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Entry 2021/02/21
Update

映画『ゼンカイジャー』ネタバレ評価感想と解説レビュー。戦隊シリーズの意志をゴレンジャーが託す|邦画特撮大全83

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第83章

今回の邦画特撮大全は、2021年2月20日(土)に劇場公開を迎えた『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』から、『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』を紹介します。

2021年3月7日(日)から放送が開始されるスーパー戦隊シリーズ『機界戦隊ゼンカイジャー』。

TVシリーズに先行する形で公開された映画『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』では、ゼンカイジャーの勇姿を一足先に堪能することが出来ます。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

映画『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』の作品情報


スーパーヒーロープロジェクト (C)テレビ朝日・東映AG・東映

【公開】
2021年(日本映画)

【原作】
八手三郎

【Special Thanks】
石ノ森章太郎

【監督】
中澤祥次郎

【脚本】
香村純子

【キャスト】
駒木根葵汰、浅沼晋太郎、梶裕貴、宮本侑芽、佐藤拓也、福圓美里、中田譲治、乃村健次、竹田雅則、鈴木達央、関智一、細貝圭、入江甚儀、潘めぐみ、神奈延年、川岡大次郎、甲斐まり恵、誠直也

【作品概要】
スーパー戦隊シリーズ第45作『機界戦隊ゼンカイジャー』の先行劇場版。人間1人と4体の機械生命体という異色な編成のスーパー戦隊“ゼンカイジャー”の活躍を描いた一編であり、『ゼンカイジャー』TVシリーズでメイン監督・脚本をそれぞれ担当する、中澤祥次郎と香村純子の2人が本作も手掛けます。

キャストには五色田介人/ゼンカイザーを演じる駒木根葵汰。そして浅沼晋太郎、梶裕貴らTVシリーズのレギュラーキャストである人気声優陣が総出演。またスーパー戦隊シリーズ第1作目『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975~1976)から海城剛/アカレンジャー役の誠直也が、過去のスーパー戦隊の人気悪役たちを演じた細貝圭、入江甚儀らがゲスト出演を果たしています。

同時上映は『魔進戦隊キラメイジャーTHE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』と『騎士竜戦隊リュウソウジャー特別篇 メモリー・オブ・ソウルメイツ』。

映画『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』のあらすじネタバレ


スーパーヒーロープロジェクト (C)テレビ朝日・東映AG・東映

機械生命体の世界“キカイトピア”の悪の王朝“トジデント”は、人間世界への侵攻を開始。

五色田介人/ゼンカイザー、ジュラン/ゼンカイジュラン、ガオーン/ゼンカイガオーン、マジーヌ/ゼンカイマジーヌ、ブルーン/ゼンカイブルーンの1人と4体のスーパー戦隊“機界戦隊ゼンカイジャー”が、トジデントの脅威に立ち向かいます。

トジデントとの戦闘を終えて、晩ごはんの買い出しをする介人とジュラン。介人の財布の中には、幼い頃に両親から託された試作品のアイテム“センタイギア”がありました。


スーパーヒーロープロジェクト (C)テレビ朝日・東映AG・東映

トジデントは敗残兵に謎のアイテム“トジルギア”を埋め込み、歴代のスーパー戦隊の悪の首領の力を持つ怪人“スーパー悪者ワルド”を作り上げ、人間世界へと送り込みます。

ワルドは、ザミーゴ・デルマ(快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー)、バングレイ(動物戦隊ジュウオウジャー)、十六夜九衛門(手裏剣戦隊ニンニンジャー)、バスコ・ダ・ジョロキア(海賊戦隊ゴーカイジャー)といった、歴代のスーパー戦隊の強敵たちを召喚。

ワルドと歴代のスーパー戦隊の強敵たちの手によって捕らえられるゼンカイジャーの面々。さらに変身武器“ギアトリンガー”も、ワルドの手に渡ってしまいました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』ネタバレ・結末の記載がございます。『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


スーパーヒーロープロジェクト (C)テレビ朝日・東映AG・東映

ところが、ジュランから大量に出た汗のおかげで縛っていた鎖がゆるんだことで、介人は脱出。

ギアトリンガーを取り戻した介人はゼンカイザーに変身。

そして、両親から託されたセンタイギア……歴代スーパー戦隊の「赤」の戦士を召喚する力を持つセンタイギアを使います。


スーパーヒーロープロジェクト (C)テレビ朝日・東映AG・東映

介人が召喚した赤の戦士たちの加勢により、ジュランたちもギアトリンガーを取り戻します。ゼンカイジャーと歴代赤の戦士たちは、スーパー悪者ワルド率いる歴代怪人を倒すのでした。

