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Entry 2020/05/07
Update

『ふたりの映画ができるまで』ネタバレあらすじと感想。ヌーヴェルヴァーグの名作や恋愛模様を引用にジェームズフランコが描く|未体験ゾーンの映画たち2020見破録46

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第46回

「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第46回で紹介するのは、美しい映像で紡がれた恋愛映画『ふたりの映画ができるまで』

『ハッピーエンドが書けるまで』(2012)と『きっと、星のせいじゃない。』(2014)を監督し、新世代の恋愛映画の旗手となったジョシュ・ブーン。

彼の脚本をジェームズ・フランコが監督した、異色の恋愛映画が誕生しました。1970年代末から80年代を舞台に、映画を愛し華やかな世界に生きる若者たちの、恋の意外な行方を描く作品です。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

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映画『ふたりの映画ができるまで』の作品情報


(C)2017 The Pretenders, Inc. All rights reserved.

【日本公開】
2020年(アメリカ映画)

【原題】
The Pretenders

【監督・出演】
ジェームズ・フランコ

【キャスト】
ジャック・キルマー、ジェーン・レヴィ、シャメイク・ムーア、ジュノー・テンプル、ブライアン・コックス、デニス・クエイド、ジェームズ・フランコ

【作品概要】
映画を愛する若者たちの、意外な展開を持つラブストーリー映画。製作も務めたジョシュ・ブーンの脚本を、出演も果たしたジェームズ・フランコが監督した作品です。

主演はヴァル・キルマーの息子で、ジェームズ・フランコの短編小説をジア・コッポラ監督が映画化した作品、『パロアルト・ストーリー』(2013)でデビューを果たしたジャック・キルマー。相手役を『ドント・ブリーズ』(2016)、「未体験ゾーンの映画たち2019」の上映作品『Z Bull ゼット・ブル』(2018)のジェーン・レヴィが務めます。

『プリテンダーズ ふたりの映画ができるまで』のタイトルで、DVDリリースされた作品です。

映画『ふたりの映画ができるまで』のあらすじとネタバレ


(C)2017 The Pretenders, Inc. All rights reserved.

1979年。ニューヨークにある”PALACE”という名の映画館で、ゴダール監督作品『女は女である』を見ている学生のテリー(ジャック・キルマー)。スクリーンでアンナ・カリーナが踊るシーンで、1人の女(ジェーン・レヴィ)が場内に入ってきます。

テリーの前に座った女は、彼の方を振り返ると軽く謝ります。その美しい顔立ちに、釘付けになってしまうテリー。

映画館から出たテリーは、入口の前で煙草を吸いながら、彼女が出て来るのを待ちます。現れると、彼は眼鏡を取って何気ない風を装います。彼女はテリーに煙草を1本求めました。

それ以上会話は進まず、礼を言ってタクシーに乗り込む彼女を、テリーは見送りました。その姿を彼のルームメイトで黒人のフィル(シャメイク・ムーア)がカメラに収めます。フィルは彼女を美しかったと褒め、女性に消極的な友人をからかいます。

信心深く厳格な両親の元で育ち、今はその反動のように自由奔放に生きるフィルと、ベトナム戦争から帰国した父に耐えられず母は出て行き、その後父と週に2・3回は映画を見て育ったテリー。対照的な2人は良き友人でした。

女性に奥手なテリーに、さっき見た女はきっと役者だとフィルは断言します。NYで暮らし1人でヌーヴェルヴァーグ映画を見る女性なら、きっと間違いないと断言し、フランス映画を上映する映画館にまた来ると告げるフィル。

自分のタイプではないが、彼女とお前がまた会うことは可能だ、とフィルはけしかけます。からかわれても、テリーは悪い気はせず彼と肩を組んで帰ります。

大学の上映した映画について語りあうゼミで、テリーがあの日見た映画、『女は女である』が取り上げられました。ゴダールについて意見を求められ、政治的で評論家受けしているだけ、との辛らつな意見が学生から出ました。

テリーはこの映画を含む、アンナ・カリーナが出演した何本かのゴダール作品は、監督が彼女に宛てたラブレターであり、彼女は監督のミューズだったと発言します(コダール初期作品のパートナー、アンナ・カリーナは彼の最初の妻)。

