映画『銃』は、11月17日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー!
“これほど美しく、手に持ちやすいものを、私は他に知らない”というキャッチコピーの本作の原作は『悪と仮面のルール』『去年の冬、きみと別れ』で知られる芥川賞作家の中村文則。
プロデューサーに『いつかギラギラする日』『ソナチネ』という代表作のある奥山和由、演出は『百円の恋』など骨太な演出で定評な武正晴監督。
この3人のクリエイターによる純文学性をもった作品に、次世代を担う俳優である村上虹郎が本作品『銃』で渾身の演技を魅せる!
映画『銃』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【原作】
中村文則
【監督】
武正晴
【キャスト】
村上虹郎、広瀬アリス、日南響子、新垣里沙、岡山天音、後藤淳平(ジャルジャル)、中村有志、日向丈、片山萌美、寺十吾、サヘル・ローズ、山中秀樹、リリー・フランキー
【作品概要】
芥川賞作家の中村文則による同名デビュー作を『百円の恋』などで知られた武正晴監督が演出を担当し、若手人気俳優の村上虹郎と広瀬アリスで映画化。
企画・製作は奥山和由が担当し、かつて自身がプロデュースをした『海燕ジョーの奇跡』や『いつかギラギラする日』などで旋風を巻き起こしたような青春アクション映画を復活させています。
映画『銃』のあらすじ
大学生の西川トオル(村上虹郎)は、雨が降る夜の河原で、ひとりの男の死体とともに放置されていた拳銃を手にします。
その場から銃を自宅アパートに持ち帰ったトオル。
やがてトオルは、その銃拳を、生きている証のような宝物のように大切にあつかい始めました。
“これほど美しく、手に持ちやすいものである銃”は、見つめれば見つめるほどに、触れれば触れるほどに、愛しさがこみあげ、COLT社のLAWMAN MK Ⅲ 357 MAGNUM CTGを愛撫するかのよう。
まるで“美しき恋人”と一緒にいるような感覚で、トオルはこれまで体験したことのない、“ある種の自信”に満たされていきます。
銃を保持していることで、誰かを脅すことや誰かを守ること、また誰かを殺すことも可能にし、さらには自ら死ぬことも選択できる銃は、ツマラナイ大学生活をあざやかに変えていく道具(武器)になります。
トオルは悪友で女好きなケイスケに合コンに誘われ、欲求不満気味な彼の付き合いで、その夜に出逢った女と一夜のアヴァンチュールを楽しみます。
女の部屋での情交は、誰にも知れずに密かに銃を所持していることと似て、トオルを激しく高揚させます。
翌朝、トオルは彼女の部屋で目覚めます。今だ淫らな様子でキッチンに立っていた女はトーストを焼いていました。
カフェでバイトしているという女は、バイト先でわけてもらったというお気に入りの豆で、挽きたてのコーヒーとトーストでトオルをもてなします。
するとテレビから流れてきたのは、トオルが拾った銃と関係する男の遺体が発見されたというニュース。
途端に気分が悪くなったトオルは、トイレで嘔吐。
それで優しく接する女に欲情したトオルはふたたび彼女を押し倒し性行為に溺れます。
その日以来、彼女を“トースト女”(日南響子)と頭の中で呼び、セックスフレンドとして性欲を吐き出す関係になります。
ある日、大学の学食で食事をしているトオルの前に、以前も講義中に話しかけてきた帰国子女で美人なヨシカワユウコ(広瀬アリス)が現れます。
彼女はトオルに妙にフレンドリーで間合いを詰め、自分に興味がある素振りを見せることから、ヨシカワと付き合うことを妄想します。
しかし、すぐに性的な対象にするのではなく、あえて時間をかけて親しくなることを計画したトオル。
それはきわめてトオルにとって魅惑的なゲームでした。
銃を所持したことでの自信の余裕なのか。それとも銃を持ったことで、己を危険な方向へと行かせないため、“普通で生きる”安全装置のようなものか。
いずれにせよトオルは、ヨシカワユウコとトースト女という2人の両極の間で、自己存在のバランスを取って行きますが…。
映画『銃』の感想と評価
村上虹郎の俳優として勝負作
若手人気俳優の村上虹郎にとって、本作品『銃』は役者としての新境地を見せた映画です。
