Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

映画『Z Bull ゼット・ブル』あらすじネタバレと感想。ブラックユーモアで描くサラリーマン抗争劇|未体験ゾーンの映画たち2019見破録54

  • Writer :
  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第54回

ヒューマントラストシネマ渋谷で開催された“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回は、血まみれにして捧腹絶倒のブラック・コメディを紹介します。

小さなものから大きなものまで、兵器を手広く生産・販売しているテキサスの大手軍事企業。ある日極秘に開発したエナジードリンクを、社員全員に飲ませてみたら、さあ大変。

元気100倍になった社員は凶暴化、文字通り血で血を洗う社内抗争が勃発。ハイテク・オフィスビルは収拾不能の修羅場になります。

このピンチに遭遇した主人公のボンクラ社員。果たして仲間と共に生還できるのか。

第54回はサバイバル・アクションコメディ映画『Z Bull ゼット・ブル』を紹介いたします。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

映画『Z Bull ゼット・ブル』の作品情報


(C)2018 OFFICE UPRISING LLC

【日本公開】
2019年(アメリカ映画)

【原題】
Office Uprising

【監督】
リン・オーディング

【キャスト】
ブレントン・スウェイツ、ジェーン・レビィ、カラン・ソーニ、ザッカリー・リーバイ、カート・フラー、バリー・シャバカ・ヘンリー、イアン・ハーディング、アラン・リッチソン、グレッグ・ヘンリー

【作品概要】
殺人兵器を生産・販売する巨大軍事企業のオフィスビルで、試作品の兵士用強化ドリンクを飲んだ社員たちが狂暴化、殺し合いを始めるサバイバル・コメディ映画。

主演は『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』で、オーランド・ブルームの息子役を演じたブレントン・スウェイツ。

主人公の恋人を『ドント・ブリーズ』で、盲目の老人相手に恐怖の体験をしたジェーン・レビィ、親しい同僚を「デッドプール」シリーズの、タクシー運転手役でお馴染みのカラン・ソーニが演じます。

凶暴化して襲って来る上司を演じるのは、TVドラマ『CHUCK チャック』や『塔の上のラプンツェル』、そしてDCコミック映画『シャザム! 』のザッカリー・リーヴァイです。

映画ファンなら納得の豪華キャスト共演でおくる、風刺の効かせた不謹慎な笑いが、全編に弾ける映画の登場です。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。

映画『Z Bull ゼット・ブル』のあらすじとネタバレ


(C)2018 OFFICE UPRISING LLC

テキサス州にある、100年の歴史を誇る巨大軍事企業アモテック社。

CEOのフランクリン・ガント(グレッグ・ヘンリー)は、中古車販売店の様な悪趣味なCMで、アメリカの敵をブッ殺してきた、歴史ある自社製品の数々を誇らしげに紹介しています。

そのアモテック社に出社してきたデズモンド(ブレントン・スウェイツ)。ゲートの警備員クラレンス(バリー・シャバカ・ヘンリー)に通行証を見せるのにモタつき、言い訳して何とか通過。要は遅刻して出社です。

