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Entry 2017/06/15
Update

三度目の殺人あらすじネタバレと感想!映画ラスト結末も。原作はある?

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

是枝裕和の最新映画『三度目の殺人』が、2017年9月9日(土)に公開。

弁護士が殺人犯の心の奥底に潜む真意を、弁護する立場から見つめる姿によって、新たな“真実”を想像する法廷心理サスペンス。

キャストは是枝監督と2度目のタッグとなる福山雅治が弁護士を演じ、殺人犯は日本を代表する大御所の役所広司が演じます!

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1.映画『三度目の殺人』の作品情報

【公開】
2017年(日本映画)

【脚本・監督】
是枝裕和

【キャスト】
福山雅治、役所広司、広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、橋爪功

【作品概要】
『そして父になる』の是枝裕和監督と福山雅治が、ふたたびタッグを組んだ作品で、是枝監督自らオリジナル脚本で挑んだ法廷心理ドラマ。

第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に正式出品。

是枝組には初参加となる役所広司が殺人犯の三隅役で、福山雅治と初共演を果たしました。また、『海街diary』の広瀬すずが重要な鍵を握る被害者の娘役を演じています。

2.映画『三度目の殺人』キャスト一覧


(C)2017 フジテレビジョン アミューズ ギャガ

福山雅治(重盛役)

福山雅治(ふくやま まさはる)は、1969年2月6日長崎県長崎市生まれ。日本のシンガーソングライター、俳優、写真家などで知られています。所属事務所はアミューズ。

1990年にシングル「追憶の雨の中」で歌手デビュー。93年に大人気を博したテレビドラマ『ひとつ屋根の下』に出演して、NHK紅白歌合戦にも出場を果たしました。

1994に、シングル「IT’S ONLY LOVE」がミリオンセールスを達成。その後も「HELLO」(1995)「桜坂」(2000)などが大ヒットをさせます。

俳優としても多くの連続ドラマで主演を務め、2007年に東野圭吾原作のテレビドラマ『ガリレオ』、また、2008年に同シリーズの直木賞受賞作を映画化した『容疑者Xの献身』で演じた天才物理学者の湯川は当たり役となりました。

2010年にNHK大河ドラマ『龍馬伝』で坂本龍馬を熱演して人気を博しました。

今回の役どころは弁護士の重盛。容疑者の抱える真実にこだわるのではなく、弁護を行う自分の勝利にこだわる男を演じます。

しかし、物語は役所広司演じる容疑者三隅の揺れる心の奥底にある“真実”に惹かれ出し、弁護士にとってはこれまでにない“事実”を思い知ることが見せ場のようです。

福山雅治は弁護士重盛を演じることにあたり、次のように述べています。

初めてご一緒させていただく役所さんとの読み合わせは、とても緊張感のある時間でした。より深く、さらに研ぎ澄まされた是枝監督の演出に応えられるよう精一杯演じられたらと思っています。

すでに脚本の読み合わせ段階から、役所広司との緊迫のある演技合戦。映画での弁護士と容疑者の掛け合いが出来上がりが楽しみですね。

天才物理学者や弁護士など、年齢を重ねてもイケメンで知的に探究心を持つ役柄は、福山雅治の十八番といったところですね。

役所広司(三隅役)

所広司(やくしょこうじ)は、1956年1月1日に長崎県諫早市生まれの日本の俳優。所属事務所はワイ・ケイ事務所所属。

俳優の仲代達矢主宰の無名塾出身

役所広司は上京すると区役所に勤務をします。俳優養成所「無名塾」を主宰する仲代達矢が名付けた芸名は、“役どころが広くなるように”と前職にちなんだ芸名をつけました。

1979年にデビューをすると、やがて、1985年に伊丹十三監督のラーメン・ウエスタン映画『タンポポ』に出演。

また、1988年に西村京太郎原作の『アナザー・ウェイ D機関情報』で映画初主演を務めます。

1996年に、後にハリウッドでもリメイク版が制作された『Shall we ダンス?』がヒットすると、

1997年にも『失楽園』が大ヒット、さらには、今村昌平監督の『うなぎ』がカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。

2000年にもカンヌ映画祭の国際批評家連盟賞とエキュメニカル賞受賞作『EUREKA(ユリイカ)』をはじめ、青山真治監督や黒沢清監督たちの映画に欠かせない俳優となりました。

