Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/05/03
Update

映画『ハチとパルマの物語』感想評価と解説レビュー。実話感動の愛犬物語と主題歌を歌う堂珍嘉邦の“愛の待ちぼうけ”が胸を打つ|映画という星空を知るひとよ62

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第62回

ロシアの忠犬パルマを描いた『ハチとパルマの物語』は、2021年5月28日(金)よりなんばパークスシネマ、シネ・リーブル梅田、MOVIX堺、MOVIX八尾、MOVIXあまがさき、MOVIX京都にて全国順次ロードショー予定です。

ロシアの空港で置き去りにされた犬のパルマは飼い主を待ち続けていました。

同じ頃、母を亡くし顔もろくに知らないパイロットの父親に引き取られた9歳の少年コーリャは、空港でパルマと出会います。寂しい心を持った者同士の犬と少年は、次第に絆を深めていきます。

ロシアの「忠犬ハチ公」といえるパルマの物語は、秋田県大館市の秋田犬保存会などの協力も得て、アレクサンドル・ドモガロフJr.監督が手掛けました。

主役となるコーリャ少年には映画初主演となるレオニド・バーソフが抜擢され、共演に『ソローキンの見た桜』のアレクサンドル・ドモガロフ、『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』のビクトル・ドブロヌラボフ。

五輪金メダリストのフィギュアスケーター、アリーナ・ザギトワも本人役で出演し、日本からは渡辺裕之、藤田朋子らが参加しています。

1970年代の旧ソ連に実在した「忠犬パルマ」のエピソードを基に、犬と人間の関わりや親子の葛藤を描いた日露合作によるヒューマンドラマ『ハチとパルマの物語』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『ハチとパルマの物語』の作品情報


(C)2021 パルマと秋田犬製作委員会

【日本公開】
2021年(日本、ロシア合作映画)

【監督】
アレクサンドル・ドモガロフJr.

【脚本】
アレクサンドル・ドモガロフJr.、村上かのん

【プロデューサー】
益田祐美子

【主題歌】
『愛の待ちぼうけ』堂珍嘉邦(AGレーベル)

【キャスト】
渡辺裕之、藤田朋子、アナスタシア、壇蜜、高松潤、山本修夢、早咲、アレクサンドル・ドモガロフ、レオニド・バーソフ、ヴィクトル・ドブロヌラヴォフ、阿部純子(友情出演)、堂珍嘉邦(友情出演)、アリーナ・ザギトワ(友情出演)

【作品情報】
1977年の旧ソ連時代。モスクワ国際空港で実際にあった「忠犬パルマ」のエピソードを基に、少年と犬の感動的な触れ合いを描いた日露共同製作作品『ハチとパルマの物語』。

脚本・監督はアレクサンドル・ドモガロフJr.が務め、『ソローキンの見た桜』(2019)を製作した益田祐美子がプロデュースしています。

主役のコーリャ少年には、映画初主演となるレオニド・バーソフ。そして、ロシアを代表する名優アレクサンドル・ドモガロフ、『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(2019)のヴィクトル・ドブロヌラヴォフをはじめとする熟練のキャストが脇を固めています。

さらに日本からは渡辺裕之、藤田朋子、壇蜜、阿部純子らが参加。また、フィギュアスケーターのアリーナ・ザギトワも本人役で出演します。

映画『ハチとパルマの物語』のあらすじ


(C)2021 パルマと秋田犬製作委員会

秋田県大館市で、秋田犬の里オープニングセレモニーが開催されました。ロシアからコーリャという男性が、セレモニーに参加するために孫娘とやって来ました。

コーリャはテレビで流れる秋田犬の話題に目が留まり、自分の小さな頃の犬との忘れられない記憶を思い出し、孫娘に秋田犬を引き合わせに来たのです。

1977年、旧ソ連の空港。飼い主とともにプラハに行く予定だったジャーマンシェパードのパルマは、搭乗のための書類不備で乗機を拒否されました。

どうしてもプラハへ行かなければならない飼い主は仕方なく、こっそりパルマを滑走路に放ちます。

パルマは飼い主の乗った飛行機の後を追いますが、飛行機はそのまま大空へ飛び立って行きました。

その頃、9歳のコーリャ少年が飛行機で空港に到着。

彼は母親を亡くし、顔をよく知らないパイロットの父親・ラザレフに引き取られたのですが、母を失った悲しみとこれから始まろうとしている良い思い出のない父親との生活が嫌でたまりません。

