から受け取ったメッセージをもとに、最愛の妻を救うために未来を旅する男の姿を描いた、オーストラリアのSFアドベンチャー映画『2067』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。
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映画『2067』の作品情報
【公開】
2020年(オーストラリア映画)
【脚本】
セス・ラーニー、デイブ・パターソン(追加の執筆)
【監督】
セス・ラーニー
【キャスト】
コディ・スミット=マクフィー、ライアン・クワンテン、リアンナ・ウォルスマン、アーロン・グレナン、デボラ・メイルマン
【作品概要】
『トンビルオ! 密林覇王伝説』(2017)を手掛けた、セス・ラーニーが脚本・監督を務めた、オーストラリアのSFアドベンチャー作品です。
『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014)や『X-MEN:アポカリプス』(2016)、『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019)などに出演するコディ・スミット=マクフィーが、主演を務めています。
映画『2067』のあらすじとネタバレ
西暦2067年。地球の酸素量が急激に減少し、動物や植物が死に絶え、世界各地で人類の環境破壊により自然災害が発生。
さらに謎のウイルスが蔓延したことにより、人類も絶滅の危機に陥っていました。
今や地球に生きる人類は、先端科学研究所を持つ「クロニコープ社」が供給する、人工酸素なしでは屋外を歩くこともできません。
しかし、その人工酸素に対する拒絶反応を起こす人々もおり、死に至る者も続出しています。
幼い頃にタイムマシン量子物理学者の父親が突如消息を絶ち、母親が死んで生涯孤独になったイーサン・ホワイトは、自分を助け育ててくれたジュード・マザーズと一緒に、唯一生き残ったオーストラリアの市の発電所でトンネル労働者として働いていました。
イーサンが連日昼夜問わず仕事に励んでいる理由は、ウィルスに冒された最愛の妻ザンティを救うために、高級酸素マスクを手に入れて症状を良くしようとしていたからです。
しかし、そんなイーサンの頑張りも虚しく、ザンティの症状は一向に良くなりません。
そんなある日、イーサンは後見人であり同僚でもあるジュードと一緒にある人物に呼び出されました。
その人物は、イーサンの疎遠になった父親リチャードと一緒に働いていた、クロニコープ社の素粒子研究の最高技術責任者(CTO)、レジーナ・ジャクソンです。
レジーナはリチャードと研究員のビリー・ミッチェルと共に、未来と過去を行き来するタイムマシン「クロニクル」の開発に取り組んでいました。
しかしリチャードは、クロニクルの開発直後に突然自ら命を絶ってしまい、レジーナたちは彼の遺志を引き継いで、2047年から20年間研究に取り組みました。
その結果、レジーナたちは見事、クロニクル経由で過去と未来を行き来することが可能にさせたのです。
そう説明するレジーナとビリーは、イーサンを呼び出した理由を述べます。
それは、クロニクル経由で最初に407年後の未来と次元をつなげた時、「イーサン・ホワイトをこちらに送れ」というメッセージを受信したからでした。
レジーナたちクロニコープ社は、イーサンが人類滅亡を防ぐ救世主かもしれないと考え、彼を未来にタイムトラベルさせ、送信者の正体と治療薬を探させようと考えました。
クロニコープ社から、「未来にいる協力者に会い、治療薬を持って帰る」という任務を命じられたイーサンは、ザンティを1人にしておけないと断固拒否。
父親が母親と自分を見捨てた過去を持つイーサンにとって、父親と同じ過ちを犯すことなど言語道断です。
しかも大量の電力を消費するため、1人しか未来にタイムトラベルさせることは出来ないばかりか、レジーナたちにはイーサンを過去に戻す方法を見つけていません。
そんなイーサンの気持ちを汲み取ったザンティは、1人でウイルスと戦いながら待つことへの不安を打ち明けるも、それでも人類のために未来へ行って欲しいとイーサンの背中を押します。
未来への出立当日、葛藤の末決心がついたイーサンは、「必ず戻ってくる」と彫った花飾りを眠るザンティの枕元に置き、ジュードに見送られて未来へ旅立ちました。
未来側の時間のずれを生き延び、イーサンは407年後の未来へ無事タイムトラベルしました。
イーサンが降り立ったのは、西暦2474年、文明が滅び人類が誰1人いない、緑が大地を覆い尽くした地球にある熱帯雨林です。
イーサンはクロニコープ社から支給された装置、「アーチー(システム分析とナビ、過去との通信に使える装置)」を使い、治療薬と協力者を探す旅に出ます。
熱帯雨林を探索するイーサンは、熱帯雨林の中で唯一ある建造物を見つけ、その入り口の前に白骨化した死体を発見。
よく見てみると、その骸骨はイーサンが身に着けているネームタグや壊れたアーチー、父親に8歳の誕生日に無理矢理装着させられたデバイスを持っていたのです。