2006年にアカデミー作品賞ノミネート作『バベル』にも出演を果たし、国際的にも高い演技力を得る名実ともに日本を代表する俳優です。

今作では三隅という殺人容疑者の役を役所広司は演じています。

役所広司は次のようにそれについて述べています。

準備段階での是枝監督の丁寧な映画作りの姿勢に触れ、既に緊張しています。
福山さんはじめ素晴らしいキャスト皆さんとの仕事を楽しみにしています。

所広司が犯人役を演じたといえば、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『うなぎ』があり、その際も主人公の男の深い迷える姿の演技を思い出しますね。

その際は柄本明と緊張感のある演技合戦でしたが、今回は福山雅治を前にどのような殺人犯を演じるのか注目しましょう。

広瀬すず(山中咲江役)

広瀬すずは1998年6月19日生まれの静岡県静岡市出身の女優。事務所はフォスタープラス所属。

2012年に女性ファッション誌「Seventeen」の専属モデルオーディション「ミスセブンティーン2012」で読者投票によってデビュー。

姉アリスも同誌の専属モデルを務めており、同誌史上初となる姉妹モデルとして注目されました。

2013年にテレビドラマ『幽かな彼女』にて女優デビュー。同年に映画『謝罪の王様』にも出演。

2014年に映画『クローズ EXPLODE』やテレビドラマ『ビター・ブラッド』などに出演をします。

2015年に吉田秋生の大人気コミックを原作に、是枝裕和監督が映画化した『海街diary』にて、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆とともに4姉妹を演じて大きな話題になりました。

広瀬すずは今回は命を奪われた父親の娘の咲江を演じています。そのことについて彼女は次のように述べています。

是枝監督は穏やかな印象が強いのですが、台本を読ませて頂いて、こんな事を感じているんだ、考えているんだ、と自分の知らない監督の一面をみているような印象を受けました。そして、また是枝さんの作品の中で生れる時間が凄く幸せです。
どんなシーンでも咲江が見ているもの、感じている事を私と同じ感覚で感じてくださって、言葉をくれる監督はやっぱりとても心強く、凄く気持ちがいいです。が、今回はちゃんと自分で台詞を覚えて台本を手に持って現場に入るのが恥ずかしいです。。。笑
少女だからこそ見える世界を大切に、強く立っていたいです。監督、スタッフの皆さん、共演させて頂く先輩方に頼らせて頂いています。

広瀬すずは、前作の是枝監督作品の『海街diary』では、台本は前もって渡されず、現場で口述でセリフを覚えて演技するという方法で撮影は行われました。

当時の広瀬すずに寄り添う演出を是枝監督ですが、今回の広瀬すずは台本ありの演技。どのような演技プランで役柄に挑んだのか、前作とは違った姿に成長した広瀬すずに注目をして映画を楽しみたいですね。

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3.映画『三度目の殺人』の是枝裕和監督とは?


(C)2017 フジテレビジョン アミューズ ギャガ

是枝裕和(これえだひろかず)は、1962年6月6日生まれの東京都練馬区出身の映画監督

1987年に早稲田大学卒業後、独立TVプロダクション「テレビマンユニオン」でドキュメンタリー番組などの演出を手がけます。

1995年に初監督作品『幻の光』でベネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞(撮影賞)などを受賞。

1999年の『ワンダフルライフ』は日本国内だけではなく海外でも高く評価をされました。

2001年公開の『DISTANCE ディスタンス』、2004年年公開の『誰も知らない』と、2作連続でカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品を果たしました。

作家性の一つの特徴に、自身のオリジナル脚本の作品が多く、編集も自ら行うスタイルです。

また、2013年に福山雅治を主演に迎えた『そして父になる』にて、第66回カンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞しています。

是枝裕和監督は今作『三番目の殺人』について次のように述べています。

福山さんにオファーをするにあたり、近年描いてきたホームドラマに一度区切りをつけ、かねてより挑戦したいと考えていた法廷劇を選びました。
そして福山さんに対峙する殺人犯役を、監督としてはある種の覚悟が必要な俳優である役所さんにお願いしました。
弁護にあたり真実を知る必要はないと考えていた主人公が、犯人と交流していくうちに事件の真実を知りたいと思うに至る過程を描く心理劇です。
役所さんの胸を借りるかたちで、福山さんをいじめ、揺さぶっていきたいと思います。
福山さんと役所さんの本読みで感じた「この二人の組み合わせは新鮮で面白い」という、ドキドキした僕自身の感触をどう本編に刻んでいけるか、悩み苦しみ、楽しみにしながら脚本の最終仕上げを現在行っているところです。

