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Entry 2022/10/14
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【あらすじ感想】鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽|太宰小説の映画化にキャスト宮本茉由と安藤政信の演技力が光るよ!|映画という星空を知るひとよ121

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第121回

1947年に出版されたちまち大ベストセラーとなり、“斜陽族”という流行語も生んだ太宰治の『斜陽』。

戦後の日本を舞台に没落貴族の娘かず子と彼女が想いを寄せる売れっ子作家との“恋と革命の物語”です。

この小説が執筆75周年を記念して、タイトルを『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』として映画化されます。

ヒロインのかず子を宮本茉由、彼女が想いを寄せる売れ子作家を安藤政信が演じています。

監督は脚本も担当した『うさぎ追いし山極勝三郎物語』(2016)の近藤明男です。

太宰治「斜陽」執筆75周年記念作品『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』は、2022年10月28日(金) よりTOHOシネマズ甲府、シアターセントラルBe館にて先行公開、2022年11月4日(金)よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国公開

映画公開に先駆けて、映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』の作品情報


(C)2022 『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』製作委員会(オフィス近藤 アップサイド 実正寺 スペースT ぱあとなあ ハーモニー ライジングシネマ 山梨日日新聞社 山梨放送)

【公開】
2022年(日本映画)

【原作】
太宰治:『斜陽』

【脚本】
白坂依志夫、増村保造

【脚本・監督】
近藤明男

【音楽】
海沼正利

【主題歌】
小椋佳『ラピスラズリの涙』(作詞・作曲・歌)

【出演】
宮本茉由、安藤政信、水野真紀、奥野壮、田中健、細川直美、白須慶子、三上寛、柏原収史、萬田久子、柄本明、尾崎右宗、菅田俊、岡部尚、中谷太郎、緒方美穂、三木秀甫、岡元あつこ、栗原沙也加、今泉朋子、白石恭子、薗田正美、光藤えり、山村友乃、 野崎小三郎、ジョナゴールド、 春風亭昇太

【作品概要】
原作小説太宰治の『斜陽』を、『うさぎ追いし山極勝三郎物語』(2016)の近藤明男監督が映画化しました。

主人公のかず子役には、本作が映画デビューとなるモデル出身の宮本茉由。

母・都貴子を水野真紀、弟・直治を奥野壮、太宰が自らを投影した作家・上原を安藤政信が演じています。柄本明、萬田久子ら実力派も共演します。

映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』のあらすじ


(C)2022 『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』製作委員会(オフィス近藤 アップサイド 実正寺 スペースT ぱあとなあ ハーモニー ライジングシネマ 山梨日日新聞社 山梨放送)

昭和20年。父を亡くした没落貴族のかず子と母・都貴子は、生活のために本郷西方町の家を売り、西伊豆へ引っ越すことになりました。

そんな中、戦地で行方不明になっていた弟・直治が帰還するとの知らせが届きます。

弟が帰還すると知ったとたんに、歳の離れた資産家との結婚を勧める母に怒りを覚えたかず子。

泣きながら、6年前、まだ学生だった直治が師匠と仰いだ中年作家・上原との出会いを思い起こします。

上原はイケメンで女性に人気がありましたが、酒に目がない不良作家でした。学生の直治がクスリを服用していることを知っていたかず子は、全て上原が関与していると思います。

かず子は、上原に直治のクスリを止めさせて欲しいと頼むつもりでしたが、そのまま上原とキスをしてしまいます。

その秘め事を胸にしまい込んでこの6年間を過ごしてきたかず子でした。

やがて、直治が伊豆へ帰ってきました。

母は体調を崩して寝込みますが、直治は西伊豆の生活に慣れず、上原を頼って上京。

直治を迎えに行ったかず子は、再び上原と再会することになり……。

映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』の感想と評価


(C)2022 『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』製作委員会(オフィス近藤 アップサイド 実正寺 スペースT ぱあとなあ ハーモニー ライジングシネマ 山梨日日新聞社 山梨放送)
戦前に栄華を極めた、貴族とよばれる上流階級の人々は、戦争が始まりそれが激しくなるにつれ、日々の生活も苦しくなりました。

本作の主人公、かず子一家も例外ではありません。

当主である父は亡くなり、息子は戦地へ行き、後に残されたお姫様育ちの母とかず子は、豪邸を売り払い、伊豆の田舎町に引っ越してひっそりとした生活を送ります。

生きるだけが精一杯の苦しい毎日の中で、貴婦人である母は相変わらず優雅な生活の名残りを噛みしめています。

そんな母の世話をし、戦地から帰還する弟・直治を迎えるかず子。

直治は急変した日本社会になじめず、作家の道を志そうとしますが、元貴族であることが何かと彼の行く手を阻みます。

2人の様子に心を痛めるかず子も、人知れずに恋の秘め事を持っていました。

その相手は、直治の師匠の作家・上原。年上で妻子持ちの男性です。

太宰をモデルにしたような作家・上原を演じるのは安藤政信。酒にも女にもだらしない自分勝手な男を、かず子が好きになった理由がわかりません。

けれども、なぜか上原は女性にも男性にもモテます。映画でも不良作家とでも言うべき上原を、人を惹きつける謎めいた魅力ある人物に演じきった安藤政信は流石です。

落ちぶれた貴族には社会的にも経済的にも、何の特典も威力もありません。ですが、かず子には自分自身に対する‟誇り”という強みがありました。

背筋をピンと伸ばして、誰にも対しても物おじしない堂々とした姿は、世間知らずのお嬢様とも思えない凛とした美しさを伴っています

こんなかず子を演じるのは、映画初主演のモデル出身の宮本茉由。

母役のベテランの水野真紀も貴族の風情を充分出していますが、宮本茉由が演じるかず子は、それに一歩も引けをとりません。

かず子の持つ美しさと強さ……。恋をしてますます強く輝く独特のオーラが観客を魅了します。

まとめ


(C)2022 『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』製作委員会(オフィス近藤 アップサイド 実正寺 スペースT ぱあとなあ ハーモニー ライジングシネマ 山梨日日新聞社 山梨放送)

没落貴族の娘の恋を描いた太宰治の小説が、誇りを胸に‟真っ直ぐに生きる女”が希望を見出す物語として映画化

戦後の混迷期の日本を背景に描かれた『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』をご紹介しました。

本作は、太宰治に縁がある、青森県、山梨県、五所川原市、つがる市、弘前市、甲府市、山梨市、都留市、三鷹市が、撮影支援協力をしました。

作中の作家・上原は太宰自身を投影したとも言われ、太宰のこの作品への意気込みが感じられます。

原作のモチーフはそのまま映画に反映。没落しても誇りを胸に生きようとする主人公・かず子の、大地に根をはるような強さと凛とした美しさをぜひご覧ください

太宰治「斜陽」執筆75周年記念作品『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』は、2022年10月28日(金) よりTOHOシネマズ甲府、シアターセントラルBe館にて先行公開、2022年11月4日(金)よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国公開

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。

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