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Entry 2021/04/13
Update

映画『ゾッキ』ネタバレあらすじと結末までの感想評価。竹中直人×山田孝之×齊藤工がロケ地の愛知県で制作したコメディ

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

大橋裕之原作を実写化した映画『ゾッキ』の魅力

独特の作風から「孤高の天才」と称される漫画家、大橋裕之の幻の原作を実写化した映画『ゾッキ』。

本作は日本を代表する俳優、竹中直人、山田孝之、齊藤工が共同で監督を務め、全てのロケを愛知県蒲郡市で行ったという異例の作品。

監督も俳優もくせ者だらけという、本作の魅力をご紹介します。

映画『ゾッキ』の作品情報


(C)2021「ゾッキ」製作委員会

【公開】
2021年公開(日本映画)

【原作】
大橋裕之

【監督】
竹中直人、山田孝之、齊藤工

【脚本】
倉持裕

【キャスト】
吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、柳ゆり菜、南沙良、安藤政信、ピエール瀧、森優作、九条ジョー、木竜麻生、倖田來未、竹原ピストル、潤浩、松井玲奈、渡辺佑太朗、松田龍平、石坂浩二、國村隼、板垣李光人

【作品概要】
「秘密」を抱えたさまざまなキャラクターが繰り広げる、シュールで不思議なエピソードが展開されるヒューマンコメディ。

竹中直人、山田孝之、齊藤工が共同監督を務め、各分野のくせ者たちが集結した「寄せ集め」を意味する『ゾッキ』というタイトル通りの、豪華で独特な作品に仕上がっています。


映画『ゾッキ』のあらすじとネタバレ

「秘密」


(C)2021「ゾッキ」製作委員会

離婚して、故郷に戻って来た前島りょうこ。

朝起きると、祖父だけが家に残っており、りょうこは祖父と一緒に朝食を食べます。

その際に、りょうこは祖父から「人は秘密を抱えることで生き続けることができる、秘密が無くなると死んだのと同じだ」と聞かされます。

りょうこが祖父に「どれぐらい秘密があるの?」と聞くと、祖父が「260個」と答えたため、驚いたりょうこは牛乳を吹き出します。

「Winter Love」


(C)2021「ゾッキ」製作委員会

「アテが無いというアテを頼りに、アテの無い旅」に出た男、藤村。

自転車に乗り旅に出た藤村は完全に無計画で、所持品は寝袋と道中で拾ったエロ本だけです。

とりあえず、西を目指して自転車を漕ぎ続ける藤村は、旅の道中に立ち寄ったコンビニで、初恋の相手にそっくりな若い女性に出会います。

藤村の初恋の相手、松原京子。

京子は、高校時代にオナラが止まらない病気で学校を休んだことがあり、その際に冗談半分で藤村が「京子のオナラは臭そう」と発言したことが校内に広まり、退院した京子を傷つけてしまったことがありました。

藤村は、校内で再会した京子に殴られ、倒れたところを蹴飛ばされてしまい、今もそのショックが心に残っています。

藤村と女性はお互いに目が合いますが、無視してやり過ごします。

その際、藤村はコンビニで女性用のパンツを購入しようとしている、怪しげな男子高校生とも目が合います。

藤村は深く頷きますが、男子高校生は逃げるようにコンビニから出て行きます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ゾッキ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ゾッキ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2021「ゾッキ」製作委員会

