連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」第19回
映画ファン待望の毎年恒例の祭典、今回で11回目となる「未体験ゾーンの映画たち2022」が今年も開催されました。
傑作・珍作に怪作、迫力あるカーアクションなど、さまざまな魅力を持つ映画を上映する「未体験ゾーンの映画たち2022」。今年も全27作品を見破して紹介、古今東西から集結した映画を応援させていただきます。
第19回で紹介するのは、台湾・香港の映画人が送る本格レーシング映画『スリングショット』。
カーレースのゲーム・チャンピオンが、公道レースそしてサーキットレースに挑むます。eスポーツの達人は、現実世界でも活躍できるのか。激走する物語が始まります。
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CONTENTS
映画『スリングショット』の作品情報
【日本公開】
2022年(台湾・香港合作映画)
【原題】
叱咤風雲 / Ne Zha
【監督・脚本】
ジム・チェン
【キャスト】
ツァオ・ヨウニン、ハンナ・クィンリヴァン、ファン・イーチェン、アラン・コー、ガオ・インシュエン、ジェイ・チョウ、ワン・ジュンカイ、リン・チンタイ
【作品概要】
カーレースの世界でライバルチームに圧倒され、存亡の危機にある名門チーム。彼らが新たなドライバーとして選んだのは、カーレースゲームのチャンピオンだった…。アジア発の本格サーキットレース・アクション映画です。
CM・MVの世界で活躍し、短編映画でも高い評価を得ただけでなく、カーレーサーとしても活躍しているジム・チェンの初長編監督映画です。
主演は『KANO 1931海の向こうの甲子園』(2014)や『バインディング・ソウル』(2018)のツァオ・ヨウニン、共演は『スカイスクレイパー』(2018)や『ボルケーノ・パーク』(2019)のハンナ・クィンリヴァン。
他の共演者に『海角七号 君想う、国境の南』(2008)や『52Hzのラヴソング』(2017)のファン・イーチェン、『マイ・エッグ・ボーイ』(2016)のアラン・コー、『リベンジコード 盗まれた正義』(2019)のガオ・インジュエン。
そして香港の実写映画『頭文字D THE MOVIE』(2005)のジェイ・チョウ、『グレートウォール』(2016)や香港・中国・日本合作映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟 再生』(2017)のワン・ジュンカイ、『セデック・バレ 第一部 太陽旗/第二部 虹の橋』(2011)のリン・チンタイが出演しています。
映画『スリングショット』のあらすじとネタバレ
今年も6度のレースで競われる、ASPL(アジア・スーパー・プロリーグ)が開幕しました。女性レーサー、リーリー(ハンナ・クィンリヴァン)が所属するチーム”ライオンズ”は、かつて常勝を誇る強豪チームでした。
しかし若手レーサー、ソン・ジエ(ガオ・インシュエン)がライバルチーム”ウルフス”に移籍して以来優勝出来ず、スポンサーも離れチームに存続の危機が迫っています。
“ライオンズ”のベテランレーサー、イーフェイ(ファン・イーチェン)は現状を苦々しく感じており、チームのマネージャー、アーシェン(アラン・コー)はスポンサーの引き留めと獲得に必死でした。
“ライオンズ”にはもはや、アーシェンの父で先代チームマネージャー、ラオ・シェンが率いた頃の輝きがありません。まもなく開始されるレースを前に、そんなチーム事情をアナウンサーが紹介します。
レース初戦が始まると、”ライオンズ”はイーフェイの指示で、彼の3号車の背後にリーリーの4号車が位置してチャンスを伺う作戦を取ります。2台が協力してレースを展開する”ライオンズ”。
2人の車は上位につけたものの、イーフェイの3号車のシフトレバーの調子が悪くなります。走りが鈍った3号車の前に出ようとするリーリー。
しかしイーフェイは自分の指示なしに、彼女が先に出ることを許しません。その結果”ライオンズ”の2台の車が競り合う形になりました。
無理な走りを繰り広げたリーリーの4号車は、激しくスピンしてコースアウトし事故を起こします…。
