エルサの魔法のルーツから始まる大冒険と、進化したファンタジーミュージカル
2019年11月22日より日米同時公開された映画『アナと雪の女王2』。
世界中で社会現象を巻き起こし、日本でも2014年3月に公開されると、大ヒットしたディズニーアニメ『アナと雪の女王』の続編です。
前作では「真実の愛は恐れよりも強いもの」というテーマを中心に、“家族の絆の強さと相手を思いやる気持ちの大切さ”を描いていました。
続編となる『アナと雪の女王2』では、どのようなテーマが展開されていくのか。今回は『アナと雪の女王2』の魅力をご紹介させていただきます。
映画『アナと雪の女王2』の作品情報
【公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Frozen 2
【監督】
クリス・バック、ジェニファー・リー
【キャスト】
イディナ・メンゼル、クリステン・ベル、ジョシュ・ギャッド、ジョナサン・グロフ、エバン・レイチェル・ウッド、スターリング・K・ブラウン
【日本語吹き替えのキャスト】
松たか子、神田沙也加、武内駿輔、原慎一郎、吉田羊
【作品概要】
脚本はジェニファー・リーとアリソン・シュローダー、音楽は前作に引き続きクリストフ・ベックが務めています。
また、前作で楽曲提供を引き受けたクリステン・アンダーソン=ロペス、ロバート・ロペス夫妻が本作でも新曲『イントゥ・ジ・アンノウン〜心のままに』を書き下ろし、日本版では中元みずきさんが担当しています。
映画『アナと雪の女王2』のあらすじとネタバレ
幼い頃、アナとエルサは眠る前に父のアグナル国王から昔話を聞いていました。
その内容は、祖父ルナード国王の時代、北方に住むノーサルドラの民との平和の象徴にルナードは国同士を結ぶためのダムを建設しました。
しかし祝宴の席で争いが起こり、この戦いに怒った精霊たちによって人々は霧の壁に包まれ、魔法の国に閉じ込められました。
まだ幼かったアグナル国王は、謎の少女に命を救われたという内容でした。
その話に夢中になり、続きを聞きたがるアナとエルサに母のイドゥナ王妃は子守唄に伝説の川アートハランの歌を聞かせます。
現在のアレンデールに話は戻り、女王となったエルザとアナは幸せな日々を送っていました。クリストフはアナに婚約を申し込もうと計画を立て、オラフは時は流れていくものだがいつまでもこの幸せが続いてほしいと言っていました。
ある日、エルサにだけ不思議な歌声が聞こえます。歌声に困惑しているエルザを見て、アナは異変に気付きます。
その夜、エルサは城を出て歌声に応えるよう魔法を使います。すると突然、北方から閃光が上がり、アレンデールの街を天変地異が襲います。
人々がフィヨルドの上の崖に避難したところに、トロールの長老パビーが現れ、「古代の魔法が目覚めた。精霊を鎮めるためには、過去の過ちを清算しなければならない。」と注意を施します。
エルサ、アナ、クリストフ、スヴェン、オラフは北方の地ノーサルドラの魔法の森を目指して旅に出ます。やがて霧の壁に行き当たり、エルザの魔法で霧の中に入ると、そこは魔法の森でした。
侵入者に気づいた風の精霊ゲイルは竜巻を起こし、エルサたちを襲います。エルサが反撃すると、風に舞い上がった雪は固まり、若き日のアグナル王子と少女の彫刻になります。
そこへ、霧に閉じ込められていたノーサルドラの民とアレンデールの兵士がやってきます。その中の一人が父の護衛だったマティアス中尉であることにアナは気付きます。
エルサの魔法の力にノーサルドラの民とアレンデールの兵士は驚き口論になりますが、そこに火の精霊によって火事が起こり、大混乱になります。
エルサは魔法で火の精霊を鎮めると、その正体はサラマンダーでした。戻ってきたノーサルドラの民とアレンデールの兵士は、アグナル王子と少女の彫刻、アナの持っていたショールをみて、アナとエルサの母親イドゥナはノーサルドラの民であることを知り、団結します。
夜になると地の精霊アースジャイアントが動き出し、危険なので夜明けまでキャンプを張ることになります。