オフィスに急ぐデズモントは、同僚で幼馴染のサマンサ(ジェーン・レビィ)とエレベーターで一緒になります。

常に遅刻とサマンサに指摘され、やる気が無いのは仕事のせいだと答えるデズモント。

そんな彼にサマンサは、遅刻防止の為のプレゼントとして腕時計を渡します。

デズモントは遅刻がバレないよう、コソコソ隠れながら経理部の自分のデスクに到着。

さっそくパソコンを操作しますが、仕事をせず何やらゲームをいじっている様子。そこに上司のナスバウム(ザッカリー・リーバイ)から呼び出しの連絡が入ります。

ナスバウムのお婆ちゃん秘書、ヘレンが丁寧かつもたもたと、デズモントを案内してくれます。

現れた彼にナスバウムは、アモテック社がアルトリア社と合併すると告げます。

ところで、クレイトン報告書は出来ただろうなと、尋ねるナスバウム。

デズモントはすぐ出来ると報告しますが、全力を尽くさないと合併後会社に残れないぞと、ナスバウムは警告します。

解放されたデズモントが戻ると、同僚たちが寄ってきます。皆合併に伴う人員整理を恐れていました。

年配のレントワース(カート・フラー)は経理の半数はクビになる、昨日解雇されたメグは記念にアモテック社のTシャツを渡されたと話し、明日は我が身と心配していました。

同僚でジャカルタ出身のムラト(カラン・ソーニ)は、叔父はアメリカに行けば心臓病と解雇と、セクシーな白人のお姉さんに悩ませられると、警告してくれたのに、と嘆きます。

一方ムラトを“ジハード戦士”呼ばわりするマーカスは、自分はおエライさんの甥だから安泰、クビになるのはお前らで、自分は昇進だとはしゃいでいます。

レイシストとして振る舞うマーカスの横暴に、平和主義者のイスラム教徒であるムラトは我慢します。

次にナスバウムに呼び出されたのはレントワース。彼はさっそく転職先を考え始めます。

そんな騒ぎの中、研究部門のフローム博士(イアン・ハーディング)に呼び出されたデズモント。彼は会社の中での処世術を語りながら、博士の元に向かいます。

その1、クリップボードを持つ事。何となく忙しそうに見えます。その2、困った時は専門用語を口にする。その3、同僚に求められても何も与えない。そうすりゃ誰からも期待されず楽ができる。

広告部門を通ったデズモントは、ボブ(アラン・リッチソン)から宣伝コピーのアイデアを求められますが、実に適当な事を言って誤魔化します。

その4、上の階に行くほど社員の人格は低下する。上の階にある販売部門のヤリ手社員たちは、電話でトンデモない内容をまくしたてていました。

その5、発注に関する権限は、経理の僕が握っている。研究部門に到着したデズモントは、頼んだ物が届かないとフローム博士に文句を言われます。

博士は新兵器のバトルスーツ、XL-9を開発中でした。人は殺すが有機物(生ゴミ)で動く、実に地球に優しいエコな兵器です。

バトルスーツ以外にも、怪しげな物を開発研究中のフローム博士の部下。XL-9のテストに巻き込まれ、笑い者にされるデズモンド。

博士の態度に怒ったデズモンドは、経理の力で対抗します。彼の発注書を握り潰します。

その6、ストレス軽減には正しい呼吸法。隠れて仲間と共にハッパを吸うデズモンド。結局クビを宣告されたレントワースも、一緒に吸ってストレス軽減中です。

そして最後、自分の尻は自分で拭く。クビに備えて予備プランを用意しておく。デズモントは就業中に、本業そっちのけでゲームアプリを開発していました。

やる気の無いデズモンドは、ピザを頼もうと電話をかけますが、会社のコールセンターで止められます。就業中は外部への連絡禁止。コスト削減第一で作られた会社の方針でした。

何ともイヤな会社ですが、デズモントは世界一の会社だと話します。医療保険にタダのコーヒー、そしてゲームアプリの開発が出来る。しかしムラトは、他に理由があるのでは、と冷やかします。

