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HYODO八潮秘宝館ラブドール戦記 |あらすじ感想と評価解説。世界で1番の”ヘンタイ”博物館を描く必見のドキュメンタリー映画|増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!9

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム『増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!』第9回

この世には見るべき映画が無数にある。あなたが見なければ、誰がこの映画を見るのか。そんな映画が存在するという信念に従い、独断と偏見で様々な映画を紹介する『増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!』。

第9回で紹介するのは、日本を訪れる外国人観光客が密かに注目する場所と、その主であるアーティストを紹介するドキュメンタリー映画『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』。2022年9月2日(金)に池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか、全国ロードショーが決定した問題作です。

孤高の表現者、兵頭喜貴。彼は知る人ぞ知る“ラブドール”コレクターであり、そして同時に“ラブドール”写真家として活躍する異才の人物でした。

そしてある日、彼が埼玉県の八潮にある自宅を珍セックスミュージアム”八潮秘宝館”として公開すると、日本のHENTAI文化を代表する観光スポットとして世界から注目を集めます。

コレクター、そして表現者として異様な光を放つ、兵頭喜貴の奇妙で情熱あふれる激動の日々に密着する、あなたの常識を揺るがすR18+指定のドキュメンタリー映画、必見です!

【連載コラム】『増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!』記事一覧はこちら

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映画『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』の作品情報


(C)HYODO

【公開】
2022年(日本映画)

【監督・撮影・編集・録音・企画】
福田光睦

【企画・制作・作品提供】
兵頭喜貴

【キャスト】
兵頭喜貴(八潮秘宝館)、角由紀子、Megan Alexander、MIYAKO、森川俊秀、らすかる

【作品概要】
世界各国のメディア、日本を訪れる外国人観光客の注目を集める”八潮秘宝館”。この地から日本の”ラブドール”文化を世界に発信する人物に密着し、彼の様々な活動や原因不明の病との闘病の日々、そして前代未聞の「ラブドール誘拐事件」のてん末を紹介するドキュメンタリー映画。

“地下編集者”として、世に埋もれた特異な才能を持つ人々を紹介し続けている福田光睦が、異才と情熱あふれる人物・兵頭喜貴の存在を世に広めようと監督を務めました。

世界唯一の”ラブドール”博物館、”八潮秘宝館”と兵頭喜貴の周囲に集まった人々の姿をとらえた作品です。あなたの知らない、だけど世界が知っていた奇妙な空間とそれを生んだ人物を目撃せよ!

映画『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』のあらすじ


(C)HYODO

埼玉県、八潮市の静かな住宅街。そのド真ん中に知る人ぞ知るディープな観光スポット、”八潮秘宝館”が存在します。それはこの地から世界に”ラブドール”の魅力を発信する、唯一無二の博物館でした。

“八潮秘宝館”を経営する人物こそ、”ラブドール写真家”の兵頭喜貴。この映画で赤裸々な姿(R18+指定)すら見せる彼に怖いものがあるはずも無く、カメラに向かって自らの体験と奇妙な日々を語り始めます。

単なるコレクターに終わらず独特の美的感性を持ち、他人を魅了する性格の持ち主・兵頭喜貴の周囲には様々な人物が集まります。これらの人々の証言が浮き彫りにずる、”ジャパニーズ・HENTAI・カルチャー”の伝道師の真の姿を目撃して下さい。

この特異な人物を生んだ過去、彼の体験した闘病生活、そして人類が初めて経験した珍事件「ラブドール誘拐事件」のてん末が、ついに白日の下に晒されました。

地上波放送不可能・YouTube配信厳禁のトンデモドキュメンタリー映画は、あなたのハートに何をもたらすのでしょうか…。

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映画『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』の感想と評価