その言葉に1人の女学生が意見を述べます。それは男性の視点で、映画監督は大抵男性。したがって映画の観客は、男性の視点で世界を見ることになる…。

テリーが寮の部屋に戻ると、「2度とこんな男になるな!」と書かれた封筒がありました。中にはルームメイトのフィルが撮った、あの日映画館前で彼女を見送った、テリーの顔を捉えた写真が入っていました。

あの日以来、テリーはゴダール作品を上映している映画館に通い、彼女が現れないか探し求めます。友人のフィルは、キャンパスの女の子を被写体に写真撮影に励みます。

フィルは大学で女の子に積極的に声をかけ、自分のモデルにしていきます。そんな友人に付き従い、撮影を手伝うテリー。

あの時の彼女と再会しようと、映画館に通いつめるテリー。フィルの紹介した女の子と共に、ダブルデートで映画を見た時も、その後その女と寝ても、彼は満たされない気持ちでした。

ある夜、映画館”PALACE”の前にいたテリーに、フィルはあのダブルデートの時に、ここであの女を見かけた、と話します。その時テリーは、映画館の前に彼女がいると気付きます。

フィルを残して彼女に向かい、勇気を出して声をかけるテリー。数週間前にこの映画館で、一緒に『女は女である』を見たと伝えます。怪訝そうな顔の彼女に、正確には連れだって見た訳ではないと付け加えるテリー。

彼女はアラン・レネ監督の、『去年マリエンバートで』のマネかと聞きます(去年マリエンバートであなたに会ったと告げる男と、それを記憶していない女を描いた映画)。テリーはあの日映画館の前で、タバコをあげた男だと説明します。

妙な話だけど、あの日以来君と再会できればと思い、毎日のように映画館に通いつめたと告白するテリー。自分は毎日舞台に立っており、出演の無い時にここに来ると告げ、彼女は自分の名はキャサリンだと紹介しました。

テリーも名を名乗ると、フィルが2人の前に現れ、彼女をテリーを交えた食事に招待します。親友とキャサリンの仲を取り持とうと、彼は映画を学ぶ学生で、監督する短編映画に彼女の出演を望んでいると告げるフィル。

3人は店に入ります。テリーはボルチモア、フィルはフィラデルフィアの出身だと自己紹介します。キャサリンはテキサス出身と告げますが、言葉に訛りは無くテリーは意外な印象を受けます。

奥手なテリーが黙っていると、フィルは彼を蹴り話すよう促します。テリーがキャサリンに今はどんな舞台に立っているのか尋ねると、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストタンゴ・イン・パリ』のフェミニスト版の芝居で、マーロン・ブランドの役を演じていると話すキャサリン。

世界中に物議をかもしたシーンの撮影後、マリア・シュナイダーとベルトルッチは決別した、と映画の話題を語るテリー。キャサリンは常にカメラを持ち歩くフィルに、どんな写真を撮っているのかと尋ねます。

主にヌードを撮ってるというフィルに、彼女は自分のオーディション写真を撮るカメラマンの評判を訊ねます。するとフィルは自分が撮影すると言いだし、彼女も承諾しました。

日を改め、テリーとフィルの部屋で撮影に臨むキャサリン。彼女に大胆に迫り撮影するフィルを、照明を持って気もそぞろに見守るテリーですが、いつしか雰囲気は和み、皆でベットの上で跳ねる姿を撮影した3人。

壁にゴダールの『軽蔑』などの映画ポスターを貼った部屋で、タイプライターに向かい映画の脚本の執筆に打ち込むテリー。そしてフィルとは、ドアノブにネクタイを下げた時は、部屋に入らないと取り決めます。

舞台用の衣装を着たキャサリンと共に、バスで劇場に向かうテリーとフィル。彼女は車内で演技を披露してみせます。舞台にマーロン・ブランドの姿で立つ彼女の姿は、客席から見つめる2人には圧巻でした。

舞台が終わると、テリーは彼女に完成した脚本を渡します。フィルが先に引き上げると、早く脚本が読みたいキャサリンは、テリーを仲間との打ち上げに招きます。

キャサリンは仲間にテリーとの出会いを話し、彼は自分が主演の映画を撮る監督だと紹介します。映画の内容を聞かれ、ラブストーリーだと答えるテリー。

2人はタクシーで帰りますが、キャサリンは今すぐ台本を読むと言い出します。自分をさらけ出した内容で、目の前で読まれるのは恥ずかしいと言うテリーに、彼女はそれがアーティストの仕事だと告げます。

