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Entry 2022/07/26
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映画『揺れるとき』あらすじ感想と解説評価。サミュエル・セイス監督が描く危うくも美しい少年期の感情|2022SKIPシティ映画祭【国際Dシネマ】厳選特集3

  • Writer :
  • 星野しげみ

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022国際コンペティション部門最優秀作品賞サミュエル・セイス監督作品『揺れるとき』

2004年に埼玉県川口市で誕生した「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」は、映画産業の変革の中で新たに生み出されたビジネスチャンスを掴んでいく若い才能の発掘と育成を目指した映画祭です。

第19回目を迎えた2022年度は3年ぶりにスクリーン上映が復活しました。7月21日から27日までの期間はオンライン配信も行われています。

今回ご紹介するのは、国際コンペティション部門最優秀作品賞を受賞したサミュエル・セイス監督のフランス映画『揺れるとき』です。

【連載コラム】『2022SKIPシティ映画祭【国際Dシネマ】厳選特集』記事一覧はこちら

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映画『揺れるとき』の作品情報


(C)Avenue_B

【日本公開】
2022年公開(フランス映画)

【原題】
Softie

【監督】
サミュエル・セイス

【キャスト】
アリオシャ・ライナート、アントワン・ライナルツ、メリッサ・オレクサ、イジア・イジュラン

【作品概要】
本作は国際コンペティション部門最優秀作品賞を受賞作。多感で敏感な少年の成長や恋の目覚めを主題としていますが、ヤングケアラーやLGBTQの子どもの問題も盛り込まれています。

監督はサミュエル・セイス。名門フランス国立映画学校フェミスで監督した短編『Forbach』(2008)がカンヌ映画祭シネフォンダシオン第2席、クレルモン=フェラン国際短編映画祭ではグランプリを受賞しています。

BPM ビート・パー・ミニット』(2017)のチボー役で強い印象を残したアントワン・ライナルツやロック歌手でもあるイジア・イジュランなど、魅力的なキャスト陣も揃いました。

サミュエル・セイス監督のプロフィール


(C)Philippe Beheydt

俳優、監督。

フランス本国では「Drole de famille!」などのテレビシリーズで俳優として知られています。

名門フランス国立映画学校フェミスで監督した短編『Forbach』(2008)がカンヌ映画祭シネフォンダシオン第2席、クレルモン=フェラン国際短編映画祭ではグランプリを受賞。

2014年の『Party Girl』がカンヌ映画祭ある視点部門で、カメラドールとアンサンブル賞に輝きました。それに続く作品となる本作『揺れるとき』で、労働者階級の少年の感情教育というテーマに挑み、国際コンペティション部門最優秀作品賞を受賞しました。

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最優秀作品賞受賞コメント サミュエル・セイス監督

今回、様々な美しい作品、美しい才能たちと出会えたことに感謝いたします。この映画についての話をしますと、スタートから非常に面白い旅路でした。プロデューサーのキャロリーヌさんとご一緒できたことが、僕としてはとてもラッキーだったと思っております。
本作は、少年の幼少期を描くというものでしたが、年齢的にも映画的にも非常に美しい時代を捉えようという試みでした。また、それも一つのチャンスだと思いました。我々はいまこのコロナ禍において苦難の時代を迎えているわけですが、なかなか映画館に足を運んでもらえないという問題を抱えています。が、皮肉なことに映画を作る側としては、再び活力が漲る状態になっています。様々な物語が語られはじめ、技術革新によって新たな領域への挑戦が始まっているので、観客の皆さんが再び映画館へ足を運んでくれるといいなと希望を抱いています。というのは、やはり映画というのは人と一緒に共同体験するべきものだと僕は信じているのです。

映画『揺れるとき』のあらすじ


(C)Avenue_B

10歳のジョニーは東フランスの貧しい地域で暮らしていました。

ある日、両親が離婚しました。

ジョニーは兄と妹と共にシングルマザーとなった母と暮らすことになりました。

新しい彼氏を家に連れてくる自由奔放な母、大人の仲間入りをする年齢の兄にはさまれ、

まだ幼い妹の面倒は10歳のジョニーがみています。

ある日、ジョニーの学校のクラスに都会から新任の男性教師が赴任してきました。

引っ込み思案なジョニーに教師は優しく接してくれます。

内気ですが敏感で賢い彼は、自分の周囲で起こるさまざまな物事に関心を持ち始め、次第に大人の世界をのぞき見するようになっていきました。

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映画『揺れるとき』の感想と評価


(C)Avenue_B

10歳という年齢で両親が離婚をし、母親と兄妹と4人で暮らすことになったジョニー。

普通ならばまだまだ母に甘えたい年頃なのでしょうが、気が強い母にジョニーはなかなか自分の気持ちを話せません。

自分でも何をどうしていいのかわからない毎日の中で、彼に優しく接してくれる新任の教師に、ジョニーは心惹かれるようになっていきます。

少年の眼を通して描かれる、大人社会の秘密の匂いが色濃く漂う作品で、主人公を10歳にしているところにも監督の深い考えが見られました。

思春期は11歳前後からといわれていますが、10歳は思春期の入り口にやっと差し掛かったころではないでしょうか。

大人から見れば、ジョニーはまだまだ‟子ども”なのです。好き勝手に男友達と遊ぶジョニーの母でさえ、ジョニーの危うい行動に注意をします。

少年の心は自由を求めて飛び立ちがってますが、現実はそうはいきません。自分の前に立ち塞がる現実社会の厳しさに押しつぶされそうになるジョニー。

言葉少な目で表情や仕草であらわされる、壊れてしまいそうな透き通った瑞々しい少年期の感情が、みごとに表現された作品です。

まとめ


(C)Avenue_B

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022国際コンペティション部門において、最優秀作品賞(グランプリ)に輝いた『揺れるとき』をご紹介しました。

監督のサミュエル・セイスは、「本作は少年の幼少期を描くというものでしたが、年齢的にも映画的にも非常に美しい時代を捉えようという試みでした」と語っています。

10歳という美しい少年時代の感情を素直に描いた『揺れるとき』。

ヤングケアラーやLGBTQの子どもという現代的な問題のテーマもさりげなく盛り込まれていることにも注目です。

『揺れるとき』は、映画祭での劇場上映は終了していますが、7月27日(水)まで配信で鑑賞することが出来ます。「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022」のHPをチェックしてみてください。

【連載コラム】『2022SKIPシティ映画祭【国際Dシネマ】厳選特集』記事一覧はこちら

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