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Entry 2023/04/06
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【ネタバレ】1950続編:水門橋決戦|あらすじ結末と感想評価。“鋼の第7中隊”に続き中国の実力派俳優で描く戦争スペクタクル大作|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー107

  • Writer :
  • 秋國まゆ

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第107回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第107回は、ツイ・ハーク監督が演出を務めた、映画『1950 Part.2 水門橋決戦』です。

1950年11月27日に勃発した「長津湖の戦い」にて、アメリカ軍の主力部隊であるアメリカ陸軍・第7歩兵師団第31歩兵連隊を殲滅した中国人民志願軍第9兵団第7中隊。

彼らに、敵の退路を絶つために長津湖の水門橋を破壊せよとの指令が下りました。

厳しい天候の中、心身ともにダメージを負いながら鋼のような意志で水門橋へと突き進む第7中隊でしたが、要塞のような水門橋からの激しい攻撃によって再び窮地に陥ってしまいます。

映画『1950 鋼の第7中隊』(2022)の続編である、2022年製作の中国の戦争スペクタクル巨編『1950 Part.2 水門橋決戦』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『1950 Part.2 水門橋決戦』の作品情報


(C)2022 Bona Entertainment Company Limited All Rights Reserved.

【公開】
2022年(中国映画)

【脚本】
ラン・シャオロン、ホアン・チェンシン

【監督】
ツイ・ハーク

【キャスト】
ウー・ジン、イー・ヤンチェンシー、チュウ・ヤーウェン、リー・チェン、チャン・ハンユー、エルヴィス・ハン

【作品概要】
前作『1950 鋼の第7中隊』(2022)に引き続き、「ワンス・アポン・ア・タイム」シリーズのツイ・ハークが監督を務めた、中国の戦争スペクタクル作品。

朝鮮戦争でアメリカ軍と中国人民志願軍が初めて戦った「長津湖の戦い」を描いた映画『1950 鋼の第7中隊』(2022)の続編です。

前作『1950 鋼の第7中隊』(2022)に引き続き、「ウルフ・オブ・ウォー」シリーズのウー・ジンが主演を務め、『少年の君』(2021)のイー・ヤンチェンシーや、『戦場のレクイエム』(2007)のチャン・ハンユーら中国を代表する実力派俳優が出演しています。

映画『1950 Part.2 水門橋決戦』のあらすじとネタバレ


(C)2022 Bona Entertainment Company Limited All Rights Reserved.

長津湖・新興里(シヌンニ)での中国人民志願軍との戦いに敗れたアメリカ陸軍・第7歩兵師団第31連隊が、下碣隅里(ハガルリ)飛行場へ退却。

そこにいるアメリカ海兵隊第1海兵師団と合流しようとします。

その情報を入手した中国人志願軍第9兵団団長の宋時輪は、各部隊に「下碣隅里飛行場を奪い敵の退路を断つ。アメリカ軍を断じて逃がすな」と指令を下します。

下碣隅里飛行場から12キロ地点。中国人民志願軍・第9兵団第7中隊は、張大隊長が率いる中国人民志願軍第20軍と、楊大隊長が率いる砲兵大隊と合流。ともに下碣隅里飛行場へと進軍します。

これを受け、日本海にいるアメリカの空母打撃群から、アメリカ軍の艦上攻撃機「ダグラス A-1 スカイレイダー」が発進。下碣隅里飛行場に向かい、各方向から中国人民志願軍を攻撃せよとの指令が下されます。

下碣隅里飛行場から10キロ地点。第7中隊は突如、アメリカ海軍の戦闘機「ヴォート F4U コルセア(愛称はコルセア)」によって機銃掃討されました。

攻撃される前に散開していたおかげで、第7中隊の死傷者は0。前を歩く砲兵大隊が危ないと思い、第7中隊は急いで前進します。

しかし第7中隊が駆けつけた時には、既にコルセアによる爆撃を受けて砲兵大隊は負傷者多数、さらに盗んだアメリカ軍の大砲が全部破壊されてしまったのです。

そのことに頭を抱えた楊大隊長に、第7中隊長の伍千里は「またアメリカ軍から盗めばいいじゃないか」と励まし、1.5キロ離れた場所にあるアメリカ軍の武器を奪いに行きます。