是枝裕和監督がホームドラマに区切りをつけた心境地の作品は是枝ファンにとって、見逃す事のできない作品ですね。

また、是枝監督が語るように、福山雅治と役所広司が魅せる演技合戦は、やはり、大きな見どころのようです。

さらに是枝監督はドキュメンタリー出身ならではのリアリティにはこだわる作家でもあります。

映画制作にあたり、弁護士や検事たちへの入念な取材を行い、実際に作品の設定通りに弁護側、検事側、裁判官、犯人、証人役に分かれて模擬裁判を実施したようです。

その稽古でそれぞれから出てきたリアル感のある反応や行動、言動までも脚本に要素として取り込み、本物さながらの緊張感を演出すること行なったそうです。

やはり、是枝監督の日本映画界の枠に収まりきれないスピリッツを感じます。映画公開が楽しみですね。

また、1995年に「金のオゼッラ賞」を受賞したデビュー作『幻の光』以来22年ぶりとなる2回目のヴェネツィア国際映画祭の正式出品されます。

是枝監督はそのことについて、次のように述べています。

ヴェネツィア映画祭への参加は、デビュー作以来なので、22年ぶりになります。やはり、自分自身の映画監督としてのキャリアがスタートした場所なので、今回の参加は、より感慨深いものがあります。
自分としては、今までにないチャレンジを数多くしたので、その作品がどのようにイタリアの地で受け入れてもらえるのか、楽しみにしています。

是枝裕和監督の今作『三度目の殺人』は、どのように海外で評価され、また、映画賞の受賞があるのか、今後を見守りたいですね。

なお、第74回ヴェネツィア国際映画祭は8月30日から9月9日まで開催。(現地時間)結果は最終日に発表です!

さらに注目をしたいのは、イタリアの巨匠エイナウディ氏が『三度目の殺人』音楽を担当したところです。

実はあまり語られることはありませんが、是枝組は日本国内では随一に音響効果に気を使い、巧みな映画作りをしているスタッフを抱えています。

そこに『最強のふたり』など多くの映画音楽を手掛けている、イタリアで圧倒的な人気を誇る巨匠作曲家、ルドヴィコ・エイナウディが『三度目の殺人』の音楽を担当したらどのような変化が起きるのか。

また、ルドヴィコにとっても日本映画の音楽を手掛けるのは今作が初めてだそうです。

是枝監督の熱烈なラブコールを受けて、音楽を担当するルドヴィコ・エイナウディは次のように述べています。

このプロジェクトに関わることができて大変うれしいです。是枝監督の事を尊敬しておりますし、是枝監督の過去の映画も、とても素敵だと思っておりましたので非常に光栄です。日本映画の音楽を手掛けるのも、日本の監督さんとのコラボレーションも私の人生で今回が初めてですが、日本の事が大好きですし、本当に嬉しいです。

今回は撮影スタジオに伺って、実際に映画の映像を見ることが出来て、是枝監督の求めている音楽のバランスや求められている部分がわかったので良かったです。映画の中には雪のシーンがありましたが、雪の中では周りの音があまり聞こえなくなって、自分の中にある気持ちや感情を感じさせてくれると思いますが、そのような部分を音楽で表現できたらと思っています。

ルドヴィコは撮影を終えた映像を観ながら、是枝監督のイマジネーションを理解していきながら、どのような楽曲の調べを完成させたのか、耳にしたいですね。

特にルドヴィコが語るように、雪のシーンの状況音と音楽のバランスは難しいことが予想されます。ここに少し注目をして耳をそばだててください

きっと、彼の繊細で美しい音楽が流れるはずです。今から楽しみですね。

4.映画『三度目の殺人』のあらすじ

“闇の淵の河原で眼を光らせ、鈍器で男を殴りつける者…、その後、ガソリンを撒きマッチで遺体に火を放ちます…”