それはサマンサの事でした。彼女は幼馴染であり、恋愛で彼女との友情を壊したくないと説明するデズモンド。

放送が社員に対し、午後4時から開かれる自己啓発セミナーに参加するよう告げます。

全社員が集められ、CEOのガントがスピーチを始めます。ガントは開発された新製品、内なる戦士を呼び覚ますエナジードリンク、「ゾルト」について語り始めます。

付き合いきれないと思ったデズモンドは、家に帰って報告書を完成させると言って、サマンサとムラトを残し、セミナー会場を後にします。

会場を後にしたデズモントは、大量の「ゾルト」が運び込まれるのを目撃します。

家に帰ったデズモンドはパソコンに向かい、報告書の作成を始めます。しかし家ではマリオキャラのコスプレをした友人たちが、ゲームに興じていました。

友人たちの誘いに乗らず、真面目に仕事をするデズモンド。

しかし“マリオカート”に誘われては断れません。友人たちと街に出て、ショッピングカートを使った、リアル“マリオカート”に興じてデズモンドは大はしゃぎです。

翌朝、いつもの様に寝坊をしたデズモンド。当然報告書は未完成。それでも慌てて出勤します。


(C)2018 OFFICE UPRISING LLC

いつもの如く遅刻して出社、いつもの如くゲートの警備員クラレンスに言い訳を、と思ったら誰もいません。ヤバそうな顔で退社する、開発部の研究者とすれ違い、これ幸いと出勤します。

人目を逃れ身を隠しつつ、オフィスに向かうデズモンド、お蔭でそこらに転がる死体に、都合よく気付きません。なんとか自分のデスクに着くと、早速上司のナスバウムから呼び出しが入ります。

いい加減な内容のレポートをプリントし、深呼吸して上司の部屋に入るデズモンド。しかしナスバウムの言動が怪し過ぎます。

その脇に無数の鉛筆が突き刺された同僚、ジェリー・ソロモンの死体が転がっているのを見て、ようやくマズい状況に気付いたデズモンド。

ジェリーの報告書には酷いスペルミスがあったので、始末したと告げるナスバウム。そんな恐ろしい上司に、デタラメなレポートを見せるという大ピンチ。

内容以前にスペルミスを発見され、キレた上司からデズモンドは逃げ出します。

他の社員も何やら叫んで追ってきます。同僚のカーターに事情を尋ねますが、彼は「ゾルト」の飲みながらパソコン仕事に没頭。仕事のデータが騒ぎで失われると、彼もキレて襲ってきます。

デズモンドは警察へ通報を試みますが、間に入ったコールセンターが外への連絡を許しません。電話越しにそこも修羅場になったと知り、彼は何とか逃れようと走り回ります。

クリップボードを文字通り盾にして身を守り、危ないテンションで「ゾルト」のコピーを考える、広告部のボブのチームには、適当な事を言って逃れるデズモンド。

身を潜めた時に、サマンサからもらった腕時計のアラームが鳴りだします。デズモンドはまず彼女の無事を確かめる事にします。

サマンサは無事でしたが、机の上に「ゾルト」を置いて仕事に夢中。デズモンドの質問に缶の半分位は飲んだかかなと答えるサマンサ。

これなら彼女は大丈夫、と信じたいデズモンド。

しかし彼が「ゾルト」をこぼすとブチキレ、花婿の介添人のイケメンみたいにナニしてやると、叫んで襲ってくる始末。やむなくデズモンドは彼女を、心の平穏を説く自己啓発本でブン殴り、文字通り大人しくさせます。

