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Entry 2020/01/15
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SF映画おすすめ5選!洋画邦画ランキング(1960年代)の名作傑作【糸魚川悟セレクション】|SF恐怖映画という名の観覧車85

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile085

第2次世界大戦が終結し世界に平和が訪れたかと思いきや、新たな戦争の火種が見え隠れしていた1960年代。


映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』

この年代は「特殊な設定」のSF映画が多く作られた時代でもあり、現代でも十分に通用する設定の斬新さが見どころの時代でもあります。

そんな訳で今回は1960年代の作SF映画を順位形式で5作紹介していこうと思います。

1960年のおすすめSF映画:5位『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』

映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』の作品情報

【原題】
Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb

【日本公開】
1964年(アメリカ・イギリス合作映画)

【監督】
スタンリー・キューブリック

【キャスト】
ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット、スターリング・ヘイドン、スリム・ピケンズ、ピーター・セラーズ

【作品概要】
『時計じかけのオレンジ』(1971)や『フルメタル・ジャケット』(1987)など、名作として名高い作品を幾度となく手掛けてきたスタンリー・キューブリックが制作したコメディ映画。主演を務めたのはコメディアンとして活躍する傍ら俳優としても幅広く活躍し、1979年に映画『チャンス』(1979)でゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞したピーター・セラーズ。

【映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』のあらすじ】


(C)Sony/Columbia Industries Inc

陰謀論に傾倒し暴走したリッパー准将(スターリング・ヘイドン)が爆撃機にソ連への核攻撃を指示後、基地内に籠城します。

科学顧問であるストレンジラヴ博士(ピーター・セラーズ)を含むアメリカの政府首脳陣はソ連の首相を交え対策を協議しますが、その中でソ連には攻撃を受けた際に自動で爆発し世界を滅亡に導く兵器があることが分かり…。

核兵器と世界の終わりをシュールに描いたブラックコメディ


(C)Sony/Columbia Industries Inc

スタンリー・キューブリックがタイトルを「直訳」するようにと厳命した結果、耳につきやすい邦題となりタイトルだけでも知っている人の多い映画『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964)。

キューバ危機を迎え、第3次世界大戦の発生が間近とも言われた時代に制作されたこの作品は、「核兵器」が導く「世界の終わり」をどこまでもシュールに描いたブラックコメディ映画として今もなお高い評価を受けています。

「核兵器」を持つ国の存在が、他国による戦争に繋がる行為を躊躇させる「核抑止理論」と言う概念があります。

破壊的なダメージを負いかねない「恐怖」を与えることで、結果的に平和に導く考え方であり、核兵器を保有する国の多くがこの理念に基づいているとされていますが、本作ではその理論を風刺。

核兵器の使用権限を持った1人の人間の暴走や、自国のダメージを無視してでも世界を終わらせようとする破滅的思想の持ち主の存在により、あっさりこの世界が終わりかねない、と言う恐ろしさをジョークの中に込めたこの脚本は、イランとアメリカと言う2つ国が緊張状態となっている現代に、再び思い出される映画です。

1960年のおすすめSF映画:4位『ミクロの決死圏』

映画『ミクロの決死圏』の作品情報

【原題】
Fantastic Voyage

【日本公開】
1966年(アメリカ映画)

【監督】
リチャード・フライシャー

【キャスト】
スティーヴン・ボイド、ラクエル・ウェルチ、エドモンド・オブライエン、ドナルド・プレザンス、アーサー・オコンネル、ウィリアム・レッドフィールド

【作品概要】
1966年に公開された、ミクロの世界での国同士の熾烈な戦いを描いたSF映画。ディズニーシーのアトラクションとしてもお馴染みの『海底二万哩』(1954)や、過激すぎる未来の世界を描いた『ソイレント・グリーン』(1973)など映画界に名を遺す名監督であるリチャード・フライシャーが本作の監督を務めました。

【映画『ミクロの決死圏』のあらすじ】


(C)1966 Twentieth Century Fox

物質を縮小できる技術が開発され、軍事利用目的で各国が研究を進めます。

縮小化できる限界の時間とされる1時間を越える技術を持つ科学者のヤン(ジーン・デル・ヴァル)を敵国より亡命させようとしたアメリカですが、ヤンは襲撃を受け脳出血を起こし意識不明となってしまいます。

科学者を救い技術を手に入れるため、医療チームは縮小化しヤンの脳内へと侵入しますが…。

ミクロの世界で行われる全く新しい諜報戦


(C)1966 Twentieth Century Fox

人間が縮小化し人間の体内に侵入すると言うプロットはジョー・ダンテの『インナースペース』(1987)など今や類似プロットの名作が多くあり、その先駆け映画とも言える『ミクロの決死圏』(1966)が話題となることは珍しいと言えます。

しかし、本作がいかに時が経ってもなお持っている独自性は「縮小化」と言う当時としては斬新なプロットに「諜報戦」を加えた部分にあります。

本作では2国間で情報を奪い合うための諜報戦が熾烈に展開。

科学者のヤンを救うためのチーム内にいるかもしれないスパイの存在に疑心暗鬼となるメンバーと敵国による様々な妨害工作。

ですが、その舞台となる戦場は「ヒトの中」だけと言う混乱してしまうほどのスケール感は今見ても新鮮であり色褪せない名作です。

1960年のおすすめSF映画:3位『猿の惑星』

映画『猿の惑星』の作品情報

【原題】
Planet of the Apes

【日本公開】
1968年(アメリカ映画)

【監督】
フランクリン・J・シャフナー

【キャスト】
チャールトン・ヘストン、ロディ・マクドウォール、キム・ハンター、モーリス・エヴァンス、ジェームズ・ホイットモア

【作品概要】
フランスの小説家ピエール・ブールによる大人気小説「猿の惑星」シリーズを『パピヨン』(1973)のフランクリン・J・シャフナーが映像化した作品。『ベン・ハー』(1960)でアカデミー主演男優賞を受賞した経験を持つチャールトン・ヘストンが主演を務めたことでも話題となりました。

【映画『猿の惑星』のあらすじ】

地球への帰還を目指す宇宙船内には冬眠状態の4人の宇宙飛行士がいました。

しかし、想定から外れ謎の惑星の湖上へと不時着したことを確認した船長のテイラー(チャールトン・ヘストン)は、この惑星では猿が人間を支配していることに気づきます…。

現代でも人気の衰えない大人気シリーズの始動作!

