「空からエロが降ってくる」Netflixドラマ『全裸監督シーズン2』を完全紹介
2019年8月、Netflixオリジナルドラマとして全世界に配信された『全裸監督シーズン1』。2016年出版の伝説のAV監督・村西とおるを描いたノンフィクション「全裸監督 村西とおる伝」を、虚実交えて映像化した作品は世界を騒然とさせました。
そして待望された人気ドラマの第2シーズンが、2021年6月24日（木）より配信されました。
前回の『シーズン2』第3話で、衛星放送施設を手に入れた村西とおる。「空からエロを降らせる」放送局の、開局の目玉となる空前絶後のAVの撮影計画は黒木香の発言で崩れ去ります。どうなる、村西！？
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CONTENTS
ドラマ『全裸監督シーズン2』の作品情報
Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督2』
【総監督】
武正晴
【監督】
後藤孝太郎
【原作】
本橋信宏
【脚本】
山田能龍、小寺和久
【キャスト】
山田孝之、満島真之介、玉山鉄二、森田望智、恒松祐里、柄本時生、伊藤沙莉、冨手麻妙、後藤剛範、渡辺大知、MEGUMI、西内まりや、笠松将、増田有華、吉田栄作、伊原剛志、宮沢りえ、石橋蓮司、室井滋、小雪、ピエール瀧、リリー・フランキー、國村隼
【作品概要】
『シーズン1』でAV業界のトップの座へと昇り詰めた村西とおる。時代が平成となったシーズン2では、バブル景気の勢いそのままにAV業界の帝王となり、巨万の富と世間の注目を集めますが、大量制作した企画シリーズ物AVの人気は低迷、女優・黒木香とも疎遠に。
それでも「空からエロを降らせよう」と衛星放送事業への参入に奔走。彼の暴走は新たな出会いと仲間との決別を生みました。そして絶頂からどん底への転落という、究極のしくじりを経験する彼にどんな未来が待っているのでしょうか。
村西を演じるのは、カリスマ的怪優となった『ゾッキ』（2021）、『ステップ』（2020）の山田孝之。黒木香役の森田望智を始めシーズン1からの出演者も引き続き出演。新たに恒松祐里・吉田栄作・伊原剛志・宮沢りえ・石橋蓮司・室井滋ら豪華出演陣が加わり、AV業界もバブル経済も共に絶頂から転がり落ちた、狂乱の時代を再現します。
『ホテルローヤル』（2020）、『アンダードッグ』（2020）、『銃2020』（2020）の総監督・武正晴のこだわりの演出と美術も見どころ。全てが世界基準のドラマとして製作された、伝説の怪男児の一代記となっています。
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ドラマ『全裸監督シーズン2』第4話「二人の夢」のあらすじとネタバレ
Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督2』
ゴルフをプレイしながら、今後のビジネスの舞台は宇宙だと語り合う、サテライトイースト社代表・海野（伊原剛志）とその親会社会長・渡部（石橋蓮司）。
2人は事業に高宮グループを継いだ令嬢、高宮悦子（宮沢りえ）を巻き込もうと働きかけます。しかし世間から”女帝”と呼ばれる悦子のつれない態度には、渡辺も手を焼いていました。
その渡辺の耳にも、衛星放送事業に参入しようと騒ぎを起こす村西の噂は入っていました。重要な時期に風評被害があっては困ると、海野に対処を命じる渡辺会長。
一方村西とおる（山田孝之）は黒木香（森田望智）と共に、ダイヤモンド映像の衛星放送局開局の目玉になる、黒木香復帰作となる新作AVの製作発表記者会見を行っていました。
饒舌な黒木に対し、村西の表情はさえずベテラン社員の順子（伊藤沙莉）は心配します。黒木香の人気を不動のものにした。「SMぽいの好き」を超えるAVの誕生を記者に約束する村西。