下碣隅里にあるアメリカ軍の防御陣地に、中国人民志願軍第20軍と第7中隊、砲兵大隊が順に到着。激しい銃撃戦の末にアメリカ軍の防御陣地を制圧しました。

そのまま第7中隊は下碣隅里飛行場へ突撃。砲兵大隊は鹵獲したアメリカ軍の大砲を使って、彼らを援護しました。

中国人民志願軍の包囲が狭まるなか、アメリカ海兵隊第1海兵師団長のオリバー・P・スミス少将は、負傷兵を優先とした撤退の準備と、滑走路の防衛を部下たちに指示します。

さらにスミス師団長は、東京の国会議事堂で開かれた祝賀会に出席しているアメリカ陸軍のダグラス・マッカーサー元帥に電話を繋ぎ、あることを要請しました。

「現在の兵力では敵を阻むことはできない。兵たちを無事に下碣隅里飛行場から避難できるよう、援軍を派遣してほしい」と。

しかしマッカーサーは「これは戦争だ。戦場からの撤退は反逆罪だ」と言い、スミス師団長からの援軍要請を却下しました。

スミス師団長率いる第1海兵師団は下碣隅里飛行場から南下し、長津湖・水門橋(スムンキョウ)を経由し、陸路を使って興南港に退却しようとします。

北朝鮮・承芳洞(スンバンドン)にある中国人民志願軍第9兵団前線本部。その情報を入手した宋時輪は、ゲリラ戦に長けた第7中隊に、「アメリカ軍の退路を断つために、1081高地で待機。命令が出たら水門橋を破壊せよ」との指令を下します。

アメリカ・ワシントンD.C.にあるホワイトハウス。アメリカ合衆国大統領のトルーマンのもとに、東京にいるマッカーサーから電報が届きます。

その内容は、「原子爆弾の投下の許可を貰いたい。それは戦局を変えるのに不可欠な手段である」とのことでした。

1950年11月30日。トルーマン大統領は記者会見で、「必要とあらばあらゆる手段に打って出るしかない」と、原子爆弾の使用について言及することを避けた発言をしました。

一方第7中隊は、コンパスが凍るほどの厳しい天候の中を前進し、水門橋へと到着。

先に水門橋を攻撃していた中国人民志願軍・第9兵団第9中隊と、千里の上官である第3大隊長の談子為を援護し、負傷兵を全員救出しました。

しかし、まるで要塞の如く立ち塞がる水門橋からの敵の激しい攻撃によって、撤退を余儀なくされてしまいます。

翌朝。昨夜の戦いで仲間が大勢死んだことに加え、物資不足に凍えるほどの寒さと、第7中隊は心身ともにダメージを負い、限界が近づいていました。


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千里は談に「昨日はどうやって水門橋に攻め込み、爆破したのか」と尋ねると、第9中隊の兵士が「陽動作戦を使った」と代わりに答えます。

彼の説明によると、まず第9中隊の第2小隊が橋の北で攻めるふりをして、敵の注意を引きつけました。

その隙に、アメリカ軍に変装した第9中隊第1小隊が橋を南から爆破しようとするも、変装を見破られてしまったため、爆薬を橋の上に置きました。

談はバズーカでその爆薬を砲撃。しかし爆薬が足りず、水門橋を崩落させるには至りませんでした。

そこへ第9中隊の兵士・田向南が帰還し、地図を広げてアメリカ軍の本部が分かったと報告します。

第7中隊政治委員の梅生が奇襲するつもりかと尋ねると、談は「兵は寒さに凍え、銃は凍っていて使えない。爆薬10個とバズーカ2門でまともに戦えるか?」と逆に聞き返しました。

