Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2018/12/03
Update

バットマンvsスーパーマン (2016)|ネタバレ解説と評価。ワンダーウーマンの絶対的な象徴を超えた魅力|最強アメコミ番付評16

  • Writer :
  • 野洲川亮

こんにちは、野洲川亮です。

2016年に公開された『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』は、DCコミックスのアメリカン・コミックの『バットマン』と『スーパーマン』の実写化された映画。

今回はDCコミック二大巨頭の対決を描き、「DCエクステンデッド・ユニバース」シリーズとしては、第2作目となる作品で、新たなヒロインも生みだした『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』を解説していきます。

【連載コラム】『最強アメコミ番付評』記事一覧はこちら

『バットマン vs スーパーマン』のあらすじ

(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC AND RATPAC ENTERTAINMENT, LLC

地球育ちのクリプトン星人、クラーク・ケントことスーパーマン(ヘンリー・カヴィル)は、『マン・オブ・スティール』(2013)で、地球をクリプトン星に変えようと企んだゾッド将軍との戦いに勝利し、地球の危機を救いました。

しかし、メトロポリスを舞台にした二人の人智を超えた戦いで街は壊滅状態となり、ブルース・ウェイン(ベン・アフレック)は自社ビルが倒壊し、多くの部下が命が落とす様を目にします。

親を失った少女を抱きかかえながら、ブルース・ウェインは英雄スーパーマンの戦いに憎悪の目を向けます。

それから3年の月日が経ち、クラーク・ケントは恋人ロイス(エイミー・アダムス)と共に出版社デイリー・プラネットに勤めながら、スーパーマンとして地球全土を股にかけ活躍していました。

そんなスーパーマンを危険視するブルース・ウェインも、バットマンとして自警活動を行い、ゴッサムシティの犯罪者たちと20年以上に渡り戦ってきました。

とあるきっかけで、バットマンはクリプトン星人を弱体化させる鉱石クリプトナイトの存在を知り、これを強奪します。

一方、上院議員によるスーパーマンの責任の是非を問う公聴会が行われますが、突然会場は爆破され、スーパーマン以外の人々が死亡してしまいます。

これらの動きを裏で仕組んでいたのが、レックス・コーポ社長であるレックス・ルーサー(ジェシー・アイゼンバーグ)でした。

レックスの陰謀により、お互いを危険視することになったバットマンとスーパーマンは対決することになり、その裏ではレックスが自分と亡きゾッド将軍のDNAを掛け合わせた怪物ドゥームズデイを生みだします。

戦いの最中に誤解が解け、共闘することになったバットマンとスーパーマン、さらにアマゾネス族の王女、ワンダーウーマン(ガル・ガドット)を加えた3人で、ドゥームズデイとの戦いに挑みます。

ワンダ―ウーマン、バットマンの奮闘で出来た隙を突き、ドゥームズデイを倒したスーパーマンでしたが、相打ちで死亡してしまいます。

レックスは逮捕されますが、いずれ地球に災いが起こることを警告します。

スーパーマン亡き後の来たるべき事態を見据えたバットマンは、ワンダ―ウーマンと共に“メタヒューマン”と呼ばれる超人たちを集め、ヒーローチームを結成することを誓います。

一般人目線で描かれたスーパーヒーローの戦い

Courtesy of Warner Bros. Pictures/ TM & (C) DC Comics(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC AND RATPAC ENTERTAINMENT, LLC

本作の象徴的なシーンとして、『マン・オブ・スティール』でのクライマックスの戦いを、ブルース・ウェイン目線で見るオープニングが挙げられます。

『マン・オブ・スティール』劇中では、宇宙人同士のスーパーバトルをドラゴンボール実写版とも言えるような、派手で外連味あふれるシーンとして描かれていましたが、本作ではブルース・ウェインという一般人(超人的能力は持たないバットマン)目線で、スーパーマンの絶大な力の脅威と恐怖の面がより強調して描かれました。

それはさながら9.11テロを彷彿とするような、陰惨で無慈悲なものであり、子供の頃に見ていた“ウルトラマンが戦うことで街がメチャクチャに破壊される”ことのような、正義の矛盾や陰の部分を映し出すものでもありました。

作品序盤のビジュアルインパクトを観客に与え、バットマンの劇中における行動の動機そのものとなる正に名シーンと言えるでしょう。

「大いなる力は大いなる責任を伴う」という、作品は違えど「スパイダーマン」シリーズおなじみのこの名セリフは、強大な力を有するスーパーヒーローの主人公が多いアメコミ映画においては、永遠の共通テーマとして本作にも通底しています。