彼はサマンサを台車に乗せると、テープでグルグル巻きにします。

彼女は解放してと訴えますが、怒るとトンデモない事を口走る状態です。彼女を乗せた台車を押して逃げるデズモンド。

ナスバウムの経理部チームと、ボブの広告部チームが迫る中、逃げ回った2人はムラトに出くわし大慌になります。

ありがたいのはイスラム教の教え。ラマダン(断食)のおかげで、ムラトは「ゾルト」を飲まずにいて無事でした。

グルグル巻きのサマンサは「ゾルト」を飲んでいると知り、ゾンビみたいに襲って来るから始末しよう、と物騒な提案をするムラト。

それでも彼は、平和主義者と称する優しい性格ですから、結局デズモンドとサマンサを助け行動を共にします。

互いに会社での功績を誇る経理部と広告部の派閥抗争が、全面戦争に発展するかと思いきや、ナスバウムがボブを「ゾルト」の空き缶で殺害、広告部を引き継ぎます。

暴徒の群れは1つになり、それを見たデズモンドたちは逃げ出します。

階段では社員同士が殺し合い、エレベーターは破壊された状況で、どう脱出するかは至難の業。

映画っぽく通気口から脱出するにも、どうがんばっても台車のサマンサが通気口に入りません。

ならばと窓ガラスを破ろうとするデズモンド。サマンサとムラトが止めるのも聞かず実行すると、次世代テロ対策システムが働き、ビルの窓と出入り口は完全封鎖。

マニュアルを読まなかったのかと責められても、いい加減に仕事をしていたデズモンドが読んでる訳がありません。

もはや脱出の手段無し。いや、会社の経営陣ならセキュリティ解除が出来るはず。そう気付いた3人は、ビルの最上階にある役員室を目指します。

怒れる社員の群れを通り抜けるには、イカれたふりをするしかありません。

3人はジェニファー・ローレンスのドレスの趣味とか、セグウェイに乗ったジャスティン・ビーバーとか、思いつく限りのイカれたものを叫んで突破します。

3人を凶暴化したお婆ちゃん秘書のヘレンが、気の毒にもヨボヨボと襲ってきます。やむなくデズモンドが、植木鉢をヘレンの頭に叩きつけて責められます。

しかし文句を言ってたムラトが襲われ、ヘレンを壁に叩きつけて始末する結果に。己の行為に心が折れかける、と嘆くムラト。

先に進むには心優しい女子社員の園、人事部を通り抜けるしかありません。

マトモな状態のレントワースが人事部に現れましたが、やはり凶暴化していた「ショムニ」の皆さんに囲まれます。

レントワースの危機を救うため、デズモンドは処世術その2に従い、デタラメな専門用語を並べた放送を流し、女子社員を納得させ大人しくさせます。

小切手を受け取りに現れたレントワースは助け出され、行動を共にします。

一致団結して襲い来る人事部社員をどうするべきか。そこでサマンサは女子社員に、敵は私たちでなくお局様のリサだと言い出します。

リサが誰かのウワサを広めただの、誰かの子供の陰口を言っただの、彼女の秘密を暴いていくサマンサ。

予算をケチって冬に暖房の温度設定を下げた、との言葉が引き金になり、女子社員は今まで見てきた以上の、醜い内輪モメを始めます。その隙に人事部を通り抜ける一同。

さらに上に進むには、普段ですら人格に難のある連中の巣窟、販売部を通り抜けるしかありません。レントワースを加えた4人は用具置き場に入り、備品を使って武器を作り始めます。

この状況は自分の作っているゲームみたい、とつぶやくデズモンドに、サマンサは興味を示します。彼女はデズモントのゲーム作りに好意的でした。

サマンサは暴れたら殺してかまわない、と言って台車のグルグル巻きから自由の身にするよう訴えます。彼女も解放され、デタラメな装備を身に付けた4人は覚悟を決めます。

雄叫びを上げ販売部に飛び込んで行く一同。何かの拍子にケガさせても、偶然だからね、と叫ぶ平和主義者のムラト。凄惨かつ過激な闘いが幕を開けます。

以下、『Z Bull ゼット・ブル』ネタバレ・結末の記載がございます。『Z Bull ゼット・ブル』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2018 OFFICE UPRISING LLC

捨て身で販売部員たちに突っ込むデズモンドとレントワース。半分飲んだ「ゾルト」の効果か、はたまた元々そうなのか、容赦なく敵を始末していくサマンサ。

逃げ回っているつもりが、結構敵を痛めつけてるムラト。間に合わせの武器や防具も、意外に役に立っています。

凶暴な販売部員の中に、デズモンドに「ゾルト」は飲んではいけない、ここから脱出しなければと、訴えて来るマトモな社員もいました。

そんな相手に限って殺してしまうムラト。ショックを与えぬように、デズモントはだんまりを決めこみます。

ついに最上階の役員室の前に到着しました。しかしロックされた扉は開きません。中に入れろと訴えても、CEOのガントら役員に4人は危ない奴にしか見えません。

誰が入れてやるかと、グラス片手に4人を小馬鹿にするガント。ところがタイミング良く役員室の扉を開けて、清掃のおじさんが出て行きます。それでは、と中に入らせてもらう4人。

