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Entry 2022/01/22
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映画『社会から虐げられた女たち』ネタバレ感想と結末あらすじの評価解説。社会派スリラーを原作小説を基にメラニーロラン監督が描く|Amazonプライムおすすめ映画館8

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「Amazonプライムおすすめ映画館」第8回

今回ご紹介する映画『社会から虐げられた女たち』は、ヴィクトリア・マスの小説『狂女たちの舞踏会』が原作の社会派スリラー映画です。

監督は女優としても活躍するメラニー・ロランが務めます。監督として『TOMORROW パーマネントライフを探して』(2015)で、セザール賞のベストドキュメンタリー賞を受賞しました。

舞台は19世紀末のパリ。上流社会の娘ウジェニーには死者の声が聞ける能力がありました。ある日、弟や祖母にその秘密を知られてしまった彼女は、父によってサルペトリエール病院に入院させられてしまいます。

サルペトルエール病院は精神疾患の病人が収容され、入院したら2度と出ることのできないといわれる病院です。ウジェニーはそこでジュヌヴィエーヴ看護師長と運命の出会いをします。

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映画『社会から虐げられた女たち』の作品情報

(C)2021 Amazon Studios

【公開】
2021年(フランス映画)

【監督・脚本】
メラニー・ロラン

【原題】
Le Bal des Folles

【原作】
ビクトリア・マス

【キャスト】
ルー・ドゥ・ラージュ、メラニー・ロラン、エマニュエル・ベルコ、バンジャマン・ヴォワザン、セドリック・カーン、クリストフ・モンテネーズ、アンドレ・マルコン、バレリー・ストロー

【作品概要】
主人公のウジュニー役には『白雪姫 あなたが知らないグリム童話』(2020)、『ブラックボックス 音声分析捜査』(2021)に出演した、ルー・ドゥ・ラージュが務めます。

監督のメラニー・ロランはタランティーノ監督作『イングロリアス・バスターズ』(2009)で、主人公に抜てきされ国際的な女優となり、本作では看護師長のジュヌヴィエーヴを演じます。

冷酷な看護師ジャンヌ役に『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由』(2015)で、カンヌ国際映画祭の女優賞を受賞したエマニュエル・ベルコ、『Summer of 85』のバンジャマン・ボワザンが弟のテオフィルを演じます。

映画『社会から虐げられた女たち』のあらすじとネタバレ

ヴィクトル・ユーゴーの国葬に参列していた、クレリー家のウジェニーはその晩、何かの気配を感じ身体が震えます。

クレリー家の頭首で父のセドリックは厳格で、ウジェニーの天真爛漫な性格に理解がなく、常に劣等生とみなしています。

弟のテオフィルがサロンの討論会に行くというので、ウジェニーが同行させてほしいと願い出ても、「言語道断」と却下します。

就寝の支度をするため、バスルームに向かったウジェニーは、薄明かりの中何かの気配に襲われ、身体が震えだし意識の中に入り込まれます。ウジェニーには姿の見えない、何かを感じる能力がありました。

翌朝、ウジェニーはサロンに出かけるテオフィルの馬車に先回りして乗り込みます。テオフィルは父に知られたら大変だと騒ぎますが、ウジェニーの目的はモンマルトルのカフェで読書することです。

ウジェニーはヴィクトル・ユゴーの「静観詩集」を愛読しています。カフェでタバコをたしなみ読書に没頭しますが、斜向かいの青年が読んでいる本が気になり一瞥します。

青年はその視線に気がつき、ウジェニーに同席していいか声をかけてきます。ウジェニーは1人で読書に集中したいと断りますが、青年は自分をみつめていたのに?と食い下がります。

ウジェニーは青年のことではなく、持っていた本を見ていただけと言うと、彼はアラン・カーレックの「霊の書」だと教えてくれます。

その本には“人間を成す3つ”の1つ目が肉体、生命を吹き込む。2つ目が魂、肉体に宿った霊。3つ目が魂と肉体の繋がり。このことについて書かれています。

ウジェニーが「霊の書」に感銘を受けると、青年はぜひ読んでほしいと本を差し出します。

ある日、父の知人と娘のオルタンスが来訪した時、オルタンスは嬉しそうに“社交界デビュー”をすると、テオフィルに話します。ところがそれを聞いたウジェニーは「品評会に出る雌馬みたいね」と言ってしまいます。

