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Entry 2020/09/15
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服部樹咲(新人女優)ってどんな少女?『ミッドナイトスワン』演技派の草彅剛を引っ張った“自然体の演技”|映画という星空を知るひとよ23

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第23回

映画『ミッドナイトスワン』はトランスジェンダー・凪沙が親から愛を注がれずにいた少女・一果を預かることになり、次第に2人の間に一つの絆が生まれる物語。

主演に草彅剛を迎え、『下衆の愛』の内田英治監督が手掛けた作品です。

共演者に、真飛聖、水川あさみや田口トモロヲなど、個性豊かな実力派俳優陣も揃ったなか、臆することもなく踊りと演技を披露した新人・服部樹咲って、どんな女優なのでしょう? 今回は、ヒロイン一果役の服部樹咲を深堀り解説します。

映画『ミッドナイトスワン』は、2020年9月25日(金)よりロードショーです。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『ミッドナイトスワン』のあらすじ

(C)2020 Midnight Swan Film Partner

故郷・東広島を離れ、トランスジェンダーの悩みを抱えながらひたむきに生きる凪沙(草彅剛)。新宿のニューハーフショーのステージに立ち、酔客を相手に踊って接待をする毎日です。

ある日、田舎の母親から電話があり、育児放棄にあっていた親戚の中学3年生の少女・一果(服部樹咲)を短期間預かることになりました。

待ち合わせのJR新宿駅前に座り込んでいた一果に近づく背の高いトレンチコートの女・凪沙。長い髪でサングラスをかけ無遠慮に一果の顔を見て「似てるわね、お母さんに」とつぶやく凪沙と田舎で手渡された写真を、一果はじっと見比べます。

呆然とする一果に背を向けてさっさと速足で歩きだす凪沙。一果は急いで後を追います。

「何してるの。来るの? 来ないの?」。何度目かの声かけの後、凪沙は一果が手にしている写真に気が付き、取り上げると、一瞥して破ってしまいました。

「田舎に余計なこと言ったら、あんた殺すから」。写真には短髪のビジネススーツ姿の凪沙が写っていたのです。

凪沙のアパートについてからも、「どこでも空いているところで寝てね」「部屋は常にきれいにしておくこと」「風呂はあたしの後に入りなさい」などなど、凪沙は一果に同居のルールを話します。

けれども、一果は無言のまま。ただ黙って凪沙を見るだけでした。このようにして、最低限度の決まりを持って凪沙と一果の共同生活は始まりますが……。

服部樹咲のバレエ歴を紐解く


(C)2020 Midnight Swan Film Partner

『ミッドナイトスワン』において、トランスジェンダー・凪沙に「あなたの母になりたい」と言わせる少女・一果。

凪沙の生きざまを大きく変えることになる存在ですが、その一果を演じたのが、撮影当時中学1年生で、しかも俳優としては新人の服部樹咲(はっとりみさき)です。

服部樹咲は愛知県出身。バレエを始めたのは、4歳からと言います。その後、「第76回NAMUEバレエコンクール名古屋」で第1位となり、平成29年と30年の「ユースアメリカグランプリ」日本ファイナルに進出しています。

また「NBAジュニアバレエコンクール東京2018」では第1位になるなど、これまでに輝かしい成績を収めています。

これだけのバレエの実力を持ち、さらに演技にも挑戦したかったという服部樹咲は、一果役のオーディションがあることを知って受けます。

そして、演技の方は未経験ながら、数百人の中から見事にヒロインの座を射止めました。

オーディションを見た内田監督が、後に「彼女は最初の方の組にいたのですが、そのバレエを見たとたんにきっと彼女になるだろうと思った」と言うほど、彼女のバレエは美しく、人の心に訴えかけるものがあったのです。

バレエを始めたきっかけも、幼稚園の頃に盆踊りを踊っていたら、それを見た樹咲の母が、指先や手の使い方が綺麗なので踊り系のものを習ったらいいんじゃないかと勧めてくれたからだそう。

草彅剛演じる凪沙に「あの子にバレエを続けさせてやりたい」と言わせるバレエは、実生活の“我が子の器を見極めた母の愛”から育ったものかもしれません。

自然体の演技をする服部樹咲

(C)2020 Midnight Swan Film Partner

実の親から愛されない一果は、温かな愛を知らずに育った孤独な少女でした。凪沙の元へ来ても、なかなか心を開きません。

凪沙の対応にも無言で答える一果は、自分の気持ちをどう表現して伝えたらいいのか戸惑っているようにも見えます。

一例を挙げるなら、水川あさみ演じる実の母に一果が涙を流すシーン。感情をあまり出さない一果ですが、実の母を慕う子どもの本心が現れた瞬間を、ストレートに演じています。

新人にとっては難しい演技かと思えますが、彼女は演技初心者とは考えられない度胸の良さで、ごく自然に一果になりきっていました。

時にはぶっきらぼうに、時にはちょっと甘えてみたりと、中学生の少女らしい素顔がのぞきます。

気取らず臆せず、ありのままの中学生の姿がそこにあり、だからこそ、『ミッドナイトスワン』のヒロイン役に抜擢されたのでしょう。

その演技と存在感は圧倒的!

草彅剛がインタビューで、“演技は経験じゃなく、そのままそこに佇んでいる姿が1番大事なこと”だと服部樹咲から教えられたと語るほどのものでした。

まとめ

(C)2020 Midnight Swan Film Partner

トランスジェンダーと虐待を受けた少女の物語『ミッドナイトスワン』。本作の主役の草彅剛の疑似娘役に抜擢された新人・服部樹咲を深堀りしました。

圧倒的な存在感を放つ樹咲は、一果としての美しいバレエシーンも披露。実の母が見抜いたダンサーとしての素質である指先や手の使い方の美しさで存分に魅了してくれました。

長い手足を思い切り伸ばして踊れば、きゃしゃな身体が大きく見えます。

伸び伸びと軽やかに舞い踊り、ストーリーを演じる彼女のバレエを観た人は、凪沙ならずとも一果のファンになることでしょう。

服部樹咲……。今後が期待される“踊って、演じられる”新人女優の誕生と言えます。

映画『ミッドナイトスワン』は、2020年9月25日(金)よりロードショーです。

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

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