レース場から遠く離れたある家で、専用コクピットでレーシングゲームをするジエコー(ツァオ・ヨウニン)。彼のゲームプレイは見事なものでした。
彼の部屋にはゲーム大会で獲得した多くのトロフィーやゲーム機、そしてリーリーの写真があります。彼女と高校生時代は同級生だったジエコー。
ゲームで完璧なドライブテクニックを獲得したジエコーは、ドライバースーツとヘルメットに身を付け外に出ました。
彼が用意した愛車、トヨタスプリンタートレノAE86(『頭文字D THE MOVIE』に登場する車)で向かったのは、公道レースの走り屋たちが集まる場所でした。そこで凄腕の走り屋、シュウレン(ジェイ・チョウ)に勝負を挑むジエコー。
しかし現実のレースはゲームと違います。最初のコーナーで大きくはみ出したジエコーの車は、道路を飛び出してクラッシュしました。
現実を思い知らされたジエコーですが、彼はレーサーになったリーリーに憧れていました。彼女の近況をネットで調べ、レースの事故で負傷し入院中と知ります。
リーリーは腕と足を骨折し、3ヶ月はレースに出れぬ状況でした。彼女を見舞いにアーシェン、そしてイーフェイが妻子を連れてやって来ます。
その場で前のレースについて言い争いになるリーリーとイーフェイ。そしてアーシェンはチームの新たなスポンサーに、ゲーム会社が決まりそうだと告げました。
条件はレーシングゲームのチャンピオンを、宣伝効果を狙ってドライバーとしてチームに加え、ASPLのレースに走らせることでした。勝てずとも完走すれば話題になると説明するアーシェンに、無茶な話だと反対するイーフェイ。
イーフェイはもっと相応しいスポンサーを見つけろと告げます。レーシングチームの運営に、どれだけ金が必要か判っているのか、とぼやくアーシェンの言葉をリーリーは聞いていました。
ならばレーシングドライバーの資格を持つ、ゲーマーを採用すれば良い。リーリーはアーシェンに提案します。
ジエコーはリーリーの気を引こうと、自分もレーサーの資格を持っているとの嘘をメールで送っていました。そのジエコーをドライバー候補に考えたリーリー。
アーシェンはこの案をゲーム会社に売り込みます。他のレースゲームのプレイヤーも集めましたが、相応しい人物は現れません。
ある日リーリーは怪我をした体で、ジエコーの家を訪れました。彼は大慌てして部屋を片付けリーリーを招き入れました。彼女はレーシングゲームをプレイして、実に本格的に作られていると感心します。
ジエコーに、ぜひ”ライオンズ”に参加して欲しいと告げるリーリー。レーサーの資格を持っているのは嘘で、公道レースで事故を起こした記憶も頭をよぎりますが、結局彼女の頼みが断れないジエコー。
こうして彼は”ライオンズ”に現れました。彼をチームを救うドライバーだとリーリーは紹介しますが、イーフェイは彼が本当に鈴鹿サーキットで走ったのか、と疑う姿勢を見せました。
まずジエコーは、チームメンバーの前でレーシングコースをカートで走ります。あまりにお粗末な腕前にイーフェイは呆れ、リーリーは頭を抱えます。
乗り物酔いの状態でカートから降りたジエコーは逃げ帰ろうとしますが、リーリーが諦めません。繰り返しコースを走る内にアーシェンは頼りない運転だが、確かに彼のコーナーワークは見事だと認めました。
それでもイーフェイは冷たい姿勢を崩しません。しかし他にドライバーもおらず、ジエコーが”ライオンズ”の4号車に乗る事になります。マシンを整備する轟音の中、居心地悪そうに立っているジエコーの姿に気付くリーリー。
ジエコーがレーシングカーに乗って、コースを走る姿は頼りないものでした。イーフェイは彼に見せつけるように車を疾走させ手本を見せますが、自分の視界がかすんでいると気付きます。
診察を受けたイーフェイは、目の異常は長年のレースの結果で回復の見込みは無いと医師から告げられ、引退を勧められました。
リーリーもジエコーのドライブテクニックはどうも怪しいと気付き、調べた結果彼が鈴鹿サーキットで走った話は嘘だと気付きます。
彼女はジエコーに会って追及します。嘘をついたと認めて謝る彼を残し、怒って立ち去ろうとするリーリー。
