圧倒的多数の敵兵に囲まれた米兵たちの実話を描いたミリタリーアクション!
ロッド・ルーリーが監督を務めた、2019年製作のアメリカのミリタリーアクション映画『アウトポスト』。
アフガニスタンの北東部を舞台に、300人以上のイスラム教スンナ派(多数派)諸派デオバンド派のイスラム主義組織「タリバン」戦闘員に対し、約50人の米陸軍の兵士で立ち向かっていく姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
2009年10月3日から連日行われた、米陸軍史上最も過酷な戦闘「カムデシュの戦い」を映画化した、アメリカのミリタリーアクション映画『アウトポスト』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
CONTENTS
映画『アウトポスト』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【原作】
ジェイク・タッパーのノンフィクション小説『The Outpost: An Untold Story of American Valor』
【監督】
ロッド・ルーリー
【キャスト】
スコット・イーストウッド、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、オーランド・ブルーム、ジャック・ケシー、コリー・ハードリクト、マイロ・ギブソン、ジェイコブ・スキーピオ、テイラー・ジョン・スミス、ジェームズ・ジャガー、ジョナサン・ヤンガー、ウィル・アッテンボロー、セリーナ・シンデン、トレイ・タッカー、アルフィー・スチュワート、マリン・ランジェロフ、ジャック・カリアン、アーネスト・カヴァゾス、ジェイコブ・スキーピオ
【作品概要】
『わらの犬』(2011)や『ブラック・バタフライ』(2017)などを手掛けた、ロッド・ルーリーが監督を務めたアメリカのミリタリーアクション作品。
原作は、アメリカを代表するトップジャーナリストのジェイク・タッパーが2012年に発表した、実際にあったアフガニスタン紛争における屈指の激戦「カムデシュの戦い」を描いたノンフィクション小説、『The Outpost: An Untold Story of American Valor』となります。
主演を務めるのは、『父親たちの星条旗』(2006)や『フューリー』(2014)、『ワイルド・スピード ICE BREAK』(2017)などに出演するスコット・イーストウッドです。
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011)や『アンチヴァイラル』(2013)などに出演するケイレブ・ランドリー・ジョーンズと、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのオーランド・ブルームが共演しています。
映画『アウトポスト』のあらすじとネタバレ
2006年、米陸軍は対ゲリラ作戦として、アフガニスタン北部に一連の前哨基地(アウトポスト)を築きました。
その目的は現地の人々と連携し、パキスタンからのイスラム教スンナ派(多数派)諸派デオバンド派のイスラム主義組織、「タリバン」の兵士たちの流入を防ぐことでした。
「地方復興チーム・カムディシュ」の施設は、ヒンドゥークシュ山脈に囲まれた谷に築かれました。
あるアナリストはその地を、キャンプ「カスター」と呼んでいました。カスターとは19世紀、部下と共に全滅した将軍の名前です。
米陸軍のクリント・ロメシャ二等軍曹やジャスティン・T・ガエーゴス、スクザ、ゾリアス・ヤンガー、ジョシュ・カーク三等軍曹。
この5人はアフガニスタン北東部の山奥に位置する、キーティング前哨基地に派遣されました。
キーティング前哨基地は、米軍の補給経路を維持するための重要拠点とされていますが、ある致命的な欠陥がありました。
それは四方を険しい山に囲まれた谷底に、キーティング前哨基地が設置されているせいで、ひとたび敵に包囲されてしまえば格好の的となってしまうことです。
つまり、ロメシャたちが派遣されたキーティング前哨基地は、圧倒的に防御面で脆弱でした。
基地の致命的な欠陥に気づいてしまい、衝撃を受けたロメシャたちでしたが、基地の司令官ベンジャミン・D・キーティング大尉とまず合流します。
それからロメシャたちは、共に現地の人々と連携し、タリバン兵の流入を阻止する任務にあたる仲間たちと顔合わせを行い、交流を深めていきました。
キーティング率いるレッド小隊のメンバーは、彼の副官を務めるアンドリュー・バンダーマン中尉と、軍医のクリス・コルドヴァ大尉や衛生兵のコーヴィル二等軍曹。
