『アナと雪の女王』や『ズートピア』など、次々とヒット作を生み出しているディズニー・アニメーション・スタジオの新作です。
海の向こうに憧れを抱いて暮している小島に住む一人の少女が、ある使命を担い冒険に出る物語にわくわくせずにはいられません!
以下、あらすじやネタバレが含まれる記事となりますので、まずは『モアナと伝説の海』映画作品情報をどうぞ!
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映画『モアナと伝説の海』作品情報
【公開】
2017年(アメリカ)
【原題】
Moana
【監督】
ロン・クレメンツ、ジョン・マスカー
【キャスト(声の出演)】
アウリー・クラバーリョ、ドウェイン・ジョンソン、レイチェル・ハウスタラ、テムエラ・モリソン、ニコール・シャージンガー
(日本語版)屋比久知奈、夏木マリ、尾上松也、ROLLY
【作品概要】
南太平洋の小さな島に住む美しい少女モアナは、海を愛し、サンゴ礁の向こうの世界に大きな憧れを抱いていました。そんな折、近郊に魚が居なくなり、椰子の実など、果物も腐り始めます。海に関する神話が関わっているようなのです。島の危機を救うためにモアナは一人、船を漕ぎ出します。
第74回ゴールデングローブ賞、第89回アカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネートされるなど高い評価を受けているディズニー・アニメーション・スタジオの新作です。
映画『モアナと伝説の海』あらすじとネタバレ
モアナは海に浮かぶモトゥヌイという小さな島で暮らす少女です。モトゥヌイ族は、海辺で魚を獲り、島で作物を育て、平和な毎日を過ごしていました。
モアナは、海の向こうに大きな憧れを抱いていましたが、首長である父親トゥイは島民たちが外洋に出ることを禁じていました。
サンゴ礁の向こうに行こうだなんてとんでもない、とモアナは常日頃から父に言われて育ちました。海は危険がいっぱいだからと。
しかし、モアナは幼い頃、特別な経験をしていました。砂浜に取り残され鳥に襲われていた子ガメを守った時、押し寄せていた波が丸みを帯びた形に変わり、モアナの間を取り囲むように優しく道を開けてくれたのです。
子ガメは無事、母カメのところにたどりつき、二匹で海の中に戻っていきました。そして、海は、モアナに渦巻き色の形をした緑色の丸い石を渡してくれました。
その美しさにモアナが見とれていると、父親がやってきて、モアナを連れて帰り、石は、再び海へと返されたのでした。
モアナが16歳になった時、父は、娘を正式に自分の後継者として使命する決心をします。
首長だけが登ることが出来る山の頂上に連れていってもらったモアナは、海への憧れを封印して、島の人々のために役立とうと腹を決めるのでした。
ところが、幸せな村に異変が起こり始めました。魚はいっこうに釣れず、農作物も腐ってしまい、工夫を凝らしてもどうにもならないのです。
モアナは、サンゴ礁の向こうに船を出して漁をすればどうかと提案しますが、父親は頑として認めません。
モアナは真夜中にこっそり船を出しますが、すぐに波に押し返されてしまいます。そんな彼女のもとに祖母のタラが現れ、モアナをある場所に連れて行きました。
今まで来たことのない洞窟にはいっていったモアナが見たのは、大小様々な帆船でした。
実はモトゥヌイ族は、かつて海を渡ってあちらこちらに移住して暮していた一族だったのです。しかし、海で大きな事故にあって以来、島に定住して、危険な航海を禁止したのです。
モアナはまだほんの赤ん坊だったころから、祖母タラのお話を聞いて育ちました。それはこんな内容でした。
昔、地球には海しか存在していませんでした。そこに、母なる島、テ・フィティが現れます。テ・フィティは、「心」の渦巻きから生命を生み出すことが出来る女神で、木々や花々など生命に溢れた島を次々と生み出していきました。
ある時、風と海の神人、マウイがテ・フィティの「心」を盗んでしまいます。「心」を失ったテ・フィティは、闇に包まれてしまいました。
一方のマウイは、大地と炎の悪魔、テ・カァに襲われ、その時、彼の大切な「神の釣り針」とテ・フィティの「心」を共に海の中に落としてしまいます。その後、彼の姿をみたものは誰もいません。
テ・カァは心臓を追い求め続け、周りの島々を暗闇で包んでいるといいます。誰かが海を渡り、マウイと「心」の両方を見つけ出し、テ・フィティに「心」を返還させなくてはなりません。でなければ全てが暗闇に包まれてしまう日がやってくることでしょう。
今、まさにその伝説通りのことが起ころうとしているのです。このままではモトゥヌイも闇に包まれてしまうでしょう。
タラは、緑色の渦巻き模様の石=「心」を取り出し、モアナを驚かせます。
彼女はモアナが大きくなる日を待って、ずっとそれを持っていたのです。「お前は海に選ばれたのだ。星を追えば見つかる」と言うと、モアナに「心」を手渡すのでした。
その夜、タラは危篤状態に陥り、亡くなりました。モアナはひとり、洞窟の帆船に乗り込むと海に出ていきました。エイに姿を変えたタラが、彼女の出発を手伝ってくれました。
海は危険だと父が言っていたとおり、荒々しい波にあっという間に呑まれて、モアナは無人島に流れ着きます。
なんとその島こそ、マウイが幽閉されていた場所でした。海が彼女を導いたのです。早速、モアナはマウイを説得にかかりますが、かなりのひねくれ者で、なかなか応じようとしません。
必死で交渉し、ようやくモアナの船に乗ることに同意させます。マウイ曰く、神の釣り針は下品な深海魚が持っているらしいのです。