ウジェニーは彼女を傷つける意図はなかったと言いますが、父のセドリックは日頃から、彼女の言動に不快感をもっていました。そして、仕事や家の名を汚し恥をかかせる「でき損ない」と言います。

クリスマスが近づき、ツリーの飾りを出すため、ウジェニーとテオフィルは納戸へ行きます。そこでウジェニーは再び身体が硬直し発作がおきます。

難度の片隅をみつめ動けないでいるウジェニーに、テオフィルが必死に声をかけると、発作は収まり「同じ人」か訊ねるテオフィル、ウジェニーは「別の人」だったと言います。

テオフィルはウジェニーにだけ見える能力を知っていましたが、彼女は今までは1人だったのが、別の人が見えるようになっていました。

ここ数日は若い女性が話しかけ助けを求めてきますが、何もできないことに無力さを感じると、テオフィルに訴え「霊の書」を読んで、自分に起きていることの意味をつかみかけていると話します。

テオフィルはそんなウジェニーを哀れむような眼でみつめ「怖い」と言います。それはウジェニーのことでもあり、霊の存在のことでもありました。

そして、見える人はどうなるのかウジェニーに聞きますが、それは彼女にもわかりませんでしたが、霊は存在すると興奮気味に語りました。

ある晩、ウジェニーがいつもの通り祖母の髪を解いていると、発作が起きてそばにあったチェストの引き出しを片っ端からあけ、中をまさぐり始めます。

狂気じみた行動をするウジェニーの姿に、祖母は動揺し慌てますが、ウジェニーはチェストの奥の方に手を突っ込むと、古いネックレスをみつけ取り出します。

それを見た祖母は奇跡だと驚きます。40年前に失くした夫からの贈り物で、当時の使用人が盗んだものだと思っていたからです。

ウジェニーは一点をみつめ放心状態でいると、祖母はどうしてそこにあることがわかったのか聞きます。ウジェニーは亡くなった祖父が教えてくれたと答えます。

翌朝、ウジェニーを起こしに母が来て、父がオルタンスと仲直りする機会を作ってくれたと話します。彼女に会ったら舞踏会のドレスを褒めてあげるよう言います。

母は娘を不憫に思い泣きますが、ウジェニーは母をがっかりさせないと誓います。

ウジェニーは父とテオフィルと共に家を出ます。馬車の中でウジェニーは、浮かない顔で外を眺めます。姿勢を正すよう父に注意されると、ウジェニーは父の足下に旅行用のカバンをみつけます。

ウジェニーが外を見るとそこは見知らぬ場所でしたが、虚ろな表情をした女性が立ちすくんでいたり、遠くで看護師が動き回るのを見た彼女は「サルペトリエール病院は嫌!」とテオフィルに訴えます。

サルペトリエール病院は精神疾患専門の病院です。ウジェニーは自分は病気ではないと、父とテオフィルに何度も訴え、入院を激しく拒みます。

泣きじゃくるウジェニーの腕を男の職員2人が持ち、引きずり出すと病院へと連れて行きました。

以下、『社会から虐げられた女たち』ネタバレ・結末の記載がございます。『社会から虐げられた女たち』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2021 Amazon Studios

ウジェニーは看護師長のジュヌヴィエーヴと面会し、身体検査を受けます。ウジェニーは「すぐに出ていくから」と言いますが、ジュヌヴィエーヴは「それを決めるのは父親」それまではシャルコー医師の指示に従うよう告げます。

彼女は何十人も収容され、ベッドだけが置かれている共同部屋に連れて行かれました。

ウジェニーの隣りは叔父から性的虐待を受け、ヒステリーを発症しているルイーズという女性です。彼女はウジェニーの身なりを見て、ブルジョワ階級だとわかります。

自分は平民だけど病院に入ったおかげで、医師の婚約者ができたと話します。ウジェニーは美人だから、四旬節の中日に行われる“舞踏会”ではもてるはずだとはしゃぎます。

患者には入院して2ヶ月間言葉を発しない者、常に怒っているマグリット、うつ病のアンリエット、嫉妬で夫を溺死させたテレーズは25年間入院していました。

翌朝、ルイーズは看護師や医師に連れられて行きます。シャルコー医師による「催眠術治療」の公開臨床試験でルイーズは度々、被験者となっていました。

ルイーズは催眠中に身体を痙攣させ、弓なりに反らせます…。実験は成功といえましたが、ルイーズの体力消耗は激しいものでした。

ジュヌヴィエーヴは昼食時には自宅へ帰り父親と食事をします。その時にルイーズのことを話しますが、医師である父はシャルコーによる神経性ショックで、てんかんになっているのでは?と疑問をなげかけます。