初めて拘置所に被疑者の面会に訪れた弁護士の重盛朋章、「間違いありません。殺しました」と、淡々と自分の罪を認めて話ししをする三隅高司。

解雇された山中食品加工を経営する山中社長の命を奪い、そのうえ、お金欲しさに財布を奪って火をつけた容疑で起訴されていました。

実は三隅は30年前に住んでいた北海道で起こした強盗殺人の前科があるため、彼の死刑はほぼ確実なものでした。

この事件を担当する弁護には、元々は重盛法律事務所で働く、同期の攝津大輔が当たっていたものの、会うたびに三隅の供述が変わることに手を焼いた攝津の尻を持ち、重盛が引き受ける羽目になっていました。

重盛はなんとか三隅を無期懲役に持っていこうと、新人弁護士の川島輝を助手に調査を開始。

遺体が焼かれた事件現場の河原にきた重盛と川島。そこで脚の悪い少女を見かけます。

そして遺体の焼かれた後は、まるで十字架のように焼けた痕跡が奇妙に残っていました。

やがて三隅たちは、タクシー会社のドライブレコーダーなどの映像をきっかけに、財布を盗んだのはガソリンをかけた後だと解り、重盛は弁護の戦術方針を強殺より罪の軽い、殺人と窃盗に定めること決めます。

ところが、三隅は弁護団に何も相談もなく、勝手に週刊誌の取材に応じて、「社長さんの奥さんに頼まれて保険金目当てで殺した」と独占告白のインタビューを受けていました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『三度目の殺人』ネタバレ・結末の記載がございます。『三度目の殺人』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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裁判の判決に左右する事案に、寝耳に水の重盛は三隅にそのことの真偽を確かめると、社長の妻である山中美津江からの殺人共謀があり、依頼されたメールも携帯に残っていると告げます。

さらに、事件前の三隅の銀行口座には、給料振込みとは別に50万円という金額が振り込まれていた事実が判明。

重盛は何故このことを言わなかったのか三隅を問いつめ、急遽、事件の弁護戦術を変え、美津江の主犯と切り替えます。

助手の川島は、事件の真相が怨恨ゆえか、保険金目的か、本当はどちらなのかという疑問を重盛に投げかけます。

重盛は「依頼人の利益になる方に決まっているだろ」と真実などどうでもよいとばかりに冷静に受け流します。

弁護するにあたり、依頼人への共感や理解はもちろん、真実さえも必要ない、「友達をつくるわけではない」というのが、重盛の弁護士としての揺るがない信念であり、弁護を勝利する方程式でした。

三隅と美津江の関係の裏を取ろうと、三隅の住んでいたアパートを訪ねることにした重盛。

大家から聞き込みをしていたところ、美津江ではなく、脚の不自由な女の子が来ていた証言を得ます。

なぜ、被害者の娘である咲江と三隅に繋がりがあるのか謎は深まるばかり。

さらに三隅はまるで捕まるつもりだったかのように家賃を前払いではらい、飼っていたカナリア5匹の死骸を墓に埋めるなど、身辺整理を行なっていた事実も判明します。

その後、三隅について調べていた重盛の元に、“第一の殺人”の裁判で裁判長を務めた重盛の父が当時の裁判記録を持ってやってきます。

重盛の父は三隅という男は楽しむために殺す“野獣みたいな人間”だと断言します。

また、北海道に渡って、初めの事件の聞き込みにやってきた重盛たちは、三隅を逮捕した元刑事から話を聞きます。

元刑事は三隅の印象について、感情のない“空っぽの器”のようで不気味だったと三隅を振り返りました。

重盛は被疑者である三隅という男の抱える真相が、益々わからくなてしまったなか、第一回公判が開廷されていきます。

山中社長殺人事件の犯行は美津江に依頼されたという弁護士側の主張は、当然のことながら証人の美津江に否定されてしまいます。

公判後、重盛の事務所に思わぬ客人が現れます。それは美津江の娘の咲江でした。

彼女はスマホに三隅と仲良くツーショットで写った自撮り写真を証拠として見せ、誰にも言えない秘密を父親のように慕っていた三隅と共有していたことを話します。

それは父から性的虐待を受け独り恨んでいたことや、三隅と交際関係があったことです。

咲江は身をこわばらせながら、そのことを世間に知らせても三隅の助けになるなら裁判で証言をしたいと重盛に告げます。

三隅は咲江のために殺した父である山中社長の命を奪ったのか、同じ年頃の娘を持つ父親として重盛は三隅の心情を理解しようと努めるようていきます。

ところが、拘置所に接見に訪れた重盛から、娘咲江の申し出を聞いた三隅は、「嘘ですよ、そんな話」と驚愕の告白をします。

初めは真実なんてどうでもよかったはずの重盛でしたが、様々なことで三隅と自分の心境が重なり始めたことに、重盛は自身の心境の揺らぎを隠しきれないまでになってしまいます。

