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Entry 2020/05/12
Update

映画『わがままなヴァカンス』ネタバレあらすじと感想。監督レベッカズロトブスキが描く16歳の少女のひと夏|未体験ゾーンの映画たち2020見破録48

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第48回

「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第48回で紹介するのは、大人の世界を垣間見る、多感な少女を描いた映画『わがままなヴァカンス』

カンヌ国際映画祭批評家週間で上映された、『美しき棘』(2010)でデビューを飾り、ナタリー・ポートマンとリリー=ローズ・デップが主演した映画『プラネタリウム』を監督した、レベッカ・ズロトブスキ。

女性ならではの視点で、様々な女性像を描いてきた監督が、スキャンダラスな事件で世間を騒がせ、それをバネに成功した女性を起用して描いた問題作です。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

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映画『わがままなヴァカンス』の作品情報


(C)Les films VELVET – France 3 Cinema

【日本公開】
2020年(フランス映画)

【原題】
Une fille facile / An Easy Girl

【監督・脚本】
レベッカ・ズロトブスキ

【キャスト】
ミナ・ファリド、ザヒア・ドゥハール、ブノワ・マジメル、ヌーノ・ロペス、クロチルド・クロー

【作品概要】
カンヌで母と暮らす16歳の少女ネイマ。彼女は男を魅了し、自由奔放に生きる従妹ソフィアと出会い、大人の刺激的な世界と出会ったひと夏を描く青春ドラマ。

主演は本作が映画デビューとなり、その演技でリュミエール有望女優賞のノミネートされたミナ・ファリド。そして元高級コールガールで、現在はランジェリーデザイナーやモデルとして活躍するザヒア・ドゥハールが、そのボディを惜しげもなく晒しています。

2人の若き女優の相手を、『ピアニスト』(2001)や江戸川乱歩原作の『陰獣』(2008)、「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品『ハイエナたちの報酬 絶望の一夜』(2017)のブノワ・マジメル、『甘い嘘』(1999)や『パリ、恋人たちの影』(2015)、『パリの家族たち』(2018)のクロチルド・クローが務める作品です。

映画『わがままなヴァカンス』のあらすじとネタバレ


(C)Les films VELVET – France 3 Cinema

人生でもっとも重要な事柄は、職業の選択だが、それを左右するのは偶然だ。フランスの哲学者パスカルの言葉と、陽光輝く美しい海で、トップレスの姿をさらす女ソフィア(ザヒア・ドゥハール)の姿を紹介して、この映画は始まります。

6月。少女ネイマ(ミナ・ファリド)は、学校で友人たちに16歳の誕生日を祝ってもらいます。彼らはネイマに、集めた金をプレゼントしました。そして親友である、女性的な物腰の男子学生ドドと、浜辺で親し気に語り合うネイマ。

ネイマとドドは舞台に立つために、2人でオーデションを受け合格することを目指していました。ドドはネイマに、セリフを覚えているか尋ねます。

彼女が自宅のアパートに戻ると、親しい従妹のネイマがシャワーを浴びていました。彼女の腰には、”Carpe Diem”(今を楽しめ)の文字のタトゥーが入っていました。

この夏ソフィアは母を亡くし、パリを離れネイマの住むカンヌを訪れていました。22歳の大人びた彼女の姿は、ネイマには以前と別人のように見えます。

家で誕生日を家族や友人と祝った後に、ネイマはソファアとドドと共に、夜の街のクラブへと繰り出しました。

賑やかな店で3人は楽しみますが、ソフィアは男たちの席に移動していきます。しかし今のネイマには、気の許せる友人ドドがいれば充分でした。

ネイマが目を覚ました時、ホテルのハウスキーパーとして働く母は、身支を整え出勤の準備をしています。

ネイマはソフィアから誕生日プレゼントとして、シャネルのバックを渡されて喜びます。お揃いのバックを手に、観光客であふれる街にくり出す2人。

浜場で水着姿で横たわる2人の前の海に、豪華なプレジャーボートが停泊します。ボートの男は2人に目を留めたようでした。

岩場でウニを獲っていた2人の男が、彼女たちに近づき声をかけてきます。男たちにトップレス姿を晒し、挑発的な態度を見せるソフィア。それは実は、ボートの男に見せる行為かもしれません。