ジュヌヴィエーヴはウジェニーが入院してきたことも話し、彼女に興味を抱いている表情を浮かべます。

そのウジェニーは部屋の窓辺で誰かと話しています。その様子を見たジュヌヴィエーヴは声をかけると、ウジェニーは彼女を「マダム」と呼びます。

名前で呼ぶようジュヌヴィエーヴは言いますが、すぐに出ていくからマダムでいいと答えます。ジュヌヴィエーヴはさらに「先生が決めること」と言います。

するとウジェニーは決めるのは彼女だと答え、近くにくるよう言います。そして、ジュヌヴィエーヴの方を振り返ると「ブランディーヌ」という名前を口にします。

ジュヌヴィエーヴは動揺し黙るよう命令しますが、ウジェニーはブランディーヌは彼女の妹で、“赤毛”であることも言い当てます。

そして、ジュヌヴィエーヴが死んだ妹に、何通も手紙を書くのはなぜかたずねます。そして、霊の存在を信じているからでは?と畳みかけます。

ジュヌヴィエーヴはかなり動揺しながら、その場を離れていきます。ウジェニーの言った通り、彼女はブランディーヌに宛てた何通もの手紙を書いていました。

主治医の問診でウジェニーは「“死者”と会話ができる」と主張していると伝えられ、死者ではなく“霊”であり、自然に聞こえてくると訂正します。

主治医は否定的なことを言いますが、ウジェニーは聖母を見た少女“ルルブ”と同じだと主張しますが、受け入れられずヒステリー症と診断され、氷水のバスタブに入る「水療法」を2週間処方されます。

ジュヌヴィエーヴが家路に向って歩いていると、不審な男が後をつけてきます。アパートに着いた彼女は「何か用?!」と叫びます。

その男はテオフィルでした。姉を心配して様子を聞きに来たのですが、ジュヌヴィエーヴは答えられないと言います。彼はさらに「霊の書」を差し出し、渡してほしいと頼みます。

彼女は規則違反だと断りますが、強引に渡され受け取ります。テオフィルは姉のためと思ってしたことと後悔を口にし、助けてほしいとジュヌヴィエーヴに懇願します。

ジュヌヴィエーヴはその晩、「霊の書」を読み、心が大きく動かされます。翌朝、彼女は礼拝堂でなぜか祈ろうと思い立ちますが、すぐに出ていき患者達が働く洗濯場へ行きます。

ウジェニーをみつけるとテオフィルから「霊の書」を預かったと言います。ウジェニーは読んだかたずねると、読んだと答え本を渡す代わりに、妹と話しをさせてほしいと頼みます。

ウジェニーは病院から出してくれなければできないと条件を出します。ジュヌヴィエーヴは妹と話しができたら、主治医にかけあうと言ってその場を離れます。

(C)2021 Amazon Studios

クリスマスの朝、ジュヌヴィエーヴはウジェニーを起こして、ブランディーヌの霊と交信させ、彼女はジュヌヴィエーヴの父親が、台所で大変なことになっていると伝えます。

ジュヌヴィエーヴが父の家に駆けつけると、台所で吐血したあとをみつけ、寝室で倒れている父を発見します。ジュヌヴィエーヴは安堵するとともに、ウジェニーの能力と霊の存在を確信します。

父はなぜわかったのか訊ねます。ジュヌヴィエーヴは「なんとなく」としか答えません。父親が追及すると彼女はウジェニーの能力を教え、ブランディーヌが伝えてくれたと話します。

