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Entry 2021/06/25
Update

全裸監督2|2話ネタバレあらすじ感想と結末評価。実録物AVと衛星放送だ!シーズン2配信ドラマの見どころ解説

  • Writer :
  • 増田健

「空からエロが降ってくる」Netflixドラマ『全裸監督シーズン2』を完全紹介

2019年8月、Netflixオリジナルドラマとして全世界に配信された『全裸監督シーズン1』。2016年出版の伝説のAV監督・村西とおるを描いたノンフィクション「全裸監督 村西とおる伝」を虚実交えて映像化した作品です。

世界を騒然とさせた人気ドラマの第2シーズンが、2021年6月24日(木)より配信されました。

『シーズン2』第1話にて衛星放送事業に参入し「宇宙からエロが降らせる」という、壮大な野望に目覚めた村西とおる。AV界の帝王は、どんな手を打つのでしょうか。

【連載コラム】「お待たせしました村西です」Netflixドラマ『全裸監督シーズン2』を完全紹介の記事一覧はこちら

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ドラマ『全裸監督シーズン2』の作品情報


Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督2』

【総監督】
武正晴

【監督】
後藤孝太郎

【原作】
本橋信宏

【脚本】
山田能龍、小寺和久

【キャスト】
山田孝之、満島真之介、玉山鉄二、森田望智、恒松祐里、柄本時生、伊藤沙莉、冨手麻妙、後藤剛範、渡辺大知、MEGUMI、西内まりや、笠松将、増田有華、吉田栄作、伊原剛志、宮沢りえ、石橋蓮司、室井滋、小雪、ピエール瀧、リリー・フランキー、國村隼

【作品概要】
シーズン1』でAV業界のトップの座へと昇り詰めた村西とおる。時代が平成となったシーズン2では、バブル景気の勢いそのままにAV業界の帝王となり、巨万の富と世間の注目を集めますが、大量制作した企画シリーズ物AVの人気は低迷、女優・黒木香とも疎遠に。

しかし勢いを信じた村西は「空からエロを降らせる」野望に憑かれ、衛星放送事業への参入に奔走。新たな出会いと仲間との決別を経験する中で、絶頂からどん底への転落を味わいます。究極のしくじりを経験した彼に、どのような未来が待っているのでしょうか。

村西を演じるのは、カリスマ的怪優となった『ゾッキ』(2021)、『ステップ』(2020)の山田孝之。黒木香役の森田望智を始めシーズン1からの出演者も引き続き出演。新たに恒松祐里・吉田栄作・伊原剛志・宮沢りえ・石橋蓮司・室井滋ら豪華出演陣が加わり、AV業界もバブル経済も共に絶頂から転がり落ちた、狂乱の時代を再現します。

ホテルローヤル』(2020)、『アンダードッグ』(2020)、『銃2020』(2020)の総監督・武正晴のこだわりの演出と美術も見どころ。全てが世界基準のドラマとして製作された、伝説の怪男児の一代記となっています。

【連載コラム】『パンツ一丁でナイスですね〜!』Netflixドラマ『全裸監督シーズン1』を完全紹介の記事一覧はこちら

ドラマ『全裸監督シーズン2』第2話「もっともっともっと」のあらすじとネタバレ


Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督2』

チェーン社長・和田(ピエール瀧)のビデオ店を訪れ、サファイア映像社長の川田(玉山鉄二)は新作AVを売り込みます。しかし作品質の低下を指摘する和田の声は厳しいものでした。

黒木香(森田望智)の新作を出すか、彼女に変わる新人AV女優を発掘すべきとの意見を受け止めた川田。一方社員たちに衛星放送で自分たちのAVを、全世界に配信する夢を無邪気に語る村西(山田孝之)。

夢の実現のために村西はAV作品の量産を叫びます。作品質の重要性を川田は訴えますが、彼は聞く耳を持ちません。

江戸川ローマ(増田有華)や山本奈緒子(冨手麻妙)らのAV女優を使い、続々とAVを量産する村西。男優として次々女優の相手をするラグビー後藤(後藤剛範)の体も限界です。

ならばとまだ童貞のAV監督、三田村(柄本時生)に奈緒子の相手をさせ、筆おろしAVを撮影する村西。悲しいかな童貞の三田村は、奈緒子の顔に果ててしまい、彼女を激怒させました。

撮影は中止になりかけますが、今の映像に可能性を見い出した村西は周囲を説得し撮影を続行します。これが新たな世界の共通語、「Bukkake」の誕生秘話で良いのでしょうか。ともかくこの描写は発明だと高く評価した和田社長。