タクシーを止め、彼女だけを車内に残し脚本を読ませ、自分は運転手と共に外で待つことにしたテリー。彼女が読み終えると車に戻りました。

走り出した車の中で、彼女は何の言葉も発しません。家に着くと別れも告げず、そのまま車を降りて立ち去ります。

ショックを受けたテリーが寮に戻ると、部屋のドアノブにネクタイがかかっています。フィルが女を連れ込んでいるのでしょう。

やむなく寮の共用部で寝ていたテリーの前に、キャサリンが現れます。脚本の内容が君を怒らせたと侘びるテリーに、そうではないと話すキャサリン。

脚本の内容は美しいが、自分への真剣な愛の告白、という内容が怖かったと語ります。テリーは否定しますが、彼女は自分にはそう受け取れる内容だと話します。

真剣な関係を恐れ、もっとあなたを知ってから、ゆっくり関係を進めたいと告げるキャサリン。そして2人はキスをしました。

その後2人はベットで体を重ね、部屋の中で戯れます。満足げに眠るテリーの横で煙草を吸い、窓の外を見つめているキャサリン。

ある夜キャサリンは酒場でフィルと会います。フィルが撮影した彼女の写真を受け取りますが、それは素晴らしい出来栄えでした。

テリーは幸せそうだと告げるフィルに、彼は私たちをゴダールとアンナ・カリーナの様な関係にしたい、と語っていると教えるキャサリン。ゴダールとカリーナは常に幸せではなく、最後には離婚したと指摘するフィル。

また君の写真を撮りたい、と語るフィル。彼に言わせるとテリーは、彼女を映画の中の理想の人物として崇め、テキサス出身の血の通った1人の女性と扱っていないと告げます。

自分たちは1度寝るべきだ、というフィルの言葉を聞き、店のトイレに向かうキャサリン。フィルは後を追い、そこで2人は行為に及びました。

テリーの映画の製作が開始されます。あの映画館”PALACE”前での撮影時、カメラを持つテリーとキャサリンはキスを交わし、実に幸せそうに見えます。

完成した映画は、彼とキャサリンとの出会いとその後を、美しい映像で描いたものです。大学の映画ゼミで披露されると、教授は学生たちに意見を求めました。

ある男子学生が、フランソワ・トリュフォーの自伝的映画『大人は判ってくれない』を例に出し、自分を誠実にさらけ出した作品と評します。しかし女学生たちはこの映画は、男目線で女性への執着を描いただけで、本当の彼女を描いていないと厳しい意見を告げます。

酷評に傷付いたテリーが自室のドアを開けると、ベットの上でフィルとキャサリンが行為に及んでいました。フィルはこれは体だけの関係で、誰かがドアノブのネクタイを奪ったと言い訳しますが、打ちのめされ黙って姿を消すテリー。

衣服を身に付け、部屋を出たキャサリンはゴミ箱にネクタイを捨てます。果たしてネクタイを隠したのは、彼女だったのでしょうか…。

1983年。”SCOTIA”という名の映画館で『ラストタンゴ・イン・パリ』が上映されていました。場内に入ったテリーは、客席にいた娼婦に誘われ外に出て、路地裏で関係を持ちます。

今や売れっ子のカメラマンとなったフィルの、華やかな展示会にテリーは現れます。とある写真に興味を示したマックスウェル(ジェームズ・フランコ)とビクトリア(ジュノー・テンプル)に、この写真の撮影現場にいたと話しかけるテリー。

テリーはフィルの学生時代からの友人だと、現れたキャサリンがマックスウェルに紹介します。マックスウェルは、ゴダールの映画をアメリカでリメイクしている監督でした。

テリーに興味を示したビクトリアは、彼の職業を尋ねます。テリーはフリーの映画評論家だと説明します。そしてテリーは、久々に会ったキャサリンと会話を交わします。

トイレでマックスウェルと一緒になったテリーは、彼からキャサリンに恋をしてるのかと聞かれます。妻のビクトリアがテリーに興味を示しても、君の目はキャサリンに釘付けだったと告げるマックスウェル。

