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Entry 2017/11/22
Update

映画『泥棒役者』ネタバレあらすじと考察。舞台裏の本当の解釈とは

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

2017年11月18日より公開されたコメディ映画『泥棒役者』は、人気アイドルグループ「関ジャニ∞」のメンバー丸山隆平が単独主演を果たした作品です。

演出を務めるのは本作が劇場公開2作目となる西田征史監督

どうやらこの作品は“笑い”特有の風刺のセンスが隠された設定あり、舞台裏を深掘りして読めば、シニカルな視点から見た日本人への批判精神と、応援のメッセージが隠されていました

1.映画『泥棒役者』の作品情報


(C)2017「泥棒役者」製作委員会

【公開】
2017年(日本映画)

【脚本・監督】
西田征史

【キャスト】
丸山隆平、市村正親、石橋杏奈、宮川大輔、片桐仁、高畑充希、峯村リエ、ユースケ・サンタマリア、向井理、片桐はいり

【作品概要】
アイドルグループ「関ジャニ∞」のメンバーである丸山隆平が単独初主演を務めたコメディ映画。

NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』やアニメ『TIGER & BUNNY』などで人気の脚本家の西田征史による、劇場監督2作目となる作品です

主人公はじめ役を丸山隆平、その恋人の美沙役を高畑充希が演じ、市村正親、ユースケ・サンタマリアたちの共演が脇を固めています。

2.映画『泥棒役者』のあらすじとネタバレ


(C)2017「泥棒役者」製作委員会

小さな町工場の溶接工として、真面目に働いている大貫はじめ

彼は恋人の藤岡美沙と、貧しいながらに幸せな同居暮らしていました。

しかも、毎日はじめに優しくし接してくれ美沙の誕生日を迎えたのです。

はじめは折角の誕生日に美沙を喜ばせたいと、付き合い出した当初のように約束の時間を決め駅前で待ち合わせ、その後に美沙へのプレゼントを一緒に購入しに行くデートを提案します。

その後、約束の時間に一足早く到着した、はじめの前に現れたのは運悪いことに、美沙ではなく畠山則男でした。

はじめにとって則男は、児童福祉施設の先輩であり、昔に自分を窃盗の道に誘い出した人物で、彼とともにはじめには少年院に収監させた張本人でした。

刑期を終えて刑務所から出所してきた則男は、ふたたび、はじめに金庫破りの窃盗を強要します。

今では窃盗から足を洗ったはじめは、止めましょうと激しく拒否します。

しかし則男は自分の言うこと聞かないようなら、はじめの過去を恋人の美沙に告げ口して、本当の大貫はじめの姿を暴露して知らせると恐喝をします。

大切な美沙に自分の犯した過ちの秘密を知られたくないはじめは、スマで美沙に急な仕事でデートに遅れることを伝えます。

渋々、先輩の則男が目を付けた大きな洋館の玄関をはじめはこじ開けると、2人は屋敷のなかに忍び込みます。

それでもはじめは、何とか金庫破りの犯行に及ばないように最後の最後まで則男に抵抗をしました。

人のいる気配の物音にとっさに則男だけは、クローゼットの中に隠れますが、鍵を開けてあった玄関から訪問販売のセールスマンの轟良介と名乗る男とはじめは顔を合わせてしまいます。

その男は、はじめを家の主人だと勘違いしたのを良いことに、正体がバレたくないはじめは自分が主人だとばかり話を合わせて演じます。

は相手の空気を読むことが出来ずに、しつこく、油絵のセットを買わせようと迫ってきましたが、何とかはじめは追い返すことに成功します。

すると今度は部屋のドアから主人らしい男がドアを開けて出てきました。その男の名前は前園俊太郎といい、この家の主人で職業は絵本作家でした。

またしても、はじめは成り行きに任せで、編集者の代行に来た人物に勘違いされたのを良いことに、はじめは今度は出版社の編集者を演じます。

それを信じ込んだ前園俊太郎が着替えに部屋に戻った隙に、玄関から逃げようとしますが、今度は若い女性が玄関から入って来ました。

どうやら彼女こそが、前園が勘違いしていた編集者の代行する奥江里子でした。

は初対面の作家先生に失礼があってはいけないと、はじめを絵本作家の前園俊太郎だと勘違いしたことに、はじめはまたも上手く話を合わせて、その場を何とかやり過ごします。

無理やり過去を知る先輩の則男に脅されながら、はじめは強盗に忍び込んだ洋館の屋敷内で、絵本作家の前園俊太郎、編集者代行の奥江里子、そして強引に戻ってきたセールスマンの轟良介と、4人の勘違いは入り乱れて加速していきます。