梅生と千里が「敵の指揮官に爆薬を置くつもりか」「もしその計画が失敗すれば敵に援軍を呼ばれてしまう」と追及します。

これに対し談は、自分たちに課せられた任務は敵の唯一の撤退路を断ち、奴らを包囲することにあるとし、「戦争に“もしも”はない」と言って静かに横に倒れ息を引き取りました。

実は水門橋を爆破した際、談は飛び散った破片で足に深手を負っていたのです。千里たちは談の死を悼みました。

千里は談が考案した水門橋の再爆破計画を引き継ぎ、皆に指示を出しました。まず初めに、第7中隊と第9中隊が協力して4方向から水門橋を攻めます。

次に千里が弟の万里と第7中隊火力小隊長の余従戎を連れて本部を襲撃。敵の指揮官を捕まえて投降を迫ります。

梅生と第7中隊の兵士・何長貴はそれぞれ橋の南と北を攻めて監視塔を破壊。なるべく敵を消耗させることが彼らの目標です。

第7中隊の凄腕の狙撃兵である平河は第9中隊の仲間を率いて、配管を伝って橋のポンプ室を占領。そして笛の合図を持ってバズーカで水門橋を爆破する、という計画です。

計画実行直前、平河は万里に、戦死した伍兄弟の長男の百里は自分を庇って死んだのだと謝罪しました。

兄の死の真相を知った万里は、平河に「俺が百里兄さんと同じ立場だったとしても、戦友を守るためなら同じ選択をしたに違いない」と言いました。

千里は心身ともに成長した弟の姿を見て、今まで弟のやることなすことに口煩く注意してばかりだったことを謝罪しました。そして千里は、「これからは思う存分駆けまわれ」と弟に言いました。

以下、『1950 Part.2 水門橋決戦』ネタバレ・結末の記載がございます。『1950 Part.2 水門橋決戦』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


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その日の夕方。第7中隊と第9中隊は祖国がある方角に敬礼し、「新中国万歳」と言いました。その日の夜。梅生は双眼鏡を使いながら、第9中隊の兵士・楊文健に、南側の防衛態勢はゆうべと変わりないかと尋ねます。

楊文健は「橋の上の重火器が撤去されています。敵の罠かもしれません」と答えました。

その読みは当たっており、多くのアメリカ兵が建物の裏と堡塁(敵の攻撃を防ぐために、石・土砂・コンクリートなどで構築された陣地のこと)で待ち伏せていました。

梅生は、水門橋の防衛のために南側の砦に重火器が隠されていると考え、そこを攻め落とすことにしました。

第7中隊の兵士・小老西は「合図を出すまで撃つな」という梅生からの伝言を伝えるべく、4つの配管を挟んだ向こう側にいる何長貴の元へ向かいます。

しかしその途中、アメリカ軍の狙撃手による銃撃を受けました。配管の上にいた平河は、小老西を撃ったその狙撃手を射殺し、北側の探照灯を破壊します。

それでもアメリカ軍は何も反撃してきません。万里は兄の指示に従い、5つあるアメリカ軍のトーチカ(鉄筋コンクリート製の防御陣地)のうちの1つを手榴弾を使って破壊します。