トイレを出たテリーを、キャサリンはダンスに誘います。彼女はテリーが映画作りを止めた理由を訊ねますが、誰も自分の作品など求めていない、テリーはそう答えました。

そこにフィルが現れ、2人の肩を抱き再会を喜びます。会場のモデルに3人の写真を撮らせますが、そこに女が現れ、フィルにタイムズ紙が私たちが寝たと知ってると、怒鳴りこんできました。騒ぎは来客の注目を集め、キャサリンは不快な思いをします。

会場の外で煙草を吸うキャサリンの元に、テリーが現れます。君には幸せでいて欲しいから、俺と会わない方が良いと告げるテリー。

私はいつでも1人で歩んでいけるが、あなたはそうではない。これからも友達でいよう、と告げるキャサリン。彼女はテリーにキスをして去って行きました。

テリーは週に2~3回は、フィルと共にランニングをしていました。その際話題がフィルの女性遍歴になると、意外にも彼はキャサリン以外と寝ていないと言います。

テリーは誰とでも寝ているはずだと指摘すると、展示会で女が起こした騒ぎも、世間から注目を集める仕込みだと打ち明けます。意外にも彼は、キャサリンに一途な思いを抱いていました。

彼女は自分たちを必要としている、俺は彼女の望むやんちゃな男を演じていると、フィルは語ります。こうして彼女をつなぎ止めているが、お前には俺のやり方も、彼女の考えも理解できないだろうと告げ、フィルは走り去ります。言葉の意味を理解しかねるテリー。

ある朝テリーの元に、キャサリンから電話がかかってきます。その日テリーはボルチモアの父と会う約束の日でしたが、彼女はその前に絶対に会うべきだと告げました。

現れたキャサリンは、昨夜TVで見たミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画、『情事』と『さすらいの二人』について話します。彼女は鑑賞後、新たな映画のアイデアを思いつきます。

それは『情事』のように消えた女を追う物語で、探偵が愛していた女を追う内に、知らなかった彼女の一面を知り、『さすらいの二人』の登場人物のように影響を受けてゆく展開でした。

そして探偵は老人に会い、彼の言葉で女の正体を知るという、幻想的オカルト要素も加えたものでした。彼女はテリーと行動を共にし、父との再会に加わってアイデアを説明したのです。

酒場で息子とキャサリンに会ったテリーの父ジョー(デニス・クエイド)も、彼女の話を聞かされていました。ジョーに仕事を訊ねられ、女優だと答えるキャサリン。

テリーは彼女を恋人ではないと父に紹介しますが、ならば何の目的で彼女はここに居ると言い、キャサリンに自分の映画で頑張るよう告げると、1人席を立ったジョー。

父は母と別れて以来、いつもこんな態度だと侘びるテリー。しかし彼女が話した、映画のアイデアには関心を示します。

やがて探偵が出会った老人に女の写真を見せると、老人は彼女を学生時代に愛した、大切な女性だと告げます。老人の記憶が混乱しているのか、それとも女は人ならぬ存在なのか。

このアイデアは映画の脚本にすべきだというテリーに、私は作家ではないと言うキャサリン。こうして彼女の助言を得て、テリーが脚本を書くことになりました。

2人がまた映画を共に作る関係になったとき、テリーとキャサリンはあの日のように、体を重ねる関係に戻り、愛し合うようになります…。

以下、『ふたりの映画ができるまで』のネタバレ・結末の記載がございます。『ふたりの映画ができるまで』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2017 The Pretenders, Inc. All rights reserved.