はじめは思いを寄せる美沙に、急な仕事が入ってバースデーの約束を守れなかったことをスマホで詫び続けます。

一方の美沙はガーンとショックを受けるも怒りもせずに、自宅でカニクリームコロッケを手作りして待ってるとLINEで返信します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『泥棒役者』ネタバレ・結末の記載がございます。『泥棒役者』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
しかし、上手くやり過ごしていたと思い込んでいたはじめですが、前園の屋敷に窃盗侵入していた事実は、前園俊太郎にバレてしまいました。

その前園は自分の言うことを聞かなければ、はじめのことを警察に通報すると脅かします。

前園が出した条件とは、自分の代わりを演じて、創作絵本として締め切りが迫る原稿を間に合わせられるように描けというものでした。

いくら何でも素人であるはじめには絵本が描けるはずがない無理だと、前園に言います。

しかし、プロが無理なのだから素人とは無理ではないと聞き入れません。

断り続けるはじめに、では警察に行くかと言う前園。無茶苦茶にも強盗から今度は強制絵本創作へと、はじめは巻き込まれていきます。

はじめはアイデアをいくつか出しました。児童養護施設で友達が誰もいなかったことや、先輩の泥棒の片棒を担ぐ話など、どれも話の内容が暗い自身の身の上話ばかり。

とても絵本のネタにするのは不適切で、前園から不許可が出されてしまいます。

しかし、はじめの話はどうやらすべてが本当の話のようでした。

なかでも前園俊太郎のかつて描いたベストセラーの絵本『タマとミキ』に心を打たれて、その前向きな内容にあった、『まだ終わってないニャー!』台詞が好きで感動した救いであったことも前園本人に思いを伝えました。

なかなか、家の主人であると思い込まれているはじめと、作家である前園本人が2階の部屋から降りてこない様子に、業を煮やした奥と轟は2階の部屋に押し入っていきます。

前園のことを家政婦だと思い込んでいた2人でしたが、今度は前園を、はじめのゴーストライターであると勘違いした2人は、何とか絵本の原稿を締め切りに間に合わせようと一緒になって絵本の創作に入っていきます。

実はこの4人には、それぞれの抱えた過去の問題から脱却できないという状況があったのです。

はじめは元窃盗犯であった秘密が美沙に告げられず、轟は田舎から上京して空気が読めずに訪問販売が売れない販売員、は作家先生に助言をしたことで編集長に叱られていました。

そして何よりも屋敷の主人である前園は、過去にヒットした絵本『タマとミキ』を超える作品が作れずにいました。

4人は絵本のアイデアをしぼりだしました。それまで周囲から必要にされることがなかった彼らは、苦しい創作活動でも必要とされることに大きな笑顔が見られます。

その仲の良い団欒の様子を隣のアパートの窓から見ていたのは、前園の屋敷の隣人で高梨仁でした。

彼は40歳ほどの歌手志望のユーチューバーで、いろいろな芸をしながら自身の歌を動画をyoutubeにアップしていました。

そんな高梨はユーチュバーとして閲覧されないストレスからか、エアコンの室外機の音がウルサイとか、階段の上り下りの足音がウルサイと前園に苦情を言い来る迷惑な人物でした。

前園の楽しげな様子に、そんな高梨はどこかへ電話をかけました。

一方で楽しく創作活動をする4人は、絵本の物語として1つのアイデアをまとめ上げました。

その内容はゴミとなったチリ紙やその仲間のゴミたちが力を合わせて困難を超えて、屋敷の外へ飛び出して、外の太陽の光を浴びるという童話でした。

どうにか絵本の原案となる物語は決まりましたが、編集者代行ののスマホに連絡がきました。

出版社の編集長である米村真由美からの前園の絵本の進行具合を聞く連絡でした。そこではどうにか完成に目処がつきそうな新作絵本のアイデアを米村編集長に告げます。

するとそれのアイデアを聞いた米村編集長は、『タマとミキ』の続編でないことに約束が違うとご立腹。今後は前園俊太郎の絵本を一切出版する取引はしないと契約破棄を伝えられてしまいます。