これを合図に、梅生率いる砲兵小隊が南の監視塔を破壊。敵が罠を仕掛けていると確信した梅生は、平河と第9中隊の兵士たちにポンプ室への突撃の合図を送りました。

平河たちは配管を1つ爆破し、田向南と第9中隊の兵士・鐘定一と沈海龍が配管の中を通ってポンプ室に侵入。爆薬を使ってポンプ室の南門を塞ぎました。

残った平河たちもポンプ室に乗り込もうとしたその瞬間、アメリカ兵の1人が配管に手榴弾を投下。第9中隊の兵士1人が手榴弾の上に覆いかぶさり戦死しました。

平河たちはすぐさまバズーカを使ってポンプ室を砲撃し、ポンプ室の屋根に穴を開けます。ポンプ室での銃撃戦の末、襲い掛かってくるアメリカ兵を全員撃退した田向南たち。

鐘定一は援軍が来る前に、爆薬を使って北門を破壊しようとします。しかし背後からアメリカ兵に襲われ、鐘定一は工具で刺殺されてしまいました。

直後にポンプ室に到着した平河たちは、鐘定一が持っていた爆薬を使って南門を爆破。瞬時に2階に上がり、屋根の穴から攻撃してくるアメリカ兵の死角に隠れて合図を待ちます。

梅生率いる砲兵小隊は、迫撃砲を使って敵の弾薬を破壊。二手に分かれて前線を突破し、南側の砦を攻め落としました。

なぜか何長貴たちに動きがないことを不審に思った千里は、万里や余従戎たちに高台を落とすよう指示し、単身敵の本部へ。その途中で南の堡塁を攻撃します。

南の堡塁にいたアメリカ兵たちは、千里に向かって砲撃します。しかし彼が降り立った場所が本部の掩蔽壕だと気づく前に、砲弾を撃ち込んでしまいました。

これにより、本部にあった解体爆薬が点火。指揮官を含めたアメリカ兵が一斉に外へ避難します。

本部の出入り口に待ち構えていた千里に、彼らは投降しようとするも言葉が通じません。千里も指揮官を尋ねるも、言葉が通じませんでした。

点火されてから30秒後、爆薬が起爆し本部は爆発。相対したアメリカ兵の中に指揮官がいることを知らない千里は、燃え盛る本部の中を捜索します。

万里たちは、高台からアメリカ兵による猛火を浴びていました。余従戎の命により、第7中隊の兵士・古滄洲が万里を連れて避難しようとします。

しかし万里はそれに従わず、特攻して敵の堡塁を爆破。そのせいで、敵の狙撃手の射程内に入ってしまいました。

それに気づいた余従戎は万里を助け、狙撃手を殺そうとします。しかし敵の狙撃手の方が早く、余従戎は万里の目の前で狙撃されてしまいました。

その直後、橋の北側に敵軍の装甲縦隊が襲来。それに梅生が気づいたと同時に、敵戦車の砲弾が撃ち込まれました。梅生が出した総攻撃の合図を受け、何長貴率いる部隊は敵戦車を破壊しにかかります。

しかしあと一歩まで迫った時、火炎放射器が真上から投射され、第7中隊の兵士2人が焼死。塹壕を通過した万里は、アメリカ兵に背後から襲われて殺されそうになります。

そこへ千里が駆けつけ、アメリカ兵の後頭部に銃を突きつけました。万里は手榴弾をアメリカ兵のジャケットの中に押し込みます。

千里はそのアメリカ兵の上にのしかかり、アメリカ兵だけを吹き飛ばしました。しかしその直後、千里は彼が指揮官だったことに気づいて頭を抱えます。

火炎放射器による猛火のせいで身動きが取れなくなってしまった何長貴たちを、他の第7中隊の兵士がバズーカを使って援護します。

するとバズーカで破壊した建物の破片がガソリンの缶に穴を開け、火炎放射器を持つアメリカ兵の真下にまでガソリンが広がっていきました。

それに気づかずにアメリカ兵が火炎放射器を投射した瞬間、真下にあるガソリンに点火。多くのアメリカ兵が死にました。

その爆発音を聞いて、何長貴たちが北を占領したと思った平河たちは、屋根の上の火器を一掃します。伍兄弟は倒れていた余従戎を救出。幸いヘルメットに被弾したため、余従戎は脳震盪を起こしただけでした。


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アメリカ軍の戦車は橋を渡って前進。梅生たちは鹵獲した無反動砲を使って戦車を破壊しようとするも、英語が読めず間違えて発煙弾を撃ってしまったのです。