ロメシャたちが派遣されてから早々、タリバン兵の襲撃に遭い、顔の半分を失うほどの重傷を負いましたが、すぐに戦線復帰したジェイコブズ。
グリフィン三等軍曹と現地の通訳者モハメッド、タイ・カーター特技兵、ライバート。ヴァーノン・マーティン二等軍曹、アーマンド・アヴァロスとラーソンとグレゴリー、迫撃砲隊のロドリゲスとトムソン。
ハート三等軍曹とコップス、メイス三等軍曹とジョナサン・ヒル1等軍曹、エド・フォークナー二等兵。アフガニスタン陸軍のザヒード司令官率いるアフガン兵たちを教育する、ラキス先任曹長、他28名の米兵です。
ロメシャたちはレッド小隊と訓練したり雑談したりする、他愛ない日常を送りながら、連日少数精鋭で基地を襲撃してくるタリバン兵と戦っていました。
11月26日の夜。他の基地へ戦術車両を戻すよう、軍の上層部から命じられたキーティングは、ロメシャやカーター、ガエーゴスとメイスを伴い、任務を遂行しようとしました。
しかしその道中、同乗したカーターとロメシャが、未確認ホットスポットの正体が何か確認しに戦術車両から離れた後、険しく狭い山道のギリギリに停車していた戦術車両が真下へ転落。
それにより、ロメシャたちの帰りを待っていたキーティングが、戦術車両に乗ったまま真下へ転落し、戦死してしまいました。
後日、米陸軍の将校ロバート・イエスカス大尉が、戦死したキーティングの後任として、基地に派遣されました。
イエスカスが基地に到着して間もなく、再び少数精鋭で現れたタリバン兵による襲撃を受け、激しい銃撃戦の末、撃退に成功。
パトロールに向かったロメシャたちは、襲ってきたタリバン兵がいた場所から基地を見下ろし、嫌な胸騒ぎを覚えました。
「もしかしたらタリバンは、俺たちを攻撃しながら基地の弱点を探り、基地の全てを把握したら大勢でけしかけてくるのではないか?」と。
ロメシャのその推測を真実へと裏付けるように、皆で基地内で訓練をしている最中、現地に住む若い青年ブルガが長老に報奨金を貰って、タリバンに渡すために基地内を撮影していたのです。
ブルガはすぐさま捕まえ拘束したものの、その後開いた長老たちとの合議では、結局彼らから金を無心されただけで、誰がタリバンに関与しているのか分かりませんでした。
また別の日、ロメシャたちは四方を囲む険しい山をパトロールし、山と山の間に架けられた橋を渡ろうとしていました。
ヤンガーと共に橋を渡ろうとしたイエスカスが、橋の中央に差し掛かった瞬間、突如爆発が起き、爆発をもろに食らったイエスカスが戦死。
彼の死を間近で見ただけでなく、爆散した彼の脳みその一部が口に入ってしまったヤンガーは心を病み、戦意喪失し救護ヘリで離脱してしまいました。
また指揮官を失ってしまい、士気が少し下がってしまったロメシャたちの元に、別の前哨基地の指揮官を務めていたブロワード大尉が、新たなキーティング前哨基地の指揮官として派遣されました。
しかしブロワードは着任して早々、彼と彼の部下たちが雇った水力発電所のアフガン人作業員の身分証明書が、イエスカスが殺された川の近くに落ちていたことをロメシャたちから聞かされ、イエスカス殺しの犯人について尋問されてしまうのです。
これに対しブロワードは、「捜査当局から捜査官が来るまで、アフガン人作業員を捜索・逮捕してはならない」と猛反対。
さらにブロワードは、タリバン兵へ過剰な軍事力を行使しようとするロメシャたちと意見が対立し、ロシャメと反発し合うようになってしまいます。
ブロワードと反発するロメシャたちの間で、タリバン兵の襲撃時にいつも戦術作戦指揮所(TDC)に籠っている彼のことを、「無能な臆病者」「腰抜けブロワード」と言い、影で嘲笑していました。
そんなある日、ロメシャたちが影で自分のことを嘲笑っていることを知ってか知らずか、ブロワードは数日後にヘリでこの基地を去り、後任として米陸軍のストーニー・ポーティス大尉が新たに派遣されることが決まりました。
そのことをロメシャたちに伝えたブロワードは、イラクで大勢の仲間の死に目にあってきてもなお、この基地に来てくれたことに感謝しているバンダーマンに、ポーティスが来るまでの間だけ指揮を執る仮の指揮官に任命しました。
映画『アウトポスト』の感想と評価
戦友たちと兄弟愛を築く「天国」とタリバンと戦う「地獄」
四方を険しく非常に標高が高い山に囲まれた、低地の谷底に位置するキーティング前哨基地で起きた、ロメシャたち米兵54人vs300人以上のタリバンの精鋭部隊による激闘。
のちに「カムデシュの戦い」と呼ばれるこの戦いは、観ているこちらも手に汗握り、生きた心地がしないほど緊迫感があるアクション場面ばかりです。
カムデシュの戦いを経験した当事者たちも、自身が演じた役柄を通してカムデシュの戦いを体験した俳優たちも、常に死と隣り合わせの地獄の戦場を何日も戦い続けてきたかと思うと、彼らが戦場で抱く死への恐怖や絶望感などの心情が痛いほど画面越しに伝わってきて胸が苦しくなります。