重盛は初めて知りたいと願った“真実”を前に、「頼むよ、今度こそ本当のことを教えてくれよ!」と三隅に詰め寄ります。

それは“向こう側にいる被疑者”と弁護する自分、また裁く者と裁かれる者に境がない同じ人間であることを心の底から意識した瞬間でした。

重盛に詰め寄られた三隅は、泣きながら“真実”を語り始め、それまでの供述を一変させます。

検察官や弁護士の双方から罪を認めさえすれば犯行は減刑されると言われたことで、やっていない事件の犯行を供述をしたというのです。

三隅は真実だから信じて話を聞いてくれと重盛に詰め寄ります。自身はあの事件現場にも行っておらず、殺人も犯していないと告白します。

重盛は何が何だかわからくなり、何を真相として信じればよいのか狼狽しました。

さらに感情を露わにした三隅は、激しく自分を信じるのか、信じないかを重盛に問いただします。

重盛は三隅の話した証言を“真実”と信じると約束をすると、攝津や川島にこれまで積み上げてきた実証を覆し、裁判戦術も変えて法廷で無実を争うことを告げます。

そのことに強く反対した攝津、戸惑う川島。しかし、重盛の三隅を信じる気持ちは変わりませんでした。

重盛は三隅が供述を変えて法廷で無実で争うことになったことから、真実を語りたいとする咲江の三隅の減刑を願う証言である、父を恨んでいたことや三隅との関係を法廷での証言の口止めをします。

その後、開かれた法廷で咲江は真実を語ることはありませんでした。

また、三隅は法廷内で裁判官が制することを無視して、自分の“無実”を語るも誰もそのことに気を止める者などはいませんでした。

裁判官や検察側、また弁護団であれ、真偽を初めからやり直すことなど必要ないと訴訟経済を優先させていきます。

それは三隅の“死”を意味するもので、法律という同じ船に乗った誰もが心底では“真実”を求めてはいなかったのです。

「主文、被告人を死刑に処する」あっけく予定通りに判決は下りました。

判決を言い渡された三隅は退廷する際に、重盛を強い握手を交わして去っていきます。

その一方で傍聴席に最後まで残っていた咲江には一瞥もせずにその前を過ぎていきます。

その後、法廷から出た後の咲江に「すまない」声をかけた重盛。「あの人の……行った通りでした」とだけ咲江は呟きます。

桜もほころび季節はすっかり春になった頃…

ふたたび、三隅に接見をしにやってきた重盛は、三隅に咲江に辛い証言台に立たせないために、突然、殺人事件を否認したのではないかと尋ねます。

それを聞いた三隅は重盛との会話を楽しむように穏やかで、「いい話ですね」としみじみ呟きます。

その後、三隅は「ダメですよ、重盛さん、僕みたいな人殺しに、そんな期待しても」。 

重盛は咲江、元裁判官である父親、元刑事など様々な話が心中に蘇ったのか真相は藪の中…、ただ、元刑事の語った、“空っぽの器”という言葉を思い出しました。

重盛は三隅に「あなたはただの器?」と吐露します。何かを得たように穏やかな三隅… 重盛は首を振った…。 

しかし、重盛は弁護士としてではなく、人生の帰路に“真実の三度目の殺人”の十字架を背をわされたのです。

5.映画『三度目の殺人』の感想と評価


(C)2017 フジテレビジョン アミューズ ギャガ

今作『三度目の殺人』は、これまでの是枝裕和監督をも凌ぐの最高傑作と呼べる作品ではないでしょうか。

あなたは結末を見てどのような作品に感じられましたか?