二大巨頭を飲み込んだ魅力のワンダ―ウーマン

Clay Enos/ TM & (C) DC Comics(C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC AND RATPAC ENTERTAINMENT, LLC

しかし、本作で観客に最も大きな印象を残すのは、上述したストーリー上の真面目なテーマをも超えてしまうワンダーウーマンというキャラクターでしょう。

本作でバットマンと共にシリーズ初登場となったワンダーウーマンですが、やはり演じるガル・ガドットの逞しさと美しさを兼ね備えた表情、スタイルに、観客は目を奪われていきます。

生身のアクションもほぼ本人がこなしていますが、出身国イスラエルの国防軍で戦闘トレーナーとして兵役を務めていたという“本物感”も、ワンダーウーマンというキャラクターの説得力を深めています。

そして、クライマックスでテーマ曲「Wonder Woman’s Wrath」が鳴り響き、ドゥームズデイとの戦闘が始まるシーンでは、バットマン、スーパーマンという古典的な二大スターから、強く美しい女性像への支持が一般的となった時代の変化をも象徴していると言えます。

本作の後、単独主演作『ワンダーウーマン』(2017)、DC版アベンジャーズの『ジャスティスリーグ』(2017)でも主役の存在感を示していくわけで、イチ映画キャラクターを超えた時代や女性を代表するアイコンへと成長していく予感まで感じさせました。

今後のシリーズが成功していくかは、バットマン、スーパーマンという、アメコミを象徴してきたキャラクターを超えた、彼女の存在にかかっていると言っても過言ではないでしょう。

『ワンダーウーマン』(2017)

『バットマン vs スーパーマン』を観た人へのオススメ作品

MCUシリーズに対抗する形で始まったDCシリーズですが、『マン・オブ・スティール』、『ワンダーウーマン』、『ジャスティスリーグ』と、本作の前後を描いた作品は是非ご覧ください。

直接的な繋がりは強くありませんが世界観を同一にしている、DCのヴィランたち大集合映画『スーサイド・スクワッド』もまた違った魅力を放つ作品です。

バットマン役ベン・アフレックは、マーベルコミックのヒーロー『デアデビル』(2003)でもタイトルロールを演じています。

圧倒的な肉体的存在感を放つスーパーマン役ヘンリー・カヴィルは、大人気シリーズ第6作『ミッション:インポッシブル フォールアウト』で、トム・クルーズと共に命がけスタントアクションをこなしています。

最後にワンダーウーマンを演じたガル・ガドットは、「ワイルド・スピード」シリーズで映画デビュー、24歳のその頃から変わらない美貌でブレイクを果たし、スターの道を駆け上っていくことになります。

次回の「最強アメコミ番付評」は…

いかがでしたか。

次回の第17回戦では、ヴェノムの作者が生んだダークヒーロー『スポーン』を考察していきます。

お楽しみに!

【連載コラム】『最強アメコミ番付評』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

おすすめSF映画『TOKYO TELEPATH 2020』感想評価と考察解説。東京オリンピックを控えた”今”を映し出す|SF恐怖映画という名の観覧車120

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile120 2018年10月6日に世界最大の魚市場であった築地市場が幕を降ろし、市場は豊洲へと移転。 古い町並みを長年残し続ける地方とは異なり、世界 …

連載コラム

韓国映画Be With You~いま、会いにゆきます|感想レビュー。梅雨の季節に舞い降りた優しい奇跡の愛の物語|コリアンムービーおすすめ指南9

市川拓司のベストセラー小説を新たに韓国で映画化 映画『Be With You~いま、会いにゆきます』は、『ただ君だけ』、『王の運命(さだめ)歴史を変えた八日間』のソ・ジソブと『私の頭の中の消しゴム』、 …

連載コラム

映画『青い、森』あらすじ感想解説と考察評価。井手内創と内山拓也監督で描く“喪失感”を抱える人々の心|インディーズ映画発見伝16

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第16回 日本のインディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い映画をCinemarcheのシネマダイバー 菅浪瑛子が厳選する連載コラム「インディーズ映画発見伝 …

連載コラム

【ネタバレ感想】シークレット・チルドレン 禁じられた力|ティモシー・シャラメ主演のSF青春スリラー|未体験ゾーンの映画たち2019見破録22

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第22回 今年もヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」では、珍作・怪作から見逃すには惜しい佳作まで …

連載コラム

【ネタバレ】パラレル 多次元世界|あらすじ結末感想と評価考察。SFスリラーでパラレルワールドを前に善性が試される【SF恐怖映画という名の観覧車168】

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile168 誰かを傷つける可能性があるが使えば必ず自分の利益になる装置が目の前にあった時、あなたはその装置を使わずにいられるでしょうか。 人の欲は「 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学