華やかな業界人の集まるパーティーにテリーはいました。その席でマックスウェルとビクトリア夫妻は、女優である妻がかつて演じたベットシーンについて話します。会場にはフィルのパートナーとして現れた、キャサリンの姿もありました。

監督は映画を撮る時、主演女優に対して恋している、と語るマックスウェル。ゴダールとアンナ・カリーナ、ウディ・アレンとミア・ファローそしてダイアン・キートン、ロベルト・ロッセリーニとイングリッドバーグマン…、彼は実例となる名前を挙げます。

やがてドラッグを使用したフィルは眠り、煙草を吸っていたテリーの元に、ビクトリアが現れます。彼女はテリーを写真家・フィルの友人で、そして映画評論家として彼女を好意的に紹介した人物として覚えていました。

意気投合した2人は、会場のロッカーに隠れ関係を持ちます。そこにキャサリンが現れますが、何もとがめませんでした。

フィルがビクトリアを撮影する現場に、助手としてテリーは参加します。撮影終了後、たき火の前で語り合い、意気投合するテリーとビクトリア。

彼女はキャサリンから、テリーはかつて映画監督を目指していたと聞いており、今は脚本を執筆中とも教えられていました。彼は執筆中の脚本は、キャサリンのアイデアだと説明しますが、ビクトリアはぜひ読みたいと告げます。

ビクトリアの元で、脚本を執筆するようになるテリー。その頃キャサリンは、1人煙草を手に窓の外を見つめていました。

テリーに入れ込んだ人気女優のビクトリアは、彼を映画プロデューサーのアルバートに引き合わせます。アルバートは彼の脚本『ザ・プリテンダーズ』を気に入って映画化を約束し、ヒットすれば次の作品も執筆してくれと告げます。

この反応にテリーとビクトリアは喜びます。そして彼女の口から、マックスウェルと離婚すると告げられるテリー。

テリーはフィルと共にランニングした際、この状況を報告します。フイルはビクトリアが現れて以来、キャサリンの様子がおかしいと告げます。今までお前が3人の関係のバランスをとっていた、そうフィルに言われてもテリーは納得しかねました。

ビクトリアが開いたテリーとの婚約パーティーに、キャサリンとフィルの姿もありました。テリーは君のおかげだと告げ、脚本の報酬の半分をキャサリンに渡そうとしますが、彼女は自分は書いていないし、それに値しないと断ります。

テリーに怒っているのか、と訊ねられ、自分自身を怒っていると答えたキャサリン。

ビクトリアは結婚前にテリーの父と会うことを望みますが、結婚式まで待つよう説得するテリー。その日彼は父のジョーと酒場で会いましたが、何の会話もありません。

彼が家に戻ると、そこにキャサリンがいました。なぜここにいるのか、とテリーは怒りますが、ただ一緒にいて欲しいと頼むキャサリン。テリーに彼女と共に過ごした日々が甦り、彼は自分の中に眠っていた想いに気付きます。

テリーからキャサリンへの想いを告白され、ビクトリアは怒ります。彼女はテリーとキャサリンは単なる友人と信じていました。彼を自分を利用するため騙した見事な役者だと責め、出ていくよう叫ぶビクトリア。

こうしてテリーとキャサリン、フィルは共に映画館で過ごす、学生時代と同じ関係に戻りました。しかしテリーとキャサリンがよりを戻したことで、今度はフィルがはじかれた存在になります。彼は1週間後、ロスに引っ越すとテリーに告げます。

そしてフィルは、ドラックや行きずりのセックスに溺れます。キャサリンに裏切られた頃のテリーのような自棄な生活は、やがて彼に悲劇をもたらしました。

1986年。テリーとキャサリンは、AIDSに感染し入院中のフィルを見舞います。家族から見捨てられ、病院で死にたくないと言うフィルを、テリーは自宅に連れ帰ります。

自宅の壁に『女は女である』を映写するテリーとフィル。壁に映されたアンナ・カリーナと同じ衣装で現れ、画面と重なる様に踊るキャサリン。

フィルの容態は思わしくありません。これは自分のせいだと呟くキャサリンに、フィルはそんなことは言うなと告げます。

彼はキャサリンに、あなたは自分に忠実に生きる人だと話します。あなたはテリーを愛しており、自分は彼とは違う形で、あなたを心から愛したと語るフィル。

テリーが戻った時、キャサリンの姿はありませんでした。鏡に口紅で書かれた、「Fin」の文字とハートマークが残されていました。テリーは街を探しますが、彼女の姿を見つけることは出来ません。

キャサリンの行方が判らず、故郷のテキサスに帰ったのかもと言うテリーに、フィルは彼女はロンドン行きの航空券を買ったと教えます。テリーはその後もフィルの世話を続けますが、やがて彼は還らぬ人になります。

