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Entry 2019/01/30
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映画『山〈モンテ〉』解説。ナデリ監督が描く人間の背負う罪とは | SF恐怖映画という名の観覧車34

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile034

技術の進化や意識の変化に伴い、人間は様々な「脅威」を乗り越えてきました。

しかし、如何に防犯の技術や意識が高まっても犯罪が無くならないのと同様に、常に向き合っていくしかない「脅威」も存在します。

今回は、人類最大の「脅威」である「自然」に対し、たった1人で立ち向かう男を描いたアミール・ナデリ監督映画『山〈モンテ〉』を紹介し、人類の背負う「罪」について考えていきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『山〈モンテ〉』の作品情報


(C)2016 Citrullo International, Zivago Media, Cineric, Cine-sud Promotion. Licensed by TVCO. All rights reserved.

【原題】
Monte

【公開】
2019年(イタリア・アメリカ・フランス合作映画)

【監督】
アミール・ナデリ

【キャスト】
アンドレア・サルトレッティ、クラウディア・ポテンツァ、ザッカーリア・ザンゲッリーニ、セバスティアン・エイサス、アンナ・ボナイウート

映画『山〈モンテ〉』のあらすじ


(C)2016 Citrullo International, Zivago Media, Cineric, Cine-sud Promotion. Licensed by TVCO. All rights reserved.

南アルプスの山麓に住むアゴスティーノ(アンドレア・サルトレッティ)とその家族。

巨大な「山」に太陽の光が遮られ、作物が育たない「死の世界」となったその土地から住人たちは次々と出ていきます。

しかし、アゴスティーノは先祖代々受け継がれ、亡き娘の眠るこの土地から退くことを良しとせず、「山」の打倒を誓いますが…。

アミール・ナデリ監督の描く「罪」


(C)2016 Citrullo International, Zivago Media, Cineric, Cine-sud Promotion. Licensed by TVCO. All rights reserved.

イランの映画監督として多くの実績を持つ名匠アミール・ナデリ。

彼の作品では人間の「罪」が題材として描かれていることが多くあり、彼の考える「贖罪」には様々な形があることが分かります。

西島秀俊主演作『CUT』(2011)


(C)CUT LLC 2011

アミール・ナデリ監督が日本のキャスト・スタッフを使い、西島秀俊主演で製作した映画『CUT』。

本作では西島秀俊演じる映画監督の秀二が、自分の映画活動のために借金を背負い死んだ兄への自責の念を抱いています。

秀二は人に殴られることでお金を貰う「殴られ屋」を始め、借金を返済しようとします。

借金と言う兄の「罪」を請け負い、またそれを背負わすことになってしまった自分自身への「罪」と向き合い、身体を痛めつけることで「贖罪」を果たしていく秀二の生き方。

この作品からは人生そのものが贖罪への旅路であると言う、アミール・ナデリ監督の人生観が見えてきます。

しかも『山〈モンテ〉』の脚本をアミール・ナデリ監督は日本で執筆し、物語の舞台設定を日本におき映画化を目指していました。

それは何よりも西島秀俊という俳優を主人公のキャラクターに起用したかったことが理由です。

映画『CUT』と『山〈モンテ〉』が類似した“罪を背負った男の物語”になっている点はそこにあります。

人類の背負う「罪」


(C)2016 Citrullo International, Zivago Media, Cineric, Cine-sud Promotion. Licensed by TVCO. All rights reserved.

“恩知らずとは神に感謝せぬ者”

『山〈モンテ〉』にはこんな一説が出てきます。

「自然」は「神の恩恵」そのものであり、「日の光」や「作物の実り」など全てがそれに含まれます。

ですが、人々は今あるもたらされた環境に感謝をしないどころか、不満を漏らす「恩知らず」であり、このことこそが人類の「罪」であると解釈することが出来ます。

しかし、本作の主人公アゴスティーノは「山」と言う強大な「試練」に対し、逃げるだけの周りの人々をしり目に毅然と立ち向かい、神の恩恵の副産物すらも真っ向から受け止めます。

この作品からは罪に向き合う人生の旅路、と言うアミール・ナデリの人生観が、人間そのものが罪であるメッセージにも見えてくるのです。

『山〈モンテ〉』で描かれる遅効性の「自然の脅威」


(C)2011 The Grey Film Holdings, LLC.

リーアム・ニーソン主演のスリラー映画『THE GREY 凍える太陽』(2012)では、雪山を舞台に雪や狼などの即効性の「自然の脅威」が描かれていました。

吹雪に凍え、狼に喰い荒らされ、次々と人が死んでいく恐怖を目前とする『THE GREY 凍える太陽』は自然の恐ろしさが身に染みるスリラー作ですが、『山〈モンテ〉』では同じく自然が敵でありながらも別次元の恐怖として描かれています。

作中ではアゴスティーノ一家のいる村では「山」に「日光」を阻害され、全ての作物が育たず病気も蔓延します。

じわじわと生きる気力を失わせていく山と言う遅効性の自然の脅威は、即効性の自然の脅威が直接的な暴力であるのに対し、「兵糧攻め」のようなむしろ残虐な暴力にすら見えます。

「自然」のさじ加減1つで、人間はどんな風にでも殺すことが出来る。

当然のことでありながら、酷く恐ろしい事実を突き付けられた作品でした。

まとめ


(C)2016 Citrullo International, Zivago Media, Cineric, Cine-sud Promotion. Licensed by TVCO. All rights reserved.

日本では数十年前から南海トラフ地震が発生し、大規模な災害となると予測されています。

大規模な地震は数年ごとに発生し、それだけでなく大雪や台風など毎年多くの災害が日本を襲う現状。

世界でも稀にみる災害国家でありながらも、日本に住み、災害と言う「脅威」に向き合うことを選んだ日本人たちはさながら作中のアゴスティーノと同じ境遇とも言えます。

そんな、似た境遇の我々だからこそ共感できる部分のある映画『山〈モンテ〉』は、2019年2月9日より劇場公開開始。

ぜひとも、人類の「罪」を一身に背負い、孤独の戦いを続けるアゴスティーノの行く末をその目で見届けてください。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…


(C)2019「がっこうぐらし!」製作委員会

いかがでしたか。

次回のprofile035では、テレビアニメ化もされて話題となった、海法紀光と千葉サドルによる異色学園ホラーマンガを実写映画化した『がっこうぐらし!』の魅力とあらすじ、そして注目点を詳しくご紹介していきます。

2月6日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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