ふてくされて空港に降りた時、空港のスタッフがパルマを捉えようとする騒動に気がつき、パルマを助けます。

コーリャとパルマの様子を知り、彼らに理解を示した飛行機整備士のセルゲイが、彼らを保護する形でとりあえずその場は治まりました。

それからパルマは空港に住み着きます。コーリャとパルマはお互いの寂しい気持ちが分かりあえ、すぐに仲良しになりました。

パルマは毎日滑走路で飛行機を見ています。飼い主が乗った飛行機イリューシン18機の到着だけを正確に察知し、タラップまで出迎えに行きます。

ある日、空港に日本人に連れられた秋田犬が現れました。

飛行機への搭乗を待つ秋田犬にパルマは仲間を見つけたかのように走り寄りますが、その傍らには優しい主人がいました。

2人を見送るパルマの眼に、この上ない寂しさが宿っていることにコーリャは気付きます。

「飼い主のもとへ戻してあげたい」と、コーリャは行動を起こし始めます。

その熱意はいつしか父親との距離も縮めることになり、ついにマスコミにパルマのことを報道してもらえるようになりました。

多くの人の協力と理解を得て、パルマが飼い主の帰りを待ち続ける姿はやがて空港のシンボルとなり、人々の心を打つようになったのですが……。

スポンサーリンク

映画『ハチとパルマの物語』の感想と評価


(C)2021 パルマと秋田犬製作委員会

パルマが築く人と人との絆

空港に置き去りにされた犬がひたすら飼い主を待つ物語の本作。言葉を話せない犬が、どうしようもない寂しさを眼差しや動作で表現するのを観ると胸が締め付けられます。

また、愛する人から置いて行かれたという境遇は、コーリャ少年も同じでした。少年の母親は死に、それまでほとんど会ったことのない父親と暮らすのはとても苦痛でした。

求める人は違っていても、コーリャとパルマの寂しさを抱えた胸の内は誰よりもお互いがよくわかったのです。

犬であるパルマは飛行機が着くと出迎えに行くことしかできません。コーリャはパルマを飼い主に会わせてあげたい一心で、自分の気持ちを素直に父親にぶつけます。

父親もそれまでは自分の夢しか頭にありませんでしたが、パルマとコーリャの姿を見て次第に考えを変えていきます。

自分のことしか考えられない大人たちに人間の本質が見えて辛くなりますが、コーリャの必死の思いが通じて、周囲の協力も得られるようになっていく展開に胸をなでおろします。