さて、役所広司が演じた三隅を食品加工会社の山中社長の命を奪った真犯人なのでしょうか。

上記にある写真は『三度目の殺人』のイメージビジュアルです。

これは原作本の表紙にもなっていて映画全体の物語を象徴したデザインであり、テーマを読み抜くために関わりのあると言えます。

あなたが真犯人は誰?真相は何なの?と感じたのでしたら、このビジュアル写真をこそが答えだと思って良いでしょう。

役所広司、広瀬すず、福山雅治の頬には殺人を犯したメタファー(暗喩)である返り血を浴びています。

今作『三度目の殺人』では、タイトルが示すように殺人は3度おこなわれます。

1度目の殺人は、役所広司演じる三隅が北海道で犯した殺人事件。

2度目の殺人は、広瀬すず演じる咲江が父親の命を奪った殺人事件。

3度目の殺人は、“真実”に向き合う必要などないという無関心が招いた殺人公判。

といえるでしょう。

作品冒頭シーンの夜の河原で眼を光らせた三隅、事件の真相が見え始めた時にインサートされた夜の河原シーン咲江、そして、結末で裁判の判決が下された後の重盛と、3人がそれぞれ頬を拭うショットが映像にも登場します。

もちろん、福山雅治演じた重盛の頬には返り血はありませんが、あのショットは観客のあなたの心象にだけ見えるように象徴させてものでした。

他にも、2度目の殺人の罪を背負うことを決めた三隅が身辺整理したなかで、6匹いたカナリアのなかで1匹のみ逃したことも、メタファーとさせたのは罪を背負わせず逃がした咲江のことを指しています。

この作品で是枝監督は、重ね合わせていくことで三隅と重盛の共感関係を親密にさせていきます。

重盛の娘と三隅の娘、それと咲江。また、接見の場でのガラス越しで手を重ね合わせる行動、また接見したガラスに映る2人の姿(擬似オーバー・ラップのような表現)など、これまでにはない多彩な演出を随所に見せてくれます。

この映画を観ていて思い出したのは、芥川龍之介の小説『羅生門』であり、黒澤明監督の1950年公開の映画『羅生門』。(ちなみに羅生門の原作と映画は内容が違っています)

映画の構造で“真実”が何であるか分からない点は、映画『羅生門』そのものでした。

また、黒澤明監督はこの映画『羅生門』でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を獲得しています。

さて、是枝監督は第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で受賞なるのでしょうか?実に楽しみですね!

映画のラスト・ショットで、福山雅治の演じた重盛が十字架を比喩した交差点に立つシーンは、もう正に芥川龍之介が推敲を重ねて選び抜いた『羅生門』最後の一文、「下人の行方はだれも知らない」。

是枝裕和監督、円熟期に黒澤明監督と肩を並べた1本!それが『三度目の殺人』と言えるでしょう。

6.小説『三度目の殺人』原作本発売される!


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宝島社文庫『三度目の殺人』は、映画の原案・脚本を担当した是枝裕和と、ノベライズ作家の佐野晶の共著で発売するそうです。

是枝監督作品のノベライズを宝島社から発売するのは、『そして父になる』に続き2作目。

映画には映し出されない人物背景やその背後にある感情が細かく描かれており、映画と小説の両方を観て読むことで物語がより深く多面的に理解できるでしょう。

小説版によって“真実”について是枝裕和監督のメッセージが言語化され、より浮き彫りにされことは間違いないでしょう。

また、1度映画を観ただけでは理解しづらい難解な法廷論争やキーワードもわかりやすくなるところも、おすすめなポイントです!

宝島社文庫『三度目の殺人』


宝島社文庫『三度目の殺人』

【発売日】
2017年9月6日

【定価】
650円+税

【発売元】
宝島社

まとめ

この作品は弁護士重盛役に福山雅治、対峙する容疑者に役所広司、物語の鍵を握る被害者一家の斎藤由貴と広瀬すず。

また、重盛の事務所に所属する若手弁護士に満島真之介、そのほか市川実日子や橋爪功など、日本映画界を代表する名優が是枝組に参加しています。

弁護士重盛の視点から絡んだ人間模様の糸口を一つ一つ解いていった時、それまで見えていた事実が次々と変容していくこととは何か?

是枝裕和の最新映画『三度目の殺人』は、2017年9月9日(土)より全国公開です。

ぜひ、お見逃しなく!

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