その2週間後、テリーはロンドンにいました。古い営業前の映画館に現れ、そこで働く老いた男ヘンリー(ブライアン・コックス)に、キャサリンの写真を見せるテリー。

彼女は友人の死に耐えられず、姿を消した私の恋人で、手がかりを元にここに来たと語るテリー。しかし写真を見たヘンリーは、彼女はアメリカ人ではないと告げます。

彼女の名はクレア・ウォリックで、幼い頃彼女の母はチケットを買い与えると、1日中娘を映画館で過ごさせ働いていたと説明する老人。クレアはそこに座って何百という映画を見たと、彼は座席を指差しました。

彼女の母は売春婦で、ある日戻らなかったと告げるヘンリー。クレアはその後もこの映画館で時を過ごし、16歳の頃出会ったポールという男と、アメリカに渡ったと話します。

ポールは3ヶ月後、1人で帰ってきました。クレアは姿を消したというのです。その後ポールは荒んだ生活を送った、と語るヘンリー老人。

クレアは確かに1ヶ月程前に現れたが、少しも変っておらずイギリスのアクセントで話していた、と彼はテリーに告げます。

久しぶりに老人と再会した彼女は、これから芝居に出るので当座の金を貸して欲しい、と頼みます。彼はクレアに与えたつもりで金を渡しましたが、その一部をフランスの通貨で返してきたと、テリーに封筒を差し出します。

そしてヘンリーは最後に、私はかつてクレアを自由に行かせた。君もキャサリンを追わず、自由に行かせるべきだと告げました。

2日後、フランスのトロア。舞台の上でリハーサル中のキャサリンの前に、テリーは現れます。ロンドンでヘンリー老人に会ったと告げ、一緒に帰ろうと告げるテリー。

しかしフランス語を喋る彼女は、英語を理解できないようでした。舞台の関係者は彼女はクリスティンで、テリーに誰かと間違っているのでは、と告げました。

テリーはフィルが死んだと告げ、彼女の肩を掴みキャサリンと呼びかけますが、反応はありません。彼は舞台に関係者に詫び、1人劇場を去って行きます。

楽屋に入った彼女に、親身に寄り添ってくる男がいます。しかし今はクリスティンと名乗る女は、黙ったまま鏡を見つめていました。

帰国したテリーは、キャサリンとフィルと共に、3人で過ごした日々を思い出します…。

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映画『ふたりの映画ができるまで』の感想と評価

参考映像:『女は女である』(1961)アンナ・カリーナのストリップシーン

過去の作品のリスペクトした映画は数多いですが、アメリカでヨーロッパ映画、それもヌーヴェルヴァーグ時代の映画に敬意を表する作品は少ないと思います。

しかし『ふたりの映画ができるまで』は、その思いが映画そのものになった作品です。紹介した『女は女である』のアンナ・カリーナのシーンは、劇中に度々意味を持って登場します。

他にも多く映画が様々な形で登場しますが、単に羅列・紹介するでけでは無く、登場人物の描写やストーリーに多層的な影響を与えています。

この欧州映画愛、そしてニューヨークの映画界への、思慕に満ちた物語を描いたのがジョシュ・ブーン。綺麗な映像でファンタジックな恋愛映画として楽しめますが、劇中に言及された映画を知ると、さらに興味深い作品になります。

ヌーヴェルヴァーグク映画を元に紡がれた物語


(C)2017 The Pretenders, Inc. All rights reserved.

3人の男女の奇妙な恋愛関係は、フランソワ・トリュフォー監督の『突然炎のごとく』(1962)、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『ドリーマーズ』(2003)を下敷きにしています。

映画を愛する登場人物が、性的に結ばれる展開も『ドリーマーズ』にならっていますが、主人公と恋人の関係をジャン=リュック・ゴダール監督とアンナ・カリーナに例え、3人の関係の性的な危うさを『ラストタンゴ・イン・パリ』(1972)を使い表現しています。

ジェームズ・フランコが演じた監督は架空の人物ですが、ゴダールの『勝手にしやがれ』(1960)をリチャード・ギア主演でアメリカでリメイクした映画、『ブレスレス』(1983)のジム・マクブライ監督を元に、創作した人物かもしれません。