ジエコーは他のドライバーを探してくれと頼みますが、そんな余裕も無くスポンサーを裏切った”ライオンズ”はおしまいだと怒ったリーリーは、明日は朝からレーシング場に来いと命じました。
レース初心者を指導する態度で、厳しくジエコーを鍛え始めるリーリー。まずはレーサーに必要な体力を付けさせます。
彼女は盛り場のレーシングゲームをジエコーにプレイさせました。実力は確かなもので、彼は自宅以外の騒がしい場所でも、充分実力を発揮すると確認します。
そこに”ウルフス”に移籍したドライバー、ソン・ジエが現れます。彼女に”ウルフス”に移籍しろ、レースクイーンとして雇ってやると挑発するソン・ジエ。
怒った彼女は立ち去ると、父の残したスポーツカーをジエコーに運転させて公道を走らせます。助手席でリーリーは彼の運転を見守りますが、ゲームのようなハンドルさばきが出来ません。
予選でサーキットを走ったジエコーの運転は未熟なままで、他チームのドライバーの怒りを買う有様です。
いよいよASPLの第2レースが始まる直前、リーリーはジエコーがスポーツカーの轟音に影響され、実力が発揮出来ないのだと気付きます。
彼女はジエコーに耳栓を与えて付けろと指示します。予選最下位のジエコーの4号車は、最後尾からのスタートとなりました。
レースが始まるとジエコーは、リーリーの狙い通りドライブに集中し、ゲームと同じ感覚でハンドルを操ります。次々車を抜き去る姿に沸き立つ関係者と観客たち。
先頭集団に入るとチームメイトのイーフェイの3号車を抜き去り、トップを走る”ウルフス”のソン・ジエの1号車に迫ります。
ついに1号車を抜き去り、1位でゴールしたジエコー。2位はソン・ジエ、3位はイーフェイ。”ライオンズ”の2台が上位を占める快挙を成し遂げました。
ジエコーは車から降り、耳栓を取り初めて周囲の歓声に気付きます、イーフェイはチームワークを無視した、ジエコーの強引な走りを怒りますが、彼に耳栓をさせ無線の指示は聞こえなかったと説明するリーリー。
喜ぶアーシェンやスポンサー、そして観客や記者たちの姿を前にイーフェイは引き下がりました。
最後尾からスタートし全ての車を抜き去り、レースのあらゆる面で完全勝利した者に与えられる「グランドスラム」を久々に獲得したジエコーには、賞品としてスポーツカーが与えられます。
「グランドスラム」を獲得した新人レーサー誕生にモータースポーツ界は沸き、アーシェンは”ライオンズ”を救ってくれたとジエコーに感謝します。一方で自分は過去の人になりつつあると悟るイーフェイ。
チームは救われたものの思わぬジエコーの人気に、リーリーは負傷から回復した時、自分はチームドライバーに復帰できるのか不安に襲われます。
イーフェイもまたジエコーのコーナリングの映像を見て、彼の実力を認めざるを得ないと悟りました。
とはいえ雨天時の走行など、ゲームでは体験できない様々な状況をジエコーは学ぶ必要があります。彼は積極的にトレーニングに励みます。
ある雨の夜、リーリーを獲得したスポーツカーでドライブに誘うジエコー。そして彼女を運転席に座らせました。
まだ負傷しているリーリーがハンドルを握り、シフトレバーや足の操作はジエコーが行います。楽しみつつ雨の中のドライブテクニックを確認する2人。
自分たちはチーム内のライバルだが、同時に大切な友人でもあるとジエコーに告げたリーリー。
一方イーフェイは、無名のテストドライバー時代に”ライオンズ”の先代マネージャー、ラオ・シェン(リン・チンタイ)に認められ、チームに加わった過去を思い出していました。
彼は妻に今季で引退する決意を伝えました。しかしレースは、チームの2台の車が協力して行うものだ、あなたにはまだ役目があると語るイーフェイの妻。
決意を新たにイーフェイは、ジエコーと共にASPLの第3レースに望みます。灼熱の中繰り広げられるレースは、”ウルフス”の車を”ライオンズ”が追う展開になります。
晴れていますがイーフェイは無線で、チームに雨天用タイヤに交換すると指示します。無線が使えるようになったジエコーも、その判断に従いました。
この状況でのタイヤ交換を周囲は不審がります。順位は下がり、アーシェンはこの判断が正しいのか疑問を抱きました。しかしイーフェイが予想した通りに、突然激しい雨が降り始めます。