一見この世の地獄にしか感じない戦いばかりが続きますが、そんなタリバンとの戦いの日々の中にも、ロメシャたちにとって心休まる時がありました。
それはキーティング前哨基地で過ごす、同じ戦場で戦う戦友たちとの他愛もない日常です。
極度の緊張状態で張り詰めた神経と心身を癒せる、まさに心の休息日といえる日々を送るロメシャたちの笑顔を見ていると、とても微笑ましいと感じます。
そして連日続くタリバン兵との戦闘や、300人余りのタリバンの精鋭部隊と戦った ロメシャたちは、互いに命をかけて仲間を救おうとすることで、戦友を超えた本当の兄弟愛を知ることが出来ました。
エンドロール中に流れた、当事者たちへのインタビュー映像で、タイ・カーター特技兵本人がそう語っていました。
本当の兄弟愛を知ったロメシャたちにとって、気心知れた兄弟たちと過ごす日々は、全員が天国のように感じたに違いないと考察できます。
最後まで反発するロメシャたちとブロワード
物語の中盤では、橋に仕掛けられた小型爆弾で戦死したイエスカス大尉の後任として、イラクでの戦闘経験があり、軍の上層部から優秀な人材として一目置かれているブロワード大尉がキーティング前哨基地の指揮官となります。
ただブロワードは、仲間を殺した容疑者であるアフガン人作業員の捜索及び逮捕を、自分たちの手で捕まえ拘束するのではなく、いつ来るか分からない捜査当局に任せようとしたり。
基地を襲撃するタリバン兵の武力行使に対する方針が、これまで幾度となくタリバン兵の襲撃を退けてきたロメシャたちと違ったりして、バンダーマン以外のロメシャたちと反発してしまうのです。
結局ブロワードは基地を去るまで、ロメシャたちと反発したままでした。互いの方針の違いから反発しする基地内部の対立は、タリバンとの激闘の次にピリピリしていて、協力してタリバンと戦わなければならい状況で、まさか仲間割れしてしまうのではないかと冷や冷やさせられます。
まとめ
アフガニスタンを舞台に繰り広げていく、ロメシャたち米陸軍の兵士54名vs300人以上のタリバン兵の激闘を描いた、アメリカのミリタリーアクション作品でした。
本作は実話をもとに、軍内部の生々しい人間模様や、タリバンの精鋭部隊と14時間にも及ぶ過酷な激戦を繰り広げていく、ひりつくような緊迫感があるアクションで描かれています。
エンドロール前には、カムデシュの戦いによるロメシャたちの功績と、激戦の後のことがテロップで流れていました。
タリバンとの戦闘後の調査により、キーティング前哨基地の防御力の脆弱さが露呈。その結果、多くの前哨基地の閉鎖が推奨されました。
ロシャメたちが所属した部隊はアフガン紛争史上、最も多くの勲章を受章しました。
ヒルとラーソンとコルドヴァは銀星章、コーヴィルとポーティスは青銅星章、ラキスは陸軍称揚章。フォークナーは名誉戦傷章をそれぞれ授与されました。
ロドリゲスは青銅星章を、バンダーマンは殊勲十字章を授与されました。そして「キーティング前哨の戦い」での活躍が認められ、50年ぶりに2人の生存軍人が、同時に名誉勲章を受章しました。
その2人とはロメシャと、メイスを救えなかったことへの責任と、メイスの死に恐怖を感じ、カウンセリングを受けているカーターでした。
トムソンは享年21歳、スクザは享年22歳で戦死し、2人とも陸軍称揚章を授与されました。
カークは享年30歳、グリフィンは享年24歳、マーティンは享年25歳で戦死し、3人とも青銅星章を授与されました。
仲間に救出され、治療を受けるもむなしく、ハートは享年24歳、メイスは享年21歳で戦死。2人とも青銅星章を授与されました。
ガエーゴスは享年27歳で戦死し、殊勲十字章を授与されました。キーティングは享年27歳、イエスカスは享年31歳で戦死し、青銅星章を授与されました。
そしてエンドロール中には、トップジャーナリストのジェイク・タッパーが、カムデシュの戦いを生き抜いた実在の人物たちに、この戦いで感じたことを取材したインタビュー映像が流れていました。
インタビューに応じたタイ・カッターとクリス・コルドヴァ大尉、ストーニー・ポーティス大尉本人たちがそれぞれ思い思いに当時のことを語る中、彼らが共通して言っていたことがあります。
それはカムデシュの戦いで犠牲になった8人の米兵のことを知るのは、とても重要なことであり、今後の米国の安全を考えるきっかけになって欲しいという切なる願いです。
米陸軍史上最も過酷な戦闘であり、アフガニスタン紛争における屈指の激戦を描いた、観ているだけでひりつくようなミリタリーアクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品となっています。