そう、これは未来のイーサンが、何者かに頭を銃で撃ち抜かれ、殺されてしまったことを意味する死体でした。
その証拠に、イーサンが音声認識によって起動させた壊れたアーチーには、こんな音声データが最後に残されていました。
「このほうが犠牲が減るかも」「何を犠牲にした?」「俺たちは家族だろ?」
「お前のためだ」「これが運命だ!」「呼吸するんだ、戦え!」「嫌だ、やめてくれ」
最後の銃の発砲音を聞き、自分が何者かに殺されたと悟ったイーサンは、あまりのショックで注意散漫になり、毒の木の実を1粒食べてしまうのです。
それによって、イーサンは倒れて死にかけます。荒天の中、轟く雷鳴と共に降ってきた謎の男が、倒れたイーサンに抗毒素が入った注射を打って蘇生させました。
その男の正体は、過去から来たジュードでした。彼は帰りを持っていたイーサンの容態が急に変化し、心肺停止になったことから心配して、余力分の電力を使って未来へやって来たのです。
イーサンはとりあえず、ジュードに未来で見た自分の白骨化した死体や、熱帯雨林の中で見つけた所有者不明の酸素補給機のことを話します。
そこからイーサンたちは、2人で協力して熱帯雨林の中を探索。すると今度は、クロニコープ社の研究所跡を発見しました。
イーサンが研究所のパソコンに記された指示に従い、キーボードのエンターキーを押した途端、彼の左手首にあるデバイスが赤から緑に点灯し、彼の血液からDNAを採取。
すると瞬く間に、研究所のシステムが復旧し、2067年と通じるクロニクルが起動準備に入りました。
クロニクルが2067年へ転送完了するまであと4時間。ようやく元の時代に帰れると喜ぶジュードとは裏腹に、イーサンは何かがおかしいと違和感を覚えます。
今のイーサンと同じ格好と装備をした未来の自分の骸骨。今までずっと色が変わらなかったデバイスの色が、骸骨と同じ緑色に突然変化したこと。
これらの違和感を踏まえ、イーサンはまだ未来でやることがあるのではと思い、研究所のシステムプログラム「RID」に、最後の研究データを見せるようお願いします。
研究所に残っていた最後の映像データ。それはリチャード博士が生前遺した、クロニクルの開発とその過程を記録したものでした。
ホログラムとして映し出されたリチャード博士は、2047年にクロニクルを完成させ、酸素を取り戻す方法を探るために未来へ電波を送信。
するとその直後、2474年の未来から「イーサンをこちらに送れ」というメッセージを受信し、リチャード博士たちは驚き言葉を失いました。
しばらくしてクロニクルは、未来側の電力不足によって通信が途絶えてしまい、リチャード博士たちもその映像を見るイーサンたちも、送り主が分からずじまいで終わってしまいます。
その映像が消えた直後、イーサンたちがいる研究所は、原子炉コアの給電に問題が発生。
電源に再接続させて給電しなければ、4時間後に核爆発が起きる事態に陥ってしまいます。
映画『2067』の感想と評価
本作の最大の見どころはただのトンネル労働者だったイーサンが、未来にタイムトラベルして以降、父親譲りの明晰な頭脳を駆使し、クロニコープ社の陰謀を暴いていくところです。
物語を通して、イーサンは妻のザンティや他の人類を救おうと思い、たった1人で未来へ旅をする孤独感と、未来で目にした衝撃的な真実を知った時の恐怖と戦っています。
その中でイーサンは、未来の自分の死体や亡き父親、リチャード博士が遺した過去の映像から、クロニコープ社の驚くべき陰謀を解き明かしていきます。この展開は、ミステリーサスペンス要素満載で面白いです。
もし自分がイーサンの立場だったら、とっくに心が折れてるかもしれないと思うところで、物語で同じようにイーサンが驚き困惑し、涙を流しながら錯乱しているので、登場人物の感情がリンクした感覚が味わえます。
そして、初めはレジーナに命じられて仕方なく、幼いイーサンを守る保護者として傍にいたジュードが、いつしか本当の兄弟のように大事に想ってくれているのが分かる場面も必見です。
物語の後半にはジュードの熱き兄弟愛、家族愛が描かれているので、それが紆余曲折あった末に、最後の最後でジュードの想いがイーサンに届いたのにとても感動します。
まとめ
亡き父親譲りの明晰な頭脳を持つイーサンが、クロニコープ社の陰謀を暴き、過去を変え大切な人を命懸けで守るSFアドベンチャー作品でした。
未来へタイムトラベルした裏には、人類を滅ぼして荒廃した地球をリセットし、再スタートさせるという、レジーナたちクロニコープ社の陰謀が隠されています。
その陰謀を見事暴いたイーサンが、自ら彼らの悪事を明かすのではなく、クロニクルとアーチー経由で元の時代に知らせるという予想外の展開は本当に面白いです。
レジーナによってイーサンの保護者になったジュードですが、彼はクロニコープ社の人間なのか、イーサンの実の兄弟なのかは明かされていません。
さらに、イーサンの母親を殺した男が誰なのかも、明確には描かれていません。そういった未解決の謎を、観る人それぞれで感じたままに考察するのも楽しいです。
男同士の熱き家族愛によって紐解かれた、人類を絶滅させようとする会社の陰謀と未来への旅が描かれた、SFアドベンチャー映画が観たい人に、とてもオススメな作品となっています。