濡れた路面に運転を誤る車が続出し、他チームが慌ててタイヤ交換する中、順位を上げていくイーフェイとジエコー。
イーフェイはジエコーに先代”ライオンズ”マネージャー、ラオ・シェンに学んだ「スリングショット」を使って走ると告げます。
それはチームの2台の車が交互に先頭に立ち、もう1台はその背後に位置して力を蓄え、背後から迫るライバルに備え、チームワークでレースを展開する戦法でした。
“ライオンズ”の2台は協力して、先頭を走るソン・ジエの1号車に迫ります。ついに抜き去り1位・2位でゴールしたイーフェイとジエコー。
ベテランドライバー、イーフェイの復活に観客は沸き立ち、「スリングショット」を通じてジエコーはチームで走る重要性を学びました。
今シーズンの”ライオンズ”優勝の可能性も見えて来ました。イーフェイとジエコーは歓声の中、並んで表彰台に立ちます…。
映画『スリングショット』の感想と評価
中国語圏初の本格レース映画、と謳われた胸熱のカー・アクション映画、いかがだったでしょうか? 骨太のスポ根ストーリーは感動的でもあり、同時にベタな展開でもあります…。
とはいえカーチェイスで観客を楽しませる映画の人気は、世界的に根強いものがあります。
日本人は昔ほど車を買わず愛着を示さない、世界的にもブランドやスペックよりも、環境や経済事情に優しい自動車選ぶようになりましたが、『ワイルド・スピード』(2001)シリーズは世界的人気作であり、現在日本でも常に配信視聴数の上位を占める作品です。
そんな自動車映画ファン、特に中国語圏の観客を意識して作られたのが本作で、製作総指揮は『頭文字D THE MOVIE』のジェイ・チョウ。
彼は台湾出身で歌手としてもアジア各国で人気の人物です。ジェイ・チョウは本作の中国語圏での紹介では、共同監督に準じる役割を果たしたと紹介されています。
そして日本で人気のマンガ「頭文字D」は、前2作から出演者とテイストを変えて描かれた「ワイルド・スピード」シリーズ3作目、『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(2006)にも大きな影響を与えた作品です。
その『ワイルド・スピードX3』の前年に作られたのが、日本を舞台にした香港映画『頭文字D THE MOVIE』。中国語圏で大ヒットし、ジェイ・チョウの出世作となった作品です。
その夢よ、再び…と企画したのでしょうか。中国語圏のカー・アクション&モータースポーツ映画ファンを満足させる作品として、製作されたのがご紹介してきた作品『スリングショット』です。
アジアのスターが豪華に集結!
このような狙いで製作された本作は台湾・香港の合作映画です。主演のツァオ・ヨウニンは、日本でも話題になった、『KANO 1931海の向こうの甲子園』の、台湾側メインキャストとしてデビューしました。
ハンナ・クィンリヴァンは台北生まれで父はオーストラリア人、母は台湾系の韓国人で現在はハリウッドでも活躍している女優です。
2人の所属するチームのベテランドライバーを演じたファン・イーチェンは、台湾で音楽活動から経歴をスタートさせた人物。
彼が主演し楽曲を提供した映画、『海角七号 君想う、国境の南』の大ヒットで一気に人気を高めました。本作エンドロールに流れる主題歌「叱咤風雲(本作の原題)」を、マネージャー役を演じた歌手でもあるアラン・コーと共に提供しています。
そして先代チームマネージャーを演じたリン・チンタイは、『セデック・バレ』でデビューし有名になった、台湾先住民にルーツを持つ俳優。
そして中国のトップアイドル”TFBOYS”のリーダー、ワン・ジュンカイがラストに登場する豪華なキャスティング。
以上の俳優たちの経歴からお判りの通り、モータースポーツファンのみならず音楽ファンにも気を配り、台湾・香港そして中国本土、さらに日本に韓国・アメリカにアピールする要素を持つ、幅広い層の観客獲得を狙った作品でした。
しかし2021年1月に公開されると台湾でヒットしたものの、ジェイ・チョウが願った程の興行成績にはならず、そして中国本土では思う程の観客を集めません。
執筆時点で本作は、残念ながら製作費に見合った成功を収めたとは言えません。アジア圏で人気を誇るジェイ・チョウも、現在の中国では影響力は限られているのでしょうか。