しかし、その編集長の言葉を聞いた前園の表情は落ち着いていました。

昨日に前園は編集長と会ったときに『タマとミキ』の続編を書いて欲しいと釘を刺されていたのです。

例え新作絵本がかけたとしても米村編集長の要求した原稿ではなかったのです。かつて亡き妻美希子の支えがあって描くことができた『タマとミキ』の続編は、妻亡き今は描くことはできないのです。

また、前園は金銭的にも苦しくなっている身の上についても話し始めました。

そして、金になるものと言ったら、金庫に入れられた当時に描いた『タマとミキ』の原画で、今なら100万円くらいで売れるというのです。

それは前園の亡き妻の美希子が大切にしようと金庫にしまっていたことで、鍵の在り処もわからず金庫は開くことはないというのです。

前園はそれを窃盗に入ったはじめにあげることもできなくて申し訳ないと言います。もちろん、はじめは、大切なものを頂く訳にはいかないと言いました。

ここでようやく、編集者代行のと訪問販売のセールスマンは、家政婦であると思っていた前園が本人で、はじめの方が偽物の泥棒であると気が付きます。

すると、そこにクローゼットの中に隠れていた則男がようやく姿を現すと、そのまま4人を脅し出します。

則男は手にした鋭いナイフではじめを脅し、前園、奥、轟のことをガムテープで縛らせた後に、金庫を開けるように命令します。

はじめは金庫を開けると、中から『タマとミキ』の原画を取り出すことに成功します。

しかし、この原稿は前園とその亡き妻美希子の大切な思い出だと則男には渡せないと抵抗。

はじめ則男に殴られながらも原稿を必死に守ります。

そのとき玄関から警察を名乗る声が聞こえてきました。それは隣で賑やかで楽しそうしていた様子にイライラを感じた高梨が、電話で苦情通報してことで見回り巡回に来たものでした。

奥は「help〜!」と助けを呼び求めます。混乱する現場に入った警官をよそ目に則男は、まんまと隣の部屋の窓から逃走。

ガムテープで縛られている3人を発見した警察官は、はじめを犯人だと思い込むと彼を逮捕しようとします。そこに様子を見に来た高梨も現れました。

すると、機転を利かせたが、「これは実演販売です!」と縛られていても上手に絵を描けることを実演していたと言います。

警察官は聞き返します、ではなぜ、はじめ1人だけが縛られていないのかと問うと、轟は全員が縛られては誰が縛ったものを剥がすのですかと言い返します。

無茶苦茶な展開にも警察官は納得して、はじめの逮捕を取りやめると、一緒にやって来ていた高梨に注意喚起をします。

「今後は控えていただけません?虚偽通報にもなりかねませんよ」と警察官は何事もなかったように帰って行きました。

やがて、はじめは自分はやはり警察に出頭して自首をする意思を伝えます。しかし、前園は亡き妻の残してくれた原稿が出て来て良かったと水に流そうとします。

前園はじめに、仕事を手伝ってくれたうえに、長年開かなくなっていた金庫を開けてくれたと感謝を述べました。

すると、『タマとミキ』の原稿を眺めていたは、そこに挟み込んであった美希子からの一通の手紙を見つけ、それを勝手に読み上げます。

俊太郎さんへ 最近は喧嘩ばかりですね。顔を見ると素直になれなくて、つい逆のことばかり言ってしまうので手紙を書きました。いつ気付いてもらえるかわからないけど、私たちの想い出の中に入れておくね。『タマとミキ』の美希子より

前園は亡き妻の思いに触れたことを噛み締めます。そのときはじめはあることに気が付き、『タマとミキ』の続編が描けると思い付いたのです。

はじめは「まだわからないんですか?」と前園に言いますが分からない彼はキョトンとしています。

続けてはじめは言います、「美希子さんは思いを伝えてますよ。素直になれないと書き残した美希子さんが、タイトルを変えたんですよ?『タマとミキ』を逆から読むと?」。

前園は心の中でタイトルを逆さに読むと、(君とまた…)。原稿が描けるような気がして来た前園と共に書斎に上がります。

前園は静かにはじめに微笑み、「君も頑張れよ、人生の続編」と言い、はじめは頑張りますと返しました。

そして、はじめにユーチューバーの高梨に油絵セット薦めるのはどうだろうと言います。

すると合点の入ったはすぐに高梨の元へ向かい、4人それぞれは人生の続編を続きを手にします。

やがて、はじめは美沙の待つ自宅へ戻る帰り道で、待ち伏せしていた則男が現れました。

はじめの前に立ちふさがる則男は、はじめの過去を彼女美沙にバラすとふたたび脅かします。

するとはじめは、自分は馬鹿でした最初から彼女に伝えておけば良かったと言い、則男に「先輩も仕事、探してください。則男さんも『まだ終わってないニャー!』」と告げ、財布から現金を手渡しました。