船には実はもう一匹乗っていました。ヘイヘイという名の鶏が紛れ込んでいたのです。なんにも考えていないように見え、どう見ても役にたちそうではないのですが、置いていくわけにはいきません。
二人は最初、反発し合いますが、徐々に心を通わせていきます。マウイは、まったく、航海の技術がないモアナに伝統的航海方を教えます。
しかし、すぐさま、海賊、カカモラが襲ってきました。必死に逃げ、攻撃を交わすモアナたちですが、数の多いカカモラたちに「心」を盗まれてしまいます。
マウイは、カカモラの船同士がぶつかるように仕向け、撃退すると、「心」を取り戻しました。なぜかヘイヘイが絶妙なところで役に立ちます。ただし、本人にまったく自覚はなさそうです。
二人は醜い深海魚ことタマトオが住む場所へやってきました。高い石の塔を登ると入り口があり、そこから飛び込むと、海の底まで、長い距離を凄いスピードで落ちていきます。
タマトオは背中に宝物をたっぷり積んだカニの怪物でした。神の釣り針はその背中のてっぺんにありました。
最初、マウイは自分一人で取り戻そうと懸命でしたが、相手もなかなかの強者。どうしても釣り針を取り戻すことが出来ません。
そこでモアナがおとりになり、二人の連携プレーでタマトオをひっくり返すことに成功! ついに神の釣り針を奪い返すことができました。
しかし、長らく使っていなかったせいか、マウイはうまく姿を変えることが出来ません。すっかり自信をなくしてしまうマウイ。
マウイは、モアナに尋ねられて、身の上話を始めました。生まれたときは人間だったこと、両親にゴミのように捨てられたこと、神々がみつけ、マウイにしてくれたことなどを。
次第に二人の間には信頼関係が生まれ、マウイも神の釣り針を使って自在に姿を変える力を取り戻していきます。
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映画『モアナと伝説の海』の感想と評価
『リトル・マーメイド』、『アラジン』などで知られる、ディズニー・アニメーションの第二次黄金期を支えたジョン・マスカー&ロン・クレメンツ監督コンビが、今回、初の長編CGアニメーションに挑みました。
海や自然を表現する技術力に圧倒されますが、個人的にはキャラクターたちの豊かな表情に目が釘付けになりました。
泣いて笑っては勿論のこと、いたずら心いっぱいのちょっと「悪い顔」も魅力的なモアナ。くるくる変わる表情が実に良いのです。
ちなみに、マウイの全身に彫られているタトゥーの絵柄が動くというとても愉快な表現があるのですが、これはCGではなく手描きなんだそうです。
さて、ヒロインのモアナですが、彼女は、いつも海辺に立ち、サンゴ礁のこの先に何があるのか観てみたいという好奇心でいっぱいです。それは「ここではない何処かへ」という若い人々が持つ普遍的な憧れといってもいいでしょう。
その彼女の希望を阻むのは、父の跡目を継ぐという重要な立場にあることが大きな理由ですが、それ以上に彼女を島にしばりつけているのが、父の「愛」なのです。
危険なところに娘をやるわけにはいかない。手元に置いて守らなければならない。その「愛」ゆえに、モアナはずっと足止めされているのです。
村の首長になって村人の平和につくさねばならないというのはある意味、島に留まらせるための理由付けのようなものです。
物語は、最初こそ、モアナが海に選ばれた「救世主」として、愛する島の人々のために、冒険に出るという体裁をとっていますが、クライマックスにいたって、ここまでモアナがやって来たのは、自分の内なる声を聞いたからだということが明らかになります。
幼い頃から夢みていたサンゴ礁の向こうの景色を見てみたいという強い想いが、彼女を突き動かしたのです。「救世主」という特別な人間ではなく、普通の若者の普遍的な「生き方の模索」が描かれているというわけなのです。
ここでふと、私は、2017年度アカデミー賞作品賞に選ばれた『ムーンライト』で、マハーシャラ・アリが少年に語った「自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな」という言葉を思い出していました。
勿論、2つの映画は全く異なる世界を描いていますし、キャラクターの境遇も全然違います。しかし、この言葉は、すべての子どもに通じる言葉ではないでしょうか。
『モアナと伝説の海』という作品には、大人たちには「可愛い子には旅をさせろ」、子どもたちには「夢をあきらめるな」というメッセージが込められているのです。
さすがディズニー。実に奥の深い映画を撮ります。親子連れで見に行く人が多いからこそのテーマといえるかもしれません。
まとめ
物語の舞台は南太平洋です。「モアナ」はポリネシア諸島で「海」という意味を持ち、「マウイ」は「神」を意味します。
映画の中盤は、二人の掛け合いが楽しく、いがみあっていた男女が次第に心を通わせるというスクリューボール・コメディ的な面白さで溢れています。とはいえ、二人の間に恋愛は芽生えず、友情が生まれるわけですが。
海賊、カカモラが楽器を演奏しながら、モアナとマウイを追いかけてくるシーンは明らかに『マッドマックス 怒りのデスロード』(15)のパロディになっています。映画好きは思わずにやりとしてしまうシーンです。
また、ヘイヘイという鶏がずっと航海についてくるという設定も面白かったです。偶然、船に乗り込んでおり、全然役に立たないようで本当に役に立たないキャラクターなのですが、不思議と相手を混乱させてしまいます。
ヘイヘイが見せるスラップステッィックな動きはまさにアニメーションの醍醐味といっても良いでしょう。
それにしても最近のディズニー・アニメーションの質の高さは目を見張るものがあります。主題歌も素晴らしく、満足度の非常に高い映画に仕上がっています。