戦いの後、海城剛/アカレンジャーは“この世界”の平和をゼンカイジャーに託します。そしてワルドの影響下から解き放たれたバスコら怪人たちも、ゼンカイジャーにお礼を言い元の世界へと帰ります。

介人は歴代の怪人の力も解き放ったことに一瞬不安を覚えます。

しかしそれぞれの世界には、それぞれの世界の平和を守るスーパー戦隊たちが存在することを改めて気付かされるのでした。

映画『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』の感想と評価


スーパーヒーロープロジェクト (C)テレビ朝日・東映AG・東映

TVシリーズより一足先にゼンカイジャーたちの勇姿を描いた『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』。ゼンカイジャーの各メンバーの紹介や、歴代スーパー戦隊のレッドたちとの共演、歴代の悪役のゲスト出演など、30分ほどの上映時間の中に盛り込まなければいけない要素が数多くあるものの、破綻のない物語となっています。

歴代レッドの総出演や悪役の登場は作品のセールスポイントですが、あくまで本作は『機界戦隊ゼンカイジャー』の映画作品。ゼンカイジャーの世界観と登場人物を中心に置き、盛り上げる要素としてそれらを取り込んだバランスの良い構成が非常に巧く演出されています。

そのため歴代レッドも、『秘密戦隊ゴレンジャー』の海城剛/アカレンジャー役の誠直也を除く43人は“着ぐるみ”での登場です。しかし奪われたギアトリンガーを取り戻しゼンカイジャーに渡す4人のレッドに、ゼンカイジャーのモチーフとなった戦隊のレッドが選ばれているなど、細かい点でのオマージュを忘れていません。

そして海城剛/アカレンジャーの登場は単なるゲスト出演ではなく、初代スーパー戦隊“ゴレンジャー”から新たなスーパー戦隊“ゼンカイジャー”への「意志の継承」を意味する、スーパー戦隊の重要な歴史の一場面なのです。


スーパーヒーロープロジェクト (C)テレビ朝日・東映AG・東映

また『海賊戦隊ゴーカイジャー』のバスコ・ダ・ジョロキアや、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』のザミーゴ・デルマなど、歴代悪役のゲスト出演も出番が少な目でした。しかし各悪役をゼンカイジャーの面々と絡ませることで、お互いのキャラクター性をより魅力的に描くことに成功しています。

そしてゲスト悪役・スーパー悪者ワルドも注目ポイントです。『海賊戦隊ゴーカイジャーTHE MOVIE 空飛ぶ幽霊船』(2011)には各戦隊の戦闘員が融合した“合体戦闘員”が登場しましたが、本作は歴代レッドの総出演ということもあり、歴代悪の首領を融合させた姿をしています。非常に細かい造形なので、一体どこにどの首領がいるのかをよく目を凝らして観てみるのも、本作の楽しみ方といえます。

“スーパー悪者ワルド”という名前の由来は恐らく、短編映画『スーパー戦隊ワールド』だと思われます。同作は1994年にイベント上映用に公開された3D作品で、『地球戦隊ファイブマン』(1990)から『忍者戦隊カクレンジャー』(1994)までの5大戦隊の共闘を描いた作品です。

本作をはじめ2010年代・2020年代にはスーパー戦隊シリーズのクロスオーバー映画が数多く製作されていますが、『スーパー戦隊ワールド』はその元祖とも言える作品なのです。

まとめ


スーパーヒーロープロジェクト (C)テレビ朝日・東映AG・東映

映画『機界戦隊ゼンカイジャーTHE MOVIE 赤い戦い!オール戦隊大集会!!』は、ゼンカイジャーのスクリーンデビューであり、スーパー戦隊の“意志の継承”を描いた作品です。

スーパー戦隊史に残る歴史的な場面を、ぜひ劇場で目撃しましょう。

次回の邦画特撮大全は…


(C)カラー

次回の邦画特撮大全は、2021年3月8日公開の映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を紹介します。お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら




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