その後、はじめは家に帰ると、すっかり待ちくたびれてしまいフテ寝をしていた美沙に、話があると真剣に切り出します。

過去に窃盗の容疑で少年院に入っていたことを正直に打ち明けると、美沙は「知ってたよ」と拍子抜けするような返事をしました。

弁当屋の配達として工場に出入り美沙は、工場の社長にはじめが感謝の身の上を告げていた様子を影でこっそりと見ていたのです。

そのような、はじめの真面目な人柄を好きになったのです。

そして美沙は、「うん…、最初はどんな人なのか不安だったけど、毎日働いて頑張ってる姿を見てたら、だんだん気になってきてさ。で、根っこの部分で『いい人』なのは分かったから、こうして付き合ってます。以上」といつものように陽気に微笑みました。

はじめ美沙のお互いの想いは、深いものでつながっていたのです。

ふと、はじめ美沙の誕生日プレゼントを用意していないことを思い出しました。

はじめがポケットの中を探ると、から訪問販売された時に手渡された不細工な手作り太陽くん人形が入っていました。

それを美沙に「誕生日おめでとう!」すると、どことなく太陽くん人形とはじめの顔は似てるような気が美沙はしました。微笑み合うはじめ美沙

一方でユーチューバーの高梨は、手をガムテームで縛られた状態で油絵を描きながら歌を歌っています。再生数は1843回とこれまでの100倍近い数値を上げていました。

そして則男はネコの着ぐるみの中に入るバイトをしていました。それはネコと女の子が描かれている絵本の宣伝です。

前園俊太郎の『タマとミキ』20年ぶりの続編。その表紙にはタマとミキ、そして一匹の犬が描かれています。

続編のタイトルは『タマとミキと犬のモジャ』。その犬は紛れもなくはじめのことでした。

3.映画『泥棒役者』の感想と評価

ポイント① 暗喩されていた舞台設定は「日本と朝鮮半島」の関係

アイドルグループ「関ジャニ∞」のメンバーである丸山隆平が単独初主演を務めた本作。

映画の冒頭で小さな町工場で働く大貫はじめは、スクリーンに姿を見せるものの、なかなかその顔をキャメラに捉えさせません。

西田征史監督は丸山隆平ファンへの焦らしとともに、過去の出来事の後ろめたさからか、本当のことを言い出せない(表せない)という演出を見せます。

その後、はじめと美沙がデートの待ち合わせをしたのは埼玉県川口市にある川口駅のロータリー橋の上

町工場という設定で川口なのかと、当初はその程度の意味に感じ取っていました。

しかし、この作品の舞台設定が川口というのには大きな意味がありました。

物語の中盤から登場するユーチューバーの高梨仁という存在の登場で明確になります。

彼の部屋には赤い唐辛子の装飾飾り付けがあり、それは高梨が在日の血筋であることを暗示した小道具です。

川口といえば、往年の映画ファンなら誰もが知る1962年に公開された、今村昌平による脚本の浦山桐郎監督の名作キューポラのある街』。

参考映像:吉永小百合主演『キューポラのある街』

本作『泥棒役者』の物語の設定は、日本と朝鮮半島の関係がメタファーに隠されていました

在日である高梨仁という存在であってこそ、この作品がコメディとしての大きな魅力を持つことになります。

では、そのメタファーに触れる理由をいくつか挙げていきましょう。

前園の住む自宅である洋館は“日本という国”であり、高梨の住むアパートは“朝鮮半島”になっており、お隣さんの関係として描かれています。

だからこそ、何かと(日本へ)苦情やイチャモンをつけてくるのが高梨という存在ということになっています。

エアコンのガタピシと音を立てる室外機は、かつて日本のお家芸であったメイドインジャパンの電化製品の比喩

前園の表現が絵本作家というのに対して、高梨はユーチューバーというのもネット社会では先進的な韓国を表しているのでしょう。

しかし、あくまで高梨は北朝鮮と韓国のどちらなのかということはあまり明記されていません。