乗り込んできた4人に、軍事企業で暴力は良くない、と説得するガント。落ち着くように、まあ飲むかと声をかけられ固まった4人に対し、スコッチの事だと補足するガント。

「ゾルト」はアモテック社が、兵士の士気を高める為に開発したエナジードリンクでした。開発したのはフローム博士の部下の研究者。社員たちが飲んだのはその試作品でした。

ところが何が不満だったのか、開発者は会社に罵声を残し、全社員に失敗作である「ゾルト」を配布して去ってしまい、この騒動になったのです。

飲んでしまったサマンサを救う解毒剤はあるか、と尋ねるデズモンドに、そんなもんあるかと言い放つガント。

地雷も、クラスター爆弾も、核兵器も、使った後の事は想定外だと、CEOは社会風刺の効いたセリフをおっしゃります。

怒ったデズモンドはガントに詰め寄りますが、セキュリティを解除して建物から出るには、自分の指紋認証が必要だとガントは説明します。

役員室の前に、デズモンドの上司ナスバウムに率いられた社員の一団が現れます。ナスバウムはセキュリティを解除して、我々を外で活動させろと要求します。

ガントはその扉は厚さ5㎝のチタン製、最新セキュリティ付きで、どう頑張っても破れまいとあざ笑います。

しかし流石は経理部の長ナスバウムです。扉はチタン製でも、壁は下請け業者がケチって作った安普請と知っていました。

社員たちは壁を破り始め、役員室の一同は大慌てです。

デズモンドたちはバリケードを作りますが、侵入されるのは時間の問題。ガントは狩猟用の銃を構えます。クビにされたレントワースはローンや娘の学費の支払いに、やっぱり職が必要だと訴えて、ナスバウムたちの仲間になろうとしますが、当然無茶な行為でした。