ボートは動き出し、彼女たちも荷物をまとめ去って行きます。声をかけてきた男たちは取り残され、怒って侮辱的な言葉を浴びせます。ネイマは言い返しますが、ソフィアは気にも留めず歩きます。

ネイマに対し愛に興味は無い、刺激と冒険が欲しいだけと言い、待たずに自分から行動するの、とアドバイスするソフィア。

先程のボートは港に停泊します。多くの乗務員を抱えた船には、気ままにギターを弾き語るアンドレ(ヌーノ・ロペス)と、気難しそうな顔のフィリップ(ブノワ・マジメル)が乗っています。

売り物である、高価なアンティークの象限儀(航海用の天体観測の道具。四分儀)を手に語り合う2人。するとアンドレは、道を歩くソフィアとネイマに気付きます。ソフィアは彼に視線を送っているようでした。

フィリップを連れクラブに入ったアンドレ。店内にはネイマやドド、そしてカラオケを歌うソフィアの姿があります。

アンドレはソフィアと、そしてネイマとトドを自分のプレジャーボート、winning streak(連勝)号に誘います。アンドレに付き従い船に向かうフィリップ。

マン島の旗を掲げたボートの乗員は、丁重に主人を迎えますが、ネイマやトドたちには固い表情を見せました。ソフィアにドドは邪魔者なようでした。

世慣れた調子で、アンドレと言葉を交わすソフィア。その媚びるような態度が、ドドには気に入らない様子です。しかし周囲構わず、どんどん接近するソフィアとアンドレ。

すると船の外から、ドドの友人たちが声をかけてきます。雰囲気を壊されたと気分を害したソフィアから、邪魔者扱いされたドドはネイマを誘い、共に船を降りようとします。

しかしネイマは迷った末、船に残ることを選びました。ドドは1人で去っていきます。

アンドレと共に船室に入るソフィアを、乗員はまたか、といった表情で見つめます。キャビンに残されソファーに横になったネイマに、フィリップは固い表情で毛布をかけました。

ドドからの電話を無視したネイマは、奥の船室に向かい、ソフィアとアンドレが何をしているのかを目撃します。彼女に気付いても、ベットの上で絡み合う行為を止めないソフィア。

ショックを受けた彼女は、ソファーに戻って横になります。フィリップも自室のベットで、1人横になっていました。眠りについたネイマは浜辺で際どい姿で、ウニを手にしたソフィアの姿を夢に見ます。

ネイマが目覚めた時、乗務員が忙しく働いていました。彼女はソフィアに促されて船を降ります。2人はカフェで朝食をとりますが、2人とも金を持っていません。

すると男に払わせると言い出したソフィア。その言葉に腹を立て、ネイマは1人席を立って家に戻ります。しかし職場に向かう母の姿を見かけ、思わず姿を隠します。

母はホテルの客に丁重に挨拶していました。そのホテルの厨房のロッカー室に入り、財布から金を取り出すネイマ。

そんな彼女に料理長は、この夏の忙しいシーズンに、また働けるかと訊ねますが、ネイマはオーディションで忙しいと断りました。

ネイマはソフィアのいるカフェに戻り、支払いを済ませます。そんな彼女に、昨日のことを怒っていないか訊ねたソフィア。

そうではない、と答えたネイマを、彼女はブランドショップに連れていきます。そしてネイマが好みの腕時計を選ぶと、それより高い物を買い与えたソフィア。彼女はアンドレから与えられたカードで支払いを済ませました。

家に戻ったネイマの腕には、新しい腕時計が輝いていました。ベランダから上昇する飛行機を見たソフィアは、思わず飛行機の事故なら一瞬で死ねる、と口にします。

それは苦しんだり、怖がったりする時間の無い理想的な死だ、と口にするソフィア。母の死の経験が、彼女にそれを言わせたのでしょうか。思わずソフィアの手に触れるネイマ。

出かけよう、と誘うネイマに、今日は1人で行ってとソフィアは告げました。

花火が上がる夜、港を歩いているネイマは、winning streak号の前で、ドドに声をかけられます。2人は語り合った後、彼女の望みでタトゥーショップに入ります。

誕生日に友人からもらった金で、タトゥーを入れるというネイマ。その金をパリ行きに使うと思っていたドドは驚きます。彼女はソフィアと同じ場所に、”今を楽しめ”の文字を入れます。