会見を終えた村西に、自分が先走って発表したと軽く詫びる黒木。話題を集めてくれたと感謝するものの、2人で夢をかなえようとの黒木の言葉に、村西は大きな反応を見せません。
部屋を訪ねてきた順子に、撮影が待ち遠しいと気丈に振る舞う黒木。しかし彼女は浴びるように酒を飲んでいました…。
村西と決別した川田元社長（玉山鉄二）は、SMの女王様（友近）からしっかりお仕置きされていました。これも新たなエロの形を探る試行錯誤の1つと、川田はビデオ店チェーン社長の和田（ピエール瀧）に打ち明けます。
和田は人気AVの傾向を教えようとしますが、自分はもう、普通のエロでは興奮できないと打ち明ける川田。彼は手に入れたマネキン人形を着飾らせ美しく化粧すると、それにキスしました。
村西は性懲りも無く、赤坂銀行の本田（吉田栄作）と共に海野代表と会おうとします。ようやく面会は叶いましたが、村西の衛星放送事業参入を拒絶した海野。
何が問題だと怒る村西に、前科者とは契約しないと海野は答えます。どんなに条件を整えてもその生き様こそが論外、お前が村西とおるである以上、資格は無いと言い切りました。もう2度と会う事は無いと告げられ、黙って立ち去る村西。
世間も村西の衛星放送参入を話題にしながらも、三田村（柄本時生）ら新人AV監督が台頭する中、村西と黒木コンビの新作といえど人気は薄いと見ていました。
ついに新人女優の千葉ミユキ（恒松祐里）AVデビュー作の撮影が決まります。戻って来た村西に黒木と順子と共に声をかけますが、彼はロクに応じもせず部屋にこもります。
そんな状況でもAVは量産され、皆が精も根も尽き果てた状態でも撮影は続きます。三田村もダウン寸前、ラグビー後藤（後藤剛範）だけが奮闘する撮影現場に、ミユキのデビュー作の撮影を見ようと黒木香が現れます。
緊張して現場に向かえないミユキに、誰でも最初の一歩は怖い、だが誰にも今がその一歩踏み出す時だと教えてくれる、サインが現れると告げる黒木。
ならば今はその時ではない、と答えるミユキ。黒木香は彼女に「サインはきっと絶望の近くよ」、と告げました…。
ドラマ『全裸監督シーズン2』第4話「二人の夢」の感想と評価
Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督2』
前回の第3話のラストで、生放送中の番組で新作AVについて爆弾発言をした黒木香。村西は自分が望まない、しかし黒木が彼と共に心から作りたいと願うAVを撮ることになります。
続きを期待させるラストでしたが、今回のオープニングはなんとゴルフ場。ここで初登場の人物、バブル時代のお話とはいえ、桁違いの金と力を持つ者が登場します。
とんでもないバブル期の日本ですが、中でも「バブルの三悪」と呼ばれたのが「土地・株・ゴルフ会員権」。前に2つはともかく、ゴルフ会員権とは？と思われる方も多いでしょう。
本来はゴルフ場でのプレー優先を約束する権利に過ぎない物ですが、会員権を扱う業者に資格制度も無ければ、保証人も必要も無し。しかし市場取引の対象で、当時コルフ場は次々作られ一大成長産業と見られていました。
ゴルフと言えば資産家のステータス。その結果ゴルフ会員権は投機の対象となり値段はグングン上昇。億を超える会員権も登場する有様です。
そのゴルフ場開発計画はバブル崩壊後もしばらく止まず、これを利用した詐欺事件も発覚しました。やがて会員権価格は一気に下落、ゴルフ界のイメージを大きく傷付けました。
今は会員権についての法規制もなされ、あの狂乱も昔話となりました。ですが当時の持ち上げられ方と転落ぶりは、村西の姿に重なるとも言えるでしょう。
ともかくゴルフ場に登場したのは経済界の大物たち。彼らと村西とおるが渡り合います。
平成の無責任男、村西とおる
衛星放送事業に参入しようと財界の超大物・宮沢りえと石橋蓮司に、エロトークとパンツ一丁姿で取り入った村西。ご都合主義的展開は、映画『ニッポン無責任時代』（1962）以降「無責任シリーズ」で活躍した、植木等の姿に通じるものがあります。
