『ワンダーウーマン』の続編『ワンダーウーマン1984』が2020年12月18日(金)より全国ロードショー!
人類を平和に導く存在にして、アマゾネス最強の戦士ダイアナが世界の危機を救う「ワンダーウーマン」シリーズの第2弾『ワンダーウーマン 1984』。
前作は神と人の陰謀が渦巻く第一次世界大戦を舞台に、ダイアナが自らの使命に目覚める物語でしたが、『ワンダーウーマン 1984』は、「戦士」から「ヒーロー/ヒロイン」として覚醒するまでの物語として位置付けられています。
「覚醒」とは一体どのようなものなのか? その意味などを考察しながら、作品の魅力をご紹介します。
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映画『ワンダーウーマン 1984』の作品情報
(C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics
【日本公開】
2020年公開(アメリカ映画)
【原題】
Wonder Woman 1984
【監督】
パティ・ジェンキンス
【キャスト】
ガル・ガドット、クリス・パイン、クリステン・ウィグ、ペドロ・パスカル、ロビン・ライト、コニー・ニールセン
【作品概要】
超人的な力を持つアマゾネスの最強戦士ダイアナが、神が創造した「どんな願いも叶える宝石」から世界を救う戦いを描いた「ワンダーウーマン」シリーズ第2弾。監督は、前作『ワンダーウーマン』を大ヒットに導いた、パティ・ジェンキンスが続投しています。
主演は前作に続きガル・ガドットがダイアナ役を演じ、クリス・パインも前作同様にスティーブ役で出演しています。また世界を混乱に陥れる危険な男マックスを演じるのは、「スター・ウォーズ」シリーズ初の実写ドラマとして注目される「マンダロリアン」シリーズのペドロ・パスカル。
映画『ワンダーウーマン 1984』のあらすじとネタバレ
(C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics
1984年、ワシントンDC。考古学者として、スミソニアン博物館で働くダイアナ。
彼女は、アマゾネスが住む島セミッシラ出身の戦士であり、第一次世界大戦時に人類を危機から救った英雄「ワンダーウーマン」でもありました。そして考古学者として働く傍ら、正義の戦士として、人知れず街を犯罪から守っていました。
ある時、スミソニアン博物館の新たな職員としてバーバラが加わります。宝石学が専門の彼女は、スミソニアン博物館へ着任した初日から慣れないヒールで転んだり、大量の書類を床に落としたりとドジな部分を見せます。
スミソニアン博物館の職員はドジなバーバラを無視して、誰も手を差し伸べようとしません。しかしダイアナだけがバーバラが落とした書類を拾い、気さくに話しかけます。
バーバラはFBIから依頼された宝石の鑑定を開始し、ダイアナもそこへ同席します。失敗が多いながらも、一生懸命で優しい性格のバーバラを気に入ったダイアナは、バーバラを食事に誘い、バーバラは宝石を持って食事へ行きます。
食事の場で恋人の話になった際、ダイアナは自分を故郷セミッシラから外の世界に連れ出してくれた存在であり、恋人だったスティーブの話をします。
スティーブはかつて、ダイアナとともに第一次世界大戦を戦い、残念ながらその最中で命を落としていました。ダイアナは再び彼に会う事を望みます。
ダイアナとの食事を終えたバーバラは、スミソニアン博物館へ帰ろうとしますが、そこで酔った中年男性に絡まれます。そこを偶然通りかかったダイアナに助けられたバーバラは、ダイアナに強い憧れを抱き「私も、あんな女性になりたい」と宝石を握ったまま願います。
次の日、スミソニアン博物館で眠っていたバーバラが起きると、別人のように魅力的な容姿になっており、昨日までとは違い、博物館のいろいろな人が声をかけてくれるようになります。
そこへ「ブラック・ゴールド社」の代表、マックスがスミソニアン博物館を訪ねて来ます。マックスは連日テレビ出演をしており「どんな願いも叶う」が決め台詞の有名人でした。