(C)HYODO

開いた口が塞がらない傑作、今見るべきドキュメンタリー映画が誕生した、と断言します。

「変わった人物」を紹介するドキュメンタリーは無数にあります。テレビのバラエティー番組にも、このような作品が無数に存在するのではないでしょうか。

こうして取り上げられた「変わった人物」を面白おかしく紹介する、テロップや笑い声のSE(効果音)でその珍妙さを強調する…中には取り上げた人物を見下すように晒してしまう、冷笑的な番組も存在するのはご存じでしょう。

『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』は、そんな番組とは異なり、異才を持った発信者・兵頭喜貴に肉薄し彼の実像に迫ります。そもそも本作の企画には兵頭喜貴その人が参加しており、彼が望んで誕生した映画がこの作品です

そもそも”ラブドール”という存在を好奇に満ちた目で見る人、笑いの対象にする人もいれば、性を商品化したものだと嫌悪を感じる人もいるでしょう。

しかし本作は兵頭喜貴はなぜ自分がこの趣味に目覚めたのか、また他の愛好家はどのように”ラブドール”と接しているのかを紹介してくれます。人が愛と情熱を注ぐものに抱く感情は千差万別、多様性に富んだものである、と改めて教えてくれました。

と見るべき価値あるこのドキュメンタリーを紹介しましたが、真面目な要素があるからといって面白くない、という意味ではありません。爆笑必死、笑いの向こうに人間の「性」、「せい」でもあり「さが」でもある物を示してくれる作品です

“ラブドール”とは「人」に似せた「形」である


(C)HYODO

この映画や”八潮秘宝館”を知らなかった人も、”ラブドール”界の第1人者にして世界的伝道者と聞かされると、多くの人が興味を覚えるでしょう。

そんな己の好奇心に、忠実でありたいとお考えの方なら絶対に見て損は無いドキュメンタリー映画が本作です。掴みである冒頭部分のシーンの行為に驚くやら呆れるやら、観客は期待した通りに珍妙な映画を目撃できた、と早々に納得するはずです

そして彼の周囲にいる実に個性的な人物が紹介されます。奇特な人物には、これまた奇特な人物が集うもの。観客の想像を越えた様々な人物が次々登場してきます。

しかし彼ら、彼女らがなぜ兵頭喜貴という人物に魅了されたのかが明らかになると、赤裸々な姿を晒した”八潮秘宝館”館長の持つ様々な面が見えてきました。

貴重な”ラブドール”に特別な衣装を着せ、とんでもない場所に現れた兵頭喜貴(映画本編にてご確認下さい)。しかしここで彼と出会った人物は、この人物は「善人」だと断言し、彼の本質を看過します

同時にこの場面は、”ラブドール”とはマニアックな性癖を持つ人の愛玩物に過ぎない考えていた人に、意外な一面が存在している事実が紹介されます。「人」に似せて作られた「形」、すなわち「人形」には人の様々な思いが込められている事実に、改めて気付かされるでしょう。

本作のもう一つの主役”ラブドール”の「愛で方」も、人によって千差万別。よく考えれば当然のことですが、我々はつい奇抜な趣味をお持ちの方だ、と彼らを一括りにしていないでしょうか。

己の願望に従って”ラブドール”を手に入れた方も、いざ手に入れた現実と向き合った時に「壁」に遭遇する、と語る兵頭喜貴。

“ラブドール”に対するこだわりも「愛で方」も、1人1人の愛好家により異なるもの。また愛好家が”ラブドール”と共に暮らすうちに、「愛で方」も時と共に変わるもの。本作をご覧の方は、マニアックな趣味をお持ちの方に対して知らぬ間に偏見を抱いていたかも、と気付かされるはずです。

闘う数奇なる「善人」・兵頭喜貴を目撃せよ!


