Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2020/12/05
Update

鬼滅の刃モデル元ネタ?映画レビューと評価考察。実写・戦隊シリーズなどが辿ってきた“鬼退治”の系譜|邦画特撮大全78

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第78章

今回の邦画特撮大全は、敵が“鬼”の作品、つまり「鬼退治映画」を紹介します。

吾峠呼世晴の人気漫画が原作のアニメーション作品『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の興行収入は275億円を突破し、『タイタニック』の最終興行収入約262億円を抜いたことで、本作は日本の歴代興行収入ランキング2位となりました。

いまだその勢いが衰えることがない『鬼滅の刃』人気。そこで今回の邦画特撮大全は、敵として「鬼」が登場する作品を紹介していきます。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

大映オールスターによる新解釈の“大江山鬼退治”


(C)大映

「世に伝えられし大江山鬼退治の伝説はかくの如しである。だが然し……」というナレーションから始まる本作『大江山酒天童子』。冒頭で伝説通りに大江山の鬼退治を描いた後、別解釈の物語が展開していきます。

酒天童子(酒呑童子)とは大江山に棲む鬼の総大将で、源氏の武将・源頼光によって討ち取られたという伝説上の存在です。しかし本作ではその正体は「鬼」ではなく、藤原道長の横恋慕から妻である渚の前を奪われ、都を追われた橘致忠となっています。彼は藤原一門の圧政に抵抗する反逆者であり、単なる悪役の「妖怪」ではありません。つまり酒天童子を妖怪としての「鬼」ではなく、復讐の「鬼」または朝廷にまつろわぬ存在の比喩としての「鬼」と設定されているのです。

茨木童子や鬼童丸といった酒天童子の配下も鬼ではなく人間ですが、彼らは「妖術使い」として登場します。彼らが使う妖しげな術を特撮技術によって魅力的に描写していきます。特に鬼童丸は伝承上では牛の腹の中に隠れていたというのを、牛の化物に変身するというアレンジが加えられ、伝承よりも魅力的な存在となりました。

また『今昔物語』などに見られる平安時代の盗賊・袴垂、源頼光によって退治された土蜘蛛も酒天童子の配下として編成されています。土蜘蛛も茨木童子たち同様に妖術使いとして設定され、巨大なクモの化物は彼が変化した姿として登場します。巨大グモは、『ゴジラ』(1954)などで知られる大橋史典が手がけたフルスケールの造形物によって表現され、迫力ある映像となりました。

『大江山酒天童子』の作品情報

【公開】
1960年(日本映画)

【原作】
川口松太郎

【脚本】
八尋不二

【監督】
田中徳三

【出演】
長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎、本郷功次郎、中村鴈治郎、中村豊、林成年、島田竜三、根上淳、沢村宗之助、小沢栄太郎、中村玉緒、阿井美千子、左幸子、山本富士子

【作品概要】
本作は大江山に棲む鬼退治伝説を基にした伝奇ロマン映画。酒天童子は長谷川一夫、源頼光は市川雷蔵、頼光の部下・渡辺綱に勝新太郎、坂田金時に本郷功次郎、ヒロイン・渚の前に山本富士子と、大映京都のオールスター映画として製作されました。

邪鬼退散! 悪鬼を斬るスーパー戦隊

劇場版『百獣戦隊ガオレンジャー 火の山、吼える』予告編(2001)

『百獣戦隊ガオレンジャー』は前年に放送されていた『未来戦隊タイムレンジャー』と『仮面ライダークウガ』、同時期に放送されていた『仮面ライダーアギト』『ウルトラマンコスモス』と共に、“イケメンヒーローブーム”の火付け役となった作品です。

そんなガオレンジャーの敵は「オルグ」と呼ばれる鬼でした。TVシリーズに登場したオルグの幹部はシュテン、ウラ、ラセツの3体。シュテンは前述した酒呑童子、ウラは吉備津彦命によって退治された温羅、ラセツはインド神話に登場する鬼神にそれぞれ由来しています。毎回登場するオルグたちはスーパー戦隊らしく、無生物がモチーフでした。

ガオレンジャーたちは当初シャーマン=陰陽師として設定されていたため、各メンバーカラーは陰陽道で使われる赤・黄・青・黒・白の「五行」の色が配されています。5人の個人武器を合体させた「破邪百獣剣」で、オルグたちを「邪鬼退散!」の掛け声のもと一刀両断します。

劇場版『百獣戦隊ガオレンジャー 火の山、吼える』に登場したオルグたちはゼウスオルグ、ポセイドンオルグ、ハデスオルグの3兄弟。モチーフはギリシャ神話の神々で、劇場版の敵に相応しい強大さを感じさせるものになっていました。長男ゼウスオルグの声は声優の三宅健太が演じていますが、ポセイドンオルグはアニソン界の帝王・水木一郎、ハデスオルグは主題歌を担当している山形ユキオが演じています。

今年2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響から上映延期となりましたが、毎年夏の恒例となっているスーパー戦隊と仮面ライダーの2本立て映画は本作からスタートしたのです。

『百獣戦隊ガオレンジャー 火の山、吼える』の作品情報


(C)2001東映

【公開】
2001年(日本映画)

【脚本】
武上純希

【監督】
諸田敏

【出演】
金子昇、堀江慶、柴木丈瑠、酒井一圭、竹内実生、玉山鉄二、岳美、大沢樹生、佐藤康恵(現:さとうやすえ)

【声の出演】
増岡弘、三宅健太、水木一郎、山形ユキオ

【作品概要】
スーパー戦隊シリーズ25周年記念作品『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001~2002)の劇場版。スーパー戦隊シリーズの劇場用オリジナル作品は『劇場版 超力戦隊オーレンジャー』(1995)以来6年ぶりです。