彼女の話に耳を疑う父は「科学を重んじ分別できるよう育てた…恥だと思わないのか?」と、責め立てます。

ブランディーヌの死は精神疾患と、ジュヌヴィエーヴが関わっているようでした。精神病院は影響されやすく、伝染するとまでいいます。

病院ではアンリエットやルイーズが再び、臨床試験の被験者として連れていかれます。ウジェニーは婦人科系の不調で診療を受けていました。

そこに右半身が麻痺したルイーズが運び込まれます。ウジェニーは変わり果てたルイーズの姿を見て、彼らの実験によるものだと指摘し、世間に知らせると叫びます。

シャルコーはウジェニーを黙らせるよう命令し、エーテルを吸わされ気を失います。ジュヌヴィエーヴはシャルコーにウジェニーの治療方針を聞きます。

彼は“隔離”するよう命じると、ジュヌヴィエーヴは世話係を志願しますが、シャルコーは患者を容赦なく虐待する、ジャンヌ看護師のいる隔離病棟へいれてしまいます。

ウジェニーが入ったのは地下牢のような隔離室です。そこでジャンヌが彼女にしたことは、灯り取りの天窓を閉めて日の光を遮断することでした。

一日に数秒だけ戸を開け閉めていくジャンヌ…ウジェニーはまともに食事もとらず、どんどん衰弱していきます。

ジュヌヴィエーヴはウジェニーのいる隔離室の天窓を開け、父親のことは本当だった、助けるから待つよう告げて行きます。

一方、ジャンヌは食事を摂らないウジェニーに、嫌味を言いにやってきます。ウジェニーは彼女にお母さんが来てると話し、この部屋にいたことを言い当てます。

そして、ジャンヌの母はその部屋に閉じ込められていたこと、その理由は母がジャンヌの息子フランソワーズを死なせてしまったからだと話します。

ジャンヌは激しく動揺し、元盗人のマルグリットに地下病棟の鍵を取られ、その鍵はジュヌヴィエーヴの手に渡ります。

ジュヌヴィエーヴはウジェニーの元に行き、ブランディーヌと話しをします。彼女は手紙を書かなくても、愛情は感じていると伝えます。

そして、彼女が解放され幸せになることを願っていると話すと、心のわだかまりが解消したジュヌヴィエーヴは、ウジェニーに感謝をし決心をします。

シャルコーから許可を得たジュヌヴィエーヴは、ウジェニーを共同病棟に戻し、誰も近寄らない排泄物を捨てる裏口に目をつけました。

そしてその晩、テオフィル宛てに“仮装舞踏会”の招待状を出し、ウジェニーには紙の切れ端にメッセージを書いて渡します。

舞踏会当日、テオフィルとウジェニーは再会を果たします。その様子をジュヌヴィエーヴは見守りますが、ジャンヌはウジェニーを監視しています。

舞踏会は乱痴気騒ぎになり、誰かがいなくなっても、気づかないほどになります。テオフィルとウジェニーはジュヌヴィエーヴに導かれ、別の部屋へと消えていきます。

ジャンヌはウジェニーを見失いますが、ジュヌヴィエーヴがウジェニーとテオフィルを外に連れ出すところでジャンヌと鉢合わせます。

ジュヌヴィエーヴは2人を裏門から出し、病院に残った彼女はもう自由になったから大丈夫と言って見送ります。

ジャンヌはジュヌヴィエーヴに「あなたは正気じゃない」と言いますが、彼女は「正気じゃない人間が誰かなんてわからない」と言い捨て連れて行かれます。

ウジェニーは海の見える美しい土地で、癒しを求めに来る人達を救い話をして慰め、彼女を信じる人たちから理解され、受け入れられているとていると手紙を書きます。

ジュヌヴィエーヴは患者として、サルペトリエール病院の共同部屋にいました。しかし、その顔は穏やかでウジェニーからの手紙に微笑みます。

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映画『社会から虐げられた女たち』の感想と評価

(C)2021 Amazon Studios

映画『社会から虐げられた女たち』は実在した、病院と医師、患者による実際に行われていた治療や臨床試験を取り上げた作品でした。

“人は死んだあとどうなるのか?” 一度は考えたことがあることかもしれません。

特に不慮の事故や自らが関わって、大切な家族を亡くしたとしたら、無念の思いや後悔で心残りのある者にとっては辛いことです。

せめて死後の家族はどうしているのかと、考えてしまうジュヌヴィエーヴと、霊の声や姿が見えてしまうウジェニーの運命的な出会いと、精神の自由、本当の狂気とは何か?

