2020年の映画おすすめランキングベスト5
選者:シネマダイバー金田まこちゃ
2020年は新型コロナウィルスの影響により、「007」シリーズ最新作の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』や、MCUシリーズの『ブラックウィドウ』などの大作映画が軒並み公開延期になったうえ、映画館も自粛に追い込まれるなど厳しい1年となってしまいました。
ですがそんな状況でも、独自の世界を作り出し、観客を楽しませてくれた作品は、1年を通して多く公開されました。
そんな「独自の世界観を持った作品」を中心に、トップ5を選びました。
【連載コラム】『2020年映画ランキングベスト5』一覧はこちら
第5位『スパイの妻』
【おすすめポイント】
太平洋戦争開戦間近の日本を舞台に、スパイになった夫を心から愛し、そして翻弄される妻の姿を描いた本作は、黒沢清監督の丁寧な演出が光る、非常に見応えのある作品でした。
実話やベストセラー小説による原案/原作でもなく、完全オリジナルの作品でここまでスケールの大きな映画が制作されたのは、本当に素晴らしいと感じられました。
第4位『リチャード・ジュエル』
【おすすめポイント】
1996年に、アトランタ五輪の爆弾テロ事件を阻止した、リチャード・ジュエルの実話をもとにした本作。
リチャード・ジュエルは、英雄から一転し爆弾事件の首謀者にされてしまう為、普通なら悲劇の物語になるはずですが、クリント・イーストウッド監督独自の視点でこの事件を描いた為「問題行動も多かった、リチャードは本当に潔白なのか?」という、サスペンス色の強い作品に仕上がっているあたり、流石です。
第3位『ワンダーウーマン 1984』
【おすすめポイント】
「スーパーヒーローの誕生」を描いたともいえる本作は、リチャード・ドナー版『スーパーマン』を意識したような作風。本作のヴィランであるマックスは、人の欲望を力に変えるのですが、マックスに「人類愛」を説き戦うダイアナからのメッセージは、非常にシンプルながら心に響きました。
現在の混乱状態の世界に「博愛」の象徴であるワンダーウーマンの新作が公開されただけで、大きな意味があったといえます。
第2位『ミッドサマー』
【おすすめポイント】
白夜のスウェーデンを舞台に、奥地の村で執り行われる謎の儀式に巻き込まれ、気付けば儀式の中心にされてしまうという、アリ・アスター監督独自の世界観が嫌というほど堪能できる映画『ミッドサマー』。
作中で映像として見せていない部分も、小道具や台詞の端々などから観る者は様々な想像ができてしまうため、まさに「悪夢」というべき不快で嫌な世界を見せつけられる一方で、それが病みつきになってしまうという凄味のある映画でした。
第1位『CURED キュアード』
【おすすめポイント】
一度は「ゾンビ」と化しながらも治療により回復し、無事社会復帰に至った人々のその後の生活を通して、人間の醜さや恐ろしさを描いた作品。
ゾンビウィルスによるパンデミックが終息した世界が舞台なのですが、ゾンビウィルス感染者への差別や偏見に苦しむ主人公の心情、クライマックスでの街が崩壊するレベルのパニックに追い込まれるストーリー展開は、新型コロナウィルスに直面した2020年の現実世界とのリンクを感じさせられ、多くのことを考えざるを得ない作品でした。
また、わずかながらも希望を感じさせるラストも必見です。
2020年注目の監督とキャスト
監督賞:クリストファー・ノーラン
男優賞:サム・ロックウェル
女優賞:ガル・ガドット
【コメント】
監督賞にはクリストファー・ノーラン。世界中がコロナに悩む中で『TENET』の劇場公開に踏み切り、「映画館で映画を観る」という空気を再び作り出してくれた功績を称えたいと思います。
男優賞のサム・ロックウェルは、『リチャード・ジュエル』でジュエルの唯一の協力者となる弁護士ブライアントをユーモラスに演じ、作品全体を牽引する存在感を発揮していました。
女優賞のガル・ガドットは『ワンダーウーマン 1984』にて、ヒーローを通り越して「女神」のような存在となったダイアナを見事に演じました。「ワンダーウーマン」というキャラクターを見事に成立させたその存在感で、今後どのような作品で活躍するのかが非常に楽しみです。
まとめ
2020年は映画館が自粛に追い込まれるなど苦しい1年でしたが、それでもさまざまなバリエーションの作品が公開された1年でもあります。その中でも独自の世界観を持ち、作品の中に引き込まれた映画5作を選出しました。
2021年はもともと公開予定だった作品に加え、延期になった作品も公開予定ですので、注目作が目白押しになるのではないかと期待しています。
『ミッドサマー』のように、映画館で観ることでより一層魅力が増す作品も少なからず存在するため、今後も「映画館で映画を楽しむ」という経験が、当たり前のようにできる事を心から祈るばかりです。
【連載コラム】『2020年映画ランキングベスト5』一覧はこちら