合図を待たずに水門橋を爆破すると決断した平河たちは、バズーカの最後の一発をポンプ室の壁の破壊に使います。

千里は万里と余従戎と共にポンプ室の裏にある堡塁に到着。千里は2人にポンプ室の南側に行くよう指示し、単身アメリカ兵4人を撃退しに行きます。

ポンプ室の中へ落ちた千里が平河に命令を下したと同時に、第9中隊の兵士が爆薬を持って戦車へと特攻。しかし戦車による機銃掃討と、それによって点火した爆薬によって戦死しました。

その直後、鐘定一を殺したアメリカ兵が、平河を殺そうと襲い掛かってきました。千里は2階に這い上がり、アメリカ兵の首をロープで縛って投げ落とします。

頭から落ちたアメリカ兵は、剥き出しになっていた骨組みが脳天に突き刺さり死亡。一緒に落ちた千里は、ポンプ室の残骸に埋もれ身動きが取れません。

平河は戦車の下に潜り込んで爆薬を設置しようとしました。しかし左腕を戦車に轢きつぶされ、平河の体はそのまま戦車の下に引き摺り込まれてしまったのです。

平河は何とか2階に這い上がった千里に向かって、「撃ってください」と頼みます。千里は涙をこらえて唇をかみしめながら、彼のそばにある爆薬を銃撃しました。

被弾した爆薬は、平河と戦車を巻き込んで大爆発を起こし、水門橋に大きな穴が開きました。さらに梅生率いる部隊が、無反動砲を使って本部の高台を破壊します。

しかしその直後、援軍に駆けつけたアメリカ軍第1海兵師団第7連隊第3大隊が襲来。水門橋が破壊されたことを確認した彼らは、次々と水門橋に向かって砲撃を開始します。

そこで千里が撤退を促すべく笛を吹きました。その笛の音を聞いた余従戎たちは、全部隊に撤退を知らせます。しかし万里はすぐに撤退はせず、第7中隊の兵士1人と共に千里を救出しました。

翌朝。水門橋から無事撤退した第7中隊と第9中隊は、水門橋の近くの山で寝ていました。

するとそこへ、6機のコルセアが接近。それに気づいて起き上がった時、千里たちは無線機を持って寝ていたはずの余従戎の姿がないことに気がつきます。

千里たちはひとまず山の斜面に体を密着させ、コルセアに向かって銃口を向けました。


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するとなぜか、山の上から銃声が聞こえてきます。その銃声の主は、山の上で無線機を使って助けを呼ぼうとした余従戎です。

余従戎は、下にいる仲間たちに向かって「お別れだ、兄弟」と敬礼し、囮となってコルセアを引きつけます。

コルセアから爆弾が投下され、服の端から燃えて火だるまと化した余従戎は、やがて消し炭となりました。

今度は戻ってきたコルセアによる機銃掃討が、千里たちに襲い掛かり、数人の兵士が戦死しました。

その後、第1海兵師団1万人が3日後に水門橋に到着すると聞いた第3大隊は、爆破された水門橋と配管の修理作業を急ぎ行いました。

千里たちによる水門橋爆破のことは、日本・東京の第一生命ビルにある国連軍本部にいるマッカーサーの耳にも届いていました。

マッカーサーは戦況を報告しに来た部下に、「協力関係にある東京の工場に連絡して資材を募れ。それを使って忌々しい橋を修復させろ」と命じます。

場面転換、水門橋。談が北朝鮮・古土里で鹵獲した半装軌車に乗り込んだ千里は、「敵が何度橋を直そうと、そのたびに爆破してやる」、「橋がある限り、俺たちの任務は終わらない」と梅生に言いました。