この映画ではヨーロッパフランスでの家父長制や偏見、排除がまだ色濃く、弱者の生き難さが垣間見れます。

“サルペトリエール病院”とシャルコー医師

シャルコー医師(ジャン=マルタン・シャルコー)とは実在した、病理解剖学の神経科医でした。サルペトリエール病院(ピティエ=サルペトリエール病院)も実在します。

36歳の時にサルペトリエール病院の医長となりその後、医師を育成するための学術機関として、作中のようなデモンストレーション的な講義も行いました。

シャルコー医師が成し遂げた医学界の偉業は、多大なものでありましたが、サルペトリエール病院に入院していた、数千人の患者がそのデータ収集のため、被験者となっていたことをこの作品では描いています。

ウジェニーが入院することに激しく抵抗した理由には、サルペトリエール病院の古い歴史もあります。19世紀後期のサルペトリエール病院はこれでも改善され、患者たちも保護されている方でした。

監獄としての役割もあったサルペトリエール病院では、女性の犯罪者もこの病院に入れられました。殺人を犯したテレーズ、泥棒のマルグリットがいたのはそういう理由です。

1792年の「九月虐殺」の時、サルペトリエール病院は群衆に襲撃されましたが、精神病患者は鎖で繋がれていたため、逃げ出すこともできず虐殺されました。

このように19世紀初頭までサルペトリエール病院では、精神疾患の患者に対し非人道的な処置がされていました。

精神科医のフィリップ・ピネルによって人道的改革がされ、後にシャルコーに引き継がれますが、臨床試験の場へと形を変え、人権問題と科学の発展の狭間で、解釈が複雑になっていきました。

アラン・カルデック「霊の書」とヴィクトル・ユゴーの「静観詩集」

キリスト教では人は死後、魂は神の元に召されるか地獄に行くという概念があります。1857年に発刊されたアラン・カルデックの「霊の書」は、霊魂の行方や在り方について、詳細に書かれています。

アラン・カルデックもまた、この本を編集するにあたって交霊術を使って、霊との交信を行いました。つまり、カルデックが勝手に分析し解釈した本というよりは、霊の声をまとめた本といえるようです。

そして、交霊術はヨーロッパ各地のサロンで、密かにブームとなっていましたが、文豪ヴィクトル・ユゴーにも影響を与えていました。

ウジェニーの愛読書「静観詩集」は、ナポレオンの制圧により、亡命を余儀なくされたユゴーが、1856年にガーンジー島にいた時に発刊されています。ユゴーはこの島で交霊術に熱中していたといわれています。

この詩集は愛娘のレオポルディーヌが、溺死してしまったことがきっかけで書かれました。

娘と過ごした多幸感に満ちていた「昔」と、亡き娘を思い悲嘆と瞑想、哲学によって悲しみを昇華させる「今」を現した詩集です。

交霊術により森羅万象を体感したユゴーは、“人間と宇宙との対話”という哲学体系を確立し、詩集に落とし込んでいます。

非科学的と見られていた“心霊(オカルト)”は、「霊の書」と「静観詩集」によって、心霊科学の分野に昇華します。

後に精神医学の分野で解明できない事を、心霊科学が解明する時代へと移行していきます。ウジェニーがジュヌヴィエーヴに宛てた手紙は、心霊科学の黎明を表わしていたのです。

まとめ

(C)2021 Amazon Studios

映画『社会から虐げられた女たち』は、シャルコー医師によって、発展途上にあった神経学及び心理学の分野を大きく進歩させた影に、多くの女性患者の存在があったことを示し、家父長制、男尊女卑によって虐げられた女性たちをフォーカスした作品でした。

また、超常現象に否定的な科学の分野に心霊科学が参入し、偏見の目を向けられた霊的能力を持った人の人権が、回復していく社会を予感させ終わります。

現代は空前のオカルトブームでもあり、SNSの動画サイトにも多くの超常現象が紹介されていますが、多くは解明に至っておらず、トリックを使った現象も多く、本物の心霊術や心霊科学は存在しません。

エンターテイメント化した心霊の世界ですが、その本質は森羅万象に繋がり、人間哲学に通じていることをこの映画では教えてくれます。

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