村上虹郎主演の2015年公開の『忘れないと誓ったぼくがいた』や、2017年に公開した『二度めの夏、二度と会えない君』とは一線を引くもので、男性としての色気と役者としての可能性の魅力を見せつけた作品。
近年若手俳優が主演の日本映画はキラキラ映画が全盛だが、本作はかつての昭和時代の日本映画を想起させる珍しい作風です。
それもそのはず、本作のプロデューサーは奥山和由。
参考作品:『海燕ジョーの奇跡』(1984)
かつて伝統を重んじた映画会社で、究極的に逆行するクールな作風で多くの映画ファンを驚かせた、今の日本映画界に無二の存在です。
1984年公開の『海燕ジョーの奇跡』で、藤田敏八監督を起用し、キャストに時任三郎、藤谷美和子、清水健太郎を集結させました。
また1992年に公開の深作欣二監督の『いつかギラギラする日』では、木村一八、多岐川裕美、荻野目慶子、石橋蓮司、千葉真一を集結。
参考作品:『いつかギラギラする日』(1992)
そのほかにも、1989年に新人監督として北野武を大抜擢させた『その男、凶暴につき』など、その功績は映画界において消えることはありません。
村上虹郎は、とある俳優から「虹郎にやってほしい役があるんだ」と言われ手渡された小説が、原作者・中村文則の『銃』でした。
それから数年後、プロデューサーを務める奥山和由から本作『銃』の企画を持ち込まれます。
つまり、本作は村上虹郎にとって俳優仲間や映画人たちから望まれ、村上虹郎にだからこそ、演じて欲しかった役柄が、主人公の西川トオルなのです。
村上虹郎という若き俳優の可能性
撮影当時、20歳だった村上虹郎は、次のようにトオル役について語っています。
「彼は銃と対話したわけですが、人は何かと対話しないと自分がわからないものだと思います。僕もそう。自己対話だけで自分がわかるなんてこと、そうはない。トオルには銃と対話している部分がある。銃と付き合ってもいる。そうやって引き出され自分がいる」
このように述べながらも、トオル役を客観視することが難しかったとも言っています。
しかし、役を演じた村上虹郎は、“トオルの真心はどこにあるか”、そのことをこれからも考えたいと語っています。
村上虹郎が挑んだ役柄とは
本作品『銃』は、かつての日本映画には欠かせず存在したジャンルともいうべき、“危ない男たち青春映画”を思い起こさせ、“銃をメタファーとして男根”として活かした特徴を持った作品です。
また、村上虹郎が挑んだ主人公の西川トオルは、日本映画には珍しくエディプスコンプレックスを見せながら、父親越えをしていきます。
映画の物語にしのばせたエッセンスとして、母親の代わりの“陰と陽”のごとく、広瀬アリスが演じるヨシカワユウコと、日南響子のトースト女。
そしてオイディプス王的な父親のメタファーには、中村有志の演じた彼を育ててくれたヤマネ、日向丈のトオルの実父、そしてリリー・フランキー演じる刑事。そして野球チームのキャップをかぶった男(?)…。
このキャスト陣のなか、村上虹郎は、かつてない寂しさと色気の表情を見せながら、青春のど真ん中で佇んでいます。
村上虹郎ファン、邦画ファンにとって必見のスタイリッシュな青春映画に仕上がっています。
本作品『銃』により、新境地を見せた村上虹郎の俳優としての可能性は必見に値するでしょう。
まとめ
この作品の原作者である中村文則は、1977年に愛知県に生まれました。
2002年に『銃』で新潮新人賞を受賞し作家デビューを果たし、その後、芥川賞や大江健三郎賞、またドゥマゴ文学賞を受賞。
中村文則は完成した映画を見た感想を、「ものすごい、という表現がいちばんふさわしい」と語り、村上虹郎の演技を次のように述べています。
「村上(虹郎)さんは、表情から立ち振る舞い、雰囲気、何から何まで、本当に驚きました。天性のものがないと、この主人公ができなくて。村上さんはぴったりでした。素晴らしかったです。観た人も驚くと思います」
誰の心にも存在する“銃が示す意味”を、村上虹郎の演技は体現しています。
プロデューサー奥山和由に見初められ、原作者の中村文則も驚きとともに一推しする、村上虹郎の青春映画の新境地を刮目せよ!
映画『銃』は、11月17日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー。
ぜひ、お見逃しなく!