連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第261回
元・天才ハッカー野原と世界を股にかけたアウトローたちが、「AIを騙す」という前代未聞のミッションに挑むマネーサスペンス 『キャンドルスティック』。
日本、台湾、イラン、ハワイなど世界6つの都市を舞台に、それぞれの運命と思惑が交錯し、手に汗握る駆け引きが展開します。
本作で長編映画監督デビューを果たした新鋭・米倉強太監督のもと、刑務所から出て来た天才ハッカーを阿部寛、阿部と同じ共感覚を持ち、計画をサポートする杏子を菜々緒が演じています。
世界を股にかけたマネーバトルの行く末はどうなるのでしょうか。台湾を代表する女優アリッサ・チアやリン・ボーホンといった豪華な顔ぶれの共演も魅力です。
映画『キャンドルスティック』は、2025年7月4日(金) 新宿バルト9ほか全国ロードショー。映画公開に先駆けて、本作をご紹介します。
映画『キャンドルスティック』の作品情報

(C)2025CANDLESTICK PARTNERS
【日本公開】
2025年(日本・台湾合作映画)
【原作】
川村徹彦『損切り:FXシミュレーション・サクセスストーリー』(パブラボ刊)
【監督】
米倉強太
【脚本・チーフプロデューサー】
小椋悟
【出演】
阿部寛、菜々緒、アリッサ・チア、サヘル・ローズ、津田健次郎、リン・ボーホン、YOUNG DAIS、マフティ・ホセイン・シルディ、デイヴィッド・リッジス、タン・ヨンシュイ
【作品概要】
監督は新鋭・米倉強太。パリ・コレクションやGUCCIなどの広告映像ディレクションやMVなどを手掛けて頭角を現し、本作が初の長編映画制作となりました。
主演を務めるのは、2012年・2014年の「テルマエ・ロマエ」シリーズや『護られなかった者たちへ』(2021)、『異動辞令は音楽隊』(2022)『ショウタイムセブン』(2025)などの阿部寛。阿部の恋人に菜々緒、菜々緒の元夫の数学者に津田健次郎と実力派が勢ぞろい。
舞台の一つとなる台湾からは、台湾を代表する女優アリッサ・チアが台湾の大企業の幹部リンネを、『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』(2019)で役所広司とも共演経験のあるリン・ボーホンが台湾の若き経営者リーを、第61回金馬獎 最優秀新人賞のタン・ヨンシュイがリンネの娘メイフェンを演じています。
そのほか、サヘル・ローズ、YOUNG DAIS、マフティ・ホセイン・シルディ、デイヴィッド・リッジスら国際色豊かな面々も参加。
映画『キャンドルスティック』のあらすじ

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刑務所を出所した元天才ハッカー・野原は自分と同じように、数字に色がついて見える“共感覚”を持つ女性・杏子と出会い、恋に落ちます。
その頃、台湾の野心的な女性企業家・リンネはFX市場を利用し一儲けするため、野原とかつての仲間たちに声をかけます。
その作戦は「金融取引の番人であるAIを騙す」こと。決行日は日本の元号が変わり、金融機関のシステムが一番油断して混乱する、円が最も隙だらけの日、つまり、「2019年5月7日」と決定しました。
野原は以前、リンネと仕事をして苦い経験を持っています。今回はリンネに痛い目をあわせようと、ハッカー仲間たちに裏計画を持ち掛けます。
一方、川崎工業地帯では難民・移民の子のための「夜光ハウス」が、資金繰りがうまくいかずに立ち退き寸前の危機に陥っていました。
施設を守るファラーと野原の仲間の一人・イラン人のアバンは、返済のための金策としてある計画を練ります。それは、偶然にもリンネと野原が企てた「AI騙し計画」と一致していたのです。
映画『キャンドルスティック』の感想と評価

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FX(外国為替証拠金取引)に人生をかける男女たちの勝負を描きだした映画『キャンドルスティック』。主人公・野原とその仲間たちは、為替レートの変動で利益を得るFXの番人であるAIを騙そうとするのですが……。
AIを錯乱させるのに最も適した日は、日本の元号が変わって金融機関のシステムが一番混乱する日が選ばれます。こんな絶好のチャンスの日をもうないでしょう。機会を伺う野原たちの緊迫した姿は、観る者を惹きつけて止みません。
本作の見どころの一つは、金融市場のAIを騙すという大胆な計画が緻密な戦略と心理戦を交えて描かれていること。
緻密な戦略を企てる天才ハッカー野原を演じるのは、過去にも様々なジャンルの役柄を演じ、自然体でありながら圧倒的な説得力を発揮できると称される阿部寛です。
きな臭いマネー戦争の狭間に、チラリとのぞく杏子との恋愛。杏子を演じる菜々緒との息もピッタリで、2人の危うい関係も巧みに演出されています。
作中で用いられる美しいFXの価格チャート図は観る者を魅了しますが、実はこれは人々の頭脳を洗脳して虜にする悪魔のような力を持っています。悪魔に魅せられた人々が利益を求めて動き出し、ドラマを盛り上げました。
台湾を代表する女優アリッサ・チアやリン・ボーホンに加え、サヘル・ローズやマフティ・ホセイン・シルディといった国際色豊かなキャスト陣と、グッチやユニクロの広告映像を手掛けた米倉強太が作り出す洗練された映像美も、見どころとなっています。
まとめ

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映画『キャンドルスティック』では、薬物のような金融依存症に憑かれた現代のアウトローたちが、大金を手に入れるため前代未聞のミッションに挑みます。
タイトルのキャンドルスティックとは、金融商品の価格変動を視覚的に表した価格チャートの形式を指しています。
商品価格を表すチャートは、変動をわかりやすく視覚に訴えるために美しい色彩で表されていました。
そんな美しさを含むタイトルとは裏腹に、本作では、自分の金融投資の才覚と天分を武器に、生死をかけた勝負をするという、緊張感あふれるマネー戦争が巻き起こります。
阿部寛演じる野原は、時代の変わり目を狙った奇抜な作戦を立てますが、1秒が勝負という計画がとても奇抜なのです。予測不能な93分のマネー戦争をじっくりご覧ください。
映画『キャンドルスティック』は、2025年7月4日(金) 新宿バルト9ほか全国ロードショー。
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


