舞い上がったバーバラは、マックスを連れて、スミソニアン博物館内を案内します。その間マックスは、バーバラが鑑定している宝石に異常に興味を持った様子を見せますが、マックスを不審に感じたダイアナに追い返されてしまいます。
マックスはさまざまな企業から出資を募り、石油事業を展開させようとしていましたが、石油は全く見つからず「ブラック・ゴールド社」の経営は事実上破綻していました。さらに離婚をしており、一人息子だけがマックスの生きがいとなっていました。
ですが、マックスは出資をした企業から出資額の返金を求められており、応じないと「連邦議会にかける」と脅されます。
マックスは、その晩にバーバラが参加しているパーティーへ向かいます。そこで酔ったバーバラを騙し、宝石を手に入れます。
マックスが手にした宝石は、古代の神が創造した願いを叶える宝石で、マックスは「私はお前になりたい! 私こそが願いを叶える宝石だ」と願います。すると、マックスの願いを叶えた宝石は消滅していきました。
次の日、マックスは出資額の返金を求めていた企業に向かい、その代表に会います。そしてその場で、マックスは「ブラック・ゴールド社が世界を牛耳る企業になるはずだった」と言い、企業の代表は「そう願っていた」と言います。
そのやりとりで願いを叶えた事になり、「ブラック・ゴールド社」は急激な成長を見せます。
一方、ダイアナはバーバラがマックスに宝石を渡した事を知り、マックスを探します。その最中に、ダイアナはある男性に声をかけられます。
それは第一次世界大戦で戦死したはずの、かつての恋人スティーブでした。
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映画『ワンダーウーマン 1984』感想と評価
(C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics
1941年にコミックスに初登場し、スーパーマンやバットマンなどと並ぶDCコミックスの看板ヒーローである「ワンダーウーマン」ことダイアナ。
映画に初登場したのは、2016年の『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』で、作品全体の美味しい所を持って行くほどの凄まじいインパクトを残し、2017年には彼女が主役の映画『ワンダーウーマン』が公開されました。
前作の『ワンダーウーマン』は、世間から姿を消し、長らく秘密とされてきたアマゾネスの島セミッシラで生まれ育ったダイアナが、パイロットのスティーブを助けた事で、セミッシラを出て成長していく物語でした。
セミッシラでの生活しか知らず、戦う事が全てだったダイアナが、人間の弱さや優しさ、そして残酷さに触れた事で「戦いだけでは、何も救えない」と戦士としての精神的成長を果たした前作『ワンダーウーマン』。対して『ワンダーウーマン 1984』では、本格的に「スーパーヒーロー」として成長するまでの様子が描かれています。
また前作は第一次世界大戦が舞台でしたが、今回は1984年のアメリカが舞台。
1984年のアメリカは、予想を上回る程の経済の景気拡大を迎えた一方で、徐々にその景気が落ち込みつつあった時代。また「新冷戦」と呼ばれる、1979年頃から始まったソ連との緊張状態が続く時代でもありました。
そうした景気の落ち込みと冷戦状態から、多くの人々と社会が言い難い不安を抱えていた「1984年のアメリカ」という時代背景が反映されたキャラクターが、本作のヴィランにあたるマックスです。
マックスは自身が立ち上げた会社の経営に失敗し、出資者達からは詐欺師呼ばわりされています。ですがプライベートでは、一人息子の事を大切にする心優しい父親です。
マックスは、根は悪人ではありませんでしたが、幼い頃から自分を馬鹿にした人間を見返す為、そして息子の幸せの為に、何よりも成功と資産を望んでいました。
その願いは「不穏」の時代を生きるマックス自身の不安と表裏一体であり、やがて「願いを叶えてくれる魔法の石」=「時代と自己が抱える不安を拭い去ってくれる手段」と出会ってしまった事で、不安を抱える人々の欲望を駆り立て、世界を混乱に陥れる恐ろしい存在となったのです。
