2020年の映画おすすめランキングベスト5
選者:シネマダイバー松平光冬
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、あらゆる業界がダメージを受けた2020年。作品上映の延期・中止や劇場の休館・閉館など、映画業界も激動の渦に巻き込まれました。
劇場公開が2021年以降へと延期された作品も多数存在する中、この度の2020年映画おすすめランキングベスト5では「観て記憶に残った5本」という意味を込めて作品を選びました。
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CONTENTS
第5位『オーバー・ザ・リミット/新体操の女王マムーンの軌跡』
【おすすめポイント】
ロシアの新体操選手マルガリータ・マムーンが、リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲るまでの過程を追ったドキュメンタリー。
とにかく、コーチとしてマムーンを指導するイリーナ・ヴィネルの凄まじい罵詈雑言にア然。パワハラ・モラハラといった概念が通用せず、あるのは国家の威信と勝利への執念だけ。
ロシアが他国を寄せ付けない体操強豪国である理由が、本作にあります。
第4位『ワンダーウーマン 1984』
【おすすめポイント】
やはり本作のような超大作は、大スクリーンで観たいもの。ワンダーウーマン役のガル・ガドットの美しさはスクリーンだとより映えます。
幾度の延期を経てようやく12月に公開を迎えた本作でしたが、この時期の公開になったのは結果的には良かったのだとラストを観て認識しました。
『TENET テネット』同様に、配信より先に劇場公開を実現させたワーナー・ブラザースに敬意を表します。
第3位『イップ・マン 完結』
【おすすめポイント】
ストーリーとしては前作『イップ・マン 継承』(2016)での幕引きが綺麗だった分、完結編となった本作はカーテンコール的な意味合いが強いです。それでも「イップ・マン」ブームを築いた始祖として、分かりやすい勧善懲悪で幕を閉じ直す意味はあったはずです。
ブルース・リーへのオマージュも行き届いた、贅沢すぎるアクション映画に仕上がりました。
第2位『Mank/マンク』
【おすすめポイント】
『市民ケーン』(1941)チックな『ソーシャル・ネットワーク』(2011)を撮ったデヴィッド・フィンチャーが、ついに『市民ケーン』そのものを手がけてしまいました。
主人公の脚本家マンクは、権力者の意向一つで製作体制が変わるハリウッド業界に抗うフィンチャー自身。そんな彼が自由な環境で映画が撮れるNetflixを選んだのは、自然の理だったのかもしれません。
過去のフィンチャー作品と比べて、笑えるシーンが多めなのも注目です。
第1位『娘は戦場で生まれた』
【おすすめポイント】
内戦激しいシリアに暮らす女性監督が、生後間もない娘の成長と、緊張を強いられる市民たちの日常を並行してカメラに収めたドキュメンタリー。
生命を存続させる場の病院が空爆され、亡骸になった子どもを抱えて「全部撮ってちょうだい!」とカメラに泣きながら訴える母親……報道されない市民の悲痛な叫びは、フィクションではなく、すべて現実なのです。
2020年注目の監督とキャスト
監督賞:クリストファー・ノーラン
女優賞:マリア・バカローヴァ
男優賞:ゲイリー・オールドマン
【コメント】
『TENET テネット』の劇場公開に強くこだわったクリストファー・ノーランが監督賞。あえて難解な作品を作る理由は、何回も劇場に足を運んでもらうという意図の他に、彼が抱いている劇場への愛着にあることが、今回のコロナ禍でよく分かりました。
女優賞は、『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』にて、一般人や要人たちにドッキリを仕掛けまくったマリア・バカローヴァ。主演のサシャ・バロン・コーエンと共に迷惑やりすぎ演技を披露していますが、これがデビュー作というのだから末恐ろしいです。
そして男優賞は、『Mank/マンク』のゲイリー・オールドマンに。クライマックスでの大演説は白眉。かつては「個性派俳優」「怪優」と呼ばれていた彼も、いまや「名優」の肩書が似合う存在になりました。
まとめ
コロナ禍により、劇場の上映スケジュールが大幅に狂ってしまった2020年の映画業界。そんな未曽有の危機的状況の中、偶然とはいえその危機を救うかのように、鮮明な4Kリマスター映像となった名作映画の公開が目立った年でもありました。
『ひまわり』(1970)や『エレファント・マン』(1980)、『トータル・リコール』(1990)といった往年の話題作・ヒット作のリバイバル公開で、新規ファンとなった方、あらためてその面白さを認識した方もいたはずです。
いつの日かコロナウイルスは廃れるでしょうが、映画が廃れることは絶対にありません。
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