藤村は、港町に辿り着きます。

そこで、港町の漁師を仕切る、ヤスさんという男に声をかけられた藤村は、ヤスさんの誕生会に参加します。

そこへ、刑務所から出所した漁師の定男が現れたことで、誕生会は険悪なムードになりますが、ヤスさんが上手くその場を収めます。

定男は、自身が刑務所に収監されたことで、奥さんと子供の所に戻りづらくなっていました。

ヤスさんからの頼みで、藤村は定男の家族が暮らす街を通った際に「定男は反省している」と伝えることを約束します。

藤村は「いつになるか分からない」と伝えますが、定男は「いつでもいい」と藤村に家族の住所を渡します。

「伴くん」


(C)2021「ゾッキ」製作委員会

学校のガラスが割られた犯人に疑われたことで、居残りをさせられている牧田。

牧田は、一緒に居残りを命じられたクラスメイトの伴くんと初めて会話をします。

伴くんは、すぐに「死にたい」と叫ぶなど、問題のある行動が多く、学校の教師や生徒全員に嫌われていました。

ですが、学校に友達がいない牧田にとって、伴くんと会話をしたことは嬉しい出来事でした。

最初は、アイドルの会話で盛り上がっていた2人ですが、伴くんの興味は牧田の姉にあるようでした。

それ以降、牧田と伴くんはプロレスとアイドルの話題で意気投合しますが、伴くんは牧田の姉への想いが強くなります。

そして、伴くんは牧田に「お姉さんのパンツを、5万円で売ってくれ」と頼んでくるようになりました。

この申し出に困ったのは牧田です。

実は、牧田には姉はおらず、伴くんに話を合わせていただけでした。

しかし伴くんの牧田の姉への強い想いを壊す事ができず、牧田はコンビニで女性用の下着を購入しようとします。

意を決した牧田ですが、女性用の下着を手に取ったところを、藤村に見られた為、牧田はコンビニから逃げるように出て行きます。

その後、クレーンゲームで女性用の下着を手に入れた牧田は、伴くんに「姉のパンツだ」と伝えて渡します。

満足したように見えた伴くんでしたが、逆に牧田の姉への想いが強くなり、次第に牧田の家を見張るようになります。

伴くんの異常な行動に怒りを覚えた牧田は「姉は、1週間前に事故で死んだ」と嘘をつき、偽物の仏壇を見せます。

仏壇に置かれた写真は、牧田が高校時代に好きだった、本田さんの写真を使用しました。

泣きながら、牧田の姉の死を受け入れた伴くんは、高校卒業後に他県の会社で就職しました。

ですが、伴くんは実際に本田さんが働いている店を突き止め、牧田に「お前の姉ちゃんがいた」と報告をしてきます。

本田さんに付きまとう、ストーカーと化した伴くんですが、そのしつこさが実り、本田さんと結婚することになります。

結婚式に呼ばれた牧田は、伴くんと本田さんの姿を見て、複雑な気持ちを抱きます。

「父」


(C)2021「ゾッキ」製作委員会

小学生のマサルには、仕事もしないで、女性にだらしない父親がいました。

ある時マサルは、父親の母校である高校へ、父親と2人で夜中に忍び込みます。

ボクシング部のOBである父親は、ボクシング部に忍び込み、サンドバッグを盗み出します。

そのまま帰ろうとしたマサルと父親でしたが、突然校舎の窓ガラスが割れ、マネキンのような、不気味な女の幽霊が2人の前に現れます。

父親は、マサルを置いて逃げてしまいますが、女の幽霊はマサルを襲う様子を見せません。

マサルが戸惑っていると、リアカーを引いた父親が戻って来て、マサルを乗せて校舎から逃げ出します。

親子で不思議な体験をした、その10日間後、父親は不倫相手の女性と家を出てしまいました。

それから、20年後。

大人になったマサルは、公園に出かけます。

すると、不倫相手に捨てられた父親が座り込んでいた為、マサルは「おかえり」と伝えて、父親を迎え入れます。

「秘密」


(C)2021「ゾッキ」製作委員会

本田さんと結婚して以降も、伴くんは牧田の姉の命日に、線香をあげに来ていました。

伴くんを駅まで送った牧田は、高校生の頃に2番目に好きだった、前島りょうこと再会します。

河原を眺めながら、思い出話で盛り上がる2人ですが、唐突にりょうこが「牧田って秘密ある?」と聞き始めます。

牧田は戸惑いながらも「墓場まで持って行く秘密が1つ」と答えると、りょうこは「そうか」と納得した様子で、笑顔を見せるのでした。


映画『ゾッキ』感想と評価


(C)2021「ゾッキ」製作委員会

独特な表現力から「唯一無二」と評される漫画家、大橋裕之の初期短編集『ゾッキA』『ゾッキB』。

その2冊30編の短編作品の中から、選りすぐりのエピソードを実写化した映画『ゾッキ』。

原作では、関連性の無いエピソードの連続でしたが、映画『ゾッキ』では「秘密」「Winter Love」「伴くん」「父」の4つのエピソードを主軸に、「アルバイト」「オサムをこんなうさんくさい道場に通わせたくありません」のサブエピソードが展開されます

全てのエピソードが、同じ街で展開されているという設定なのですが、それぞれのエピソードが、なんとなく始まって、なんとなく終わっていきます。

それぞれのエピソードが、少しだけ絡み合う部分もありますが、そんなに複雑な構成ではありません

ただ、この起承転結もハッキリと無く、なんとなく展開されていく物語は、原作の作風を大切にしたからこそで「ゾッキ的」であると言えます

また、本作では全てのエピソードが「秘密」という、共通のテーマで繋がっています

各エピソードの登場人物は、何かしらの「秘密」を抱えており、それにより、他人には理解できないような嘘をついたり、奇妙な行動を取るようになっていきます。

「秘密」をテーマに展開される各エピソードは、寂しさや虚しさ、時に狂気を秘めた内容となっており、「秘密」「父」を担当した竹中直人、「Winter Love」の山田孝之、「伴くん」の齊藤工、それぞれの監督の持ち味が、作風に反映されています

山田孝之は、事前に入念なロケハンを行い、そこで知り合った地元の人を作品に登場させたり、齊藤工は、メインキャラクターの伴くんに、お笑いコンビ「コウテイ」の九条ジョーをキャスティングするなど、その製作方法にも、それぞれの持ち味が出ています。

ただ、全体の空気を作り出しているのは、原作の『ゾッキ』に惚れ込み、本作を企画した、竹中直人の何とも言えない狂気的な部分ではないでしょうか?。

タイトルにもなっている「ゾッキ」とは「寄せ集め」を意味する内容で、ラストでは、それぞれのエピソードの登場人物が集まり、映画『ゾッキ』の世界観、時間軸を完成させていきます

ですが、ここも「各エピソードが絡み合う」というような複雑な構成ではなく、なんとなく登場人物が集まっただけのラストシーンとなっており、壮大な物語にはなりません。

この、終始肩の力が抜けた作風が、映画『ゾッキ』の魅力であるのでしょう


まとめ


(C)2021「ゾッキ」製作委員会

竹中直人、山田孝之、齊藤工、くせ者俳優が、共同で監督を務めた事でも話題になっている映画『ゾッキ』

出演者もくせ者だらけで、メインの登場人物を吉岡里帆、松田龍平、森優作、九条ジョー、竹原ピストルという、俳優だけでなく、芸人やミュージシャンなど、各分野の才能が集結しています。

さらに、鈴木福、満島真之介、石坂浩二、國村隼など、脇を固める共演人も豪華なのですが、特に安藤政信と松井玲奈、倖田來未が、一見すると誰だか分からない、驚くような役で出演しています。

天才とも呼ばれる漫画家、大橋裕之の原作を、くせ者が集結し実写映像化させた映画『ゾッキ』。

シュールで緩い雰囲気の作風ながら、これだけの才能が集結した作品も珍しいです

「ゾッキ的」としか表現しようのない、本作の魅力を是非味わってみて下さい



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