そして、願いを叶える魔法の石により、運命が変わってしまった存在がもう一人。ドジで誰にも相手にされない自身に悩みを抱えた事から、ダイアナに憧れを抱いたバーバラです。彼女もまた、時代の不安と自己の不安を重ねてしまったキャラクターとして描かれています。
バーバラが望んだのは「誰もが憧れる美貌」。願いを叶える魔法の石によりその願いは叶いましたが、結果として「誰よりも心が醜くなる」という悲しい存在として描かれています。
作品の終盤、宝石の力で強大な力を手に入れたバーバラが突然、猫のような姿に変わりますが、これは「ワンダーウーマン」の原作コミックシリーズにおける古株ヴィランであるチーターです。
ホワイトハウスでダイアナと戦ったバーバラが「ヒョウ柄」のファッションに身を包んでいたという予兆は描かれていたものの、原作コミックを未読の方は驚かれたのではないでしょうか。
そんな時代を反映したヴィランたちに立ち向かうダイアナもまた、宝石の力に惑わされます。前作で戦死したスティーブと再会を果たしたものの、その代償でパワーが弱くなり、世界崩壊の危機的な状況に立ち向かえなくなったのです。
しかし彼女は、不安と混乱に襲われる世界と人々を救う事を選択し、スティーブと再び別れるという悲しみを背負うのを決断した事で、ダイアナはスーパーヒーローとして覚醒します。
ワンダーウーマンは、スーパーマンと同等の力を持つ、最強クラスのヒーローです。そしてスーパーマンが「正義」の象徴なら、ワンダーウーマンは「愛」を象徴するヒーローと言われています。
『ワンダーウーマン 1984』の冒頭では、スティーブの事を忘れられず、悩んでいる様子のダイアナが描かれていますが、「悲しみ」と「愛」をもって再び愛する者との別れを決断した事で、世界と人々を「愛」で包む、スーパーヒーローとして覚醒したのです。
空中飛行に成功する場面は、スーパーヒーローとしての成長を象徴する描写の一つであり、マックスを力ずくで相手を倒すのではなく「愛」という真実を語る事で世界を救うクライマックスの展開は、まさにワンダーウーマンならではと感じます。
また「時代と自己への不安を抱えるがゆえに成功や資産を渇望し、人々が欲望をむき出しにしている」という点では、現代の社会も「1984年のアメリカ」も決して変わりません。
ワンダーウーマンは、「愛なき世界」に警鐘を鳴らし、決して諦める事なく「愛」によって戦い続ける存在と言えます。
そして、1941年の初登場以降から21世紀を迎え、混乱の時代が訪れた2020年にもなお彼女の勇姿を人々が求めるのは、「『今』という時代がワンダーウーマンを必要としているから」ではないでしょうか?
まとめ
(C)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics
前作では「戦う事だけが全て」と考え、人間社会に馴染むまで時間のかかったダイアナですが、『ワンダーウーマン 1984』では、考古学者として人間社会を生き、危機が迫るとワンダーウーマンとなって戦うという、スーパーヒーロー映画の王道が展開されます。
特に作品序盤、デパート内で宝石強盗と戦う場面は、自分の存在を知られない為に監視カメラを破壊し周囲の人間だけでなく、犯人側も誰一人傷付けない、まさにヒーローとしての戦い方を見せています。
そのヒーロー像からは、近年の「アベンジャーズ」シリーズに代表されるMCU作品とは一味違う、昔ながらの往年のヒーロー映画のような雰囲気が垣間みえます。近年のスーパーヒーロー映画をよく鑑賞している方は、逆に新鮮に感じるのではないでしょうか?
またエンドクレジット後、伝説の戦士アステリアが登場するのですが、彼女を演じるリンダ・カーターは、1976年から1979年にかけて放送されたTVドラマシリーズでワンダーウーマンを演じていた女優です。
新旧のワンダーウーマンが揃う辺りもそうですが、『ワンダーウーマン 1984』は、70年代のTVドラマシリーズやひと昔前のヒーロー映画のような雰囲気と、現在の技術で表現された、迫力のある美しい映像が融合したような、不思議な感覚に陥る作品です。
そんな不思議な感覚を楽しみつつも、ワンダーウーマンの「愛」を感じ取ってみて下さい。