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Entry 2020/06/08
Update

映画『銃2020』感想レビューと内容考察。キャストの魅力と続編への時間系列から見えたもの

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

2018年に武正晴監督が中村文則のデビュー作を映画化した『銃』のアナザーストーリーとなる第2弾『銃2020』

芥川賞作家・中村文則のデビュー作『銃』を村上虹郎を主演に迎え2018年に公開された『銃』。

その公開以前から企画・製作を務める奥山和由プロデューサーが、日南響子を主演に「女性が銃を拾ったらどうなるか?」「女性なら男のように銃を撃つことに躊躇はない」などの発想を基に製作されたのが、映画『銃2020』です。

もちろん、脚本と監督でタッグを組んだのは、作家・中村文則と映画監督・武正晴で、奥山プロデューサーの元に集結。

今回は女性を主人公に新たな視点で“銃を拾った若者の危険なひと夏”を描いた映画『銃2020』が完成し、TOHOシネマズ日比谷ほかにて2020年7月10日(金)公開されます。

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映画『銃2020』の作品情報


(C)吉本興業

【公開】
2020年(日本映画)

【企画・製作】
奥山和由

【脚本】
中村文則

【監督】
武正晴

【キャスト】
日南響子、加藤雅也、友近、吹越満、佐藤浩市、山中崇、宇野祥平、篠原ゆき子、内田慈、岡山天音、サヘル・ローズ、片山萌美、中村ゆうじ、村上虹郎、リリー・フランキー

【作品概要】
中村文則自身にとって思い入れのあるデビュー作『銃』を、2018年に武正晴映画化した作品の第2弾『銃2020』。企画・製作は前作に引き続き、奥山和由プロデューサーによるもの。

前作で“トースト女”を演じた日南響子が主演を務め、共演者に佐藤浩市、加藤雅也、友近、吹越満らが集結。『銃』で主人公西川トオルを演じた村上虹郎と、リリー・フランキー演じるトオルを追う刑事も登場。原作者の中村文則が映画のために新たにオリジナル作品として脚本を手がけた注目作。『銃』に続き武正晴が監督を務めます。

映画『銃2020』のあらすじ


(C)吉本興業

「昨日、私は拳銃を拾った。こんなに奇麗で、不機嫌そうなものを、私は他に知らない」。

深夜のネオンの輝く猥雑なとある街。東子(日南響子)は自分の後をつけてくる不穏なストーカー・富田(加藤雅也)の足音に気がつきます。

東子はストーカーから逃れるため、雨に濡れたエイトセンターという、薄汚れた雑居ビルに入ります。

駆け上がったフロアーで、流れ続ける水の音が気になり、トイレのドアを開けて入ると、辺りは血に染まり、洗面台の赤い水の中に拳銃が落ちていました。

その後、拳銃を拾った東子は、電気が止められ、ゴミに溢れた自身の部屋に独り戻ります。拳銃の弾倉を確認すると、なかには弾丸が4つ入っていました。

自分を毛嫌いし、死んだ弟を溺愛し続ける母親・瑞穂(友近)を精神科に見舞った後、東子はこの銃が誰のものだったのかが気になり、再び雑居ビルへと向かいます。

そこで見かけた不審な男・和成(佐藤浩市)の後をつけますが、逆に東子は和成に捕まってしまって……。

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映画『銃2020』の感想と評価

参考映像:前作第1弾.村上虹郎主演『銃』(2018)

本作『銃2020』の演出を務めた武正晴監督といえば、映画『百円の恋』(2014)や「嘘八百」シリーズを劇場公開させ、また配信ドラマ『全裸監督』(2019)の総監督も務めている、いま、脂の乗り切った旬な映画作家のひとりです。

前作となる2018年に公開した映画『銃』では、主演に村上虹郎を迎え、青春ジャパニーズ・ノワールとしての質の高さは、東京国際映画祭をはじめ、国内外の映画祭で高い評価を受けました。

前作『銃』では、村上虹郎と実父・淳の親子共演というキャスティングで、俳優としての職業、またメタとして父親越えを主人公にダブらせたシュールな演出と表現としての色気で、多くの映画ファンを魅了しました。

特にモノクロームの世界観を主軸に、村上虹郎演じる、主人公の青年トオルのあらゆる内面の肉声をモノローグで聴かせるという手法は、古今東西に数多く存在する“独白”する登場人物あれど、唯一無二の表現が成されたものでした。

闇と光、もしくは“孤独と希望”


(C)吉本興業

では、第2弾となる本作品『銃2020』の見どころとなる鑑賞ポイントはどのような点になるのでしょう?