千里は一度半装軌車から降り、首から提げていた笛を万里に渡し、涙を流す弟を抱き締めました。

その日の夜。梅生は万里にある任務を与えます。それは橋の南北を行き来して、3時間ごとに笛を鳴らし敵を錯乱させる、という任務です。

その間、梅生は第9中隊の兵士たちと共に敵の火力を引きつけ、千里が今度こそ水門橋を崩落させるための時間を捻出する、というのが彼が考えた作戦でした。

万里が吹いた笛の音を合図に、千里たちは再び水門橋爆破に挑みます。作戦どおり、敵の火力を引きつけた第9中隊の兵士たちと梅生が、敵の銃弾を浴びて戦死しました。

ですが、梅生が運転していた半装軌車は、そのまま丘を滑り落ちて堡塁と戦車に突っ込み、載せていた点火済みの爆薬によって大爆発を起こします。

梅生と同時に後ろの丘から滑り落ちた千里は、ポンプ室の前に降り立つも、すぐに第3大隊に挟まれてしまいました。千里が持っていた砲弾は、落ちた衝撃で彼の手から離れ、修理された橋の一部分に突き刺さります。

千里はその砲弾を撃とうとするも、銃が失火して失敗。再度引き金を引こうとするも、左右にいる第3大隊の兵士たちから一斉射撃されます。

橋から落下するまでの間、千里は何度も銃を発砲。落ちる直前に撃った弾が見事砲弾に当たり、再び大爆発を起こして水門橋を破壊しました。

配管の近くにいた万里は、爆風によって吹き飛ばされた兄を抱きとめます。致命傷を負った千里は弟を見つめながら、静かに息を引き取りました。

翌朝。パトロールに出たアメリカ兵は中国兵の死体を火炎放射器で燃やしていました。最後に千里の死体と、彼の腕にしがみついたまま凍った万里の姿を見つけ、千里の死体を燃やしました。

すると千里の体を燃やす炎が、彼の足元にある雪を溶かし、2人はそのまま丘を滑り落ちていきます。しかし幸か不幸か、その炎によって万里の体に纏わりついていた雪をも溶かし、万里は静かに息を吹き返します。

10日間の戦いを経ても、アメリカ軍14,000人以上がまだ古土里から脱出できません。唯一の撤退路である水門橋が昨夜破壊されたため、東京の国連軍司令部は前線から緊急支援を要請されました。

12月7日午前9時、8機のアメリカ軍用輸送機「C-119」が古土里に到着。各輸送機が運んだ鋼材は重さ約1トンにも及びます。

ようやくスミス師団長率いる第1海兵師団が水門橋に到着。スミス師団長はジープの上から、橋の向こうにある木に赤いマフラーが括り付けてあるのを見て、「これは“撤退の時間はあまりない”という警告かもしれん」と部下に言いました。

1950年12月24日。撤退を急ぐアメリカ軍は、興南港で戦略物資を処分しました。

その中からウイスキーを見つけた1人のアメリカ兵は、ボトルに「飲めば戦争が終わる酒」と記し、仲間の遺体袋の中にそっと入れました。

興南港へ急ぐ中国人民志願軍・第9兵団第3大隊を見つけた万里は銃を発砲。万里が身に着けている装備を見て、彼らは万里が第7中隊の唯一の生き残りであることを悟りました。

1950年12月25日。アメリカ軍は空母を使って興南港から撤退し、万里たち第9兵団が興南港を占領しました。

後日。宋時輪とその部下である中国人民志願軍の将校たちは長津湖に赴き、そこで戦死した多くの仲間に感謝と哀悼の意をこめて、宋時輪は軍帽を脱いで頭を下げて、将校たちは敬礼しました。