(C)2018 OFFICE UPRISING LLC

ガントは品の無い悪態をつきながら銃で抵抗しますが、他の役員は殺されます。

ついにガントを殺し会社を支配したナスバウム。世界全体の地域担当になったと宣言し、指紋認証に必要なガントの手を切断して奪います。

デズモンドたちの始末に6人の仲間を残し、部下を引き連れビルの外での営業活動に向かうナスバウム。

デズモンドの手に銃がありますが、残るは1発のみ。絶対絶命の危機ですが、弾をたっぷり入れたガラス鉢を撃ち暴発させ、何とか6人を倒します。

起死回生のミラクルショットにムラトは喜びますが、「ゾルト」の影響なのかサマンサの具合が悪くなり、慌てるデズモンド。

ビルのセキュリティを解除したナスバウムは社員一同に対し、全世界に販売せよ、と激を飛ばしていました。

デズモンドたち3人は研究部門に向かい、隠れていたフローム博士と出会います。デズモンドは「ゾルト」の開発に関わった彼を責めます。

フローム博士にも言い分がありました。

研究部門の発注をデズモンドがまともに処理していなかったので、やむなく「ゾルト」の開発に代替物質を使用した結果が、この惨状だったのです。

ショックを受けたデズモンド。「ゾルト」を大量に飲んだ者はいずれ死んでしまいます。

しかしサマンサは30分以内に解毒剤を飲ませれば、元の体に戻るだろうと説明するフローム博士。

問題は解毒剤製造に必要な物質が倉庫に保管されている事です。

モニターで確認すると、倉庫はナスバウムの部下たちが忙しく動き回っていました。

こうなればデズモンドとムラトで乗り込むしかありません。ムラトも平和主義を捨てました。

アモテック社の歴史を語る展示品の武器を手に、2人は倉庫に向かいます。

倉庫に2人が侵入したとナスバウムは気付き、社員たちを向かわせます。

しかしサマンサを愛しているデズモンド以上に、平和主義を捨てキレたムラトが暴れ回ります。2人の連携プレーで次々社員が倒されていきます。

ナスバウムは倉庫の中に、バトルスーツXL-9がある事に気付き身に付けます。

デズモンドとムラトは、解毒剤に必要な箱の傍までたどり着きましたが、そこにバトルスーツを来たナスバウムが現れます。

その火力に圧倒される2人。そこでデズモンドが囮となってナスバウムを引きつけ、ムラトが箱を博士とサマンサの元に届ける事になります。

先を急ぐムラトに、レイシストの同僚マーカスが襲い掛かります。

嘲りながら攻撃するマーカスですが、平和主義を捨てたムラトは。今までのお返しを含めてマーカスを叩きのめします。その権幕には「ゾルト」で凶暴化した連中も恐れて逃げ出します。

入社以来備品を盗んできた、この16ヵ月で働いたのは実質6週間、職場でゲームを作ってましたと言い、下ネタレベルの悪口まで並べ、嫌な上司のナスバウムを挑発するデズモンド。

デズモンドに翻弄され、バトルスーツは燃料切れとなります。ナスバウムはマーカスを捕えて腕を引きちぎり、生ゴミ代わりのエコな燃料に利用してスーツを再稼働させます。

絶対絶命のデズモンド。そこにムラトと共に、回復したサマンサが現れます。再会を喜んだのもつかの間、迫ってくるナスバウム。

ムラトがC4爆薬を仕掛けた廊下にバトルスーツを誘い込み、ナスバウムを倒すことになりました。計略は成功したかに見えましたが素人の悲しさ、爆薬に信管を付けておらず当然不発です。

デズモンドは廊下に地雷を滑らせ、バトルスーツの足元に入れます。

ナスバウムはそれを踏み爆発させ、仕掛けた爆薬も誘爆、アモテック社のビルは炎に包まれました。

ビルの外に逃れた3人。これからデズモンドとサマンサが熱くなるのを悟ったムラトは、ガマンしていた小用を足すことにします。

パトカーやヘリが集まってくる中、デズモンドとサマンサはキスを交わします。

映画『Z Bull ゼット・ブル』の感想と評価


(C)2018 OFFICE UPRISING LLC

ブラックな笑いで見せるサラリーマン抗争劇

この罰あたりな映画で、一体全体、合計何名の犠牲者が出たのでしょうか。

凶暴化した社員が、オフィスビルで殺し合う。誰にも皮肉が理解出来る設定ゆえか、シリアスからコメディまで似たシチュエーションの、あの手この手の映画が多数あります。

参考映像:『Z Inc. ゼット・インク』(2018)

「未体験ゾーン」をご存知の方なら、タイトルも含めて「未体験ゾーンの映画たち2018」に登場した『Z Inc. ゼット・インク』を思い浮かべるでしょう。

こちらの舞台は権力抗争の激しい法律事務所、凶暴化の原因はウィルス。どちらも上の階ほど偉い方がいるお馴染みの構図。全く別の作品ですが、似た邦題が付いたのも納得できます。

しかし、明らかに『Z Bull ゼット・ブル』の方が、悪ノリ度パワーアップ。紹介した以外にも言葉ネタが豊富で、不謹慎ネタが大好きで、この程度の流血なんのその、という方には実に明るく楽しいホラー・コメディ映画です。

映画好きならどこかで見た顔が並ぶかも?


