Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2024/05/24
Update

『WALK UP』あらすじ感想と評価解説。ホン・サンス監督×クォン・ヘヒョ主演で紡ぐ《4階建てアパートの4章の物語》|映画という星空を知るひとよ207

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第207回

映画『WALK UP』は、4階建てのアパートを舞台に紡がれる、芸術家たちの4章の物語。ベルリン国際映画祭で数多の銀熊賞受賞という快挙を果たした、韓国を代表する映画監督ホン・サンスが手がけました。

映画『WALK UP』は、2024年6月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、Strangerほかで全国順次公開

4階建てアパートにおける芸術家たちの人間模様がモノクロ映像で綴られ、名匠ホン・サンス監督によるリアルな人間ドラマが展開します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『WALK UP』の作品情報


(C)2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2024年(韓国映画)

【原題】
Walk Up

【監督・製作・脚本・撮影・編集・音楽】
ホン・サンス

【キャスト】
クォン・ヘヒョ、イ・ヘヨン、ソン・ソンミ、チョ・ユニ、パク・ミソ、シン・ソクホ

【作品概要】
『WALK UP』は韓国のホン・サンス監督が、都会のアパートを舞台に芸術家たちが織りなす人間模様をモノクロの映像で綴った人間ドラマです。

4階建てアパートの階段をひとつずつ上がって部屋の扉を開けると、各部屋ごとに4つの章の物語が展開。ビョンスと彼を取り巻く4人の女性の人間模様が予測不能な方向へ進みます。

それから』(2018)『逃げた女』(2021)のクォン・ヘヒョが主役の映画監督ビョンスを演じ、『あなたの顔の前に』(2021)のイ・ヘヨン、ホン・サンス作品の常連俳優ソン・ソンミ、チョ・ユニらが共演。

映画『WALK UP』のあらすじ


(C)2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED.

映画監督のビョンスは、インテリア関係の仕事を志望する娘のジョンスと一緒に、インテリアデザイナーとして活躍する旧友ヘオクの所有するアパートを訪れました。

そのアパートは1階がレストラン、2階が料理教室、3階が賃貸住宅、4階が芸術家向けのアトリエ、地下がヘオクの作業場になっていました。

3人は和やかに語り合い、ワインを酌み交わしますが、仕事の連絡が入りビョンスはその場を離れます。

ビョンスが戻ってくると、そこには娘のジョンスの姿はなく……。

映画『WALK UP』の感想と評価


(C)2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED.

『WALK UP』の舞台は4階建てのアパートです。映画監督のビョンスが娘と旧友の所有するアパートを訪ねるところから物語は始まります。

アパートは、1階がレストラン、2階が料理教室、3階が賃貸住宅、4階が芸術家向けのアトリエ、地下がヘオクの作業場となっており、各階に女性たちがいます。

インテリア関係の仕事を志望する娘のジョンス(パク・ミソ)と、アパートのオーナーのヘオク(イ・ヘヨン)。ビョンスの熱烈なファンだというレストランの店主兼シェフのソニ(ソン・ソンミ)に、世話好きな不動産業者の女ジヨン(チョ・ユニ)。

4人の女性がそれぞれの持ち場ともいえる部屋で、ビョンスと織りなす人間ドラマが展開します。

ビョンスを演じるのは、ホン・サンス作品では『それから』(2018)以来の単独主演を務めるクォン・ヘヒョ。

ソン・ソンミがレストランシェフのソニ、不動産業者のジヨンを演じるのはチョ・ユニと、ホン・サンス作品の常連俳優が脇を固め、ラストまで続く息の合った演技が見ものです。

また作中にはビョンスがギターを弾くシーンがあり、クォン・ヘヒョの生演奏が聴けるのも魅力です。


(C)2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED.

まとめ


(C)2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED.

韓国のホン・サンス監督が手がけた映画『WALK UP』をご紹介しました。

それから』(2018)『クレアのカメラ』(2018)『逃げた女』(2021)『小説家の映画』(2023)など、多くの人気作を作り続けるホン・サンス。

長編第28作目となる本作は、エレベーターのない4階建てアパートを舞台にした4章の物語。全て端正なモノクロ映像で紡がれ、4人の女性と主人公が奏でる人間ドラマとなっています。

ホン・サンス監督がこだわるモノクロ映像に漂うのは、ノスタルジックでどこか懐かしい雰囲気です。ホン・サンスの世界観に満ちた映像がたっぷりと楽しめる作品でした。

映画『WALK UP』は、2024年6月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、Strangerほかで全国順次公開

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


関連記事

連載コラム

『三日月とネコ』あらすじ感想と評価解説。安達祐実×上村奈帆監督がネコとのほのぼの共生を健やかに描く|映画という星空を知るひとよ199

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第199回 映画『三日月とネコ』は、「第1 回anan 猫マンガ大賞」の大賞受賞作、ウオズミアミ『三日月とネコ』の実写映画化したものです。 熊本地震をきっかけに …

連載コラム

映画『ホテル・ムンバイ』キャスト【アーミー・ハマーのインタビュー:恐怖のホテルとは】FILMINK-vol.9

FILMINK-vol.9「Armie Hammer: Hotel of Horror」 オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映 …

連載コラム

『ブラックミラー シーズン2 シロクマ』考察ネタバレと感想解説。どんでん返しSFオムニバスドラマ|SF恐怖映画という名の観覧車111

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile111 先週に引き続き今回のコラムでもイギリスで高い評価と人気を誇るSFオムニバスドラマ「ブラックミラー」シリーズをご紹介。 今回のエピソードは …

連載コラム

映画『隔たる世界の2人』ネタバレ感想解説とあらすじ結末の考察。アカデミー賞最優秀短編賞は実話事件をタイムループで描く|Netflix映画おすすめ34

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第34回 2020年にミネアポリス近郊で発生した白人警官デレク・ショービンによるジョージ・フロイドさん殺人事件に端を発するBLM運動の影響下 …

連載コラム

細野辰興の連載小説 戯作評伝【スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~】15

細野辰興の連載小説 戯作評伝【スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~】(2021年6月下旬掲載) 【細野辰興の連載小説】『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』の一覧はこちら 最終章『私 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学