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『ゆきてかへらぬ』あらすじ感想と評価レビュー。広瀬すずが実話からなる恋愛劇を華やかに演じる青春ムービー|映画という星空を知るひとよ245

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第245回

『ゆきてかへらぬ』は、大正時代に実在した女優の長谷川泰子と、詩人の中原中也、文芸評論家の小林秀雄という男女3人の壮絶な愛と青春を描いた物語

広瀬すずが主演を務め、木戸大聖、岡田将生ら豪華キャストが共演。複雑で歪な三角関係に陥る男女を熱演します。

映画『ゆきてかへらぬ』は2025年2月21日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開!

本作は、『探偵物語』(1979)『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』(2009)の根岸吉太郎監督が16年ぶりに長編映画として、手がけた作品です。

才能あふれる2人のアーティストから愛される泰子を演じる広瀬すずが、大正ロマンを色濃く感じさせる優雅なファッションを披露し、狂気すらおびた愛で魅了しています

『ゆきてかへらぬ』の映画公開に先駆けて、本作をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『ゆきてかへらぬ』の作品情報


(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

【日本公開】
2025年(日本映画)

【監督】
根岸吉太郎

【脚本】
田中陽造

【キャスト】
広瀬すず、木戸大聖、岡田将生、田中俊介、トータス松本、瀧内公美、草刈民代、カトウシンスケ、藤間爽子、柄本佑

【作品情報】
本作の監督は、『遠雷』(1981)や『探偵物語』(1979)など、日本映画界を長年牽引してきた名匠、根岸吉太郎です。

また脚本は、鈴木清順監督の「浪漫三部作」[『ツィゴイネルワイゼン』(1980)『陽炎座』(1981)『夢二』(1991)]や『セーラー服と機関銃』(1981)など、数々の映画で異彩を放ち続けてきた名脚本家、田中陽造。

本作は、日本映画界を代表するふたりが『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ~』(2009)以来16年ぶりとなるタッグを組んだ作品となりました。

海街diary』(2015)や『流浪の月』(2022)など、現代日本映画界で著しい活躍をする広瀬すずが主役の長谷川泰子を務めます。

ドラマ『海のはじまり』(2024)や『きみの色』(2024)の木戸大聖が中原中也、NHK連続テレビ小説『虎に翼』(2024)や『ラストマイル』(2024)で話題沸騰中の名優岡田将生が小林秀雄を演じ、豪華共演を果たしています。

映画『ゆきてかへらぬ』のあらすじ


(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

大正13年、京都。芽の出ない女優・長谷川泰子(広瀬すず)は、まだ学生だった中原中也(木戸大聖)と出逢いました。

20歳の泰子と17歳の中也。どこか虚勢を張るふたりは、互いに惹かれ、一緒に暮らしはじめます。価値観は違うけれども、相手を尊重できる気っ風のよさが、ふたりには共通していました。

大正14年、東京。泰子と中也が引っ越した家を、中也の友人である小林秀雄(岡田将生)がふいに訪れます。

小林は中也の詩人としての才能を誰よりも知る男でした。そして、中也も批評の達人である小林に一目置かれることを誇りに思っていました。

男たちの仲睦まじい様子を目の当たりにして、泰子は複雑な気持ちになります。それは、才気あふれるアーティストたちにどこか置いてけぼりにされたようなさみしさでした。

しかし、泰子と出逢ってしまった小林もまた彼女の魅力に気づいていました。本物を求める評論家は、新進女優にも本物を見出したのです。

泰子と中也と小林。複雑でシンプルな危うい関係が始まります。

重ならないベクトル、刹那のすれ違い……。ひとりの女が、ふたりの男に愛されること。それはアーティストたちの青春でもありました。

映画『ゆきてかへらぬ』の感想と評価


(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

‟悪女”のイメージを覆す

本作は大正時代を舞台に、実在した男女3人の壮絶な愛と青春を描いた作品です。

天才詩人と言われた中原中也と優れた文芸批評家の小林秀雄。2人の男を愛し、また愛されて、3人で奇妙な関係を続ける長谷川泰子。

変幻自在のファッショナブルな衣装で、その時その時の自分の存在を強調し、魔性の魅力を込めた瞳で男たちを見つめます。

自分の気持ちに正直過ぎるほど正直に生きる長谷川泰子。こんな泰子を広瀬すずが、純粋でチャーミングな女性に演じています

男女の歪んだ三角関係ゆえに、女性である長谷川泰子は悪女のイメージがついていますが、本作では広瀬すずがそれを見事に覆したと言えるでしょう。

翻弄される男たち


(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

一方、別の意味で注目したいのは、泰子の魅力にハマってふりまわされる男たちでしょう。

中也と小林。どちらも才能あるアーティストで、お互いにお互いの才能を認め合った朋友でもありました。そんな2人がほぼ同じ時期に愛したのが、長谷川泰子です。

男性側からの愛し方の苦悩も描かれ、今も昔も変わらない恋愛の難しさが顔を覗かせていました

また2人の間で揺れ動き苦しむ泰子を見ながら、中也と小林はお互いの心情を気遣う、奇妙な友情も表されています。

三人三様の苦しみで展開する泥沼に陥る恋愛地獄。ですが、それは3人にとって決して後戻りのできない青春だったのです。

暗いイメージの本作ですが、広瀬すず、木戸大聖、岡田将生といったキャストの名演技によって、一陣の風のような爽やかさが残る作品となっています。

まとめ


(C)2025「ゆきてかへらぬ」製作委員会

広瀬すずが主演を務め、木戸大聖、岡田将生と共演する映画『ゆきてかへらぬ』をご紹介しました。

実在した3人の男女の狂おしい愛憎劇が展開されていく本作。三角関係に身を委ねる‟魔性の女”というべき泰子を、広瀬すずが豊かな表現力で魅力的に演じています

主演を務める広瀬すずが着こなす、大正から昭和初期の優雅で洗練された衣装にも注目です。

映画『ゆきてかへらぬ』は2025年2月21日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開!

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


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