(C)HYODO

映画が取り上げた兵頭喜貴という人物は、情熱の持ち主であると同時に奇妙なほど冷静に自分を見つめ、分析して他人に紹介する事が出来る人物だと気付かされました。

自分が何時からこの趣味に興味を持ち始めたのか。それを収集に留めず自己表現の手段にする過程、そして”八潮秘宝館”の館長として様々な人々と交流している現在の姿を、淡々と面白おかしく語ることのできる人物です。

どこか自らの人生を達観した姿には、闘病生活など様々な経験を積んだ人物ならではの態度が感じられます。奇妙な人物目当てに本作をご覧の方も、この兵頭喜貴という人物がなぜ多くの人々を引き付けてしまうのか、納得させられるでしょう

流石は世界が認める”ラブドール”文化の発信者、と尊敬の念すら覚えるはずです。そして映画は彼が遭遇した人類史上初の珍事件、「ラブドール誘拐事件」を詳細に紹介します。

誘拐するのも何とも理解に苦しむ行為ですが、された側は情熱的な人物、兵頭喜貴です。怒りのスイッチが入り不正義に向き合ったが最後、この「誘拐犯」のみならず国家権力に対しても容赦ありません。

彼がいったん行動に移ると徹底的で、いやが上にも人目を集めます。この騒動は珍事件としてメディアに紹介され、この一件を取材した人物の1人こそ本作の監督・福田光睦でした。

恐らく監督は、この事件の取材を通じて兵頭喜貴という人物に深く接する内に意気投合し、共同で本作を制作するに関係を築き上げたのでしょう。

さて、前代未聞の「ラブドール誘拐事件」はいかなる結末を迎えたのでしょうか。このてん末は映画を見てご確認して下さい

まとめ


(C)HYODO

珍妙な映画を見たいと望む人を満足させる、そんな観客に意外な発見と感動を与えるドキュメンタリー映画『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』。もしあなたが”ラブドール”や”八潮秘宝館”という言葉に引き付けられたなら、絶対に見るべき作品です。

世の中にこんな変わった趣味があるんだ、それに正面から向き合う人々がいるんだ、とあなたの好奇心を満足させるとお約束しましょう。それと同時に自らが好奇の対象とした物やそれに関わる人々に対して、いつの間にか偏見に近い思い込みの感情を抱いてた、と気付く人もいるかもしれません。

そしてこの映画は、人間にとって最も本質的に評価されるべき美徳は、「善人」であることだ、と教えてくれるヒューマンドキュメンタリーでもあります。

何とも変わった趣味の持ち主であろうと、理解しがたい活動に励む人物であろうと、本質的に「善人」であればその人に触れた周囲の人々は打ち解け、魅了され引き付けられる。それこそが人と人との交わりだと言えるでしょう。

SNS時代を生きる我々は、他者の表面的な言動に必要以上に注目し、特に自分にとって心地よい主張を叫ぶ人物に引き寄せられる傾向があります。しかし本当に大切な事は、その人物が「善人」であることではないでしょうか。

「悪人」とまで言わずとも、見てくれだけの「小人物」の言動に惑わされる風潮に誰もが気付きつつも、何をもって人の本質を見抜くべきか迷っている人、注目していた人物の思わぬ一面を見て失望した経験を持つ人が多いのではないでしょうか。

本作が紹介した人物は間違いなく「善人」です。奇妙なものを期待してこの映画を鑑賞した方々も、これは事実であると受け止めることでしょう。

なお、「善人」であることは平凡であること、退屈であることを意味しません。その意味でこの作品は、あなたが期待するトンデモない経験を味合わせてくれる傑作です。R18+指定の本作、どうぞ期待してご覧ください。

『HYODO 八潮秘宝館ラブドール戦記』は2022年9月2日(金)に池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー!

【連載コラム】『増田健の映画屋ジョンと呼んでくれ!』記事一覧はこちら





増田健(映画屋のジョン)プロフィール

1968年生まれ、高校時代は8mmフィルムで映画を制作。大阪芸術大学を卒業後、映画興行会社に就職。多様な劇場に勤務し、念願のマイナー映画の上映にも関わる。

今は映画ライターとして活躍中。タルコフスキーと石井輝男を人生の師と仰ぎ、「B級・ジャンル映画なんでも来い!」「珍作・迷作大歓迎!」がモットーに様々な視点で愛情をもって映画を紹介。(@eigayajohn

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