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ドキュメンタリー映画『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』あらすじ感想評価考察。坂本龍一が1984年に見つめた“東京の音”が4Kで蘇る|だからドキュメンタリー映画は面白い93

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第93回

今回紹介するのは、2026年1月16日(金)より109シネマズ プレミアム新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開の『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』

1984年、当時32歳の坂本龍一の音楽創作の現場と、1980年代の東京の風景と“音”を活写した、日本初劇場公開作となります。

【連載コラム】『だからドキュメンタリー映画は面白い』記事一覧はこちら

映画『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』の作品情報


(C)Elizabeth Lennard

【日本公開】
2026年(フランス・日本合作映画)※日本初公開は1996年2月17日

【原題】
Tokyo melody: un film sur Ryuichi Sakamoto

【監督】
エリザベス・レナード

【製作】
ミュリエル・ローズ

【撮影】
ジャック・パメール

【編集】
鈴木マキコ

【キャスト】
坂本龍一、矢野顕子、細野晴臣、高橋幸宏

【作品概要】
1985年に製作された日仏合作による坂本龍一のドキュメンタリー。

ジェリー・ルイスやシャンタル・アケルマンのポートレート撮影なども手がけたニューヨーク出身のマルチメディアアーティストのエリザベス・レナードが、84年5月の1週間に密着。

日本では85年6月9日に第1回東京国際映画祭で上映され、その後発売されたVHSとDVDも長らく入手困難な状況が続くも、このほど倉庫に眠っていた16mmフィルムの発見・修復を経て4Kレストア化が実現。

第38回ロカルノ国際映画祭、および第15回ロッテルダム国際映画祭に正式出品されています。

映画『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』のあらすじ


(C)Elizabeth Lennard

1978年、ソロデビューアルバム「千のナイフ」を発表後、テクノポップバンド「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」を細野晴臣、高橋幸宏とともに結成し、一世を風靡した坂本龍一。

83年にYMOの解散ならぬ「散開」を宣言後、映画音楽を含めた作曲活動を本格的に開始した彼は、4枚目のソロアルバム「音楽図鑑」の制作に着手します。

本作は「音楽図鑑」制作時の84年5月に密着し、当時の東京の風景を映しつつ、32歳の坂本が自身の生い立ち、価値観、音楽哲学、文化について語ります。

1984年の東京の“音”を撮る


(C)Elizabeth Lennard

本作『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』は、ニューヨーク出身のマルチメディアアーティスト、エリザベス・レナードが、フランスのテレビ放送用に制作したものです。

坂本が俳優として出演し、音楽も担当した『戦場のメリークリスマス』(1983)をカンヌ国際映画祭で観て衝撃を受けたレナードは、さまざまなコネクションを経て彼と直接対面したのを機に、ドキュメンタリー映画を企画。

84年5月の日本で、坂本がアルバム「音楽図鑑」を制作していた期間のうち7日間だけスケジュールをもらって撮影を開始。企画コンセプトは、「東京の音を、坂本龍一のポートレイトと共に描く」というシンプルなもの。

その狙いどおり、本作には国鉄職員が改札バサミで切符に切り込みを入れる音、パチンコ台の中で弾かれる玉の音、家電量販店で売られているテレビの画像音など、“東京の音の肖像”が記されています。

同時に、若者たちの間で流行していた原宿の竹の子族や、新宿アルタに新宿さくらや、渋谷の東急文化会館といった今は現存しない商業施設も映し出されており、当時を知る人はノスタルジックな気分に、当時を知らない人は新鮮に感じられるはず。

アルタと言えば巨大スクリーンが目印でしたが、そのスクリーンを45分だけレンタルして坂本が出演したCMやYMOの映像を映し、その前に自身が立つショットなどは、彼のコンセプチュアルな側面が伺えます。

音楽とは非日常的な空間や時間のために作られたもの

(C)Elizabeth Lennard

レナードは、坂本のパーソナルな面をよく知らないまま密着したそうですが、スタッフクルーが少数だったということもあってか、比較的リラックスして撮影を楽しんでいた節があったと述懐します。

明治公園を散策しながらおもちゃのカメラのシャッターを切りまくり、ホテル・オークラに向かうリムジンの車載電話で語りかけたりと、それらの行動の多くは彼の即興によるものだとか。

そして何より、当時32歳の坂本による幼少時の記憶、文化や社会の変化、音楽の創作プロセスについての“語録”は、約40年経った今もなお興を惹かれます。

「ビートルズを聴いていたらクラシックを勉強することはなかった」、「音楽っていうものは元々はね、非日常的な、つまり生活的な時間と反対の非日常的な空間とか時間のために作られたと思う」…

教授という異名で呼ばれながらも、「僕のやっていることは、大学とか研究所とか書斎で音楽のためだけに作られている音楽とはやっぱり違うと思う」とサラリと言ってのけるあたりも、「らしさ」を感じます。

(C)Elizabeth Lennard

ほかにも、当時の妻だった矢野顕子と自宅のグランドピアノで「東風(Tong Poo)」を連弾したり、『戦場のメリークリスマス』の劇伴についてのプ作曲ロセスや、共演したデヴィッド・ボウイとのエピソードを語ったりと、アーカイブ映像としても貴重。

坂本のファンダム周辺として必見なのはもちろんのこと、実に濃密な“1984年の東京”を堪能できることでしょう。

次回の連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』もお楽しみに。

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松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューのほか、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219




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