「猿が人間を支配する」と言う「SF」らしい斬新さと皮肉を多分に含んだ物語が人気となった小説を映像化した本作は、旧シリーズ5作、リメイク1作、リブートシリーズが3作と2010年代後半まで作品が作り続けられる大人気シリーズとなりました。

なぜ猿と人の知能が逆転しているのか、なぜこの惑星では人類が滅びたのか、などの大量の「謎」を散りばめながら進む第1作は驚天動地のラストを迎えます。

あまりにも有名なこのどんでん返しのオチは衝撃の一言であり、まだこの作品のオチを知らないと言う方は是非ともその目で確認していただきたいと切に願う作品です。

1960年のおすすめSF映画:2位『華氏451』

映画『華氏451』の作品情報

【原題】
Fahrenheit 451

【日本公開】
1967年(イギリス映画)

【監督】
フランソワ・トリュフォー

【キャスト】
オスカー・ウェルナー、ジュリー・クリスティ、シリル・キューザック、アントン・ディフリング

【作品概要】
『黒衣の花嫁』(1968)や『夜霧の恋人たち』(1969)などで高い評価を受けるフランス人映画監督のフランソワ・トリュフォーが手掛けた作品。主演を務めたのはこの作品以降フランソワ・トリュフォーとの間に深い確執を作ったことでも話題となったオスカー・ウェルナー。

【映画『華氏451』のあらすじ】

思想が徹底的に管理され、本を読むことを禁じられた世界。

本の捜索と焼却を任とする「ファイアマン」のモンターグ(オスカー・ウェルナー)は本を愛する女性クラリス(ジュリー・クリスティ)と出会ったことで、禁忌とされる読書に興味を持ち始めてしまい…。

徹底した思想管理は何を生み出すのか

2020年1月、ゲーム中毒者の増加問題を受け、香川県はオンラインゲームの1日の使用時間に制限をつける素案を発表。

この発表はインターネットを中心に大バッシングを受けるようになり、行き過ぎた娯楽の管理を危惧する声も上がるようになりました。

1967年の映画『華氏451』(1967)では、危険思想を持つ人間の封殺のため、娯楽を徹底的に禁止する究極の管理体制が敷かれた世界が舞台となっています。

自由に娯楽を楽しむことの出来ない世界の窮屈さ、独裁政治に対するアンチテーゼなど、陰鬱とした世界観での「読書」と言う希望が描かれた本作は自身の生きている今の時代の有難さを感じると共に、未来の世界への危惧を与える60年代の名作映画と言えます。

1960年のおすすめSF映画:1位『2001年宇宙の旅』


(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

映画『2001年宇宙の旅』の作品情報

【原題】
2001: A Space Odyssey

【日本公開】
1968年(アメリカ・イギリス合作映画)

【監督】
スタンリー・キューブリック

【キャスト】
キア・デュリア、ダグラス・レイン、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルベスター

【作品概要】
アイザック・アシモフやロバート・A・ハインラインなどの巨匠SF作家と並び称されるアーサー・C・クラークがスタンリー・キューブリックと構想を行ったSF映画の金字塔的作品。1984年には『カプリコン・1』(1977)や『タイムコップ』(1994)などで知られるピーター・ハイアムズが続編となる『2010』(1984)が公開されました。

【映画『2001年宇宙の旅』のあらすじ】


(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

人類の祖先である猿がまだ知能を持っていなかった時代、突如地表に現れた石板「モノリス」に触れた個体が「武器」を使うことを学び、進化を遂げます。

そして遥か未来、月で発見された「モノリス」が発した信号を調査するため、宇宙船ディスカバリー号は木星へと旅立ちますが…。

生命の進化、宇宙の誕生を描く壮大なスケールの名作


(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

2020年になってもなお、映画のオールタイムランキング等で必ず目にする映画『2001年宇宙の旅』(1968)。

月の裏側や地球の全体像など、当時はまだ誰も知ることの出来なかった「宇宙の常識」を正確に描写しただけでなく、作中に登場する人工知能の描き方など「先」を見据える能力の高さに驚く作品です。

セリフや文字で説明しない物語は難解であり、1回の鑑賞で全てを理解しきることの難しい作品ではあるものの、複数回鑑賞したり、解説を読むことで明かとなる全体像の完成度が高く、色褪せない輝きを放っています。

宇宙の描写に拘り抜き、実際の宇宙飛行士ですらその正確さに度肝を抜かれたとさえ言われるSF映画の金字塔である本作は、2020年代になっても決して廃れることはないでしょう。

まとめ


(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

大きな戦争が終わり、また始まろうとしていた1960年代。

この時代のSF映画には「戦争」や「武器」、「人類の愚かさ」と言うワードが見え隠れしており、人類の未来に対する危惧が伝わってくるようです。

1960年からちょうど60年経った現在、この作品群を鑑賞し今と通じる部分があるのかを考えてみてはいかがでしょうか。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile086では、2020年のアカデミー賞の発表を前に「アカデミー賞とホラー・SF映画の歴史」を解説していこうと思います。

1月22日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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