日本語ではこの描写への別の表現もありますが、こんな路線で良いのか疑問視する川田。しかし和田はAVが売れているから、これで良いんだと上機嫌です。

疑問を感じながらもAVを手に営業に回る川田は、街中で偶然千葉ミユキ(恒松祐里)と出会います。その容姿に魅かれ、思わず彼女にスカウトの声をかける川田。

今日見たミユキを例に出し、川田は有望な新人の発掘を村西に提案しますが、AV出演希望者が殺到していると村西は関心を示しません。

その席でローマから、某人気アイドルと行きずりの関係を持ったと聞き、その内容を再現した実録物のAVを製作する村西。企画物AVが次々と誕生します。

その頃、ヤクザとなった荒井トシ(満島真之介)は美人局を働き恐喝の相手を陥れていました。ヘマをしたトシを責めず、彼に拳銃を渡す親分の古谷(國村隼)。

組の仲間と訪れたクラブで、古谷からAVのシノギを持ちかけられるトシ。彼はそこで古谷が目をかけるホステス、サヤカ(西内まりや)と出会います。

過去にこだわりAVとの関わりを避けたがるトシ。サヤカは彼のそんな態度に理解を示しました。ヤクザに向いていないと指摘したサヤカに、トシも興味を抱きました。

以下、『全裸監督シーズン2』第2話「もっともっともっと」のネタバレ・結末の記載がございます。『全裸監督シーズン2』第2話「もっともっともっと」をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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実録物AVは大ヒット、村西は「もっともっと」と増産を命じます。川田は出荷計画を立てるよう忠告しますが、勢いに乗る村西は耳を貸しません。

そのサファイア映像に赤坂銀行の本田(吉田栄作)が訪れていました。別荘を買えと言う本田に、衛星放送事業参入が上手く行けば買ってやると告げる村西。

ヒットした村西の人気アイドル実録物AVの、過激な内容を危惧したTV局から村西は出演キャンセルされます。それが村西の反骨精神に火を付け、彼はTV局で騒ぎを起こします。

村西はTV局から締め出され、川田は尻ぬぐいで土下座します。AVの売り上げを世間の支持と考え傲慢な姿勢をとる村西も、川田からの黒木香出演の素晴らしい作品を撮って欲しいとの願いには、必ず作ると約束しました。

実録物に味をしめた村西は、一般から芸能人のスキャンダル情報を集めAV化します。それに反発して抗議に集まったアイドルのファンたちに、平気な顔で新作AVの宣伝を始める村西。

騒ぎが宣伝となり、新作AVは大ヒットを記録します。しかし川田に対し、村西は色々とやり過ぎだと指摘する和田社長と警視庁の武井(リリー・フランキー)。

騒ぎは衛星事業を仕切る、サテライトイースト社の代表・海野(伊原剛志)の知るところにもなります。

久々にサファイア映像を訪れた黒木香(森田望智)に、川田は村西の新作AVに出演しないか尋ねました。衛星放送の熱が冷めれば、監督作に出演できると語る黒木に、その日は来ないのではと語る川田。

そんな2人の気も知らずに、実録物AVの大ヒット記念パーティーを大々的に開く村西。その席で今回の売り上げは、全て衛星事業に投資すると発表し、これからは「空からエロが降ってくる」と断言します。

ついに村西の無軌道ぶりに、川田社長が皆の前で抗議の声を上げました。古くからの社員で女優のメイク係の順子(伊藤沙莉)がなだめても、彼は声を止めません。

実録物AVは回収したと説明し、現状では敵を作り過ぎ、今度村西はAVの監督が出来なくなると警告する川田。ならば自分が監督しなくても良いと告げる村西に、あなたの監督としての才能の惚れていると川田は熱く語ります。

心を動かさない村西に対し、黒木香を出演させ伝説の人気AV、「SMぽいの好き」を超える作品を撮ってくれと頼む川田。それが出来ないなら、社長として解雇すると告げる川田。

そんな川田よりも自分の方が1人1人の社員を見ている、あなたが見ているのは自分とAVだけだと反撃する村西。あなたは後ろから見ているだけで何もしない、自分は常に先頭に立って動き、誰もやらない事をやり1番になると語る村西。