そのまた後日。アメリカ軍との戦いで方々に散っていた中国人民志願軍第9兵団の各部隊が、北朝鮮・江界(カンゲ)駅に集結。

第2中隊から第5中隊、砲兵大隊の人数が半数以下となったことが報告されるなか、万里が「第7中隊は157名のうち1名が到着」と報告します。

宋時輪は何か願いはあるかと尋ねると、万里は「第7中隊の復活」と答えました。すると宋時輪は、「死闘を制した英雄」と書かれた赤い旗を万里に贈りました。

万里は千里の遺灰が入った骨壷を抱え、故郷に帰りました。その道中、川で石を飛ばしていた万里は、ふと兄の幻影を見ます。

優しい眼差しで見つめる兄を見て、万里は「兄さんにすごく会いたい」と涙を流して言いました。

映画『1950 Part.2 水門橋決戦』の感想と評価


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命を賭して戦い続けた中国兵たち

作中で激闘が繰り広げられた水門橋の戦いでは、アメリカ兵も中国兵も、互いに多くの兵士が命を落としました。

なかでも長津湖の戦いや下碣隅里飛行場での戦いを、鋼の意志と燃える闘魂によって何とか生き延びた千里たち第7中隊の兵士が、水門橋の戦いが激しさを増していくにつれて1人、また1人と戦死してしまう場面はとても辛く悲しいです。

敵戦車の下に体が引き摺り込まれてしまった平河が、千里に「撃ってください」と頼む場面、余従戎が皆を守るために自ら囮となって焼死した場面。

そして、これまで兄弟2人で辛い戦場を乗り越えてきた千里と万里の永遠の別れ、彼ら兄弟が寄り添いながら丘を滑り落ちていく場面作中で特に印象に残りますし感涙します

鋼のような強い意志と燃える闘魂を持つ千里たちと、彼らを演じるウー・ジンやイー・ヤンチェンシーら中国を代表する実力派俳優。役としても俳優としても強き絆で結ばれた家族、兄弟になったのが画面越しに伝わってきて心温まります。

現場と本部の温度差

一方アメリカ軍は、戦場で実際に中国人民志願軍と戦っている兵士たちと、東京から指示を飛ばすマッカーサーとの間には、大きな温度差がありました。

現状、劣勢を強いられているのはアメリカ軍なのに、マッカーサーは自国の軍が勝利して朝鮮半島全土を掌握することしか頭にありません。

マッカーサー自身のプライドの高さも原因なのでしょうが、安全圏の東京にいて、戦況を聞くだけしかしてないから、容易に撤退などするなと言えたのでしょう。

中国人民志願軍の不屈の戦士たちと実際に戦場で相見えていたのなら、マッカーサーの考えも変わったのではないでしょうか。

そうすればスミス師団長たちも多くの仲間を失わずに、北朝鮮から撤退してクリスマスを楽しむことができたのではないかと、いろいろ考えることができて考察好きには面白いです。

まとめ


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鋼の意志を持つ不屈の兵士たち第7中隊を含む中国人民志願軍が、唯一の敵の撤退路である水門橋爆破に挑む、中国の戦争スペクタクル作品でした。

前作『1950 鋼の第7中隊』(2022)でもド派手で迫力がある爆発とアクション場面が多く描かれていましたが、本作ではそれ以上に迫力あるアクション場面が満載で、アクション映画好きや派手なアクション好きにはこれほど血湧き肉躍るアクション映画はないでしょう。

また本作では千里たち中国人民志願軍の視点で描かれていますが、アメリカ軍側の視点も前作『1950 鋼の第7中隊』(2022)よりも多く描かれています

なかでも両軍の腹の探り合いによる駆け引きと、両軍の凄腕の狙撃手同士の対決にはハラハラドキドキさせられます。

エンドロール中の映像で、本作の前編『1950 鋼の第7中隊』(2022)で描かれた長津湖の戦いと、水門橋で繰り広げられた激闘の数々を振り返ることができます。

物語の登場人物たちも、それを演じる実力派俳優たちも1つのチーム、家族となって互いを思い合うハートフルストーリーと、ド派手な戦争アクションを両方楽しみたい人にオススメな作品です。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

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編集長、河合のび。
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日本映画大学