絡み合った恋愛劇が、謎めいた展開になることが納得できない方もいるでしょうが、『突然炎のごとく』や、アラン・レネ監督の『去年マリエンバートで』(1961)を意識して創造された物語だと理解すると、納得いくものになるでしょう。

この脚本を映画化するのに選ばれた監督が、ジェームズ・フランコ。俳優としてだけでなく、優れたインディペンデント映画の監督・製作者としても実績を持ち、過去の映画にも深い知識を持つ人物。彼が監督するならと、出演を決めた俳優もいたでしょう。

将にこの映画に相応しい監督。将に適任のはずでしたが…。

思わぬ形で注目を集めた作品


(C)2017 The Pretenders, Inc. All rights reserved.

2016年11月、ジェームズ・フランコの監督起用が発表され、本作の製作は動き出します。そしてジェームズ・フランコは監督・主演作『ディザスター・アーティスト』(2017)で、2018年ゴールデングローブ賞の、主演男優賞受賞の栄誉に輝きます。

この2018年のゴールデングローブ賞は、#MeToo運動の盛り上がりの中行われ、彼もセクハラ撲滅運動を支持するスピーチを行います。

しかしこのスピーチの最中から、SNS上に彼にセクハラ被害を受けたとの投稿が現れます。女優や元ガールフレンド、彼の演劇学校の女生徒からの告発が相次ぎ、一転彼は#MeToo運動で糾弾される側となりました。

無論彼を擁護する意見もありますが、監督や指導者としての立場を利用した悪質性と、自分の行為を棚に上げ、#MeToo運動を支持を表明した偽善的態度を問題視され、彼は極めて厳しく追及されることになりました。

そんな中、2018年11月のトリノ映画祭に出品された本作。翌年2019年秋に、ようやくアメリカで本作は公開されます。するとボヘミアン気質のアーティストなら、女優やモデルと寝るのもさも当然、という映画の内容は、フランコに批判的な人々の酷評を集めます。

映画監督が女優と恋に落ちるのは、ゴダールやウディ・アレン、ロベルト・ロッセリーニと同じだと、出演したフランコが劇中で、自身の口で発言するとは…事情を知る人なら全員が、「お前が言うな!」と、ツッこむこと必至の場面です。

この映画のベースになっているのは、間違いなく素晴らしいフランスそしてイタリアの映画です。しかし監督・出演したフランコの存在を通して見ると、別の意味を持つ映画に見えるので…何とも困った事態になりました。

まとめ


(C)2017 The Pretenders, Inc. All rights reserved.

多少なりともヌーヴェルヴァーグ映画を知る人が見れば感動必至、またこの映画に触れ、過去の名作に興味を持つ人も生まれる作品、それが『ふたりの映画ができるまで』です。

#MeToo運動の前に製作が動き出した作品ですが、説明した通り、人々から思わぬ視点で見られる結果となりました。製作・脚本のジョシュ・ブーン、素晴らしい演技を見せたジャック・キルマーとジェーン・レヴィには、余りにも残念な事態とまりました。

騒動の後、沈黙を守っていたジェームズ・フランコは、2020年には自分を告発した元女学生たちを、#MeToo運動に便乗して自分を陥れたと表明し、対決姿勢を明確にしました。

この騒動がいかなる結末を迎え、フランコが以前同様に活躍できる日が戻るのか判りませんが、紆余曲折がありそうです。将来、作家ジェームズ・フランコという人物を、人間性を含めて振り返る時に、この作品は間違いなく重要な意味を持つでしょう。

しかし騒動の後公開された、彼の監督・出演作『フューチャーワールド』(2018)もセクハラ要素が連想できる、エロっぽいシーンありの作品で、果たしてこの時期に世に出していいの?と問いかけたくなる映画でした。

彼も本作で自分で語るセリフで、ウッディ・アレンの名前を出すなら…。偉大な先駆者である、俳優兼監督ウッディ・アレンを見習い、自分のスキャンダルは自虐的に描いた方がイイですよと、誰か彼にアドバイスしてあげて下さい。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」は…


(C)2019 THE CLEANSING HOUR, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

次回の第47回はエクソシストやらせ番組に、本物の悪魔が降臨!?オカルトホラー映画『バトル・インフェルノ』を紹介いたします。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら





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【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学
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