家に戻ったネイマは、眠っていたソフィアを起こし、入れたばかりのタトゥーを見せました。

翌朝、ネイマを起こした母は、娘の腕に高価な時計を見つけますが、ネイマはそれを隠します。

この夏、ホテルで働くかと母に尋ねられたネイマは否定し、ソフィアの自由な生き方への憧れを口にしました。そんな娘に対し母は、自由は働くより疲れる、だから彼女は疲れ切っていると諭しました。

ネイマはソフィアと浜辺で遊び、映画館で一緒に『マーダーズ』を見るなど、楽しく夏を過ごします。その一方でネイマに、男を焦らす方法や、化粧など美しく見せる手ほどきを教えてゆくソフィア。

彼女に勧められ、買い与えられた高い腕時計を返品すると、その金額で様々なブランド品を手に入れたネイマ。2人はすっかり意気投合しています。

そんなある日、彼女たちはアンドレから会食に誘われます。その場所は母が働くホテルの、ネイマがアルバイト務めをしたレストランだったのです。

以下、『わがままなヴァカンス』のネタバレ・結末の記載がございます。『わがままなヴァカンス』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)Les films VELVET – France 3 Cinema

レストランではアンドレが招待客を招いた、豪華なディナーパーティーの中に、ネイマとソフィアの姿もありました。客の中にいるネイマの姿を、料理長ら従業員仲間は不審げに見つめます。

会話には加わらず、アンドレに視線を送り続けるソフィア。酔った客は服のままプールに飛び込むと、従業員は冷めた視線で見つめました。

フィリップが気を使いネイマに話しかけますが、まだ若い彼女にはこの場所は、居心地の良い雰囲気ではありません。

パーティーが終わるとアンドレに代り、フィリップが支払いを済ませます。アンドレに誘われて船に泊まると言い、ネイマに明日は2人共、船旅に誘われたと伝えるソフィア。

その日はドドとオーディションを受ける日でした。朝目覚めると、どうすべきか悩むネイマ。結局彼女は、winning streak号に乗ることを選びました。

豪華な船は動き出します。ネイマの目に周囲のプレジャーボートに乗った、カンヌで余暇を楽しむ華やかな人々が映ります。これはカンヌに住む彼女にとっても、初めての経験です。

イタリアの目的地に着き停泊する船に、迎えの小型ボートが現れます。ネイマとフィリップは、仲良く寄り添うソフィアとアンドレと共にボートに移りました。

ボートが到着すると、一同はフィリップの友人でアンドレの商談相手、カリプソ(クロチルド・クロー)の豪華な邸宅に招かれます。

アンティークの象限儀を見せることになり、船に戻るフィリップにネイマは付いて行きます。カリプソを褒めるネイマに、彼女は美しく危険な存在だと答えるフィリップ。

危険な女になりたいと言う16歳のネイマに、将来の目標を訊ねるフィリップ。彼女は分からないけど、女優になりたいとも考えている、と答えます。

彼女はソフィアやカリプソを意識して、精いっぱい自分の女の魅力を、目の前にいるフィリップにアピールしているのでしょうか。

危険な女になりたいというネイマに、ならばもっと大胆になり、人の影に隠れていてはダメだ、とフィリップは告げます。

そしてネイマは、ドドと共に受けるオーディションの時間が迫っていることに気付きます。オーディション会場前で、一向に現れないネイマを待っているドド。

ボートのネイマに、フィリップは象限儀を見せ、これが高価で価値のあるものだと教えます。彼はアンティークの鑑定と取引に長け、アンドレのために働く人物でした。

2人は邸宅に戻ります。カリプソからアンドレとの関係を聞かれ、1週間ほど前から付き合っていると答えるソフィア。

カリプソに対し、マルグリット・デュラス(「雨のしのび逢い」や「ヒロシマ、私の恋人」、「愛人 ラマン」を著した女流小説・脚本作家)の小説を読んでいると話すソフィア。カリプソと張り合うように振る舞う彼女を、アンドレは笑って見つめます。

4人はプレジャーボートに戻りますが、飲み物を運んでいた男の乗務員がネイマが接触し、床にこぼしました。すると男は思わず、彼女に乱暴な口を効きました。

乗務員にとってネイマは主人の客人ではなく、ソフィア同様に金と引き換えに抱かれる女にしか見えず、軽蔑の対象でもあったのでしょう。

その言葉を聞いたフィリップは怒り、自分のせいだと説明するネイマに構わず、乗務員を叱りつけ、丁重な口調で詫びさせます。

周囲から自分が、どう思われているかを思い知らされたネイマ。そんな彼女の心境に関係なく、個室でアンドレと関係を持つソフィア。

ネイマは気を取り直し、ソファーで本を読むフィリップに近寄りますが、アピールしてきた彼女にフィリップは、君はまだ子供だと告げ関心を示さず、仕事の電話をかけ始めます。

