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Entry 2024/03/29
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『輝け星くず』あらすじ感想と評価解説。心に傷を持つ人々の”人生再起の旅”を西尾孔志監督が描く|映画という星空を知るひとよ198

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第198回

大阪在住の西尾孔志監督が手がけ、人の心の奥底にあるきらりと光るモノを描き出した映画『輝け星くず』。

2024年4月13日(土)より神戸にある元町映画館にて、映画『輝け星くず』先行公開されます


(C)ノブ・ピクチャーズ

過去の事故や家族にとらわれてありのままの自分で生きることが難しい現代社会で、薬物に手を出しつつも父の面倒を見る女性、過去のトラウマを抱え自称パニック症候群という病気を公言する女性の父親、そんな親子に振り回される女性の恋人と、凸凹した関係の3人の“魂の脱出劇”が始まります。

クスッと笑えてじんわり温かくなり、小さな星くずがきらりと輝くような映画『輝け星くず』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『輝け星くず』の作品情報

【日本公開】
2024年(日本映画)

【監督】
西尾孔志

【原作脚本】
小谷忠典

【脚本】
いとう菜のは、西尾孔志

【キャスト】
山﨑果倫、森優作、岩谷健司、滝裕二郎、中山求一郎、湯浅崇、松尾百華、三原悠里、芳野桃花、木下菜穂子、池畑暢平、保志まゆき、小泉研心、国海伸彦、佐保歩実、国海伸彦、金延宏明、小川夏果、宮崎柚樹、円籐さや、奥村静耶、川瀬乃絵、春田純一、片岡礼子

【作品概要】
NOBU PICTURESの金延宏明(「シャニダールの花」)が製作を務め、『ソウル・フラワー・トレイン』(2013)『函館珈琲』(2016)などの大阪在住の映画監督西尾孔志が取りまとめました。

主演を務める山﨑果倫、その恋人役には森優作、過去のトラウマを抱えるも何処か憎めない父を岩谷健司が演じています。

映画『輝け星くず』のあらすじ


(C)ノブ・ピクチャーズ

お人好しの青年光太郎は、恋人のかや乃に振り回されつつも幸せな日々を過ごしていました。

ですが、ある日、かや乃と一緒にホテルにいた所、突然踏み込んできた警察によってかや乃が薬物所持の現行犯で逮捕されます。

光太郎はそんな状況が飲み込めないでいると、かや乃の父・慎介から呼び出されました。

慎介に会うと、「かや乃の保釈のために勾留地である四国まで一緒に行ってくれないか?」と言われました。

パニック障害なために一人で電車に乗って行くには不安があると言う慎介。仕方なく、同行を承諾した光太郎ですが……。

わがまま放題の慎介と光太郎の海を越えての珍道中が始まります。

映画『輝け星くず』の感想と評価


(C)ノブ・ピクチャーズ

本作『輝け星くず』の主要人物は、薬物所持で警察に逮捕されたかや乃とその恋人の光太郎、そして過去のトラウマを抱えて生きるかや乃の父・慎介の3人です。

突拍子もない行動をとるけれどもまっすぐな心を持つかや乃と、そんなかや乃が大好きなのに、いつもプロポーズのタイミングを逃してしまう光太郎。2人がラブホテルにいたところに警察が踏み込み、かや乃は薬物所持の現行犯で逮捕されてしまいます。

かや乃との仲はこの逮捕劇がきっかけで父・慎介の知るところとなり、光太郎はかや乃の保釈を慎介と一緒に迎えに行くことになりました。大阪から四国へ。2人の珍道中はこうして始まります。

煌めく海の見える都市・明石をはじめ、淡路島や大阪の美しいロケーションも見どころのひとつとなっていますが、その景色の中で徐々に慎介と光太郎に芽生える友情のような絆も見どころと言えるでしょう。

慎介を演じるのは、ベテランの岩谷健司。円熟の演技力で、捉えようのないキャラの慎介をどこか憎めないオジサンにしています。

お人好し青年の光太郎は、若手実力派の呼び声高い森優作が好演し、不器用で破滅的ですが、誰よりまっすぐに人を想い続ける主人公のかや乃を演じるのは山﨑果倫。彼女の透明感ある演技にも注目です。

キャスト陣の細やかな演技と熱意によって、本作は過去のトラウマを持つ人々の心のケアをするような、じんわりと温まる作品となっています。

まとめ


(C)ノブ・ピクチャーズ

山﨑果倫が初主演を務める作品として話題の『輝け星くず』は、人それぞれに違う傷を抱えて生きている現代で、過去の傷に囚われながら、何とか前に進もうとする人たちの物語。

登場人物たちは、みなどこかに心の傷と優しさを持っています。彼女たちが守り続けた小さな温もりに、ロケーションの最高の景色が色を添えます

2024年4月13日(土)より神戸にある元町映画館にて、映画『輝け星くず』先行公開されます

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


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