そこでノーサルドラの民の一人ハニーマリンからショールの模様は4つの精霊のシンボルと、人と精霊の架け橋となる5番目のシンボルであることを聞きます。
一方で、クリストフはアナに告白しようとノーサルドラ流のプロポーズの仕方を聞いて、花畑でアナを待っていました。
そこにエルサの魔法の力に引き寄せられたアースジャイアントがやってきます。エルサは自分がいると周りに迷惑がかかると言い、謎を解くためアナとオラフと共に先に急ぎます。クリストフとスヴェンは置いていかれます。
エルサ一行は北へ向かうと難破船を見つけます。その船はかつて二人の両親が乗っていた船でした。
船の中を調べると、両親がエルサの魔法の謎を解くためダーク・シーの先にある、過去の全てを知る川アランハートに向かったことを知ります。
自分のために両親が亡くなったと考えたエルサは打ちひしがれますが、アランハートに行く決心をします。
アランハートへの道が危険なものであると悟ったエルサはアナとオラフを氷のボートに乗せ、遠くへ押し流します。
アナとオラフを乗せたボートは川を流れ、アースジャイアントの眠る谷へと流れ着きます。なんとかアースジャイアントを起こさずやり過ごしますが、出口のない「失われた洞窟」へと迷い込みます。
一方エルサはダーク・シーに到着し、なんとか海を越えようとしていました。荒れ狂う波を凍らせようと奮闘しますが押し返されてしまいます。
何度も挑戦しているエルサの前に、水の精霊ノックが馬の姿をして襲いかかってきます。激しい闘いの末、エルサはノックの背に乗りダーク・シーを乗り越えアランハートへと辿り着きます。
映画『アナと雪の女王2』の感想と評価
映画『アナと雪の女王』(2013)が世界中で大ヒットを飛ばし、ハードルが上がった続編『アナと雪の女王2』では、テーマ、楽曲共に進化を遂げたファンタジーミュージカルとなっています。
本作のテーマは「多様性の尊重」という近年のディズニーでよく扱われている普遍的なテーマを中心に、自己のルーツを探す旅による“通過儀礼としてのアイデンティティの確立”。
そして、現状を打破するために出来ることを一つずつ積み重ねていくという人生教訓など様々な要素を含んだ作品です。
テーマが重層的に包括されながら、一つのまとまった作品として成立している要因に「アニメ脚本の柔軟性」と「キャラクターの魅力」があります。
「アナと雪の女王」シリーズでは伝統的なディズニー作品とは画する対照的な性格を持つWヒロインの設定、アニメならではのリアリズムに拠らない幻想的展開が本作を柔軟性に富んだものとしています。
また本作では各キャラクターがより掘り下げられ、魅力が増している点にも注目です。キャラクターがより深く詳細に描かれることで、物語展開の幅が広がるだけでなく、観客が対象に感情移入しやすくなります。
特に前作ではキャラクターの薄かったクリストフの見どころとなるシーンもあり、ディズニー作品王道の“王子様がお姫様を救う展開”に心躍りました。
世界観・キャラクターの個性を深く掘り下げるため、心理学者やトラウマの専門家、人類学者や言語学者の徹底したリサーチを重ね、診断・分析したとパンフレットに書かれてあります。
それによって、世界観やキャラクターの感情は明白化され、その心情から起因する行動の論理性が生まれることで、キャラクターだけでなく彼らを取り巻く環境もリアルに生き生きと描かれています。
そして、本作最大の見どころは、ミュージカル作品として進化した点にあるでしょう。
『アナと雪の女王2』では、各キャラクターのテーマソングと主題歌など含め新曲7曲が構成されており、年齢問わず観やすく楽しめる作品となっています。
まとめ
映画『アナと雪の女王2』では前作と比べ、ストーリー・テーマ共に、より深みのある作品となっていたため大人の方でも楽しめる作品になっていました。
これは、本作の製作が前作から6年経過し、物語としても3年後となる舞台のため観客と共にキャラクター自身が成長しているからかもしれません。
映像表現も素晴らしく、また楽曲の数々が魅力的なものとなっています。
ぜひ、息づく美しい世界観と彼女達の大冒険による成長を存分に楽しんでみてはいかがでしょう。