その頃個室のベットで眠りについたソフィアを、冷たい顔で見つめているアンドレ。

船が港に到着した後、ネイマは乗務員に起こされます。ソフィアと乗務員が言い争っていました。相手はソフィアが、高価な象限儀を盗んだと疑い責めていました。

フィリップも現れますが、乗務員は自分に任せるよう言うと、ソフィアとネイマを船から追い出します。

ネイマはソフィアに船に戻り、盗んでいないと証明しようと必死に訴えますが、彼女にどうでもいいと告げ、1人になりたいと言うと、先に進んで行ったソフィア。

その頃船では、アンドレが隠した象限儀をケースに戻す姿を、フィリップが目撃していました。彼は女に別れを告げるにも、もう少し優しい方法があっただろうと言いますが、アンドレは悪びれた様子を見せません。

親しくともアンドレに使われる身のフィリップは、その態度に反発を覚えながらも、それ以上何も言えませんでした。

ネイマと別れたソフィアは、クラブにいたドドに会いにいきます。しかしオーデションをすっぽかされ、彼女を冷たく追い払ったドド。

しかし彼は改めてソフィアの元に寄り、1人で受けたオーディションに合格したと報告します。2人は抱き合って喜び、一緒に帰ります。

ネイマは家に戻ると、ソフィアは姿を消していました。それはいつの間にか、何も告げずに去って行く季節のようなものだと、彼女は感じていました。

彼女は1人港に走り、winning streak号のフィリップに呼びかけます。その声を聞いた彼は、ネイマの元に現れます。

自分でもどうしてここに来たか、これからどうしたいのか判らない、と告げるネイマに、それでいいんだと答えるフィリップ。その言葉に納得したのか、互いに笑顔を見せる2人。

彼はネイマに対し、この夏君の周囲で起きた様々な出来事は、君の本質とは関係ないと告げます。そしてフィリップを乗せたプレジャーボートは、港を離れて行きました。

ネイマはその後、ソフィアと会うことはありませんでした。ソフィアはロンドンに渡り、そこで幸せに暮らしているようです。

9月。ネイマは調理学校に通い始めていました。今はコックを目指して学友とともに過ごし、ソフィアから貰ったシャネルのバックを身近に置いているネイマ。

そのバックには彼女が過ごした16歳の、ひと夏の思い出が詰まっていました。

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映画『わがままなヴァカンス』の感想と評価

参考映像:『ビッチ・ホリデイ』(2018)

ひと夏の体験、と言えばエロチック映画定番の設定。この映画もそのものズバリで、背伸びした少女の目を通して、大人たちの赤裸々な世界を描いた作品です。

劇中では自分の肉体を武器に、金や豪華な生活を得ようとする女が登場しますが、当然そんな映画を、女性蔑視と批判する意見も出るでしょう。

そういった意見の中に、知ってか知らずかそんな生き方や職業を選んだ女性に対する、軽蔑や賤業意識が存在する場合もある、と指摘される事例もあります。人の考えや営み、置かれた状況は千差万別、一つの価値観に収まるものではありません。

本作同様、体を武器に物質的充足を得る女のひと夏の姿を、より過激に、よリシビアに描いた映画に、「未体験ゾーンの映画たち2019」で上映された『ビッチ・ホリデイ』があります。

そして『わがままなヴァカンス』と『ビッチ・ホリデイ』は、共に女性監督によって描かれた、問題提起のある作品としても共通しています。

女性のために闘う監督の洞察力


(C)Les films VELVET – France 3 Cinema

本作をいわゆるエロ映画、セクスプロイテーション映画と思う方には意外かもしれませんが、監督のレベッカ・ズロトブスキは、フランス映画界で長らく性差別と闘ってきた人物です。

そしてアメリカで#MeToo運動が起きた後、フランス映画界でも性差別への抗議と、女性に対等な活躍の機会を求める運動が起き、”Le collectif 50/50″という団体が誕生します。その中心人物の1人がズロトブスキ監督でした。