ビデオの時代は終わる、確実に衛星放送の時代が来る、乗り遅れてはいけないと村西は語り、皆に対し川田さんか自分か信用できる方に付いてきて欲しいと告げました。

パーティー会場から去る村西に、皆が付いていきました。最後まで残った黒木香に、川田は彼の後を追うよう促します…。

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ドラマ『全裸監督2』第2話「もっともっともっと」の感想と評価


Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督2』

AV業界を舞台にした『全裸監督』。日本のAVが生んだ様々なジャンルや技、テクニックを一挙に紹介してくれます。

あらすじで紹介した、もはや世界の共通語となった技も、実際の誕生はドラマとは異なるようですが、日本のAV文化を世界に伝える目的の脚色とご理解下さい。その他ドラマの中で取り上げられたアレやコレやも、そのように解釈しましょう。

その意味で今回のエピソードは、今までに無いエロ描写の数々が登場します。大っぴらに語られる事の無かった分野を、全世界に知らしめたとドラマとして評価させて頂きます。

AV業界の内幕に改めて切りこんだ本作は、同時にサイドストーリーである歌舞伎町のヤクザ、トシの物語も動き始めました。

世界中から観光客を集める新宿・歌舞伎町の雰囲気。それは映画やアニメだけでなく、ゲーム「龍が如く」シリーズでも海外から人気を集めました。

「龍が如く」シリーズは、ゲームそのものだけでなく、こだわって描写されたディテールや、メインストーリーと別に潜むユーモアが海外から高く評価されています。

『全裸監督』シリーズを愛する海外のファンも、細かな部分の描写に反応しています。このドラマはある意味、「龍が如く」シリーズと同じ視点で世界から愛されていると言って良いでしょう。

確かに村西とおるは時代の先を見通していたが…

1990年を舞台に始まった『全裸監督シーズン2』。翌年、日本初の有料放送の民放衛星放送局「WOWOW」が開局します。

村西とおるはこの熱気に呑まれた訳ですが、彼の言う「ビデオはいずれ廃れる」という言葉は正解でした。

但し「空からエロが降ってくる」ことはありません。ネット空間でここまで世界に広まるとは、当時は誰も予想出来ずにいました。

後の時代から過去を語るなら、我々は神の視点に立つことができます。しかし当時の人々の立場で物事を見ないと、その考え方を理解することは出来ません。

当時はポケベルの普及の兆しが見え始めた頃です。インターネットは民間ではほぼ利用されていない状況で、動画を送るなど夢のまた夢といった時代です。

村西が衛星放送事業にハマったのを笑うのは簡単。しかし当時はネットより衛星放送に価値を持つ時代で、後発の民放衛星放送局にとってアダルトコンテンツは顧客獲得の武器であり、重要な収入源であった事実を指摘せねばなりません。

使用する楽曲にもこだわったドラマ

参考映像:エイミー・ワインハウス「Will you still love me tomorrow」

『全裸監督』シリーズは、楽曲の使い方も高く評価されています。海外の視聴者を意識した選曲が、日本のTVドラマに無い楽曲の使用を可能にしたのでしょう。

また日本語のセリフ、あるいは各言語の吹替より楽曲の方が、正しく力強いメッセージを発するとの計算が働いた結果でもあります。

今回のエピソードのラストで、村西は当初から自分を支えてくれたメンバーの1人、川田と決定的な決別を遂げました。

ここで流れる曲が「Will you still love me tomorrow」、エイミー・ワインハウスがカバーしたバージョンでしょうか。

愛する相手に、明日も変わらず愛してくれるのだろうか、と切々を歌う曲が心に突き刺さります。シーズン1からの全エピソードの中で、最もラストの曲が美しい回ではないでしょうか。

エイミー・ワインハウスは2011年、27歳で早逝しました。その事実を重ねると、今回のラストはさらに胸に迫るものになります。

彼女の生涯はアカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞作、『AMY エイミー』(2015)で描かれました。どうかこちらもご覧下さい。

正直『全裸監督』に、泣けるエピソードが登場するとは思いませんでした。実に恐るべきドラマです。

まとめ


Netflixオリジナルシリーズ『全裸監督2』

AVでお馴染みのトンデモない描写を見せながら、最後には泣かせる『全裸監督シーズン2』第2話「もっともっともっと」。これはもう、企画物AVよりもナイスな作品でしょう。

今後も別れと挫折を経験する村西と、彼に絡んでくるヤクザ者・トシの物語。更に凄い展開が待っていることは間違いありません。

いよいよ面白くなってきますよ、『全裸監督シーズン2』!

『全裸監督シーズン2』第1話は2021年6月24日(木)より配信開始

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