2度同じ手法を用いない武正晴監督の演出は健在です。本作でも映画ファンを思わず唸らせてしまう多彩な演出を見せてくれます。

本作では、前作のモノクロームな世界観ではなく、全編カラー作品のスタイリッシュさ、その陰影のコントラストを色濃くしたノワールとしてで押し切ります。

先の作品で日南響子が演じる“トースト女”が主人公・東子となりますが、今度の彼女の自宅は、ゴミに囲まれた室内で、オマケに電気も止められた部屋となっています。

そう、主人公の部屋には煌々と照る灯りがないのです。武監督からスタッフに持ち込んだアイデアで、照明技師の志村昭裕と撮影担当の西村博光の手腕が試される粋な演出といえます。(カメラマンの西村は前作から続投)

これが実に面白い!そもそも映画というものは、“光を消した、あるいは遮断した劇場で上映の映写を始めるもの”。つまりはこの演出は正真正銘の映画という、武監督の遊び心に満ちた作品なのです。

主人公・東子を演じた日南響子がいかなる灯りに照らされるのか、まるで“マッチ売りの少女”のごとく映り出す東子に要注目。特に「火」が灯された時の彼女の所作は、劇場で観るの方が良いに違いありません。

「電気」と「火」という明かりの違いなど、武監督の映画的な演出も光り輝くばかりでありました。

不意に現れた“日本版ジョーカー富田?”


(C)吉本興業

本作では日南響子演じる東子に群がる親父たちの役者が揃っています

吹越満は、東子の動向に事件の匂いを怪しむ、自身もキナ臭い刑事を魅力的に演じています。また、佐藤浩市は東子の色気に魅了され好意を抱く極道の和成、比較されるの御法度ですが、父親のような“イヤラシイ老犬”に成熟しています。

もちろん、演技派で知られるリリー・フランキーも前作同様の刑事役で数ショット登場。しかも存在感は圧倒的です。

しかし、じぶんとしては、そのなかでも、どうしても加藤雅也演じるストーカー富田に注目したい

加藤雅也といえば、2019年の『二階堂家物語』では日本人らしい頑固な役柄を演じていましたが、本作『銃2020』では、実に特異で奇妙なキャラクターを務めています。

富田の存在は単なるストーカーなのか、それとも運命の神か、とり憑く悪魔なのか…。

参考映像:『デカローグ』(1989〜90)

武正晴監督がいくつもの粋なアイデアの演出を見せる本作は、他の映画で例えて比較するなら、やはり、クシシュトフ・キェシロフスキ監督の「デカローグ」に近い気がします

そんな風に感じさせるのも、加藤雅也が演じた、謎の多い富田のインパクトによるものも大きいのではないでしょうか

この富田へのキャストングの采配は、奥山プロデューサーの映画的閃きで行われたそうです。ただ、日本人俳優でも、“あのジョーカー”をヒース・レジャーやホアキン・フェニックスのごとく、演じられるのは、いまの加藤雅也ぐらいではないでしょうか

蛸のように軟体で奇妙なリリー・フランキーの演技に対して、加藤雅也の演技を例えるなら、鉄砲銃座に使われるほど硬い“胡桃の木の枝のような演技”、その所作のすべてに注目です。

そんなストーカーの富田ですが、見ようによっては、東子にとってのある種のナイト(騎士)のよう存在で、本当にカッコ良すぎます。

まとめ

本作『銃2020』には、友近が東子の母親・瑞穂で登場します。いうなれば、彼女の存在はリュック・ベッソン監督の『ニキータ』(1990)のジャンヌ・モローのような役柄で、日南響子の演技を引き上げ盛り上げてもいます。

映画製作に吉本興業が絡んでいるいるだけに、こちらも見事に作品の華となっているといえるでしょう。

そのほか、本作には、前作に引き続き、村上虹郎や岡山天音もゲスト出演。『銃』ではナンパは大学生だった彼らが高校生役で登場しています。

トースト女”とどのようにすれ違っていたのか、そんな時間軸を楽しむのも良いのではないでしょうか。特に村上虹郎演じるトオルは、劇場の大きなスクリーンで、その存在を見逃さないように。

作家・中村文則と映画監督・武正晴が、名プロデューサー奥山和由の元に集結した映画『銃2020』は、個人的には『デカローグ』のように、シリーズ化させたい大人の匂いに満ちた魅力溢れる作品となっています。

“トースト女”(東子)を主人公に新たな視点で描いた『銃2020』は、TOHOシネマズ日比谷ほかにて2020年7月10日(金)公開、お見逃しなく!




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