監督は『未来戦隊タイムレンジャー』『仮面ライダーゴースト』のメイン監督・諸田敏、脚本は『ONE PIECE』や『NARUTO』など数多くのTVアニメでシリーズ構成を務めた武上純希。同時上映は『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』(2001)でした。

VFXを駆使した新感覚の特撮時代劇


(C)「阿修羅城の瞳」製作委員会

文化文政を舞台とした『阿修羅城の瞳』は、鬼狩りをやめ歌舞伎役者となった病葉出門と記憶喪失の女盗賊・椿の宿命の愛を描きます。椿には鬼の王「阿修羅」が封印されており、恋に落ちることでその本性が復活するのです。本作は宿命の愛の相手が最強の敵になる、という悲恋の物語です。また本作には怪談『東海道四谷怪談』で知られる戯作者・四世鶴屋南北が登場し、歌舞伎を組み込んだ演出・作劇も特徴です。

本作には「鬼御門」という組織が登場します。彼らは黒衣の剣士団で、密かに鬼を退治していました。鬼御門の設定は『鬼滅の刃』に登場する「鬼殺隊」を思わせます。

本作に登場する「鬼」は普段は人間に化けており、本性を現すと眼が緑に光り、彼らが流す血も粘り気のある緑色。『鬼滅の刃』に登場する鬼たちは西洋の吸血鬼の和風アレンジという趣がありましたが、本作の鬼はハリウッド映画に登場するエイリアンやモンスターのようなアレンジがされています。

クライマックスとなる「阿修羅城」の内部はマウリッツ・エッシャーの騙し絵を思わせるデザインで、こちらも『鬼滅の刃』に登場する鬼の本拠地「無限城」の内部を連想させます。

本作『阿修羅城の瞳』には、視覚効果に松本肇、特殊造形に原口智生、ミニチュア造形に寒河江弘といった数々の一流スタッフが参加。VFXを駆使した圧倒的なビジュアルが展開するスペクタクル映画としても十分楽しめます。

『阿修羅城の瞳』の作品情報

【公開】
2005年(日本映画)

【原作】
中島かずき、劇団☆新感線

【脚本】
戸田山雅司、川口晴

【監督】
滝田洋二郎

【出演】
市川染五郎(現:松本幸四郎)、宮沢りえ、渡部篤郎、樋口可南子、韓英恵、沢尻エリカ、大倉孝二、皆川猿時、螢雪次朗、小日向文世、内藤剛志

【作品概要】
劇団☆新感線の演劇『阿修羅城の瞳』の映画化。舞台の初演は1987年。その後、劇団☆新感線と松竹とのコラボレーション作品として2000年と2003年に再演されました。

2000年版と2003年版に主演した市川染五郎(現・松本幸四郎)が主人公・病葉出門を映画版でも引き続き演じ、女盗賊・椿は宮沢りえ、ライバル安倍邪空は渡部篤郎と他のキャストは舞台版から一新されています。監督は『陰陽師』『おくりびと』の滝田洋二郎が務めました。

まとめ

今回紹介できなかった作品もありますが、「鬼」は題材とした特撮作品は数多く存在します。「鬼」はポピュラーな妖怪であるため、作品ごとに様々なアレンジが施されており、それぞれ魅力的な作品となっているのです。

次回の邦画特撮大全は…


(C)2020 スーパーヒーロープロジェクト (C)石森プロ・テレビ朝日・AD EM・東映

次回の邦画特撮大全は『劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』を紹介します。お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら





関連記事

連載コラム

大泉洋映画『騙し絵の牙』感想評価と考察。原作との違いが生む衝撃の結末と“面白い”の修羅場|シニンは映画に生かされて24

連載コラム『シニンは映画に生かされて』第24回 2021年3月26日(金)より全国ロードショー公開予定の映画『騙し絵の牙』。 『罪の声』の小説家・塩田武士が人気俳優・大泉洋をイメージし主人公を「あてが …

連載コラム

映画『石門』あらすじ感想と評価解説。ホワン・ジー&大塚竜治共同監督が複雑な女性心理をリアルに捉える|東京フィルメックス2022-3

東京フィルメックス2022『石門』 第23回東京フィルメックス(2022年10月29日(土)~11月6日(日)/有楽町朝日ホール)のコンペティション9作品のひとつとして上映された『石門』。 妊娠をテー …

連載コラム

映画『テッドバンディ』ネタバレ感想と評価考察。ザックエフロン演じる実際の殺人鬼が観客を騙し魅了する|サスペンスの神様の鼓動26

連載コラム「サスペンスの神様の鼓動」第26回 こんにちは、映画ライターの金田まこちゃです。このコラムでは、毎回サスペンス映画を1本取り上げて、作品の面白さや手法について考察していきます。 前回『KIL …

連載コラム

『ケータイ捜査官7』あらすじと感想。考察はゴールドタイタンがセブンの源流か⁈|邦画特撮大全17

連載コラム「邦画特撮大全」第17章 実は2018年はさまざまな特撮作品がアニバーサリーをむかえていました。 今回から4回に亘ってそうした作品をそれぞれ特集していきます。 2008年の4月から1年間、テ …

連載コラム

『峠 最後のサムライ』あらすじ感想と解説評価。役所広司が小泉堯史監督作品で武士の生き様を演じる|映画という星空を知るひとよ102

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第102回 歴史小説界の巨星・司馬遼太郎が、幕末の風雲児と呼ばれた越後長岡藩家老・河井継之助を描いた国民的ベストセラー小説『峠』。 この小説を映画化した『峠 最 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学