そんな彼女が映画祭で有名なカンヌを舞台にして、いかにも男性視点の映画を撮ったことには様々な意味があります。1つには女性を商品化してきた、従来の映画などの文化に対する、皮肉や批判がありました。

その一方でむしろSNS時代となった現代こそ、若い女性たちがInstagramなどで享楽的な自身の姿を発信し、安易に物質的な成功を満たそうとする傾向が、むしろ過去より強まっている現状への風刺も含まれています。

監督と、出演したザヒア・ドゥハールがつながったのもInstagramでした。そして彼女と対照的な主人公を用意します。

それが平凡な女の子でありながら、16歳にして大人の世界をかいま見てしまうネイマです。この人物を演じたミナ・ファリドを、オーディションで発掘したのも監督の功績でした。

監督はこの主人公を通し、作品をセクスプロイテーション映画ではなく、今を生きる女性の大人への成長物語にしたかった、と述べています。

お騒がせ人物を起用した意味


(C)Les films VELVET – France 3 Cinema

この映画はフランスの観客にとって、ストーリー以上のスキャンダラス性を持った作品である、と受け取られています。

ソフィアを演じたザヒア・ドゥハールの名前は、サッカーに詳しい方こそ知っているかもしれません。16歳(映画のネイマと同じ年)で売春を始めた彼女は、2009年に客として出会った、フランス代表のサッカー選手と関係を持ちます。

これが表ざたになり、世間から注目を集めます。売春は合法のフランス(2016年には”買春”を禁じる法律が制定されています)でも、当時は未成年の買春は違法でした。報道は加熱し「ザヒア事件」と呼ばれる、一大スキャンダルに発展しました。

この事態に彼女は積極的にマスコミの取材に応じ、自分はプロの売春婦ではないと主張しつつ、自分の存在をアピールします。2010年頃、彼女の存在はフランスで、インターネット上のムーブメントとなります。

その話題性を武器に、彼女はモデルとして活躍するようになります。メディアへの露出が減ると、2012年には自分のランジェリーブランドを立ち上げ、今もセレブとして活躍しています。

彼女の過去の事件に関してズロトブスキ監督は、メディアに対して多くを語っていません。しかし撮影前に親交を持ち、彼女の存在が映画に登場するソフィアというキャラクターの創造に、大きな影響を与えたと話す監督。

映画に描かれたソフィアと言う人物を、ザヒア・ドゥハールという存在を通して見ると、また新たな一面が発見できませんか。

まとめ


(C)Les films VELVET – France 3 Cinema

若い女性が、危うい世界に触れる姿を描いた映画『わがままなヴァカンス』。

深掘りして紹介すると、何か難しい映画に思えたかもしれませんが、女性視線でスキャンダラスな存在、ザヒア・ドゥハールの裸身を捉えた映画としても堪能できます。

この映画の良心というべき役を演じたブノワ・マジメル。しかしその役柄は、女が肉体を武器に享楽的な生活を手に入れると非難するなら、一方で男は仕事などを通じて得た社会的地位で、それを得ているのだと指摘しています。

良心的に見える彼もまた、そんな生活にしがみつく存在であり、それを16歳の少女に悟らせる展開こそ、レベッカ・ズロトブスキ監督ならではの物語といえるでしょう。

主人公のネイマは、映画の中で自分の経験を通じ、自分の将来を選びました。世の中の様々な問題に対し、潮流に流されるよりも自身で考え、議論し、自分の意見を持つことを良しとする、フランス人的な気質を描いた映画とも言えるでしょう。

そして映画に登場した登場人物の姿は、冒頭で紹介された哲学者パスカルの言葉を通して振り返ると、また別の意味を持って来るのです。

ところで映画好きな人種には、本作に登場するような金持ちになびく女は、はなっから大嫌い!という方もいるのではないでしょうか。

いやいや、それは間違いです。この作品は、一緒に映画館でパスカル・ロジェ監督の拷問スプラッター映画、『マーダーズ』(2008)を喜んで見る、22歳と16歳の女の子を描いた映画です。

B級映画、ホラー映画ファンを自認する方こそ、そんな女の子に遭遇したら迷わず声かけるべきではないでしょうか。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」は…


(C)2019 Overlook Films, Moon & Deal, Orange Studio

次回の第49回はモロッコを舞台に、魔物の恐怖を描くホラー映画『ドント・イット THE END』を紹介いたします。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら




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