また本作もコロナ感染症の影響を受けた作品です。ようやく公開が決まった際も十分な宣伝がされたと言い難い公開で、不運な一面もありました。
そしてワン・ジュンカイを起用し、中国国内の宣伝ではメインキャストの様に扱ったものの、実際はラストに登場しただけという事実は、中国のファンから大いにツっこまれたようです…。
娯楽映画の王道スタイルで描かれた作品
2020年9月に公開された、実写版『ムーラン』(2020)の中国での思わぬ不人気も、本作と同じ経緯をたどったと言えるかもしれません。
コロナ禍に翻弄された以上に、中国の映画産業が発展した現在、何もわざわざハリウッド製の”偽”中国映画を見る必要は無い、と考える観客が増えた結果の不人気とも分析されました。
同様に台湾・香港を中心とした、”非”中国本土の映画人が製作した中国語映画も、かつて程には中国の観客を引き付けられなかったのでしょう。
『ムーラン』も『スリングショット』も、共にコロナ感染症の影響が無く早い時期に充分な宣伝を行い公開出来たなら、中国で違った反応を得たかもしれません。その意味で不運でもあり、それだけ短期間で中国の映画環境は激変したとも言えます。
「人気ジャンルの映画を」「歌手・アイドルを出演させて」「スポ根調のドラマで見せる」という、いささか古典的スタイルの映画の限界でしょうか。
しかし古典的スタイルに忠実な映画として見ると、これほど熱量を持って作り込まれた見応えある作品も珍しいでしょう。
ジェイ・チョウは監督にレーシングドライバーでもあるジム・チェンを起用、彼は20台近い本物のレーシングカーを集め、カーチェイス専用のカメラを搭載した車両を用意し、迫力あるレースシーンを作りました。
またジェイ・チョウはサイドストーリーで、『頭文字D THE MOVIE』を思い出させる走り屋役で出演、しかもあのトヨタAE86が登場しますから、『頭文字D THE MOVIE』ファンは大いに満足したはずです。
まとめ
カーアクション、カーレースファンならば必見と紹介したい映画『スリングショット』。
胸熱の展開に燃える人もいれば、「色々とご都合主義的でウソっぽい」と感じた方もいるでしょう。しかしスポ根系の映画は、大なり小なりご都合主義的な展開があるものです。
こういった展開は映画を盛り上げるためのお約束、広い心で許してあげましょう。リアルなレースシーンを描きつつも、『頭文字D THE MOVIE』の後継者としての性格を持つ作品ですから。
トヨタAE86の登場や、ジェイ・チョウのこれでもか!という存在感、ワン・ジュンカイの唐突な登場がツボに来る人には実に楽しい作品です。
こんな視点で楽しむのはB級・ジャンル映画ファンでしょう。カーアクション映画ファンなら、時速150㎞の世界で撮影されたレースシーンに注目するでしょう。
ストーリーに対決・友情・恋愛など様々な要素を盛りこみ、出演者も幅広い客層を集めようと、多様なセールスポイントを持つ俳優が結集した本作。
青少年向けマンガ誌の、スポ根系作品と同じノリの作品です。『ワイルド・スピード』もシリーズを重ねてド派手な内容になりますが、対決・友情・恋愛を描く王道ストーリーは健在、これも人気の秘訣でしょう。
こういった娯楽作品はお好きですか?嫌いじゃないよ、大歓迎と思った方はぜひ本作をご覧下さい。
次回の「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」は…
次回の第20回は「未体験ゾーンの映画たち」お馴染みの、北欧ミステリー映画シリーズが登場!『特捜部Q 知りすぎたマルコ』を紹介いたします。お楽しみに。
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増田健(映画屋のジョン)プロフィール
1968年生まれ、高校時代は8mmフィルムで映画を制作。大阪芸術大学を卒業後、映画興行会社に就職。多様な劇場に勤務し、念願のマイナー映画の上映にも関わる。
今は映画ライターとして活躍中。タルコフスキーと石井輝男を人生の師と仰ぎ、「B級・ジャンル映画なんでも来い!」「珍作・迷作大歓迎!」がモットーに様々な視点で愛情をもって映画を紹介。(@eigayajohn)