さかのぼれば、1962年の『キューポラのある街』では在日朝鮮人ということが大きな意味を持った作品でした。

主人公の少女ジュンの親友金山ヨシエや、タカアキの親友のサンキチの登場は明確にそのように示されていました。

しかもサンキチは新潟から船に乗って北朝鮮帰還運動の名の下に、北朝鮮に夢を抱き帰っていく設定だったからです。

また主人公ジュンの父親の石黒辰五郎は、高度経済成長のなかオートメーション化される鋳物工場を解雇されます。

仕事にあぶれた辰五郎は無責任にも、また朝鮮戦争が起きたらいいと、朝鮮特需で景気が湧いた頃を振り返ります

一方で『泥棒役者』の方では前園俊太郎は落ち目の絵本作家であり、お金にも困っていると話していました。当然のことながらこれは現代の日本経済そのものを示しています

ここで登場した4人が過去に捉われていることを思い出してみましょう。

①はじめは過去に犯した罪を愛する人に言えない。
②前園は過去の栄光から落ち目となっている。
③奥は過去に自分の言った発言を悔やんでいる。
④轟は過去に友人に騙された負債(油絵セット)抱えている。
(*等々力については、映画ではあまり描かれず原作にあり)

この点のどれを見ても現代社会で日本人が自信をなくし、未来を見出せない抱え込んでしまったものを表現したものでしょう。

一方で歌手としての才能はなくとも(おそらく)高梨は、ユーチューバーとして一生懸命に励んでいます。もちろん、隣人の前園に対しての僻みコンプレッススを抱いています。

この「日本と朝鮮半島の関係」を枝いた裏設定に気が付かないで、勘違いのどたばた喜劇として観ることもできます

しかし、本来“お笑い”というものが持つ最大の力は、権力や強いものへの批判精神や風刺です。

今の日本の現状をコメディ映画で示されて笑えないようでは、独裁国家であるましし、何かに強いられた所詮は民でしかないのでしょう。

1度鑑賞した際に、西田征史監督の巧みな裏設定に気が付かなかったあなたは、もう1回、本作をご覧いただくことをお薦めします。

ポイント② 日本と朝鮮半島の未来への続編は?


本作が現状では上手くいっていない人たちばかりが登場します。

彼らが日本と朝鮮半島の関係をメタファーにした物語のなかで、その状況を打破した後に関係改善の働きかけをしたのは誰でしょう。

それはデーヴの油絵セットの訪問販売をセールスマンの轟良介です。

奇しくも窃盗犯の先輩の則男にガッツがあるヤツと言われた轟。

また、皆んなから空気が読めないと揶揄されますが、空気を読めない轟だからこそ、膠着状態になっていた前園と高梨の関係を良い方向に持っていけたのでしょう。

映画ではそこまでは詳細に描かれていませんが、きっとそうなのでしょう。

たまにはあまり神経質になりすぎず、鈍感力が互いの未来を創って行くのかもしれませんね。

まとめ


(C)2017「泥棒役者」製作委員会

さて、本作のなかで、はじめ、前園、奥、轟という4人のが創作絵本のアイデアを出し合った物語がありました。

ゴミたちが力を合わせて、最後は玄関を飛び出して、外の世界へと旅立って行くお話でしたね!

これから先の人生に不安を感じていた彼ら(役立たず?ゴミ?)に、太陽の光が降り注ぎ、明るい未来を感じさせて、ジ・エンドを迎えたストーリーがアニメで表現されていましたね。

まさしく、こそが今の日本そのものの現状であり、応援歌なのです。

また、それを象徴した轟の手作りの太陽くんのぬいぐるみを、美沙はとても無邪気に誕生日プレゼントとして喜んでくれました。

誠実で情熱的なはじめを、そのぬいぐるみに表情に感じたからでしょう。

太陽くんは、はじめであり、太陽くんは日本なのです。現状はどうであっても明るく突き進むしかこの国はない。

そのように映画『泥棒役者』は、日本人であるあなたの人生の続編に、フレー、フレーと応援を送る作品なのです。

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