(C)2018 OFFICE UPRISING LLC

この映画は作品概要で紹介した通り、旬のキャストを揃えた豪華なものになっていますが、脇役陣も映画や海外ドラマを見る人には、お馴染みの顔ぶれがそろっています。

冒頭、警備員のクラレンスとして僅かに登場するだけの、バリー・シャバカ・ヘンリーは黒人脇役俳優の代表格のお一人。強いて代表作を上げるなら、スピルバーグ監督作『ターミナル』の空港警備員役。映画や海外ドラマをよく見る人なら、絶対見ている人物です。

レントワースを演じたカート・フラーも、脇役として欠かせない人物。個性的な顔で悪役からコミカルな役までこなせる人物で、こちらも強いて映画の代表作を上げると、ウディ・アレン監督作『ミッドナイト・イン・パリ』の、レイチェル・マクアダムスの父親役でしょうか。

問題の多いCEOフランクリン・ガントを演じ、悪乗り演技を見せるグレッグ・ヘンリーも、同様の活躍を見せるベテラン俳優。最近はジェームズ・ガン映画の常連で、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でスター・ロードこと、ピーター・クイルの祖父を演じた人物です。

この3人のベテラン俳優、この記事を読んでいる人には、間違いなくピンとくる顔です。

まとめ


(C)2018 OFFICE UPRISING LLC

ブラックな笑いがお好みの方には、必見の映画『Z Bull ゼット・ブル』。

タイトルに“Z”が付いているものの、どちらかと言えば『ゾンビ』ものと言うより、同じジョージ・A・ロメロの『ザ・クレイジーズ 細菌兵器の恐怖』に近い作品です。

舞台になるのは軍事企業、大活躍するイスラム教徒と、風刺的なネタが多数ありますが、決して“政治的に正しい”、お堅い笑いの映画ではありません。

むしろ全編に漂う不謹慎ネタ、セリフに散りばめられた小ネタを楽しむ、バチ当たりな笑いを楽しむタイプのコメディです。

実は一番際どいセリフを口走って笑わせてくれるのは、サマンサを演じたジェーン・レビィ。リブート版『死霊のはらわた』や『ドント・ブリーズ』の印象が強いですが、2011年から3シーズン続いた人気のシットコム『Suburgatory』に主演している女優です。

この映画で是非、コメディエンヌとしての彼女の姿を確認して下さい。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…


(C)2017 White Space, LLC. All rights reserved.

次回の第55回は宇宙を舞台に巨大生物を相手に、体一つで立ち向かう人々の姿を描いたSFアクション映画『ホワイト・スペース』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

『30デイズナイト』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。ホラー映画のカルト的人気のサムライミが描くヴァンパイア作品|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー9

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第9回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEXT …

連載コラム

『戦国自衛隊』ネタバレ結末あらすじと感想考察の評価。タイムトラベル活劇で千葉真一が戦術と現代兵器で戦に挑む|映画という星空を知るひとよ115

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第115回 角川映画の名作をUHD化する「角川映画UHDプロジェクト」。この度このプロジェクトが本格始動することになりました。 第1弾は、千葉真一が主演とアクシ …

連載コラム

映画ネタバレ『チタンTITANE』感想評価とあらすじ結末の考察解説。パルムドール受賞作にみる肉体の脆弱性と想像力の限界|タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』11

連載コラム『タキザワレオの映画ぶった切り評伝「2000年の狂人」』第11回 2022年4月1日(金)より日本公開されたフランス映画『TITANE/チタン』。 幼い頃の交通事故により頭蓋骨にチタンプレー …

連載コラム

サメ映画『海底47m 古代マヤの死の迷宮』感想評価と考察。続編の内容は絶望感のヤバイ演出が光る|SF恐怖映画という名の観覧車108

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile108 じめじめと湿度の高い梅雨が始まり、梅雨明けに夏が迫る時期になりました。 夏を舞台とした映画らしく「キラキラと明るく自然の豊かさを感じる雰 …

連載コラム

映画『悪人伝』ネタバレと内容解説。マドンソク演じるヤクザと暴力刑事の異色コンビで描く人間としての秩序|サスペンスの神様の鼓動36

サスペンスの神様の鼓動36 こんにちは「Cinemarche」のシネマダイバー、金田まこちゃです。 このコラムでは、毎回サスペンス映画を1本取り上げて、作品の面白さや手法について考察していきます。 今 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学