そして何よりも心に響くのは、コーリャがパルマの飼い主にあてた手紙です。飼い主を慕うパルマの気持ちを切実に訴えた内容に、誰もが心を動かされることでしょう。

置き去りにされたたった一匹の犬が、周囲の人々を優しい気持ちにさせ、その絆を深めていきます。

物語の背景


(C)2021 パルマと秋田犬製作委員会

日本の「ハチ」物語は1925年のこと。東京の渋谷には、急死した飼い主が忘れられずに毎日のように駅まで迎えに行く秋田犬・ハチの姿がありました。

忠義心を尊ぶ人々は、これぞ忠犬だとばかりに、渋谷駅前に「ハチ公」像を建てて、ハチの飼い主を慕う心を称えました。

ハチの種族である秋田犬は天然記念物にも認定されている大型の日本犬。もともと、秋田犬は、忠誠心が強く温厚で、命令にも素直に従うことで知られていました。

本作に登場するパルマはシェパードですから種類が異なりますが、それでも飼い主を一途に慕い続ける心は同じでした。

作中で日本から来た乗客が、コーリャ少年にハチの話をする場面があります。

コーリャもパルマとハチに共通する飼い主への忠誠心に感動し、このことが後に秋田犬との絆を求めて日本にやって来るきっかけとなったのです。

また主題歌は、ソロ・アーティストとしても活躍中のCHEMISTRYの堂珍嘉邦が手掛けました。

偶然の成り行きにしろパルマの置かれた状況を見事に表した歌が、この物語を一層味わい深いものにしています。

まとめ


(C)2021 パルマと秋田犬製作委員会

日本の「ハチ」同様、ロシアにも「パルマ」という忠犬が実際にいました。

モスクワのヴヌーコヴォ国際空港の滑走路で、飼い主を忠実に待っていた犬・パルマ。映画『ハチとパルマの物語』は、パルマについて4度目の映像化になる作品と言います。

本作のプロデューサーは、日露戦争時代の捕虜と看護婦との恋愛を描いた日露共同制作映画『ソローキンの見た桜』を製作した益田祐美子。

日露をつなぐ第2弾として、奇しくも日露の両国に存在した「忠犬」を描いたそうです。

忠犬ハチといえば秋田犬。そしてロシアと秋田犬とワードが揃えば、頭に浮かぶのは、フィギュアスケートのアリーナ・ザギトワでしょう。

「マサル」と名付けた秋田犬を家族の一員として可愛がっている彼女が、本人役で出演しているのも見どころの一つです。

犬は飼い主を選べませんが、慕うべき人はわかります。

動物を責任を持って飼うことの大切さや慕われることの喜びが伝わって来る本作は、人間が犬と関わり、犬を通じて成長していく心温まるヒューマンドラマとなっています。

映画『ハチとパルマの物語』は、2021年5月28日(金)よりなんばパークスシネマ、シネ・リーブル梅田、MOVIX堺、MOVIX八尾、MOVIXあまがさき、MOVIX京都にて全国順次ロードショー予定です。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。


関連記事

連載コラム

平成ゴジラシリーズの巨大ロボット考察と比較解説!歴代防衛組織と主戦力を徹底解剖|邦画特撮大全77

連載コラム「邦画特撮大全」第77章 今回の邦画特撮大全は平成ゴジラシリーズに登場した巨大ロボットを紹介します。 現在放送中のウルトラシリーズ最新作『ウルトラマンZ』(2020)にはセブンガーやウィンダ …

連載コラム

韓国映画『神と共に 第一章:罪と罰』あらすじ解説と考察。死後の世界の「仏教的宗教観」の楽しみ方とは|SF恐怖映画という名の観覧車50

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile050 ゾンビ映画の定番や基礎を丁寧に踏襲しつつ、移動する密室と言う斬新な設定を活かしきった韓国映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(201 …

連載コラム

映画『ふたりのJ・T・リロイ』あらすじと感想レビュー。ベストセラー作家の裏の裏や、海外の出版業界の様子が垣間見られる|銀幕の月光遊戯 53

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第53回 映画『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』が2020年2月14日(金)より新宿シネマカリテほかにて全国公開されます。 2000年代の半ば、アメリカ文 …

連載コラム

映画『エスケープルーム』ネタバレあらすじと感想。謎解きゲームには参加者の過去も重要な意味がある⁈|サスペンスの神様の鼓動30

こんにちは!「Cinemarche」のシネマダイバー、金田まこちゃです。 このコラムでは、毎回サスペンス映画を1本取り上げて、作品の面白さや手法について考察していきます。 今回ご紹介する作品は、成功す …

連載コラム

映画『茜色に焼かれる』感想評価とレビュー解説。尾野真千子が母親役で見せた理不尽な世の中でも“生き抜く強さ”|映画という星空を知るひとよ61

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第61回 『舟を編む』『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』の石井裕也監督が手掛けた映画『茜色に焼かれる』。 主演に単独では4年振りとなる尾野真千子を迎え、和 …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
映画『哀愁しんでれら』2021年2月5日(金)より全国公開
映画『写真の女』
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学