ドラマ『全裸監督』シリーズは実話をベースにしているものの、いよいよフィクション部分が強く全面に出てきました。
同様に満島真之介演じる歌舞伎町のヤクザパートも、とんでもない規模の抗争事件が発生します。こんな事件が現実に起きていたら、たまったものではありません。
しかし「無責任シリーズ」や、裏社会を描くVシネマのようなエンタメ性が、より明確になったと言えるでしょう。このドラマは時代の空気を見事に再現し、AV業界や裏社会などの内幕を描きつつも、娯楽性に富んだ物語の追及しています。
それは村西と黒木の物語についても明確です。本当にAVにここまで作家性・芸術的価値を求めていたのか？との疑問は生じますが、作品に対する作家と女優の熱意の差、芸術性と経済的成功の追及の狭間といった、製作現場の葛藤の物語は胸に迫るものがあります。
皆が同じ夢を共有できれば良いのですが、現実は常に、決してそうはならない。愉快な物語の中で、作り手たちの哀しさを描くシーズン2の鍵となる第4話でした。
その村西と黒木の「二人の夢」の狭間から、恒松祐里が演じるミユキが姿を現します。
性の求道者として怪演を見せる玉山鉄二
参考映像：『マニアック（リメイク版）』（2013）
多くの登場人物の抱く、それぞれの夢の違いを見せる今エピソード。しかし一番「特殊な」夢を見ているのは前回、村西と袂を分かった玉山鉄二演じる川田でしょう。
真面目そうな人物で村西の行動に巻き込まれ、ブレーキ役に徹した常識人の川田。しかしシーズン2ではAVの内容に物申し、職場でAVを見ながらナニしたり、実はこの道の求道者である一面が露わになってきます。
『全裸監督』シリーズの中で、大傑作と語られ続けるAV「SMっぽいの好き」。実物はドラマで紹介されたものより、より加虐性に富む、強烈な作品だとイメージして下さい（詳しくは紹介しませんが）。
それはいつものふざけた調子の村西を、黒木の方から引き出す形で生まれました。後に村西はこの撮影を「自分がやり込められているようだった」と語っています。
男に責められ利用されているようで、それを飲み込んで女性の性を解放し、しかも高い知性すら感じさせた黒木香。「SMっぽいの好き」が当時傑作、「女性の性を解放した」ともてはやされたのも、こういった点が評価された結果です。
村西が劇中で「SMっぽいの好き」は、奇跡と偶然が重なって撮れたと叫んだのは、無責任な発言のようで、実は包み隠さぬ本音が現れたもの、と受け取るべきでしょう。
そんな「SMっぽいの好き」の奥深さを、もっとも評価しその上を目指す川田が、妙なプレイに走るのも当然です。マネキンを使ったシーンに、1980年のスプラッター映画、それを2013年にリメイクした映画、『マニアック』を思い出し吹き出しました。
無論この後川田が、猟奇的な連続殺人を犯すことはないでしょう。山田孝之の怪演が話題の『全裸監督』ですが、秘めたる狂気と変態性を黙々と演じているのは、玉山鉄二かもしれません。
まとめ
Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督2』
フィクション部分を大きく見せ、エンタメ性を全開にした『全裸監督シーズン2』第4話「二人の夢」。同時に創作する者たちの哀しみを感じさせるものでした。
それでも衛星放送事業は動き出します。村西と黒木の決別は、新たなミューズを誕生させるのでしょうか。そして逃亡者となったトシの運命は。今後の動きが楽しみになるエピソードです。
そんな動きと関係なく、黙々とマニアックに性の道を探求する川田。彼の今後は、これ以降のAV業界を代表するものとして描かれるのでしょう。
それでも私を含めた多くの方は、他の登場人物より玉山鉄二の姿にこそ、強い親近感を覚えていると断言します。
誰ですか、そんな連中は単なる「むっつりスケベ」の集まりだ、と言う人は。
『全裸監督シーズン2』第1話は2021年6月24日（木）より配信開始
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